スクウェア・エニックスより発売中のPS4/Xbox One/PC用ソフト「ライフ イズ ストレンジ 2」。開発を手掛けるDONTNOD Entertainmentで、本作の共同クリエイティブ・ディレクターを務めるミシェル・コッホ氏へのメールインタビューをお届けする。
――「ライフ イズ ストレンジ2」の構想はいつからあったのでしょうか? 今回はショーンとダニエルという兄弟のストーリーですが、マックスとクロエの物語の続きを描くことはまったく考えなかったのでしょうか?
LIS1の最終エピソードを終えた直後に、スクウェア・エニックスから続編の制作を依頼されました。ラウル・バーベット(共同クリエイティブ・ディレクター)、ジャン=リュック・カノ(シナリオライター)と共に、私たちにとってLISリーズとは何か、次作を作る上でなにを変えないことが重要なのか、そしてクリエイターとして、新鮮で他と異なるゲーム体験を保つためになにを新しくするべきか、ということについて多くのことを考えました。
私たちはクロエとマックスが大好きですし、アルカディア・ベイの設定も好きでした。しかしLIS1のまったく異なる2種類のエンディングを考慮すると、どちらかを正史として扱うようなことはしたくありませんでした。それは一部のプレイヤーの最後の選択を取り上げる行為だからです。だからこそ、新しい場所と新しいキャラクターで、新しい物語を紡ぐことが重要だったのです。
――「ライフ イズ ストレンジ2」というタイトルにした理由をお聞かせください。「ライフ イズ ストレンジ」という名前を付けるにあたり前作から変えてはいけないと思った部分はどこですか?
どちらのゲームも、現実にある問題に直面しもがくさまざまなキャラクター達を、物語にひねりを加えるために超能力という要素が足された世界で描いています。
LISシリーズは、情報やカメオ出演のキャラクター、場所、ブランド等がリンクした同じユニバースで起こる物語からなるアンソロジーです。なので、新キャラクターを使いはしましたが同じユニバースでの出来事ですので、スクウェア・エニックスが「ライフ イズ ストレンジ2」と名付けたのは自然なことだと感じました。
――今回は前作同様にエピソード形式で配信されたタイトルですが、最初のエピソードを発表したときや、その後の各エピソードを発表したときのユーザーさんの反応はいかがでしたか?
LIS1は大成功を収めましたが、ファンからの期待の中で2作目を出すのはいつも大変です。LIS2を発表した当時、さまざまな反応を受け取りました。あるプレイヤーは大好きな(LIS1と同じ)世界で新しい物語を体験することを待ちきれない様子でしたし、新キャラクターに興奮しているプレイヤーもいました。一方で、一部のプレイヤーはマックスとクロエに再会できないことにがっかりしていました。最終的に彼らがショーンとダニエルにチャンスを与え、キャラクターとプレイヤーが強く結びつき、まるで家族のようにディアス兄弟と共に旅をし、見守るのを見たときは、とても興奮しました。
――各エピソードを発表したあとのユーザーさんの反応によって、その後のエピソードに手を加えることはありますか?
エピソード形式のゲーム作りは制作面でも計画面でもとても複雑で大変です。通常、ひとつのエピソードをリリースした時点で、次のエピソードの制作はかなり進んでいます。そのためスケジュールを遵守しようとすると多くを調整する時間はあまりありません。逆を言えば、多少の調整をする余裕はありますので、SNSや動画などを確認して可能な限り調整を施すなど、いつもプレイヤーの反応に報いようと努力しています。
――とくにお気に入りのエピソード、及びシーンはどこですか?
私が好きなのはエピソード3「不毛の地」です。あの流れ者のグループがとても好きで、このカラフルなキャラクターたちの中でプレイヤーが好きに振る舞えるところがとても気に入っています。そしてこのエピソードでは、恋愛と友情の仕組みを細かく入れ込むことができました。キャシディに手を出すか、フィンといちゃつくか、もしくはロマンスを拒否して友情に集中するか選ぶことができます。ショーンは16歳なので、彼の性的指向について彼自身がいろいろな角度から考えを巡らせる描写をいれることはとても重要なことでした。
その他の好きなシーンもエピソード3にあります。それはフィンおよびキャシディとのロマンスシーンです。その中でもキャシディとテント内で過ごすシーンは重要なものでした。なぜならSEXシーンをリアルに――現実は映画のようにうまくいくものではないということを――表現したかったからです。
――「オーサム・アドベンチャーズ・オブ・キャプテン・スピリット」はどのように生まれた作品なのでしょうか? クリスを主人公にした作品は最初から構想にあったのでしょうか?
