RPG「イース6 Online~ナピシュテムの匣~」が、スマートフォンゲームとして2021年春に配信予定です。この記事では同作のリリースに先駆けて、「イース」シリーズの歴史や魅力について、紹介していきたいと思います。
目次
「イース」は、それぞれが独立した、アドル・クリスティンの物語
「イース」シリーズは(ナンバリング作品の場合)全て、冒険家アドル・クリスティンを主人公としていますが、シナリオは1タイトル完結型となっています。
晩年のアドルが自身の体験を振り返って執筆した冒険日誌を小説化したものが「イース」シリーズの原典で、その日誌は百余冊に及ぶと言われており、各「イース」では、その日誌の中の1冊を描いているのです。
ひとつのタイトルでひとつのアドルの冒険譚を描くので、どのナンバリングから入っても楽しめるのが大きな特徴です。
稀に過去作の話題がちらりと出てくることがありますが、知っていればちょっと楽しめる程度なので、30年以上続いているタイトルながら、どこから入っても問題なく楽しむことが出来ます。
しかも「イース」シリーズは、少々特殊な進み方をしています。
初代「イースI&II」はアドルの冒険の始まりとなるので、アドルの年齢は最も若い17歳なのですが、「イースIII」では19歳、「イースIV」に該当する「イース -セルセタの樹海-」では18歳……と、「イース」の物語は決してアドルの体験した順番通りに続いているものではないのです。
現在までにリリースされている「イース」をアドルの年齢順に並べると、「I&II」(17歳)、「IV(セルセタ)」(18歳)、「III」(19歳)、「V」(20歳)、「VIII」(21歳)、「VI」(23歳)、「SEVEN」(23歳)、最新作の「IX」はアドルが24歳です。
こういった独特の流れもあり、「イース」は30年以上シリーズ展開を続けつつも、今なお新たなファンを獲得し続けています。
また「イース」シリーズは、1987年から長く続くタイトルでありながら主人公が変わらない、珍しい作品でもあります。
アドルは「外の世界を自分の目で見てみたい」という強い想いから、16歳の時に故郷を旅立ちます。そして旅立ちから1年、17歳の時に「呪われた国エステリア」の噂話を聞いてエステリアへ渡ろうとしますが、その途中で小舟は難破。運良く(?)エステリアに漂着します。そこからエステリアに伝わる「魔法王国イース」の伝説に挑むのが「イースI」の物語で、アドルの最初の冒険となるのです。
アドルは非常に好奇心旺盛で、その好奇心の強さから命の危機はもちろんのこと、世界の存亡にも何度も立ち会うことになるのですが、普通のゲームの主人公と大きく違うのはアドルの場合、いわゆる“正義感”や“使命感”でその問題を解決するのではなく、あくまで冒険者としての好奇心と、未知の何かを知りたいという情熱でもって、それらの問題を解決してしまうところでしょう。そしてそこでの冒険が終わると、アドルは新たな冒険へと旅立ちます。
こうして各地での活躍を経て(シリーズが進むにつれて)、やがてアドルの名前は世界へと知られるようになり、アドルの珍しい赤色の髪からも「赤毛のアドル」という通り名で呼ばれるようになります。
……そんなアドルですが、実は作中ではほぼ全く喋ることがありません。彼の性格というのは、相棒のドギやその土地で知り合ったキャラクターから語られるものだったり、作中で時折出てくるちょっとした選択肢から想像したものなのですが、喋らないながらもほぼ全ユーザーが同一の認識を持てるようになっていたり、それでいてユーザーが自身の想像を投影する余地も残した、絶妙な塩梅のキャラクターなのです。
なお、「主人公がずっとアドルなのに、次の冒険でまた弱くなるのは何故?」という素朴な疑問がありますが、アドルはそれぞれの舞台で授かった強力な武器を、その地を旅立つ時には返却しているのです(中には、様々な事情で失ってしまった武器もあります)。だからアドルは毎回、心機一転、新たな冒険にまっさらな状態で挑むことになるのですが、ちょっとした裏話ながらこんなところからもアドルの性格が伺えます。
初心者からマニアまで遊びやすい、絶妙な難易度
「イース」シリーズは、国産アクションRPGの頂点に立つとも言える作品です。
何故、国産のアクションRPGといえば「イース」、と呼ばれるまでに至ったのか……その理由のひとつとして、「イース」シリーズは“誰でもクリアできるゲームバランス”を目指して設計されており、“一定の箇所を除いてほぼどこでもセーブができる”という、今でこそほぼ当たり前のようなシステムを30年以上前から搭載しています。
全ての作品に難易度設定があり、アクションが苦手な人はある程度ボタン連打でどうにか勝てる程度の難易度、アクションが得意な人はやり応えのある難易度、……と、自分に合った絶妙な難易度を選ぶことが出来ます。
もちろんアクションRPGなので、ジャンプ、様々な攻撃の組み合わせなどを駆使する必要はありますが、難易度を低めにしておけば初心者でも入りやすい内容となっていることが多いです(中にはアクションの難易度がかなり高い「イース」もあります)。
大抵のボスは行動パターンが決まっているため、数回やり直せばパターンを把握して倒せるものが多く、また、アドルのレベルを上げれば意外とゴリ押しで倒せる場合も多いので、アクションRPGの金字塔でありながらも意外とアクションで行き詰まることが少ないゲーム設計も特徴です。
