昨年6月にPS Vita用のダウンロードソフトとしてリリースされ、好評を博したSF人狼ゲーム「グノーシア」のNintendo Switch版が、4月30日に満を持してリリースとなった。本稿では、PS Vita版をプレイしてこのゲームのファンになった筆者が、Switch版ならではの魅力や、Switch版をプレイして改めて感じた唯一無二の面白さについて、お伝えしよう。

目次
  1. SF人狼ゲーム「グノーシア」とは
  2. ハードに合わせたいくつかの調整が加えられたSwitch版
  3. 魅力的なキャラクターたちの思惑が入り乱れる“騙し合い”はやっぱり楽しい

SF人狼ゲーム「グノーシア」とは

「グノーシア」のジャンル名は“SF人狼ゲーム”となっている。これをもう少し詳しく書くなら「SF的な世界観で楽しむ、人狼風ひとり用RPG」となるだろう。

まずは世界観についてだが、本作の舞台は様々な種族のキャラクターが搭乗した宇宙船。プレイヤーは乗員のひとりとなって、この中に紛れている人間の敵“グノーシア”が誰なのかを議論によって暴くことになる。グノーシアと思しき人物は1日にひとりずつコールドスリープさせられ、グノーシアは毎晩、人間をひとりずつ消滅させていく。グノーシアを全員コールドスリープさせたら人間側の勝利。乗員の過半数がグノーシアになったらグノーシア側の勝利だ。

コールドスリープする人物は1日に1回行われる「議論パート」で決まる。議論パートに参加する乗員は最大15人。この中にグノーシアは最大3人が潜んでおり、グノーシア側は仲間が誰か知っているが、人間側にはわからない。プレイヤーはいくつかの「発言コマンド」を駆使して、グノーシアの嘘を暴いたり、自分が他のキャラクターに疑われたときはこれを否定するなどが可能だ。この議論を踏まえて最後に全員による投票が行われ、その日コールドスリープする人物が決まる。

人間側には、1日に1回、任意のひとりをグノーシアかどうか調べられる「エンジニア」などの役職があるが、グノーシア側がこの役職を偽り、議論をかき乱す場合もある。誰もが疑心暗鬼になっている状況から、発言の矛盾を突いて嘘を暴く快感がたまらない。また、議論を繰り返すと経験値が獲得できる。これを「カリスマ」「直感」「演技力」などの能力値に振り分ければ議論が有利になり、新たな発言コマンドの習得にも繋がる。

人間とグノーシアの勝敗が決まると、宇宙船の時間が1日目に戻される。この世界は何故か時間ループに囚われているのだ。何故時間がループしてしまうのか? ループにグノーシアはどのように関係しているのか? これらを暴き、ループを脱出するのが、本作の最終的な目標となる。時間がループするたびにキャラクターの役割は変わり、ときにはプレイヤーがグノーシアになることも。グノーシアになったときは、いかに人間を狡猾に騙せるかが問われる。

議論パートとは別に「移動パート」というものも存在する。移動パートでは宇宙船の各所でキャラクターたちとの会話が発生するのだが、すべてのキャラクターが意外な一面を複数持っており、誰もが世界の秘密に直接的、または間接的に関わっている。中には「特定のキャラクターと一緒にグノーシアになる」「特定のキャラクターと勝敗が決まるまで生き残る」などの条件を満たさないと開示されない一面もあり、エンディングにたどり着くには、何度もループを繰り返し、すべてのキャラクターの秘密を暴かなければならない。

1回のループは15分程度でプレイできる。ちょっとした時間でスリリングな騙し合いが楽しめる手軽さがありつつ、ストーリーに引き込まれ、何時間でもプレイしてしまえる中毒性をも併せ持っているのは、本作の優れた点のひとつだ。あらゆる要素が独創的なので、正確に面白さを伝えるのは難しいが、一度プレイしてしまえば多くのプレイヤーが虜になってしまう、オンリーワンの傑作と言えるだろう。

ハードに合わせたいくつかの調整が加えられたSwitch版

Nintendo Switch版「グノーシア」をプレイして最初に感じたのは、当たり前のことだが「画面が大きい」という点。携帯モードでもPS Vitaよりふたまわりほど大きい画面でプレイできるため、キャラクターたちの魅力的なグラフィックが、細部の描き込みまでしっかり見て取れる。本作のビジュアルに惚れ込んだ方なら、PS Vita版以上にスクリーンショットが捗ることだろう。

