コーエーテクモゲームスより2020年12月3日に発売となったPS5/PS4/Nintendo Switch/PC(Steam)用ソフト「ライザのアトリエ2 ~失われた伝承と秘密の妖精~」(Steam版は2021年1月26日発売予定)。本作のプロデューサーを務める細井順三氏へのインタビューをお届けする。
――「ライザのアトリエ」発売後、どのように「ライザのアトリエ2」の開発に着手していったのかをお聞かせください。
細井氏:「ライザのアトリエ」では「アトリエ」シリーズとしては新しいことにチャレンジしていて、ユーザーさんからのフィードバックは概ね好評でした。ただ、綺麗なフィールドなのにアクセスできるところが少ないといったご意見については、次回作では改良しなければいけないと感じました。
また、キャラクターを好きになっていただく上で、少しボリュームが少なかったのかなという部分も反省点としてありましたので、その点にも手を入れようと考えました。1作目を経ての2作目ということもあり、ボリュームや諸々のクオリティをスケールアップさせるというのが、本作の開発における目標でした。
一方で、作品のコンセプトは大幅に変える必要はないと思っていて、仲間たちとひと夏を過ごすことによってかけがえのないものを手に入れる、という1作目のコンセプトは確実に踏襲したいと思っていました。その上で、新たな土地へ行ってその土地の伝承に触れることで、ライザの世界をより拡張していく、という新しいテーマも掲げていきました。
――前作のインタビューでも少し仄めかす表現がありましたが、ライザを再び主人公に据えることは当初から考えられていたのでしょうか?
細井氏:2019年の7月くらいには私の中で、ライザを主人公とした作品をもう1度作ってみたいという思いがありました。1作目の企画書の段階で、同じ主人公で展開するシリーズにしたいというのは、鯉沼(※)とも話をしていたんです。ただ、1作目の結果次第で、ライザがユーザーさんに受け入れていただけるかどうか、という部分が重要でしたので……。7月あたりにはユーザーさんたちの反応も伝わってきて、再びライザを主人公にすることを判断しました。
※コーエーテクモゲームス 取締役社長の鯉沼久史氏。2019年当時はガストブランド長も務めていた。
例えば「不思議」シリーズであれば、大きな括りの中で4人の主人公(ソフィー、フィリス、リディー&スール)がバトンをつないでいく、というのが今までの流れで、かつそういう部分が受け入れられて新鮮味も保たれていたと思うのですが、昨今では新しいキャラクターを主人公にした時に、あの主人公のほうが好きだったとか、この主人公のその後をもっと見てみたい、といったご意見がすごくありました。
そうした流れもあって、「ライザのアトリエ」の段階からチャレンジしてみたかったんです。皆さんが好きになってくれた「ライザ」というキャラクターの人生をメインに続けていくことによって、ユーザーさんたちからどういった反応があるのかは、すごく見てみたいです。それをライザを通じてやってみたかったというのも、「ライザのアトリエ2」を作る上で大きかったですし、私としては、これが「アトリエ」シリーズとしてのひとつの拡張の形だとも思っています。
シリーズって、“お約束”を守ることもすごく重要ですが、それだけに縛られると、コンセプトがどんどんシュリンク(収縮)していってしまうと思うんです。当時は新しかったとしても、シリーズを重ねるごとに摩耗していく部分があるというか。「アトリエ」シリーズであれば、たとえばイラストレーターさんが変わったり、世界設定を2~3作で変えたりすることが新鮮さにつながっていましたが、この新鮮さをさらに拡張していきたいと考えたものが「ライザのアトリエ2」になります。
前年度に発売された「ルルアのアトリエ ~アーランドの錬金術士4~」についても同様で、これまで3作とか2作と言われていたシリーズを拡張して、4作目を作るという1つの取り組みでした。また、「ネルケと伝説の錬金術士たち ~新たな大地のアトリエ~」もどちらかといえば街作りがメインで、今までのシリーズと比べると調合は簡素。これも「作る」ことは同じでも、「何を作る」かで、フィーチャーしているものの違いなんです。私が近年やってきたことは、「アトリエ」シリーズとしての新機軸の模索であり、その中の一つとして「ライザのアトリエ」も進行していました。
――前作から3年後を描くということで、キャラクターも成長した姿で登場します。これまでのシリーズでもキャラクターの成長した姿を見ることはできましたが、本作ではそれをメインに描くということで、どのような意識を持たれたのでしょうか?