LIS2に取りかかった頃、ショーンとダニエルの物語と新しい設定を紹介する、無料で短いゲームを提供することについてスクウェア・エニックスと協議しました。LIS2用に創りあげたサブキャラクターを見回して、短いストーリーのゲームの主人公にはクリスが最適だという結論に達しました。LIS2はダニエルを見守り教育していくのですが、プレイヤーがダニエル=9歳の子供と接する前に、プレイヤーを9歳の子供の境遇に置くのは面白いだろうと思いました。
同じく面白いのは、クリスがスーパーパワーに憧れる普通の男の子だということです。彼は想像の中でしかパワーを使えません。一方で、ダニエルはスーパーパワーという重荷を背負ってしまい、普通に戻りたいと願う子供で対比になっています。
――なぜ今回はショーンとダニエルという兄弟を主人公にしようと思ったのでしょうか? ショーンは16歳でありながらダニエルの世話をしながら身寄りのない旅をするというとても大変な環境に身を置かれますが、本作でどのようなテーマの物語を描こうと思っていましたか?
LIS2のメインテーマは家族と教育で、サブテーマは人種、信仰、障害、人生の方向性、政治的信条、性別などを理由にした「排除」でした。キャラクターをつくる際、メキシコ系アメリカ人の兄弟はこういったストーリーやテーマを伝えるのに最適な主人公になるだろうと考えました。
ショーンは普通の10代でしたが、歩んでいた比較的良い人生を捨て、唯一の家族となった弟の面倒を見ることを強制されました。彼らに旅をさせることにより、彼らだけの旅路を通して、彼らが出会うさまざまな形の「排除」を表現することができました。彼らが旅の中で出会う人々や直面する状況は、そういった家族、教育、排除のイメージを強調するために存在しています。たとえば、ショーンとダニエルが一時的な家から逃げる必要があったとき、そのことが彼らの家族としての絆を強くしました。ショーンが困難な状況にあるときは、対処の仕方に気をつけなくてはなりません。ダニエルが見ていて、彼がショーンから学ぶからです。
――前作では主人公のマックスが超能力を持っていて、それがゲームシステムにも繋がっていましたが、今回は操作キャラクターのショーンではなく弟のダニエルが超能力を持っています。その意図を教えて下さい。
スーパーパワーをダニエルのものにしたのは、ゲームのテーマを反映させるためです。パワーを手にしたダニエルは弾丸が込められた銃のようなもので、彼が怒ったり倫理観に対する見方が変わったりしたときのことを考えると、ショーンが彼を教育することがより重要なものになります。一方で、操作キャラクターであるショーンにパワーを持たせないことは、社会の中で彼が相対する排他性や圧力を強調するために必要なことでした。社会がショーンという無力な人間をどう扱うかということを表現できますから。
――マックスとショーンについて、どのような点でふたりの違いを出そうと思いましたか?
選択式のゲームで主人公を作るのはいつも厄介です。プレイヤーが感情移入するのに十分なスペースを残さなくてはいけませんが、空虚なキャラクターにならないよう、ある程度肉付けする必要もあります。
マックスとショーンの共通点は、二人とも「道徳的に善良」であり、大多数のプレイヤーから好感を持たれるような優しさを持っていることです。また、二人とも内向的な性格であるため、会話に使う台詞とモノローグの台詞にいい感じの違いを入れ込むことができます。
違いという点では、ショーンを(マックスとは違い)ダメな側面も持つ平均的な10代の少年のような存在にしたいと考えました。交友関係の話で言うと、彼はダニエルにイライラしていて、父親に対しても少し不器用で、友達ともっと遊びたいと考えています。ショーンがすべてを失ってから常にダニエルと一緒にいるようになりますが、それが重荷であるように描かれます。父親の代わりになることは、ショーンにとって予期せぬ事態でしたから。
――ダニエルやクリスは年齢らしいかわいい仕草や言動をするキャラクターですが、子供らしさはどのように研究しましたか?
