スカシウマラボが制作したスマートフォン向け推理アドベンチャー「和階堂真の事件簿 - 処刑人の楔」をレビュー。1980年代という舞台を最大限活かしたその魅力について紹介する。

「和階堂真の事件簿 - 処刑人の楔」は、スカシウマラボが制作したスマートフォン向け推理アドベンチャーゲーム。首が切り落とされた連続殺人という猟奇的事件を解決する本格ミステリー作品だ。

本作はインディーズゲームではあるものの、その内容の出来から、話題を集めている。しかし、ノーマークだったという人もまだまだいることだろう。そこで本記事で詳しく紹介したい。

1980年代を舞台にした猟奇的殺人事件に挑む

老刑事が孫に昔話を語るというシーンから本作は幕を開ける。舞台は現代ではなく、1983年。首なし死体が電柱にぶら下げられるという…ショッキングな事件が発生。さらに、死体のそばには血でシンボルマークが描かれていた。非常に猟奇的な殺人事件だ。

この事件に挑むのが、主人公である和階堂真警部。彼の武器は、地道な聞き込み捜査と推理。プレイヤーは和階堂を操作し、手がかりの獲得と事件の推理を行っていく。

レトロな世界を快適に楽しませてくれるモダンなゲームシステム

1980年というレトロな時代を、粗めのドットで描いているため、本作は全般的にレトロな雰囲気が漂っている。しかし、ゲームシステムまでレトロなわけじゃない。本作のゲームシステムはアドベンチャーゲームとして比較的モダン。「逆転裁判」以降取り入れられることが多くなっていった、「探索」と「推理」を分けるスタイルが取られている。

プレイヤーは画面をタップし、情報を集めていく。人や探索ポイントをタップするとさらにコマンドが表示され、聞き込み内容や探索箇所を選ぶことが可能。

聞き込みや探索によって獲得した情報は、「Memo」アイコンから装備することができる。装備している情報によって、人や探索ポイントで表示されるコマンドは変化。当然、情報を装備することでしか聞き出せない情報も存在する。単純にタップしたら情報が手に入るというわけではなく、プレイヤー自ら考えなければならないわけだ。このため、事件へ能動的に関わっている感覚が味わえる。一度聞き込みが終わり、情報を装備して再び聞き込みを行うため、筆者はなんとなく刑事コロンボをイメージしてしまった「あ。そうそう、うちのかみさんがね…」というヤツだ。

基本的に本作は探索を繰り返して新たな情報を獲得…という形で進行していくが、この進行を支えているのがモダンなシステムたち。まず、ゲーム上訪れる場所や、その場所の構造は、一部を除いて「左から右へ移動する」というスタイルで貫かれており、極めて迷いにくい。また、進行上獲得しなければならない情報の数は明示されており、あと何個獲得すればよいかわかるようになっている。獲得しなければならない情報をすべて獲得すると、画面上部に「推理」というアイコンが出現。推理シーンへ進行する。

推理シーンでは、その時点での事件の主要な疑問が提示され、プレイヤーは獲得した情報を使って疑問に回答していく。すべて正解することで、次に行うべき行動の方針が見えてくる…という格好だ。プレイヤーに捜査や推理している感覚を与えつつ、同時に、迷ったり行き詰ったりしないよう誘導していく仕組みが見事だと感じた。

レトロな世界観設定にもたされた意味

本作のシナリオ面で注目したいのが、1980年代という舞台設定。ここには二重三重の仕掛けが施されている。そのひとつは、ドット絵…ピクセルアートとの親和性。本作のアートスタイルであるピクセルアートと、1980年代という時代設定は相性バッチリ。「ゼビウス」全盛の時代なのだから、言うまでもない。

筆者が1980年代を強く感じた場所は、本作に登場するバー。…といっても、1980年代の筆者はまだ小学生だったのでバーに入ったことはない。けど、小学生のころプレイした「ポートピア連続殺人事件」や「オホーツクに消ゆ」などのアドベンチャーゲームでは聞き込みの場所としてよくバーが描かれていた。なので、ドット絵でバーが描かれていると、どうにも昭和をイメージしてしまう。

また、ピクセルアートであることは、残酷表現の緩和という面でも意味を持っている。スマートフォンのアプリとしてゲームをリリースする場合、本作で描いた「首切り殺人」については、リアルに描いてしまうと審査を通過できるかどうか危ういラインだ。年齢設定を引き上げることでGoogleはなんとか通過するかもしれないが、App Storeは年齢設定を引き上げても審査通過しない可能性がある。この点、ピクセルアートだからこそできた残酷表現ともいえるだろう。

そして、レトロな世界観が持つ2つめの仕掛けは、本作で描かれる「首切り」に絡むもの。ミステリーにおいて「首切り」が行われる目的は、たいてい被害者の身元を隠すためだ。顔があれば身元の特定は容易だし、歯形による特定もできる。ただ、DNA鑑定などの現代の科学捜査をもってすれば、首がなくとも身元の特定は可能だ。この点について本作は「1980年代はまだ科学捜査が本格的でなかった」という形でエクスキューズしている。もちろん、「指紋は?」など、ツッコミどころはあるのだろう。しかし個人的には、乱暴さはあれど、このエクスキューズによって最低限のリアリティラインは保たれているように感じた。

最後に、レトロな世界観が持つ3つめの仕掛けが、「回想である」ということ。細かくは触れないが、本作において和階堂真の「回想である」ということは強い意味を持っている。

プレイしないのはもったいない!ミステリーゲームとして秀逸な作品

ここまで触れた通り、本作は1980年代という世界観をビジュアル面、シナリオ面で最大限に活かした作品だ。筆者はアドベンチャーゲームである前にミステリーとして秀逸な作品だと感じた。それが無料。無料だから広告表示こそ行われるが、それも推理に失敗した場合のみとなっており、スマートな見せ方だと思う。推理ゲーム好きならプレイしないのはもったいないぞ。

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