スマートフォン向けのMMO型戦略シミュレーション「三國志 真戦」をレビュー。コーエーテクモゲームスの「三國志13」ベースに開発され、同社の完全監修によってつくられた作品はどのように仕上がったのか。
「三國志 真戦」は、Qookka GamesからリリースされたMMO型戦略シミュレーション。多人数のプレイヤーが領土を賭け、ひとつのマップで争うというゲームだ。ベースとなった「三國志13」は歴史シミュレーションゲームとして発売されており、劉備や曹操といった君主のみならず、様々な武将としてプレイできる特徴的な作品だった。ただ本作はあくまでMMO型戦略シミュレーションとして設計されており、「三國志13」特有の要素は残っていない。なので、完全新作としてプレイした方がいいだろう。
君主の一人として乱世平定を目指せ!
本作で君主となるのはプレイヤー自身が作成したキャラクター。プレイヤーは君主として武将たちに命令を下し、内政と戦闘を行っていく。内政や戦闘を実行する武将たちはもちろん、関羽や張飛、夏侯惇や太史慈といった三国志の武将たちだ。
ゲームの流れは、木材や鉄鋼といった資源を内政で増やし、徴兵によって軍備を増強。その上でマップ上の領地に攻め込み、占領によって自国領を増やしていく…というもの。大きな流れは、一般的なMMO型戦略シミュレーションを踏襲しているといっていいだろう。だが、内政や戦闘のシステムにそれぞれ様々な回線が図られている。
まずプレイしやすさを感じるのが内政だろう。本作の内政は、石材の産出量を増やすために採石場、木材の産出量を増やすために伐採場…といった形で資源に応じた施設を建設するというもの。このシステム自体は一般的な形なのだが、施設の生産性を「レベル×施設の数」という形ではなくレベルのみに一本化。
さらに、「君主殿」のレベルに応じて施設が配置されているため、今建設可能なる施設は何か、今生産量の低い施設は何かがわかりやすい。箱庭的に施設を建設していく方が好きというプレイヤーもいるとは思うが、効率的にプレイするのであれば現在の形がベストではないかと感じた。
本作ならではといえるのがワールドマップでの領地争いだろう。まず見た目からして本作は特徴的。スクリーンショットを見てもらえば一目瞭然、マップがマス目によって区切られている。筆者的にはこの見た目で、歴史シミュレーションっぽさを感じ、胸が熱くなってしまった。が、もちろんこのマス目は見た目だけの演出ではない。本作は、このマス目が隣り合っていない土地へ攻め込むことができないのだ。
MMO型戦略シミュレーションの多くは、ワールドマップ上でどんな離れた場所へも侵攻できる。もちろん、離れた場所へ向かうためには時間もかかるし、ゲームによっては資源も必要となる。しかし、侵攻場所として指定することは可能だ。このため、ある程度自国の増強が住んだら他プレイヤーの領地に攻め込むことになる。比較的対人戦が起こりやすいシステムといえるだろう。
一方、本作では自国の領地の隣にしか攻め込むことができない。なので他プレイヤーの国に攻め込みたかったら、1マスずつ占領していくことなる。あるいは、他プレイヤーと同盟を組むことで侵攻先を増やすほかない。同盟を組めば、同盟国の領地と隣り合う土地への侵攻も可能になるからだ。
1マスずつ占領するのなんて面倒…と感じた人もいるかもしれない。しかし、筆者はまったく逆の印象を持った。従来までのMMO型戦略シミュレーションの形だと、基本的には対人戦がメインとなる。この結果、戦闘や領地の拡大を行うにあたって「潰すか、潰されるか」という極端なものになりやすい。しかし本作の場合、対人戦を行う前に中立地で大量のNPC戦がある。戦闘回数で言えば、NPC戦メインといってもいいだろう。NPC相手なので、基本的にプレイヤーが勝てるし、勝ったらマップ上で自国を示すマスが増加。目に見えて領土の拡大が分かる!これがなかなかにおもしろい。面倒なのではない、むしろ1マスずつ占領していくことがおもしろいのだ。