細井氏:私としてはライザをはじめ、クラウディア、レント、タオの4人は続投させたいと思っていました。「ライザのアトリエ」のときの4人はまだ人として未完成で、自分が何をしたいのか分からないという状態から、最後には「自分はこうなりたい」と思うようになり、それぞれの道を歩むことになりました。
ライザであればいろんなことをやるとみんなと約束するわけですが、その約束を果たそうとするなかで挫折を経験することもあったと思います。ただ、挫折があったからこそ、さらに成長するためにいろいろな方法を模索したり、あがいたりすることになるので、そうした葛藤というか成長の過程をその4人で表現したかったんです。
前作とは状況も違いますし、幼馴染それぞれの環境も変わっているわけですが、その中でも4人がまた出会うことによって、当時の自分を思い出したり、今の自分と当時の自分、今の幼馴染を対比したりと、良くも悪くもさまざまな影響を受け合って、より豊かな人生を歩んでいくというものを、もう一度描きたかったんです。
――これまでのキャラクターは分かりやすい成長曲線を見せてきたと思うんですが、今作ではその描写にもより深みがあるということでしょうか?
細井氏:今作に関しては、ライザの物語であると同時にほかのキャラクターたちの物語でもあるので、人間臭さを出せるようにしたかったんです。
みんないろんな思いはありつつも、あの当時を思い出して、またひと夏の冒険に関わっていくわけですが、クラウディアに至っては、この冒険が最後になるかもしれないからライザと一緒にいたいという感じなんです。一旦は集結するけれど、そこから先のそれぞれの道はきっと同じではないだろうと感じているからこそ、想いを吐露したり、悩みがあったりといった部分を描けるのかなと思います。
――成長したキャラクターたちのデザインについては、どのようなコミュニケーションで構築していったのでしょうか?
細井氏:もともとトリダモノさんとは、ずっと長野と東京でやり取りをしていて、たまにお会いするときもありました。今回は新型コロナウイルスの影響もあって、毎日7~8時間ぐらいオンラインで話をしながら、ギリギリまで詰めていきました。
「アトリエ」シリーズで主人公が続投するのは初めてのことでしたので、答えがないんです。別に主人公がいて、プレイヤーキャラクターとして登場するというかたちであれば、これまでも経験があるので変化をイメージできるのですが、今回に関してはどの程度変化させるべきなのか、納得できるラインがどこなのかという、私たちとしての答えがずっと分からないまま進んでいきましたね。
設定としても最初は「クーケン島での冒険から3年後のライザ」くらいしかありませんでした。でもそのライザ自身も、前作の冒険の終わりに約束したことを守ろうとがんばって努力して成長してきた結果の3年間なので、さらにそこから劇的に影響を受けることもないと思うんです。かつては悪童、今は島で先生っぽいことをしたり、日々錬金術の修行をしている。そうした環境の中でいきなりライザがドレスを着ていたら、絶対にマッチしないですし、キャラクターデザインの理由付けにしかならないと思うんです。
ですので今回はトリダモノさんともお話しして、3年というところに着目して、クーケン島にあっても違和感がないディテールを追求してデザインしていきました。
細井氏:タオは本を読んで知識を蓄えたりするのが好きでしたが、王都に行ったことで都会というものを知り、服装もガラッと変わっています。元は良いとこの坊っちゃん風でしたが、都会に出て刺激を受けた結果、垢抜けた感じのデザインになっています。
――レントはこういう方向で来たかと思いました。
