iOS/Android向けタクティカル・ローグライトゲーム「Crying suns」をレビュー。ゲームとしてだけでなく、SF作品としても魅力を発揮する一作。その魅力を紹介する。

目次
  1. ローグライク?ローグライト?タクティカル・ローグライトゲームとは
  2. 銀河帝国壊滅の原因を探り人類を救え!
  3. 星系を移動し惑星を探索!トレジャーハントの面白さ
  4. 王道的な戦略要素を抑えたバトル
  5. 銀河帝国滅亡の裏に何が隠されているのか?SF作品としての魅力
  6. 興味があるなら買い!ゲームとしてSF作品として優れた一作

「Crying suns」はORENDAが配信を開始した、iOS/Android向けタクティカル・ローグライトゲーム。2019年にSteamで配信されていた英語版が大幅にアップデートし、完全日本語化された。壊滅した銀河帝国の謎を解明して人類を救うべく、宇宙艦隊の指揮官として宇宙を旅するSF作品だ。これだけ聞くと、「よくあるSFか」と思うかもしれない。何せ、筆者もプレイ前にそう考えたくらいだ。しかし、ちょっと待って欲しい!本作、見逃すのは惜しいレベルの傑作なのだ。その内容をこれから紹介しよう。

ローグライク?ローグライト?タクティカル・ローグライトゲームとは

タクティカル・ローグライトゲームという本作のジャンル名に聞き馴染みがないという人も多いだろう。だが難しく考える必要はない。要するに、ランダム性のあるダンジョンに繰り返し挑みキャラクターを強化していく、いわゆる「ローグライク」ゲームに、リアルタイムストラテジー(RTS)的なタクティカルバトルを組み合わせたものだ。

ちなみに、「ローグライク」というジャンルは、本来原作である「ローグ」を再現したような作品に使われるジャンルだ。本作のように「ローグライク」の要素を持ちつつも、独自に進化・発展させたゲームジャンルは「ローグライト」。そこで、この原稿でも基本的に「ローグライト」を使うことにする。

銀河帝国壊滅の原因を探り人類を救え!

本作の主人公は、銀河帝国史上最高とされる提督「エリス・アイダホ」のクローン。700年に繁栄した銀河帝国だったが、ある時壊滅してしまう。プレイヤーの目的は「エリス・アイダホ」のクローンとして、この壊滅の原因を探り、人類を救い出すことだ。

銀河帝国の滅亡がなぜ人類の滅亡に繋がるのか?…その理由は、銀河帝国が作り出したロボット「OMNI」にある。帝国の長い歴史の中で、「OMNI」は人類のあらゆる活動をサポートしてきた。それはつまり、人類があらゆる活動を「OMNI」に依存してきたということ。そんな「OMNI」が、同時シャットダウンしてしまったのだ。人類がこの先も生存するためには、「OMNI」の再起動が必要。それには、銀河帝国の技術が必要…というわけだ。

星系を移動し惑星を探索!トレジャーハントの面白さ

提督としてプレイヤーが行うべきことは、移動と探索、そして敵とのバトル。移動は大きく、星系の移動と、惑星間の移動に分けられる。ひとつの星系に複数の惑星が含まれており、基本的には星系内の惑星を調べ尽くしたら、次の星系へと移動する…という形だ。なお、ローグライトらしく、星系や惑星はプレイの度に自動生成される。

惑星には地上に降り立てるものと、そうでないものがある。地上に降り立てる惑星には、クルーを送って探索することが可能だ。探索させれば、アイテムゲットが見込めるものの、クルーの死亡というリスクもある。プレイヤーはクルーから上がってくる報告を見守り、アイテムゲットを優先するか、クルーの保護を優先するかという選択を行わなければならない。トレジャーハントの面白さというローグライトの魅力が凝縮された部分だ。

地上に降り立てない惑星でも、基本的に何らかのイベントが発生する。惑星に住む人類から銀河帝国滅亡に関する情報を手に入れたり、取引によってアイテムを手に入れたり。もちろん、銀河帝国に敵対的する組織「スクラッパー」と遭遇し、バトルになることもある。

「スクラッパー」とのバトルに勝利するためには、「スクラップ」と呼ばれる資源をゲットし、艦を強化していく必要がある。そのためには、惑星の探索や、取引イベントが重要だ。ただ、星系を移動するにも、惑星間を移動するにも、「ネオン」と呼ばれる資源を消費する。なので、星系や惑星をシラミ潰しに探索するというわけにはいかない。しかも、「スクラッパー」達は、プレイヤーが星系から星系へジャンプする際の信号を感知し、追跡してくるのだ。移動ひとつとっても、プレイヤーの判断が試される。

王道的な戦略要素を抑えたバトル

「スクラッパー」とのバトルが発生すると、戦闘シーンに切り替わる。戦闘シーンは、ターン制ストラテジーのように六角形のマス「ヘックス」で区切られているが、進行はリアルタイム。つまり、RTSだ。プレイヤーは、母艦に搭載している艦載機への指示と、母艦が装備する兵器への指示を行う。

RTSでいうところのユニットにあたるのが艦載機。ファイター、ドローン、フリゲート艦…などの種類があり、ファイターはドローンに強く、ドローンはフリゲート艦に強く、フリゲート艦はファイターに強いという相性が設定されている。このため、敵に有利な艦載機を繰り出すというのが基本的な戦術だ。だが、一度に出撃可能な艦載機の数には限りがあるし、出撃中の艦載機を母艦へ戻す際にはタイムラグが発生する。なので、どの艦載機を出撃させるか?と同時に、出撃中の艦載機をいつ入れ替えるか?も重要だ。