もちろんTVモードならばさらに迫力ある画面サイズでのプレイが可能。PS Vita版もPS Vita TVがあればテレビ出力が可能だったが、ハードが一台あれば携帯モード、TVモードと切り替えられるSwitch版の手軽さは嬉しい。携帯モードで場所を選ばず気楽に。または、テレビの大画面で腰を据えて。いずれのプレイスタイルとも相性が良い「グノーシア」は、Switchとの相性が抜群だ。

オプションにはコントローラーの「両手持ち」と「片手持ち」の選択項目が追加されている。「片手持ち」を選ぶと、右スティックが使えるようになる、両手持ちではLボタンとRボタンにそれぞれ振り分けられた「現在の状況」、「現在の設定」画面の呼び出しがRボタンとZRボタンに振り分けられるなど、すべての操作が右手のみで行えるようになる。ちょっとした“ながらプレイ”をするときなどに役立つだろう。

また、左スティック(片手持ち設定のときは右スティック)の押し込みではバックログが閲覧できるようになった……のだが、バックログで読める過去の台詞の行数は能力値のロジック値に依存しており、初期値ではほんの数行しか遡ることができない。ただ、元々議論パートでのやり取りの流れは「航海日誌」で確認できるので、プレイの上での支障はまったくないと言える。ちょっとした遊び心として納得しておこう。

魅力的なキャラクターたちの思惑が入り乱れる“騙し合い”はやっぱり楽しい

そんな、ハードの特徴に合わせたいくつかの仕様変更が加えられたSwitch版「グノーシア」。プレイの快適性は向上しつつ、本質的な面白さはまったく色褪せていない。

個性的なキャラクターたちは、テキストから伺える性格と、議論での立ち回りが一貫していて、プレイを続けていると「このキャラクターがこういう行動を取るということは、何か裏がありそうだ」などと当たりを付けることができる。この「AIによるキャラ付けの補完」とでも言うべき部分が見事で、癖の強い人物が多いものの、プレイを続けているとすべてのキャラクターに愛着が湧いてくる。

グレイタイプの宇宙人のような姿をしている“しげみち”は、気さくで憎めない性格をしているが、議論ではボロを出しやすく、彼の嘘は比較的簡単に見抜ける。しかし仲間想いな面があるので、彼とプレイヤーが一緒にグノーシアになった場合などは、積極的にかばってくれたりと心強い。

逆にキャラクターによってはグノーシア同士であっても自分がピンチになるとプレイヤーに投票してくる場合もあり、油断ならない。グノーシア側のとき、もう少しで勝利できそうな局面で同じグノーシアのオトメから投票され、コールドスリープさせられたときは非常に悔しい想いをした。

議論での立ち回りで可愛そうになってくるキャラクターといえば“ラキオ”だ。尊大で人を見下した物言いが多いラキオは、議論でもほかのキャラクターの反感を買いやすく、疑わしい根拠がなくても票が集中しやすい。あまりにコールドスリープさせられやすいので、ちょっと同情してしまう。

とにかく要注意な人物なのは夕里子で、カリスマ性が非常に高く、彼女に嫌われると一気にほかのキャラクターからも敵意を向けられ、コールドスリープさせられてしまうことが多々ある。夕里子がグノーシアだった場合、彼女の正体を見抜けたあとも慎重に議論を進めなければ追い込むのは難しいだろう。

個性的なキャラクターたちの思惑が入り乱れた騙し合いは、実に楽しい。また、配役の組み合わせや議論の流れなど、まったく同じ展開になることは二度とないため、何度も新鮮な気持ちでプレイできる。敵にまわすと厄介なキャラクターも、協力関係を結べれば心強い味方になってくれる(もっとも、協力者が実はグノーシアで、土壇場で裏切られる可能性もあるのだが……)。久々にプレイすると「そうそう、これこれ!」と、本作の多層的な魅力を、改めて思い出すことができた。

筆者はPS Vita版のプレイ時、なるべく他のキャラクターから敵意を向けられないように「かわいげ」と「ステルス」の能力値を重視して上げていたのだが、今回は「直感」を優先して上げてみた。すると、たとえばエンジニアが複数人名乗り出たとき、どちらが嘘を付いているか分かることが増えたりと、議論が有利になる局面が多くなった。PS Vita版をプレイした方がSwitch版を再プレイする場合、能力値の上げ方を変えてみると、新たな発見があるかもしれない。

Nintendo Switch版「グノーシア」は、現時点での決定版と言える内容になっている。PS Vita版に夢中になった方にも、Switch版のリリースで興味を持った方にも、文句なしにおすすめだ。ぜひプレイして、一癖も二癖もあるキャラクターたちと共に、時間ループの先にあるエンディングを見届けてほしい。

グノーシア

プチデポット

Switchダウンロード

  • 発売日:2020年4月30日
  • 12歳以上対象

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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