なお、マス=領地はただ増えていくだけじゃない。ゲームが進めば取捨選択も必要になってくる。というのも、領地の保有量には上限があるからだ。このため、より有利な領地、より有利な侵攻ルートを手に入れるためには、不要な領地を捨てなければならない。ちなみに、隣り合ったマスにしか攻め込むことはできないが、一度占領してしまえば自国のマス同士が隣り合っている必要はない。なので、領地を捨てることによってマスが飛び石のようになってしまっても、そのマスが自国の領地であれば、隣り合うマスへの侵攻が可能だ。
また、この領地のマスがビジュアル的に分かるという仕様によって、他プレイヤーの思惑が見えるという点もおもしろい。侵攻するためには1マスずつ占領しなければならないので、どこかの国へ攻め込もうとしていれば、その国へ向けてマスが伸びていくことになる。このため、もし他プレイヤーマス目が自分の国へ向かっているのであれば、軍備拡張を急いだり同盟を頼ったりするなど防衛重視の行動をした方がいいし、他のプレイヤーを狙っていそうなプレイヤーがいれば、そのプレイヤーへマス目を伸ばして漁夫の利を狙えるようにしておく…なんてこともできる。この点はなんとも戦略的でおもしろいポイントだ。
ワールドマップ上でマスに侵攻したり、敵部隊と接触したりすると戦闘となる。戦闘そのものはフルオートで処理される。プレイヤーは結果報告だけ受け取る形だが、戦闘中に各ターンどのような行動が行われたのかビジュアル的に鑑賞することも可能だ。
本作のようなMMO型戦略シミュレーションは、全プレイヤーが常にログイン状態でプレイしているわけではない。基本的には、内政や侵攻指示を行ったらオフラインにし、数時間後に再びアクセスする…というプレイスタイルだ。このため、戦闘中にプレイヤーが細かく指示できる仕様を取り入れてしまうと、ログイン状態のプレイヤーが一方的に有利になってしまう。それでは、公平なゲームを楽しめない。なので、戦闘システムがこの形式になるのは当然だろう。ただ、本作ならではの楽しさもきっちり持っていると感じた。
フルオートで侵攻するため、戦闘の勝敗を分ける要素は各武将の能力値や兵士数といったパラメーター。基本的にはパラメーターの高い方が勝つ。ただ、本作では「戦法」という要素によってそこに戦術性を与えている。「戦法」は戦闘中一定確率で発動するスキルのようなもの。「火攻」など、三國志ならではのものが用意されている。
「戦法」は各武将ごとに異なるものを最初から持っているが、さらに別の武将から継承することも可能。継承元となった武将は失うことになるが、この機能を使えば、自分の戦略にあった武将カスタマイズができ、ただ単に軍を編成するより戦力アップできる。「三国志」は様々な魅力を持っているが、魅力のメインといったら武将だろう。どの武将とどの武将を配下に加え、どんな軍を編成するか。本作の育成と戦闘はこの点をしっかりフォローしている点がイイ。「三国志」はこうでなくちゃ!
MMO型戦略シミュレーションとして意欲的で完成度の高い一作
「三國志13」ベースという前情報や、コーエーテクモゲームス完全監修という触れ込みから歴史シミュレーションゲームとしての形式にこだわりすぎてしまうと、肩透かしに感じられるだろう。しかし、純粋にMMO型戦略シミュレーションとして本作に触れれば、本作の良さは分かるはず。
1マスずつ占領していくワールドマップや、快適な内政システム、「三国志」の醍醐味である武将編成の楽しさを味わえる育成システムなど、意欲的なシステムを盛り込みつつ、手堅くまとめた本作は、現時点で最も完成度の高いMMO型戦略シミュレーションだと感じた。このジャンルのファンであれば確実に楽しめる一作だと思うので、是非プレイしてみてほしい。