PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox Oneで発売中の「MLB The Show 21」(英語版)。ここでは、PS5版のレビューをお届けしていく。

目次
  1. 現実の選手の動作が細かに再現されたリアル系野球ゲーム
  2. 多彩な設定で本格的な操作が可能。バッティングはコース・球種の「読み」が肝
  3. 「ROAD TO THE SHOW」では、大谷選手のような二刀流プレイヤーも育成可能
  4. 新モード「STADIUM CREATOR」では、思いのままにユニークな球場を作成できる

現実の選手の動作が細かに再現されたリアル系野球ゲーム

MLBを題材とした野球ゲームの決定版ともいえる人気シリーズ「MLB The Show」。「MLB The Show21」は、その最新作にあたるタイトルで、前年である2020年のシーズン成績を反映、様々な新要素を追加しつつ、PS5への正式対応、シリーズ初となるXbox Game Passでのリリースや、他プラットフォームとのクロスプレイも実装されている。

最初に注意して欲しいのが、本作には日本語版が存在しないこと。これは従来のシリーズ作品も同様で、ゲーム内でのローカライズが行われない代わりに、公式による本格的な日本語オンラインマニュアルが用意されていた。ただ、今回の日本語マニュアルは従来よりやや簡素な内容となっており、細かなパラメーターや攻略のヒントなどは、英語版のマニュアルに目を通す必要がある。

ここは残念な点ではあるが、メインモードと言える「ROAD TO THE SHOW」モードについては、すべての会話を日本語に訳したPDFが公開されているので安心。ほかの基本的なシステムについては前作の内容を継いでいるため、英語が苦手という方は、前作である「MLB The Show 20」のオンラインマニュアルもあわせて参考にしながらプレイするのがオススメだ。

筆者は今回初めて「MLB The Show」シリーズをプレイしたのだが、まず目を引くのが、なんといってもグラフィックの美しさ。さまざまな野球ゲームの中でもとくにリアルさが追求された本作は、細かいカメラアングルや打席での間、ホームランを見送る外野手、チェンジになった時の仕草など、リアルな野球中継の再現が徹底されている。筆者自身が時折中継で見るMLBの中継の光景そのままで、MLB好きであれば実際の試合を操作しているような感覚を味わえるだろう。

また、設定の項目が非常に豊富なのも特徴。ゲームをスタートすると、最初にシリーズ初心者向けの「CASUAL」、シリーズ経験者向けの「SIMULATION」、操作に自身がある人向けの「COMPETITIVE」と、3種類の中からゲームのプレイスタイルを選ぶことになる。プレイスタイル以外にも、バッティングやピッチングについて「Beginner」「Rookie」「Veteran」「All-Star」「Hall of Fame」「Legend」の6種類の難易度が用意されており、それぞれ個別に設定することが可能なので、「ピッチングはある程度できるけど、打撃はちょっと苦手……」といった場合でも安心してプレイできる。また、それらの難易度を自動で調整してくれる「Dynamic」という難易度設定も存在しており、「Rookie」で打ちすぎて、MLBにおいて非現実的な成績を残しそうな場合は、自動で「Veteran」に難易度が上がるなど、適切な難易度でプレイできるようにもなっている。

多彩な設定で本格的な操作が可能。バッティングはコース・球種の「読み」が肝

設定の多彩さという面では、様々なプレイヤーに向けた操作方法が用意されているのも特徴の一つ。例えばバッティングなら「Directional」、「Zone」、「Pure Analog」の3種類、「ピッチングにいたっては「Classic」、「Meter」、「Pure Analog」、「Pulse」、「Pinpoint Pitching」といった5種類もの操作方法が用意されており、それぞれで操作性がかなり異なってくる。

バッティングでは、おそらく多くの日本のプレイヤーにとっても馴染みやすいと思われるのが「Zone」の操作。これは「実況パワフルプロ野球」などにも採用されているミートカーソルに近い要素であるヒットゾーン(PCI)を、投球地点にあわせてスイングするタイプのバッティングだ。ただ本作では投球が最終的に到達するポイントが表示されないため、球の軌道とヒットゾーンを完全に合わせるのはなかなか難しい。またスイングのタイミングの重要性も非常に高く、内角なら引っ張り、外角なら流し打ちといったように、ある程度コースにあわせた意識の打ち分けを行わないとヒットになりにくい。