レントに関しては、前作の後は目標がフワッとしていて、きっと道に迷うよねと(笑)。強くなるのは良いけれどその後はどうするのか、というところもあったので。自分以外の誰かが一緒にいるから認められたりするわけですし、誰かが悩んでいるから何かをしたいという気持ちになると思うんですが、そうした人との関わりが必ずしも良い方向にいかないこともあると思っていて。おそらくレントだったらそういう道を歩むんだろうなと思いました。人を助けることは必ずしも良いわけではなくて、良かれと思ったことが勘違いされることもありますので、スレてきたような感じを表現したいと思いました。
――今回の新キャラクターであるパトリツィア、クリフォード、セリのキャラクターコンセプトについてもお聞かせください。
細井氏:パトリツィアに関しては都会の女の子で、ライザと対比するようなキャラクターにしたかったんです。ライザは田舎出身で都会に慣れていない感じで、ファッションとかもオシャレしているつもりでも大してオシャレじゃないみたいな。逆にパトリツィアは、ピンクだったり、アジアの文化が流入してきているような和装だったりと、ファッションに敏感なところを表現しています。
また、1作目ではみんなの目的が同じ方を向いていましたが、パトリツィアに関しては、最初は違う目的で行動をともにするものの、最終的には仲間として共感していくというところを描きたかったんです。これも一つの青春で、例えば「全然興味ないけど、可愛い子がいるからこのサークルに入っておくわ」みたいな(笑)。それで入ってみると、いつの間にか没頭しちゃってる、みたいな感じなんですよね。
クリフォードはトレジャーハンターとして生きてきた中で、青春っぽさを味わうことなく、あえてそういうものを避けてきたフシがあります。それが、自分の目的を達成するためにライザたちと冒険するうちに、そのひと夏で青春を感じて仲間たちと共鳴していくキャラクターです。
大人になって働いていても、青春を感じるタイミングっていつでもあると思うんです。私が思う青春って、チームで何かひとつのことを成し遂げることで、クリフォードを通じてそれを描きたかったんです。
セリに関しては、オーレン族という1作目のリラと同じ異界の出身ですが、その設定をもっと拡張させるために加えたキャラクターになっています。
――王都アスラ・アム・バートは前作のクーケン島からは打って変わった、まさに都会な雰囲気ですが、どのようなコンセプトだったのでしょうか?
細井氏:1作目では田舎の閉鎖的な雰囲気を出したかったんですが、今作では田舎から出ることによるカルチャーショックを経験した時にライザがどう思うのか、というところからスタートしています。変わらない部分も変わる部分も含めて、ライザがどういうふうに成長していくかを見たかったので、舞台を都会にしました。
――田舎と都会というところで街並みなども大きく異なりますが、ビジュアル的な違いとして意識した点はありますか?
細井氏:もともと「ライザのアトリエ」は日本を土台にしたファンタジーなのですが、王都に関しては都会だとしても、文化が流入している発展途上の街並みにしたかったんです。
学園区はお金持ちが多いところですごく整備された街並みにしています。それに対して職人区は、必死に稼ぐ商人な労働者が多いところ。中央区についてはいろんな文化が流入しているアジアンな雰囲気、農業区に関しては雰囲気のよい公園に近い感じですね。
いろいろな文化が混ざり合って、それをうまく昇華していくところが、私の感覚からするとすごく日本ぽいんです。だから建物のかたちとかは似ていますけど、一切区画統一がされていなくて、各区画の土台にあるものは文化自体が違っていたりするんです。
――今回は建物自体の高さも違いますし、クーケン島とは光の表現も結構雰囲気が変わるなという印象でした。
細井氏:建物があるところと建物がないところだと全然空気感が違うので、ライトの色も結構調整しています。区画ごとに影のあたり方も違うかなと思います。
――調合システムは比較的変更点の少ない部分かと思いますが、どのような点を意識したのでしょうか?