母艦が装備する兵器を使うと、敵艦載機や敵母艦への直接攻撃が可能だ。ただし、兵器の使用にはクールタイムが発生するため、連発はできない。クールタイムが完了次第すぐ発射しトータルダメージを上げるか?それとも、味方艦載機がピンチになった時の切り札として取っておくか?艦載機の入れ替えと同様、こちらも使用タイミングが重要となる。

RTSといってもマップは小さく、ユニット数も多くないので非常にシンプル。しかし、艦載機の入れ替えタイミングや兵器の入れ替えタイミングなど、「いつ何をするのがベストか?」という王道的な戦略要素が手堅く押さえられているので、プレイしていて楽しい。

銀河帝国滅亡の裏に何が隠されているのか?SF作品としての魅力

ローグライトのおもしろさと、RTSの王道的なおもしろさをキッチリ押さえた本作。しかし、筆者がトリコにされたのはこれらの要素以外の魅力にある。それは、SF作品としての魅力だ!

SF作品としてどこがそんなに魅力的かといえば、まずグラフィック!「え?そんなに美麗?むしろ地味じゃない?」…スクリーンショットを見てそう思った人もいるだろう。確かに静止画を見る限り、丁寧に描かれていることは分かっても、ド派手な美麗さは感じないかもしれない。それもそのはず、本作のグラフィック的な魅力は演出にあるのだ。

たとえば、イベントシーン。このシーンは、母艦のブリッジから宇宙を見ているという構図で、プレイヤーが担当する提督をはじめ、クルーの面々が集っている。もうお分かりだろう。これすなわち、SF的カッコいいシーンなのだ!このブリッジから宇宙を見るというシーンは、映画、アニメなど様々なSF作品で描かれてきた。こうした作品を観る度、自分もクルーとして…いや、司令官としてこの場にいたなら…と妄想していたのは筆者だけではあるまい。

そして特筆すべきは、惑星から惑星へ移動したり、星系から星系へワープしたりといった際、この母艦ブリッジの構図できちんと演出してくれること。これ重要!この演出と、ローグライトならではの「次に何が起こるかわからない」「場合によっては全滅する可能性も高い」といった要素が融合し、SF作品的な臨場感が恐ろしく高くなっている。

昔で言えば「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」、最近で言えば「彼方のアストラ」、王道でいえば「スタートレック」。こうした宇宙探索モノの傑作SF作品を観て、未知の宇宙に対する恐怖や孤独感、さらには好奇心といったモノを感じてワクワクドキドキじなかっただろうか?筆者が本作をプレイした時味わった感覚は、まさにコレ。本作のグラフィック演出とローグライトというゲーム性が、傑作SF作品の感覚を味わわせてくれたのだ。

ここに加えて、ストーリーもイイ。たとえば、主人公がクローンという設定。ローグライトでは、ゲームオーバーを迎えた際、再び最初からプレイする。ゲーム的には特に問題がない、当然の話だ。しかし、ストーリーとしてまともに捉えると、「一体どうなってんだ?」という話になる。特にSF作品では、設定的な裏付けが重要だ。この点本作の主人公はクローン。ゲームオーバーになると、新たなクローンが起動され、再び旅へ出ることになる。何の違和感もない。さらには、初回プレイ時のチュートリアルや、背景設定を説明していく下りも、クローンに記憶がないという形でこの上なく自然に行われる。

もちろん、これだけだと、ただ「ゲーム的な都合」を設定で上手にフォローしているだけに見える。しかし、どうやらローグライトというゲーム性が生む周回プレイは、ストーリー的にさらなる意味を持っているようだ。というのも、ストーリーの中で、クルーの一部が何度も死ぬ記憶というを持っていることに触れられる。つまり、クローンは繰り返す死を認識しているようなのだ。

さらにこのことは、クローンたちが感情にまつわる記憶を失っているという現象に絡めて語られていく。筆者はまだ最後までプレイしたわけので、この設定がストーリーとしてきっちり回収されるのかどうかはわからない。しかし、現時点での感触だと、十二分にストーリー的な謎として語ろうとしているように感じられる。このため、上質なSF作品をプレイしているような感覚が味わえるのだ。

興味があるなら買い!ゲームとしてSF作品として優れた一作

本作は買い切り型として提供されており、価格は1,100円。コンシューマーと比べれば十二分に安い金額だが、「失敗してもいい」という前提で買うには悩む金額だろう。だが安心して欲しい。本作はローグライト作品として、そしてSF作品として、とても優れた一作だ。

難点としては、難易度がやや高いところと、スマートフォンで見ると文字が小さめなことくらい。ただ、難易度については攻略のおもしろさに繋がっている部分でもあるし、文字は読めないほど小さいわけではない。興味を持っていたなら、あるいはこの記事で興味を持ったなら、プレイしない手はないぜ!

Crying suns

ORENDA

iOSアプリiOS

  • 配信日:2020年6月26日
  • 価格:1,100円(税込)

    Crying suns

    ORENDA

    AndroidアプリAndroid

    • 配信日:2020年6月26日
    • 価格:1,100円(税込)

      ※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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