スイングの種類も、ノーマル、コンタクト重視、パワー重視と3種類があったり、
バントも複数の打ち分けが可能と、とにかく種類が豊富で操作の幅が広い。

そのため、投球を投げたあとにゾーンを合わせるのではなく、ピッチャーの球種、バッターの能力、カウントや点差、ランナーの状況などを加味した上で、相手がどのあたりのコースを狙うかを予想して予めヒットゾーンを動かしておき、リリース後はボールがそのコース通りに来たかを見極めつつ、タイミングをあわせることに集中する方がいい結果に結びつきやすいと感じた。つまりは、ストライクゾーンに来た球に反応して手を出すのではなく、ある程度「ヤマ」を張っておく必要が出てくる。これは「Zone」以外の操作方法にも共通した部分で、投球が行なわれる前のピッチャーとの駆け引きの重要性が高いゲームとなっている。

実際に、「ヤマを張る」要素はシステム的にもゲーム内に導入されており、投球前にコースと球種を予想しておくことで、それが一致した際にヒット性のあたりが出やすくなる。ただ、読みが外れると逆にマイナスの補正が掛かってしまうので、無闇にヤマを貼りすぎるのはあまり効果的ではない。カウント有利からのフォーシーム(ストレート)狙いなど、狙い玉が絞りやすい状況で使っていくのが効果的になってくるだろう。

一方、ピッチングでは、本作から追加された「Pinpoint Pitching」が非常に特徴的。こちらは球種を決定したあと、フォーシーム(ストレート)なら上下、チェンジアップなら半円といったように、球種ごとに表示されるコースの動き通りにアナログスティックを動かし、その速さと正確性に応じて球の制度や球威が上昇する。アナログスティックの動きはかなり細かいブレまで判定されるので、なかなか完璧に投げきるのは難しく、格闘ゲームのレバー入力のような慣れが必要。

入力が難しい分、完璧な操作ができた時の気持ちよさもありつつ、変化球ごとに投げやすさが異なっているため、「カーブを投げたいけど、投げミスが怖いから入力がしやすいフォーシームを選ぶ」といったことも起こり、より実際の投手に近い心理でのプレイができる操作方法だとも感じられた。

また投球の際は、キャッチャーが球種やコースをリードしてくれることもあるので、ゲームに慣れない内はキャッチャーのリード通りに投げ込めばある程度ゲームを作りやすい。ただ、リード通りに完璧な球を投げても打たれることもあるので、キャッチャーのリードに従うのか、首をふって自分が思うコースに投げ込むかの判断という要素も存在する。

球種によって操作が変わってくるのは、球種に応じて球の握りを変えるリアルな投球に近い感覚だ。

操作が複数あるのは守備についても同様。とくに「Button Accuracy」の操作では、送球時に表示されるメーターで送球の強さを調整できるが、適切な調整を行えないと、致命的な暴投をしてしまう危険もあり、実際の守備さながらの緊張感を味わえる。一方走塁では、リードの大きさや進塁・停止の指示だけではなく、ヘッドスライディングや併殺崩し、スライディングで周り込む際の方向を変化させるといった細かい操作を行えるようにもなっている。

「ROAD TO THE SHOW」では、大谷選手のような二刀流プレイヤーも育成可能

本作には非常に多くのゲームモードが用意されているが、その中でも、筆者がとくに熱中してプレイしたのが「ROAD TO THE SHOW」。これはオリジナル選手を作成し、一人の野球選手の視点からメジャーリーグを体験することができるモードだ。

試合で活躍するとそれぞれの能力値に応じた経験値的なものが溜まっていき、能力値が成長していくので、着実に成長を実感できるし、エラーや凡退を繰り返すと能力値が下がることもあるので、なかなか気が抜けない。試合のない日には、トレーニングにあたるミニゲームをプレイして任意の能力値を上げられるといった要素も存在する。