細井氏:前作のリンケージ調合がとても好評だったので、そこに選択の幅を広げたいなというところで「エッセンス」というアイテムを加えて拡張したかたちです。また、「エボルブリンク」という、完成したアイテム同士を掛け合わせることで新しいアイテムができたり新たな効果をつけられるという仕組みによって、アイテムの幅を広げました。
戦闘の話になってしまうのですが、1作目の時、アイテムを作ったものの、戦闘での使用価値が下がったというご意見などがありました。我々としてはCC(コアチャージ)を入れることで気兼ねなくアイテムを使えってもらえると思っていたんです。いざフタを開けてみたら、アイテム自体は消費しなくてよいものの、使い所の重要度が高くなりすぎて気軽に使えなくなってしまったんですね。
――長期的にフィールドを探索しようと思うと、アイテムの使い所はすごく悩んじゃいましたよね。
細井氏:アイテムを使ったらなくなる消費型にするのであれば、「このタイミングでこれだけ使えばOK!」という感じで運用できたのですが、ユーザーさんからのフィードバックによって、CCにしたことでアイテムは消費されなくてもCCを使ってしまう。それを気にしていたら結果的にアイテムを使わなかった、ということがすごくあるなと思ったんです。
そこで今回は、クイックアクションを無くしてクイックアイテムにすることで、戦闘時におけるアイテムの価値をストレス無く上げるようにしました。今回はガンガンスキルを使っていけばそのままアイテムを使えるようになっています。
――むしろアイテムを使わないと、立ち回りは難しくなりそうですよね。
細井氏:実は回復スキルをほとんど用意していないんですが、スキルで攻撃を与えてそこからさまざまなアイテムを活用していく、ある種アイテムが魔法のような立ち位置になっているんです。今までの「アトリエ」ってメンバーのスキルに必ず回復スキルがありましたが、今回はスキルを攻撃に振り切っています。
――そういう意味で、今回はアイテムの運用がすごく楽しいです。
細井氏:前作ではタクティクスレベルを上げるためにAPをあえて温存するといった、APの使い所を吟味する部分が大きかったゲームなんです。その仕組みはけっこう好きなのですが、やはりストレスに感じられるユーザーさんも多くいらっしゃったんです。ですので今回は、よりアグレッシブにできて、アイテムの価値も飛躍的に上げられるような戦闘になったという感じです。
ただ、ベースのシステムとしては前作と同じで、通常攻撃からスキルにつなぐことが王道なのですが、それをやらなくても全然問題のないバランスになっています。
――タクティクスレベル自体が自動で上がる仕様になったのと、スキル自体も連続して繋げられるようになる「スキルチェーン」という仕組みも入りましたよね。
細井氏:最初は通常攻撃からスキルチェーンはできない想定だったのですが、トリダモノさんから「これ繋げないとおかしくないですか?」というお話があって。確かにそうだ!と思って、追加仕様で入れました。
――そうした要素もあって、スキルやアイテムをバンバン使える戦闘システムになっているなと。
細井氏:正にそれをやりたかったんです。「ライザのアトリエ2」の戦闘ってベースはターン制なんですけど、アクションゲームのように見えることを意識して作っています。今までのターン制RPGのようにお決まりの流れになってしまうのが嫌だったんです。
――前作を触った時には未完成のシステムだなと感じたので、フィードバックを得てしっかりと変わっているのが印象的でした。
細井氏:我々としても初めてのバトルシステムだったので答えが無かったんです。当時はあの形が我々としての完成形のひとつだと思っていたのですが、ユーザーさんにフィードバックをいただいた結果、よりストレスの無いかたちに進化させることができたと思っています。1作目は守りに近く、今作は攻めに近いバトルになっています。
――調合の話に戻るんですが、錬金レベルが本作で無くなっていて、「スキルツリー」によってレシピを解放する仕組みになっていることには驚きました。もちろん、ゲーム内の設定としてはちゃんと理由付けはされているのですが。
細井氏:スキルツリーを採用した理由は、自由度を広げるためです。前作はゲームとして寄り道ができるような自由度はありましたが、リニアにストーリーが繋がっているがゆえに、それ以外の部分については固まっている部分が多かったとも感じていました。ですので、よりユーザーさんによって違う選択肢を選べるように拡張しようというのが、今回のもう一つのコンセプトだったんです。