シナリオライターのジャン=リュック・カノには娘がいて、彼は娘さんから多くのインスピレーションを得ていました。またシナリオチーム(ナラティブデザイナーのマティアス・フックスとマハ・ロペス)と一緒に、子供の性格や成長について多くのリサーチを行いました。
かわいさとうざったさのバランスをとるのは難しかったですね。子供の行動は予測不能でときにうんざりさせられることもあります。こういった部分をゲームに反映させたかったのですが、同時に、プレイヤーに「嫌気が差した」と思われないよう、必要以上に感じの悪い子供にならないように(たとえそれが現実的であったとしても)気をつけました。
また、クリスとダニエルの声優であるチャンドラー・マンティオーネとロマン・ジョージにも助けられました。私たちは音声収録の際、彼らにセリフや話し方について質問をし、フィードバックをもらっていましたから。
――ダニエルはAIで自動的にショーンの周囲を行動するようですが、最初からうまくいったのか、それともテストプレイを重ねたのでしょうか? 苦労した点などをお聞かせください。
ダニエルの動きを自然にするのはとても骨が折れました。私たちのゲームは物語性が強く、プレイヤーがダニエルを本物の子供のように気遣った場合にのみ成立します。そのためダニエルが盲目的にショーンを追いかけるのではなく、可能な限り自然に振る舞うことがとても重要でした。私たちにはとても優秀なプログラマーとデザイナーのチーム(ピエール・モーリーとサイモン・スヴォボダ)がいて、LIS2制作期間のほぼすべての時期でダニエルのAIを開発していました。
基本的な追従システムを使用しましたが、プレイヤーの行動や内部のパラメータ(兄弟愛と倫理観)、さらにはショーンとの距離に応じて行動するようにしました。ショーンの行動によってダニエルが自信を持つようになると自主的に行動を開始しますが、逆のパターンでは、ショーンの許しを待つようにもなります。
――本作には魅力的なキャラクターが多数登場しますが、お気に入りのキャラクターとその理由をお聞かせください。
私の好きなサブキャラクターは、ショーンとダニエルの母親であるカレンです。彼女絡みの重いトピックのことを考えると、あのような形で彼女を描くのは大きなチャレンジでした。表面的には、彼女は自分が母親でいられないと感じたために子供を捨てた母親で、ショーンとダニエルをひどく傷つけた過去を持ちます。彼女に敵対要素を与え、悪者として描くことは簡単だったでしょう。しかし私たちとしては、彼女には「ある役割を与えられることにまだ準備ができていない人の背中を社会がどう(無理矢理)押すのか」ということや、「社会は男性が家族を離れることを許すが、女性がそうすることは大罪であるかのように扱う」ということについて語ってほしかったのです。このような状況は明らかなダブルスタンダードであり、男性優遇ですから。
このテーマについて中立的な視点を持たせ、世の中は黒か白かで語れずグレーな部分がほとんどであるということを示すため、カレンに耳を傾けるかどうかプレイヤーに一任したかったので、カレンのキャラクターを作りあげる際、マハ・ロペスと多くの努力をしました。このことは家族、母性、自由意志の概念について、私たち自身が考えるきっかけにもなりました。
――クリスが車に轢かれるかどうかの大きな分岐や、入れ墨を入れるかどうかのこまかい選択肢など、今回もプレイヤーの行動によってたくさんの分岐が登場します。みなさんが注目してもらいたい分岐ポイントはどこですか?
セリフの分岐を書くときの主な目標は、プレイヤーに興味深い「ロールプレイ」の可能性を与えることです。これは選択率が半々になるように相対する選択肢を常に用意するということではなく、一部のプレイヤーが見たいと思うような選択肢を多く用意するということです。
たとえば、エピソード2でクレアが祈ることを提案しますが、多くのプレイヤーが受け入れる選択をすることはわかっていました。しかし様々な感性を表現することが重要だという考えのもと、祈るのを断る選択肢を入れています。
――今回はエピソードごとに舞台が異なりますが、舞台を決めてからストーリーを作ったのでしょうか、それともストーリーを先に作ってから舞台を決めたのでしょうか?