当初はマイナーのAAから始まり、AAA、MLBと上のリーグを目指していくことになる。

また「ROAD TO THE SHOW」は、その選手からの視点で試合を体験することになるので、通常の試合とは操作も異なってくる。とくに大きく変化するのが守備と走塁で、守備はピッチャーが投げる前に守備位置を細かく移動したり、送球の際には狙いをつけるエイム的な操作も追加されるなど、一つのポジションに専念した操作へと切り替わる。

走塁は、次の塁を狙うだけではなく、牽制に対する帰塁も気にかける必要があったり、視点の関係で通常の試合よりも打球の行方を確認しにくくなっているので、思わぬ暴走をしてしまうこともあったり、TV中継や客席から見ただけでは分かりにくい、野球の難しさを体験することができるのも面白い。

また本作から、現在メジャーで活躍中の大谷翔平選手のような二刀流の選手を作成できるようになった。二刀流といっても、大谷選手のような先発+登板のない日にDHで出場という形だけではなく、野手をメインに登板間隔を2~3週間空けて先発したり、リリーフをメインに野手としても出場するなど、様々な形での二刀流に挑戦できる。「ROAD TO THE SHOW」は、1試合が自分の打席や守備走塁の操作だけなので、テンポよく進む一方、少しゲームプレイ面の変化が乏しい点もあるので、まったく異なる操作が時折挿入される二刀流でのプレイはかなり新鮮で楽しかった。

MLBという大舞台で、二刀流というロマンを疑似体験できるのは「ROAD TO THE SHOW」モードならでは。
これが本作で新たな仕様として実装されたことで、メジャーの常識を覆した大谷選手のすごさが改めてわかる。

「ROAD TO THE SHOW」と並ぶメインモードとなるのが、オンライン専用モードである「DIAMOND DYNASTY」。こちらはオリジナルのチームを作成し、ゲーム内通貨で購入するカードパックを開封して選手カードを獲得、チームを強化して他のプレイヤーやCPU相手の対戦を楽しめる。ランクマッチでいい戦績を残し、シーズン中に高いランクにあがるほど、シーズン終了時によりいい報酬を獲得できるようになっている。

通常の試合形式の対戦だけではなく、選ばれたカードからドラフトでチームを結成する「Battle Royale」、実在のMLB球団とマップ上のエリアを奪いあう、ターン制ストラテジーの要素を含んだ「Conquest」、ドラフトで結成したチームで様々なミッションに挑戦する「Showdown」、MLBの歴史的な試合の1シーンを、自らの手で書き換えられる「Moment」と、非常に多くのモードが用意されている。

なおゲーム内通貨で購入できるパックからは、「ROAD TO THE SHOW」で選手の能力を高めることができるアイテムやperkも入手できる。ゲーム内通貨は、本作のあらゆるゲームモードをプレイすると自然と溜まっていくので、自分の好きなモードをプレイして通貨を貯め、カードパックを開封して「DIAMOND DYNASTY」や「ROAD TO THE SHOW」のチームや選手を強化していくのが、本作の主なゲームのサイクルとなってくるだろう。

「DIAMOND DYNASTY」や「ROAD TO THE SHOW」以外にも、
1シーズンの重要な局面だけをプレイする「MARCH TO OCTOBER」やホームランダービーなど、
比較的短時間で楽しめるモードも充実している。

新モード「STADIUM CREATOR」では、思いのままにユニークな球場を作成できる

またPS5及び、Xbox Series X|S版でのみプレイ可能な、プレイヤーが自分だけのオリジナル球場を作成できる新モード「STADIUM CREATOR」にも触れておきたい。作成したオリジナル球場は、オンライン対戦を含めた様々なモードで他の球場と同じように選択できる。

最初に予め用意されたベースとなるプリセット球場を選択し、その球場をカスタマイズしていくことになるが、編集には「EASY」と「PRO」の2種類のモードが存在しており、それぞれでできることが大きく異なる。

まずEASYモードでは、編集にかなりの制限がかけられており、電光掲示板や客席のタイプ、木や岩など、それぞれのプリセット球場であらかじめ配置されたオブジェクトを、別のオブジェクトを入れ替えたり、芝の柄や土、フェンスの色を変更するなどの簡易的な変更しか行えない。