また、遺跡探究もA(の遺跡)の途中から別のB(の遺跡)に行けるようになっていて、Aのまま行くとクラウディアとクリフォードがいないまま遺跡をクリアします。その方法とは別に途中でBに行って二人が仲間になったあとでAに戻ると、二人が仲間にいる状態で遺跡探究が楽しめるようになっています。
オールフリーな自由度ではないものの、ユーザーさんがある程度自由に考えて遊べるようなものを用意したいと思って、レシピについても変えています。ライザは前作からたくさんの調合をしてきたわけですが、「ライザのアトリエ2」になったからといって、すでに前作で一回学んだレシピを今作でもう一回錬金レベルに応じて学んでいく、というのはどうしても納得できないんですよね。かといって錬金レベルの桁数を増やして最初から100、200、300と増えていくっていうのもなぁ……と。そこで登場したのがスキルツリーです。王都のアトリエは使い慣れた錬金釜じゃないですし、都会で採れる素材も違う。だから新しいレシピを作らないといけないのですが、元々覚えているものなので、スキルツリーで自分の知識を拡張していくというイメージになっています。
――採取におけるフィールドアクションの拡張は、TGSの実機プレイでも拝見して驚かされた要素でした。これまでは空間を活かしたアクションはほぼ無かったと思いますが、こうして実装するに至った理由などをお聞かせください。
細井氏:そこはやはり、ユーザーさんからいただいたご意見にあった、綺麗なフィールドなのにアクセスできるところが少ない、というところからです。今まではフィールドにXYZ軸のXとZしか無かったところに、今回はY軸を加えることで、崖の上や見えていないところにアクセスできるワクワク感を入れたかったんです。
フィールドワークが楽しくなるのが目的の一つで、採取道具に関してもより便利に分かりやすくしていますし、フィールドアクションによってライザの新しい瞬間をいろいろ見られるようにもなっています。フィールド探索の楽しさをユーザーさんに体験していただきたかったというのが大きいです。
でもじつは、ライザはすごいアクションをしているわけではないんですよね。今までのユーザーさんも遊びやすくて、かつ新しいユーザーさんにも楽しんでいただけるようなアクションを目指して今のかたちになったという感じです。フィールドアクションを入れるといっても、操作にテクニックが必要だったり、アクション性が求められるものにはしたくなかったんです。
――個人的には、水中を泳いだり、すき間をくぐったりといった、当たり前のアクションを自然にやっていく感じが楽しめました。これまでの「アトリエ」ではできそうに見えてできないよねという感覚があったので(笑)。
細井氏:そうですね。アクションの追加によって、フィールド探索はストレスが減った部分もあると思います。たとえば、今までは目の前に川があったら、回り道するか戻るかといった選択だったと思うんです。でも今回は川に向かって歩き出せば泳いで渡ることができますから。
――今作では遺跡探究がメインになると思いますが、そちらはどのようなコンセプトで作られたのでしょうか?
細井氏:シナリオのためのただの装置にはしたくないというのがありました。もともとタオが遺跡を好きだというのもあるのですが、遺跡を探索することできちんとライザが知識を得ていくという過程を分かるようにしたかったんです。
絶対に進めなければいけない遺跡探究はありますが、それ以外に関しては自由度を持たせています。今までだとシナリオで進めていたような部分でも、そこに遺跡探究としてのシステムを加えることで、ライザたちが走り回って遺跡を探索して、自分たちで手がかりを見つけて、それをもとに推理をして、かつてその遺跡で起きた出来事を知っていく。そういった一連の体験や遊びを楽しんでいただければと思ったんです。
――このシステムによって、遺跡探索の所々に差し込まれるイベントにも説得力が出ているなと思いました。遺跡探究自体のボリュームもすごいなと思いました。
細井氏:前作は良くも悪くもアンロック条件が一つなんです。そこに関して良かった点と悪かった点の両方が見えましたので、今回は自分たちで苦労して知識を得ていくことでゲームが進んでいくシステムです。
――そうなると、クリア時間も気になっちゃいますね。前作は比較的抑えられている印象でしたが。
細井氏:前作のメインシナリオは完全に独立していたんです。ただキャラクターの掘り下げが物足りないというご意見をいただいていました。そこで今作は、キャラクターイベントでキャラクターたちにフィーチャーする機会を増やしたりしています。