一方、前述の通り、難易度を上げると一撃食らっただけで即死したりするため、ゲーム中の様々な攻撃手段を駆使したり、難易度の高いアクションを使いこなさなければならないため、初心者からマニアまでが楽しめるのが「イース」なのです。
グラフィックや音楽、SEにも並々ならぬこだわり
「イース」シリーズは、当時のPCゲームのグラフィックや音楽、効果音のレベルを遥かに凌駕しており、当時のゲームファンに相当の衝撃を与えました。
特に初代「イースI・II」の音楽は、今でもゲーム音楽業界で活躍し続ける作曲家・古代祐三氏によるもの。そして「イースI・II」のリメイクとなる「イースI・IIエターナル」のOPには、なんと新海誠氏が関わっているのです。
Ysで最初に作った曲、ys001は神殿の曲でした。24番音色でb-b-b-b-・・って書き始めてるんですが当時何を思ってこんな出だしにしたのか。全く覚えていません(笑) 何はともあれ、30週年おめでとうございます。是非40,50と続けてほしいです。 #ys
— 古代祐三 (@yuzokoshiro) June 21, 2017
英伝5とイース2エターナルの時はオープニング映像とパッケージデザイン、マニュアルイラストなんかもやらせていただいてました。なんでもさせてくれる会社だったんです。RT @soreoreno: @shinkaimakoto 檻歌んもパッケージデザインされていたんですか!?びっくり!
— 新海誠 (@shinkaimakoto) January 12, 2014
30年以上前に作られた古代氏の音楽は、今でも日本ファルコムによる自社ライブでも演奏されているほど。そしてそのハイクオリティな表現の数々は、現在の「イース」でも決して失われてはいません。
特に「イース」シリーズにおける音楽と効果音は、アクションRPGとしてユーザーがバトルで爽快感を得るのに、重要な役割を担っています。一部のステージやボスでは、音楽とギミック、効果音、それらが刻むリズムが絶妙に噛み合い、バトルにより一層の楽しさをもたらしてくれます。
また、グラフィックへのこだわりは、映像だけではありません。その当時に可能な表現力を駆使し、アドルの動きは時代と共により一層キレ良く、エフェクトも豪華になっていき、耳と目、指先、「全てが噛み合ったアクションって、最高に気持ちいい」という、極上の遊び心地を味わえるのが「イース」シリーズなのです。
ちなみに余談ですが、「イース」シリーズを始めとした日本ファルコムのゲームのBGMは、なんとほぼ全ての楽曲が”ファルコム音楽フリー宣言”によって利用規約内であれば楽曲を無料で使用できるという、画期的な試みも行っています(https://www.falcom.co.jp/music-use)。
筆者の歴代イースシリーズオススメ楽曲は、「イース セルセタの樹海」の「地下遺跡」。もしも自分で何か配信動画とか作るならば絶対この曲を使いたい……、というほどの愛。この楽曲も、もちろん使用フリーです! ぜひ「イース」をプレイしてみて、お気に入りの曲を見つけてほしいです。
「イースVI~ナピシュテムの匣~」とは?
2021年春に配信予定の「イース6 Online~ナピシュテムの匣~」のオリジナルとなる「イースVI~ナピシュテムの匣~」は、2003年にPCで発売されたタイトルで、その後、携帯電話版、PS2版、PSP版と移植されてきましたが、長らく現行機で遊ぶことが出来ませんでした。「イース6 Online~ナピシュテムの匣~」は、PSP版から約15年ぶりにリリースされることになります。
「イースVI~ナピシュテムの匣~」は、長い耳と尻尾を持つレダ族が住むカナン諸島を舞台に、“ナピシュテムの匣”の謎と、有翼人種の謎に迫るストーリーで、アドルが23歳の時の物語です。時系列的には、「イースSEVEN」もアドルが23歳で「イースVI」の後の物語、そして「イースIX」がアドルが24歳の時の物語なので、最新作の「IX」よりも少し前の物語です。
有翼人については「イースIV」(※セルセタの樹海)にて登場していますが、シリーズ上最も深く有翼人に触れたのが「イースVI~ナピシュテムの匣~」となっています。
また、本作から全てのマップが3Dとなり、視点がクォータービューとなっているので、アクションゲームとして各段に遊びやすくなったのが特徴です。
「イースVI~ナピシュテムの匣~」以来、リメイク作品などは基本的にこのクォータービューが採用されているので、この作品以外にも「イース」シリーズに触れたことがある人ならば、比較的入りやすいタイトルとなっています。
「イース6 Online~ナピシュテムの匣~」のリリースに向けて、既に遊んだことがあるファンはもちろんのこと、「イースVIII」や「イースIX」からシリーズに触れたファンにもぜひ触れてみてほしい作品となっていますので、リリースを楽しみに待ちたいですね。
「イース6 Online~ナピシュテムの匣~」公式サイト
http://ysvionline.restargames.jp/
「イース6 Online~ナピシュテムの匣~」公式Twitter
https://twitter.com/YsVI_online