アクションRPG「Bloodstained: Ritual of the Night」をレビュー。「悪魔城ドラキュラ」シリーズで知られる五十嵐孝司氏が手がけた同名タイトルのモバイル版。その仕上がり具合に迫る。
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モバイル版「Bloodstained: Ritual of the Night」は、NetEase GamesとArtPlayが共同開発したメトロイドヴァニア系アクションRPG。「悪魔城ドラキュラ」シリーズのプロデューサーを務めた五十嵐孝司氏が手がけており、原点となるコンシューマー版は熱い支持を集めた。
「気づく」ことがおもしろい!「メトロイドヴァニア」系アクションRPG
本作のゲームジャンルである「メトロイドヴァニア」とは、「悪魔城ドラキュラ」の海外版タイトルである「キャッスルヴァニア」と、任天堂のアクションゲーム「メトロイド」とを合成したジャンル名。「悪魔城ドラキュラ」は、日本でファミコンディスクシステム版として発売された初代作こそ純粋な横スクロールアクションだったが、MSX2版や第二作「ドラキュラII 呪いの封印」などはアドベンチャー的な探索要素を持つ作品。そして任天堂の「メトロイド」も、探索によってマップの行動可能範囲を広げていく…というアドベンチャー的要素が特徴の作品だ。
つまり大まかにいえば、「メトロイドヴァニア」とは「探索」要素を持つアクションゲームのこと。その魅力は、「気づく」楽しさにある。
「メトロイドヴァニア」系ゲームをプレイすると、プレイ直後、明らかに到達不能な場所にアイテムが置かれていたり、敵が蠢いていたり…といった光景を目撃するだろう。ジャンプで到達しようにも高さが足りない、扉のようなギミックで道を塞いでいるけど、手持ちのアイテムや武器ではうんともすんとも言わない…。こうした場所は、やがてゲームが進むことで到達できるようになる。
たとえば、二段ジャンプのスキルを手に入れたり、ギミックを動かすための特殊な武器を手に入れたり…といったことによって。ただ、その時にゲーム側から「最初の場所に戻って、取り残したアイテムをゲットせよ」と指示が出るわけじゃない。プレイヤー自ら気づく必要がある。「この能力やアイテムがあれば、あの時到達できなかったあの場所へたどり着けるのでは…?」と。この、「自力で気づく」ことがたまらなく気持ちいいのだ。
「Bloodstained: Ritual of the Night」もしっかりこの「気づく」楽しさを持った作品で、この楽しさはモバイル版である本作もしっかり有している。どうあっても到達できない場所にある宝箱に辿り着けた時、どうやっても進めないだろうと思っていた場所に進むことができた時、「そうだったのか!」という気持ちよさで、思わず顔がほころんでしまうハズだ。
迫力のビジュアル演出と「気づく」ことが楽しいアクション
本作の舞台は18世紀イギリス。主人公は、悪魔の能力を取り込むことのできる少女、ミリアム。ミリアムは錬金術師から体が結晶化する呪いをかけられており、この呪いによって悪魔の力を取り込む力を獲得した。プレイヤーはミリアムを操作し、悪魔の巣食う城を探索。悪魔だけでなく、悪魔の力を利用しようと暗躍する錬金術師などと戦いを繰り広げていく。
本作は、ゴシックホラーの世界観を迫力の3Dビジュアルで表現。モバイル版もビジュアル的な魅力は衰えていない。グラフィッククオリティのみならず、キャラクターやクリーチャーのデザイン、演出など、総じて高品質。だからこそ、アクションの興奮度も高い。
探索要素と同様、本作のアクションもまた、「気づく」ことにポイントが置かれている。敵キャラクターはそれぞれモーションにパターンがあり、パターンに応じたタイミングでアクションを行うことで、ノーダメージで倒すことが可能だ。
例えば、ザコ敵の一人である「デュラハンマ」は、主人公を発見すると、自分の頭部を回転させ投げるという攻撃を行ってくる。なので、不用意に接近するとダメージを受けてしまうのだが、攻撃の後、頭部回収が終わったタイミングでスキが発生。この時に近づいて攻撃すれば、ノーダメージで倒せるというわけだ。こうしたパターンに「気づき」、敵を倒していくことが楽しい。
ちなみに、有効なパターンはひとつだけじゃない。本作には多彩な武器や「シャード」が用意されている。ゲームスタート直後の武器は「靴」で、キックが攻撃手段となるが、ゲームが進むにつれ、剣や鞭といった武器が手に入っていく。武器によって攻撃力はもちろん、間合いや攻撃スピードも変化。このため、どの武器を使うかによって攻略パターンも変化する。