同じ「ライザ」が主人公で、前作も今作も構造としては似ているように見えますが、やろうとしていることは結構違うんです。1作目は新しい世界や新しいシステムでのチャレンジ的な拡張を目指したのに対して、2作目ではキャラクターイベントやシナリオといった従来の「アトリエ」らしい部分を拡張するという進化をしたかったんです。
――主題歌にはクラムボンさんが担当されていますが、起用の経緯などありましたらお聞かせください。
細井氏:もともとクラムボンさんを好きだったのですが、イラストレーターの岸田メルさんとクラムボンのミトさんが仲良しで、ご紹介していただいたのが始まりです。クラムボンさんもぜひ、と言っていただけたのでお願いすることになりました。
本作のために書き下ろしていただけて、すごく嬉しかったです。「ライザのアトリエ」をプレイして書いていただいたので、歌詞もライザに合わせていただいたことが分かるような内容になっています。
――プレイしてもらった上で制作いただけるケースって中々無いですよね。
細井氏:そうですね。しかも、ゲーム内のBGMの奏者の方を主題歌にも起用してくださったりして、愛のある制作をしていただきました。
――前作の反響を得ての今回のプロモーションということで、前作のプランからの変化などはありましたか?
細井氏:根本の考え方は変わっていません。よりスケールのあるプロモーションをしたいというのがありましたので、試行錯誤した結果が今のプロモーションというかたちですね。
――今回も発表から欠かすこと無く、さまざまな施策をされていたのが印象的でした。
細井氏:前作がシリーズいちばんのヒット、今回はその続編で2作目。となるとプロモーションチームはプレッシャーもあったのではないかなと思います。正直なところ1作目ではそこまで注目されるとは思っていませんでしたので、私たちも勢いを意識したプロモーションになっていましたね。
――ユーザーの方々と一緒に盛り上げていくお祭り感みたいなものを前作から感じていて、今作もその延長線上にはあるのかなと思いました。
細井氏:きちんとユーザーさんに、ライザというキャラクターや自信を持ってお届けできるゲームであることを伝えていこう、というコンセプトは変わっていません。2作目という点では、新しいユーザーさんにどう興味をもっていただくかに苦慮しました。結果として、おかげさまで予約も初回出荷も好調で、プロモーションチームがすごく頑張ってくれたと思います。
――今回PS5版もリリースされるというところで、PS5版ならではのプラスに働く点はあるのでしょうか?
細井氏:ネイティブ4Kで出力できるというのと、ローディングが早いという点です。PS5版を出した理由のひとつとして、PS4版から追加費用なしでPS5版へのアップグレードができるということでしたので、ハードの変革期に少しでもユーザーさんにメリットがあるのであれば出したいと思ったのが大きいです。
――最後になりますが、これからプレイされる方に向けて、本作の見所などを改めてお聞かせください。
細井氏:ユーザーさんとライザたちの目線は同じだと思っています。久しぶりに会った友達はあの頃と何も変わらなくて、一緒に冒険をして一緒に青春を味わっていくような作品になっています。ライザの楽しかった思い出は変わらずに進化しているので、ぜひふらっと遊びに戻ってきていただければなと。それはライザやクラウディアたち幼馴染が再会するような感覚ではないかと思います。
何を感じてもらいたいかということを仰々しくお伝えするつもりはないですが、何かに取り組んでいて何かに熱中している時がその人の青春で、人生で一度きりではなく何度でも繰り返せるものであると思っています。挫折してもなにかのきっかけで前向きになることもありますし、そういうものを描きたくて完成したタイトルです。
メッセージ性も重要だとは思いますが、最終的にはとにかく楽しく遊べるかだと思います。我々としては、プレイし終えた後にやって良かったと思っていただけるゲームに仕上げられたと思っていますので、ぜひ期待していただけると幸いです。
――ありがとうございました。



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- 価格:14,465円(税込)
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