全体像とストーリーが最初です。ストーリーの始まりと終わりを考えてからメインのプロットと転換点について考え、各シーンに最適な場所とテンポを考えます。
LIS2はアメリカ西海岸からスタートしますが、そこはロードムービースタイルのゲームの始まりとしてとても特徴のあるエリアでしたので、人々、文化、風景の中に見られる計り知れない多様性の反映させるため、比較的知られていないアメリカの場所を紹介するようにしました。
私たちは考証や、旅をすれば出会うであろう人々へのインタビューのため、何度も現地に足を運び、それらを元にゲーム内のシーンや設定を考えました。
まとめると、ストーリーから始め、それに合う場所を捜し、リサーチや打ち合わせを重ねながらときには調整をほどこしています。
――違法農園の作業をプレイヤー自身が操作するシーンは日本のゲームにはないアイディアだと思いました。なぜこのシーンをプレイアブルの操作にしようと思ったのでしょうか?
LIS2には一部の国で物議を醸したり不快感を与えたりしてしまうようなトピックが多く含まれています。たとえば、性、ヌード、ドラッグ、暴力、冒涜表現などです。しかしこれらはすべて現実の生活の一部ですから、それらを含むシーンやキャラクターを現実に近い形で表現したいと考えました。
調査のためアメリカを旅したとき、ハンボルトでトリミング作業をする移住者と話をしたところ、こういった仕事は季節労働者、漂流者、学生など、旅に出る資金が必要な人たちにとって非常に大きな市場であることがわかりました。
私たちはプレイヤーに一方的なメッセージを届ける作り方はしません。ただ社会保障に頼ることができない人々による影の経済活動があることを見せたいと思ったのです。
――ショーンが携帯電話を捨てるシーンなどプレイヤー自身に操作を委ねる部分も多かったですが、「2」ではゲームであることにどのような部分でこだわりましたか?
私たちのゲームとインタラクティブ映画の境界線は薄いかもしれません。しかし私たちはプレイヤーにイベントの展開をただ見るのではなく、物語に関わっていると感じてもらえるよう努力しました(もっといいものを作るよういつも努力しています)。たとえば質問にある携帯電話を投げ捨てるシーンは、その考えがうまく反映されたと思います。あの場面では携帯電話を必ず捨てなければなりません。ですがそれはあなた自身がしなければいけないのです。ショーンのような10代の少年にとって、過去の思い出がつまったソレを捨てることはとても辛いことですから。
もうひとつ、エステバンとの(クリスマスに撮られた)動画を見るシーンでは、すぐに電話を捨てるか、ショーンが泣き出すまでその動画を見続けるか選ぶ事ができます。
他のカットシーンでもインタラクティブ性を持たせることに挑戦しました。たとえば、エピソード1でショーンとライラがパソコンで通話するシーンや、エピソード3で仲間とキャンプファイヤーを囲んでいるシーンです。一方で、制作上の制約から、インタラクティブ性を持たせることができなかったカットシーンもあります。
――「ライフ イズ ストレンジ2」をプレイした人とこれからプレイする人にそれぞれコメントをお願いします。
すでにLIS2をプレイした皆さんには、自分の信念と希望に沿った方法で旅を終え、旅の途中で新しい友に出会い、旅を終えてからショーンとダニエルを家族のように恋しく思ってくれていることを願います。また、皆さんが皆さんの旅路で出会う見知らぬ人々のことを前以上に気遣いたくなるような物語になっていたとしたら、私たちとってこれ以上のことはありません。
LIS1をプレイ済みでLIS2は未プレイの皆さんには、ぜひプレイしていただき、マックスとクロエを好きになったように、ショーンとダニエルも好きになってくれるとうれしいです。
そしてどちらもプレイしたことない皆さんにはこの言葉を送ります。ぜひ両方プレイしてみてください!:)
Life is Strange 2 (C) 2018-2020 Square Enix Ltd. All rights reserved. Developed by DONTNOD Entertainment SA.
LIFE IS STRANGE 2 and LIFE IS STRANGE are registered trademarks or trademarks of Square Enix Ltd.
SQUARE ENIX and the SQUARE ENIX logo are registered trademarks or trademarks of Square Enix Holdings Co., Ltd.DONTNOD is a trademark of DON'T NOD Entertainment SA.
All other trademarks are the property of their respective owners.
※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。
コメントを投稿する
この記事に関する意見や疑問などコメントを投稿してください。コメントポリシー