i-tronから配信されたスマートフォン向け声優活動ディレクションゲーム「BATON=RELAY」をレビュー。「神のみぞ知るセカイ」の若木民喜氏がキャラクターデザインをしていることも魅力の作品だ。
「BATON=RELAY」は、i-tronから配信された、iOS/Android向け声優活動ディレクションゲーム。プレイヤーは声優事務所のディレクターとして、アイドル声優たちを育てていくことになる。「神のみぞ知るセカイ」の若木民喜氏がキャラクターデザインを担当しているだけあってキュートなキャラクターが魅力。しかし、それだけではない。「声優」という職業に着目した演出、ストーリー構成も、強い魅力となっている。
基本は育成ゲーム!レッスンで自信をつけオーディションに臨め
本作のゲームシステムを一言で言えば、育成ゲーム。基本となるゲームの流れは声のお仕事である「案件」を選び、案件獲得のための「レッスン」を実行。「レッスン」を繰り返して準備が整ったら、「オーディション」を受ける。見事「オーディション」に受かれば案件獲得!「レコーディング」を行う…というものだ。
「レッスン」を選ぶと、「ダンス」や「ボイス」、「演技」などのレッスン項目が自動的に選ばれ、スケジュールが組まれる。このスケジュールに対して声優を割り当てると「レッスン」スタート。オートで進行するため、プレイヤーはただ眺めているだけでOKだ。
眺めているだけでOK…と書いたものの、何も考えずに画面をタップしていればいいというわけではない。レッスンの結果は「自信」というパラメータに反映される。この「自信」が「オーディション」や「レコーディング」に影響するのだが、「レッスン」中に「スタミナ」が切れてしまうと、ほとんど「自信」がアップしないのだ。
「スタミナ」は、「レッスン」の内容と声優の「タイプ」が一致していると減りづらい。たとえば「タイプ」が「バイタル」の場合、「筋トレ」のレッスンをしてもスタミナはほとんど減らない。なので、声優の「タイプ」を踏まえて、得意な「レッスン」内容を割り振ってやる必要がある。
…とはいえ、これがそう簡単ではない。というのも、「レッスン」の、5つの枠に対して、3フェーズ分一気に割り振られる。この枠に対して5人の声優を設定していくため、声優が得意とする「レッスン」だけを割り振る…というわけにはなかなかいかない。しかも、「レッスン」の割り振りには偏りがある。「案件」に設定されている役にも「タイプ」が設定されており、それに応じた「レッスン」内容が多く出現するのだ。
このため、そもそも編成で「レッスン」をこなすのか…?というところから考える必要がある。これはまさにディレクターの仕事だな!と感じた。
いざオーディション!役に応じたタイプの声優で勝負
「オーディション」は、ちょっとしたタップアクションになっている。徐々に小さくなっていく円形のゲージが、濃い緑の円と重なるタイミングでタップする…というもの。ジャストなタイミングでタップするとアピールに成功し、獲得ポイントがアップ。獲得ポイントが一次審査、二次審査、三次審査、そして最終審査で必要な値を超えていれば、晴れて案件獲得となる。
ちょっとしたタップアクション…と書いたが、実はタップアクション自体はそれほど重要じゃない。タイミングがゆるいので、誰でも難なく成功できるだろう。それよりも重要なのは、「レッスン」同様、声優の「タイプ」だ。声優の「タイプ」と役の「タイプ」が一致していると獲得ポイントが大きく伸びるが、一致していないとまったく伸びない。どの声優をどの役に割り当てるか?ここでもディレクター的な感覚が重視されている。
レコーディング!声優モノならではの劇中アニメがGood
「オーディション」が終わると、いよいよ「レコーディング」だ。「レコーディング」も「オーディション」同様、獲得したポイントによって成功失敗が分かれる。ただ「オーディション」のようにタップアクションが発生するわけではない。プレイヤーはできることは、「レッスン」で育んだ声優たちの演技力を信じて、仕事っぷりをただ見守ることだけだ。
この「レコーディング」でおもしろいのは、「案件」として設定されている劇中アニメの内容が、ちゃんとアニメーションで再生されること。といっても、映画の特報レベルの短さなのだが、短くはあってもクオリティは驚くほど高い。もっとこの作品を観たいと思ってしまうほどだ。ちなみに劇中アニメは架空の作品だが、現実のアニメのパロディ的な作品になっている。なので、「お、これはあの作品のあのシーンのパロディっぽいな」と元ネタ探しをするのも楽しみのひとつだ。
かわいいだけじゃない!それぞれの課題を抱えた魅力的キャラクター
ここまでゲームシステムについて触れてきたが、本作のような育成ゲームにおいて本当の意味でメインと言えるのは、やはりキャラクターだろう。つまり、本作でプレイヤーが育成する、4チーム4人ずつ、計16人のアイドル声優たち。
アニメ化もされた人気コミック「神のみぞ知るセカイ」の若木 民喜氏がキャラクターデザインしているだけあって、本作の声優たちは皆かわいい。ビジュアルの時点で、16人それぞれが個性的な魅力を放っている。しかもそれが、ぐりぐりアニメーション!その上、フルボイスときているのだから、臨場感がハンパない。どのキャラもイキイキと描かれていて、これは推しキャラを作らない方が難しいというものだ。
ただ、本当の意味で筆者が魅力を感じたのは、それぞれのキャラクター達のストーリーだ。本作はストーリーに力が入っており、メインストーリーの他にイベントストーリー、各キャラクターの日常を描いたストーリー、そしてディレクター(プレイヤー)と各キャラクターとの関係性を描いたストーリー…と、多面的にストーリーを描いている。
ストーリーを通して描くのは、声優を目指す少女たちの青春物語。「声優」の仕事のコアは、アニメやゲームなどの作品内の役を演じること。なので、「声優」になりたいということは、「声優」を通して、アニメやゲームなどの作品に登場する「何者かになりたい」ということでもある。こうした情熱に対し、16人の声優たちはどう向かい合っていくのか?
たとえばキャラクターの一人、桜美聡が抱える問題は、自分の方向性が定まっていないこと。かつて大手声優事務所に研修生として所属し、将来を有望視された彼女。しかし、憧れの声優に近づきたいという思いから事務所を移籍して以降、彼女にはモブキャラの仕事しかきていない。彼女は、どんなキャラでも演じられるという器用さゆえに、これといった決め手にかけるのではないかと悩んでいる。
また、広瀬昌であれば、自分の容姿と、自分の演じたい人物像にギャップがあることを悩んでいる。彼女は背が高く、どちらかといえば「カッコいい」と言われてしまうタイプ。しかし彼女はかわいい系を演じたいという。
こうしたキャラクター毎の背景が、16人分しっかり描かれている。どのキャラクターについても、も声優という仕事を目指す上でぶつかるだろう問題がリアルに描かれていると感じた。だからこそ本作のキャラクターは実在感が高く、感情移入できる。この声優を応援したい!と思わせる力を持っているのだ。
「声優」という職業に真摯に向かい合った丁寧な作りに好感が持てる
本作は単なる美少女育成ゲームとしてもよくできているが、そこに留まることなく、声優という職業にまつわる課題までしっかり描こうという丁寧な作りに好感が持てる作品だ。美少女育成ゲーム好きはもちろん、これまで育成ゲームはプレイしたことがないという人でも、声優という仕事に興味があるなら、プレイする価値があるだろう。
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