「EXOS HEROES(エグゾスヒーローズ)」をレビュー。「VISUALISM PLAY」と銘打たれたそのグラフィック面と、王道JRPGの最先端といえるその内容について紹介する。
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「EXOS HEROES(エグゾスヒーローズ)」は、LINE Gamesから配信されているiOS/Android向けRPG。「VISUALISM PLAY」と銘打たれた通り、最大の特徴はそのグラフィック。美麗グラフィックのスマホゲームは少なくないが、本作のグラフィックはただ美しいだけでなく、本作独自の世界観を醸し出している。正直、グラフィックを楽しむだけでもプレイする価値のある一作だ。一方で、その内容はどうか?本記事でお届けしたい。
飛空艇とドラゴンを巡るトレジャーハンターの冒険
本作の舞台は、7人の騎士団が暴虐の皇帝アコールを倒し作り上げた、エグゾス大陸7国家。主人公であるトレジャーハンター・ゼオンは、自分の村に火をつけ母と妹を殺した仇、レッドスカル飛行団を探して大陸をかけ回っていた。そんな中、とある遺跡で飛行艇を発見するとともに、一匹のドラゴンと出会う。この出会いが元で、彼の冒険は広がりを見せていく。
帝国、トレジャーハンター、飛行艇、ドラゴン…と、並んだ言葉を見てお分かりの通り、本作のストーリーはJRPGの王道といっていい。第一章終盤まで進めばヒロインも合流。物語を通して、冒険と、ボーイ・ミーツ・ガール、強敵とのバトル…という王道の楽しさを味わうことができる。
オーソドックスなコマンド型バトルに戦略性が追加
本作は、ゲームシステムについてもJRPGの王道といえる。ゲームの流れは、挑戦するストーリーを選んで連続バトルをこなしていくというもの。場合によっては、バトルパートの前後にストーリーパートが挿入されることもある。
バトルシステムは、JRPGの王道、ターン制コマンド型バトル。自分のキャラクターのターンが回ってきたら、コマンドと対象を選択。敵を全滅させればバトル終了となる。ただ、これだけで終わりじゃない。本作ならではの要素が用意されている。
バトルにおける本作ならではの要素が、マナだ。マナは、スキルコマンドを使用するために必要となるリソース。一般的なRPGにおけるMP(マジックポイント)やSP(スキルポイント)のようなものだ。ただ、一般的なMPやSPが「満タンからスタート」するのに対し、本作のマナは、「ゼロからスタート」する。戦闘開始時のマナはゼロ。そこから、各キャラクター毎に設定された条件を満たすことで増えていく。たとえば、主人公であるゼオンは敵を攻撃することでマナがアップ。一方、序盤で仲間となる整備工、グレンは敵の攻撃を受けることでマナがアップしていく。
マナと並んでバトルの特徴となっているのが、守護石。敵キャラクターはそれぞれ守護石と呼ばれるものを持っており、守護石と同じ属性で攻撃すると、「ブレイク」状態になる。「ブレイク」状態になった敵は行動不能になった上、防御力が著しくダウン。なので、パーティーキャラクターの属性と、敵キャラクターの守護石の相性をよく考えて攻撃する必要がある。
そして、マナや守護石といった要素のおもしろさを支えているのが、画面下に表示された行動順。ここを見ることで、全キャラクターの行動順を把握することができる。これによって、いつスキルが使用可能になるのか?貯まったスキルをどのタイミングでいつ使うべきか?どの敵をブレイクするべきか?…といった戦略的な行動がとれるようになっているのだ。もちろん、ザコが相手なら、戦略的に行動せずとも問題ない。しかし、強敵が相手の場合、戦略的に行動しないと苦戦するようなバランスになっており、考えて戦う楽しさを味わわせてくれる。
ところで、「挑戦するストーリーを選んで連続バトルをこなしていく」と書いたが、ストーリーを選ぶといっても、本作の場合、ストーリー一覧からストーリーを選ぶような形ではない。絵本を思わせる2Dマップが用意されており、ストーリーの用意されたポイントまでマップを移動する必要があるのだ。実際にはストーリーポイントまでショートカットできるボタンも用意されているのだが、ストーリーポイントにこだわらずマップを自由に移動することも可能。マップから世界の広がりを感じられるような作りになっている。
原画が動く!?美しいだけじゃなくオリジナリティの高いグラフィック
さて、ここまで本作のゲーム内容について紹介してきたが、いよいよ本作のメインと言える、グラフィックについて触れよう。メインだったら最初に紹介すればいいのにと感じた人もいるかもしれない。しかし、本作のゲーム内容とグラフィックは密接に結びついている。というのも、本作のグラフィックの美しさもまた、王道JRPGの延長線上にあるからだ。
本作のグラフィック確かに美しい。ただその美しさは、3DCGが得意とする写実的な方向ではない。さらに、「ギルティギア」シリーズのようなアニメ的なものでもない。タッチとしてはアニメ的なのだが、そこにあるのは、筆のタッチが感じられる、イラストレーション的な美しさだ。
本作のストーリーパートは2パターンの表現が用意されている。ひとつは2Dのイラストレーションを使ったノベルゲーム的表現。もうひとつは3DCGを使ったムービー的表現だ。そして、注目して欲しいのがこの2つの表現の差。通常、2Dイラストレーションを元に3Dモデルを起こした場合、多少は印象の違いが生まれる。しかし、本作の場合この差が非常に少ない。極めて忠実に原画を3DCG化しているということだ。
原画に忠実な3DCGを特に実感できるのが、3DCGムービーでのキャラクターの表情だ。冒頭の飛行艇墜落シーンで見せるゼオンの表情など、2Dマンガの1シーンをそのまま切り出したよう。こうした表情によって、キャラクターの個性が豊かに表現されている。
2Dの魅力を最大限表現した、本作の3DCG。これぞ、王道JRPGの世界を表現する上で最適の表現なのではないだろうか。というのも、JRPGというのは、マンガやライトノベルと並んで、さまざまな文化を貪欲に取り込んで進化してきた表現形式だからだ。
最近は海外でもJRPG的な世界観のゲームが作られているが、海外産のRPGの多くは、たとえファンタジーであっても、中世ヨーロッパの文化を忠実に引き継いでいる。JRPGも基本的には中世ヨーロッパの文化をベースとしているが、忍者やヨーロッパ以外の神話、さらにはSFに至るまで、楽しいものは何でも貪欲に取り込むというスタイル。このスタイルは、そもそも剣の魔法のファンタジーが日本の文化ではないからこそ、できたことだろう。そして、だからこそ、他にないJRPGの魅力が生まれたのだ。
そして、最初に書いた通り、「楽しいものは何でも取り込むスタイル」はJRPGだけでなく、マンガやライトノベルといった娯楽が共通して持っているスタイルでもある。だからこそ、筆者としては、JRPGと2D的表現との相性がバツグンであるように思うのだ。
JRPGの進化の最先端!一度はプレイする価値がある
本作はJRPGという切り口でプレイした時に、最先端に位置する作品だ。美麗なグラフィック演出を観るだけでもプレイする価値はあるし、RPGファンとしてはJRPGの最先端に触れるという意味でもプレイする価値があると思う。この記事の画像を見て「カッコいいな」と思ったら確実に楽しめる作品なので、是非一度触ってみてほしい。