一方、Proモードではかなり自由度の高い編集ができ、配置されている客席などのオブジェクトを消すこともできるし、任意の位置に様々なオブジェクトを配置することが可能。この配置可能なオブジェクトの種類が尋常ではなく、客席や掲示板だけではなく、巨大なビルや山にサッカー場、果ては恐竜にストーンサークル、ジェット機にUFOといった、ユニークなものも多数存在している。グラウンドの中に影響が出るような配置はできないものの、高さの変更も含めた調整ができるので、スタンドに動物を配置したり、空中に建物を浮かせたりといった、現実ではありえないぶっとんだ球場を作れるようになっているのが面白い。

配置できるオブジェクトの容量には限界はあるものの、球場からある程度離れた場所にもオブジェクトを配置できるため、日本でも流行りつつあるボールパーク的な配置を考えたり、一種の街づくりゲーに近い感覚でも楽しめる。凝り性のプレイヤーならこのモードだけで丸1日遊ぶこともできるだろう。

ツッコミどころ満載の球場作成も思いのまま。サッカー場やデニスコートなどもあり、
客席を設置したりもできるので、
球場以外の施設を作り込んでみるのも面白い。

フェンスの高さや位置、形を大幅に変更も可能で、思いっきりフェンスの高さを下げて球場も狭く設定し、凄まじいヒッターズパークを作ることもできる。ただ、フェンスの位置と高さはオンライン対戦でのレギュレーションに関わってくるようで、自由に変更したものはオンライン対戦では使用できなくなる。フェンスの位置と高さは用意されたプリセットから選択する形でも変更できるようにはなっているので、オンライン対戦で使いたい場合はプリセットから選ぶのがいい。

バットのアイコンに赤い斜線が引かれているとオンライン対戦には使用できない状態となっている。

コントローラー「DualSense」の振動機能であるハプティックフィードバックも有効活用されており、ボールをバットでどう捉えたかによって伝わる振動が変化したり、ボールをグラブで捕球した際に小さい振動が伝わってくる。とくにバットの感触が振動で伝わるのは面白く、芯で捉えた時は大きめの振動が来るので、ホームランを打った時の気持ちよさをより感じられるようになっていた。

5月中旬現在では、最新のロースターデータが更新されており、大活躍中の大谷翔平選手やダルビッシュ有選手はもちろんのことながら、今年からMLBに挑戦した澤村拓一選手、有原航平選手も含め、多数の日本人選手のデータが用意されているので、NPBのファンも安心だ。

とはいえ、やはり本作は日本語ローカライズがなされていないゲームということで、尻込みしている人も少なくないだろう。

かくいう筆者も英語力はさっぱりで、未だシステム面で理解しきれていないことも非常に多い。ただ、本作が他のローカライズされていない海外のゲームと違うのは、我々がよく知る「野球」というルールのゲームであること。試合の途中には、「Dynamic Challenge」というミニミッションのようなものが提示されることもあるのだが、野球のルールを分かっていれば、ランナーを進めるのか、ヒットを打つのか、ホームランを狙うのかなど、なんとなくで意味を察することができる。

本作に興味をもつ方が、野球のルールをまったく知らないということはあまりないかと思うので、公式の日本語マニュアルで操作さえ確認しておけば、普通に試合をする上で困ることはほぼないだろう。「DIAMOND DYNASTY」などの複雑なモードは、プレイを重ねていくことで少しずつ理解できるようになっていくし、「STADIUM CREATOR」での球場作成は英語力が皆無でも直感的に操作できる。

細かいフォームや仕草などの再現度も高く、野球体験のリアルさが高まっている分、デグロムの球に手も足もでなかったり、トラウトにドデカイ一発を叩き込まれたり、メジャーリーガーの凄まじいスケール感を体験できるのは本作ならでは。MLBが好きなら、楽しめるようになるまでの敷居は決して高くないゲームなので、英語に尻込みせず、是非ともプレイしてみて欲しい。

※画面は開発中のものです。

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MLB The Show 21公式サイト
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