一方、「シャード」というのは悪魔の能力を発揮すること。一般的なRPGにおける魔法やスキルのようなものといえるだろう。こちらも多くの種類が用意されているため、どの「シャード」を使うのかによって立ち回りが大きく変化する。たとえば、先述の「デュラハンマ」なら、スキを狙わずとも、頭部攻撃が届かない位置から銃で攻撃してもいいし、遠距離攻撃系の「シャード」で攻撃してもいい。
ゲームの楽しみ方は人それぞれなので、中にはネットや攻略本で攻略法を見ながらプレイするという人もいるだろう。ただ本作のような「メトロイドヴァニア」系ゲームは、なるべく攻略法を見ずにプレイすることをオススメしたい。というのも、「気づくこと」に楽しさがあるため、回答を知ってしまうと、肝心な部分が楽しめなくなってしまうからだ。攻略法を見るにしても、「何度チャレンジしても打開策がまったく思い浮かばない」というように、本当に行き詰った時に限定した方がいいだろう。
ゲームパッド周りの仕様がやや残念…
ここまで本作の内容について紹介してきたが、ここからはモバイル版独自の要素である操作まわりの仕様ついて触れたい。モバイル版である本作は当然、コンシューマー版と違い、タッチパネル状の仮想パッドによって操作を行う。画面左側の仮想スティックで移動、画面右に並んだボタンで、攻撃やジャンプ、回避やシャードといった各種アクションを行う。攻撃系のシャードの場合、ボタンタッチ後にスワイプすることで攻撃方向を指定可能だ。
NetEase Gamesが開発に関わっていることもあってか、他のスマホゲームと比べて仮想スティックの出来は悪くない。武器固有のコマンド技も、攻撃ボタン長押しからスワイプすることで繰り出せるなどの調整が行われている。ただ、それでもやはり若干、仮想パッドだと難しさを感じてしまう部分があった。というのも本作は、先に書いた通り、敵のパターンに応じた適切なアクションが求められるゲームだ。とりわけボス戦では、敵の放つ弾をかいくぐるような繊細なアクションが求められる。このため、どうしても仮想パッドだと厳しいと感じる部分が出てきてしまう…。
ただ本作、物理ゲームパッドにも一応、対応している。「スマホ用のゲームパッドなんか持ってないよ!」という人でも、現在のスマホはプレイステーション4やXboxのゲームパッドが使用可能。なので、必ずしも仮想パッドでプレイする必要はない。物理パッドで、コンシューマーと同じプレイ感を味わうことができる。…のだけど、この物理パッドの仕様は若干、残念。「一応、対応している」と書いたのはそのためだ。
確かにアクションパートについては物理パッドで操作可能。しかし、ステータス画面やセーブ画面など、一部の画面については物理パッドが対応していない。このため、物理パッドと仮想パッドの両方で操作する形になる。アクションで繊細な操作が可能になるので物理パッドに対応してくれたことはありがたい。けど、装備交換の度に物理パッドから手を放して画面を触る…というのは、どうしても没入感が削がれてしまう。今や、スマートフォンのOSそのものが物理ゲームパッドをフォローする時代。贅沢な願いかもしれないけど、物理ゲームパッドには完全対応してほしかった…。
ゲーム内容はオススメ!あとはどのハードで買うか…
「気づくこと」でマップを探索し、敵の行動パターンに「気づくこと」で倒していく、キャッスルヴァニアの醍醐味が詰まった「Bloodstained: Ritual of the Night」という作品は、確実におもしろい。仮想パッドによる操作や、物理パッドの対応状況が問題ないと思えるなら、手放しでオススメできる。一方、操作まわりの仕様に引っかかる場合、購入するハードを検討した方がいいだろう。
他機種版ではなくスマートフォン版を選ぶメリットは大きく分けて2つ。ひとつは、常に持ち歩くスマートフォンならではのお手軽さ。いつでもどこでも気軽に続きからプレイ可能だ。ニンテンドーSwitchも持ち運び可能だが、持ち運びの手軽さにおいては、やはりスマートフォンに軍配が上がる。また、ふたつめのメリットは金額面でのお得さ。スマートフォン版は他機種と比べて、約1/4という金額で購入できる。この価格差を考えると、操作まわりの仕様についてもある程度納得できるかもしれない。あとは、好みの問題だろう。ちなみに、本作のおもしろさを考えれば、こんな風にゲーム購入の選択肢が増えたことは、とても喜ばしいことだと思う。