Tripwire Interactiveが2021年6月8日にPS5/PS4/Xbox One/Xbox Series X|S/PC(Epic Games Store)向けに発売予定の中世戦場アクションFPS「Chivalry 2」(国内向けパッケージ版は6月24日に発売予定)。ここでは、5月28日~6月1日にかけて実施されたオープンβテスト(PS5版)をレポートしていく。
2つの軍に分かれて戦う大規模チーム戦では、中世らしいギミックも満載
「Chivalry 2」は、2012年にPC(海外ではPS4/Xbox One版も)でリリースされ、「Chivalry: Medieval Warfare」の20年後を描いたタイトルだ。海外では非常に高い評価を得て、その続編が長らく待ち望まれていた人気作だが、CS版は日本未発売ということもあり、プレイしたことがないという方も少なくないだろう。
背景設定を知っていればより楽しめることは間違いないものの、本作の主なゲームモードは、最大64人のプレイヤーが入り混じって行う大規模なオンラインチーム戦であるため、本作から初めてシリーズに触れる形でもまったく問題ない。
本作の対戦は、王国軍である「アガサ」と、その反乱軍である「メイソン」の架空の2つの国の軍に分かれて行われる。いくつかのwaveで分けられており、攻撃側はすべてのwaveで目標を達成すれば勝利、防衛側はいずれかのwaveでそれを阻止することができれば勝利となる。
目標は、一定時間指定エリア内にとどまって支配権を奪い合う、砦の扉を破壊する、特定のNPCを見つけ出して倒すなど多くの種類が用意されており、waveが進むにつれて切り替わっていく。一般的なチーム対戦系FPSにおける、ドミネーションやサーチアンドデストロイといったオブジェクト系の対戦ルールが、waveごとに切り替わって進行していくものを想像してもらえばイメージしやすいだろう。
こうした複数のルールが切り替わって進行するタイプの対戦は、他のチーム対戦系のFPSでも見られるものだが、本作は舞台が中世であることを生かしたギミックが多数盛り込まれているのが特徴。例えば砦を攻略する目的を達成するには、巨大な攻城斜面(城壁に隣接させ兵士を上陸させるためのスロープ)や雲梯、荷台にある爆竹を持ち運んで点火する、投石機で巨大な岩を投げつけて攻撃するといった、現代戦にはないギミックを利用する必要がある。
ゲーム性が変化するユニークなシチュエーションも用意されており、とくに面白かったのが農村を巡っての両軍の攻防を描いたステージ。村を侵略する側の片方のチームは通常通り兵士を操作する状況から始まるのに対し、もう一方は戦闘力で大きく劣る村人でスタートし、一度倒されると、防衛のために村に駆けつけた兵士へと操作が切り替わって仕切り直しという特殊な流れになっている。
さらにその後、侵略する側のチームは村を焼き払ったり(マップの各所にある焚き火から松明を入手し、それを藁葺き屋根の家に投げつけると放火できる)、村にある宝物を奪い取る、NPCとして歩いている村人を殺すとポイントが加算されるなど、村を一方的に蹂躙する侵略者的なロールプレイを楽しめるのは、今までにない感覚だった。
村では他にも、井戸から体力回復に使える魚がとれたり、村にあるタルなどをトラップとして動作させられるなど、チーム対戦系のFPSを普段からプレイしている筆者にとってもかなり新鮮に楽しむことができた。こうした中世ならではの世界観で作られたシチュエーションやマップギミックは、本作の大きな魅力となっている。
アクションの自由度はかなりの高さ。やり込み的なテクニックも満載
まず攻撃には、斬撃(横斬り)、刺突(突き)、脳天割り(縦斬り)の3種類が存在し、それぞれに攻撃範囲やリーチ、発生速度が異なる。攻撃の際には一定量のスタミナを消費することになるが、斬撃からの脳天割り、そこから突きといったように、スタミナが続く限り、それぞれの攻撃をコンボのように組み合わせて連続発動することもできる。斬撃に関しては、L3ボタンを押すことで振りの向きを逆にして繰り出すことも可能だ。
実は本作ではすべてのモードでフレンドリーファイアが有効になっているため、乱戦時に味方を攻撃して手痛いダメージを与えてしまうことも少なくない。味方が右から回り込もうとしているのが見えたら、斬撃を左振りに変えたり、刺突や脳天割りを使うなど、攻撃の軌道を使い分けて戦うことも重要になっている。
加えて特徴的なのが、それぞれの攻撃の動作中には、攻撃入力後にRスティック(※ゲームパッド操作の場合)を動かすことで、身体の角度を変えてその軌道を変化させることもできること。例として、まっすぐに武器を振り下ろす脳天割りの場合、入力後にスティックを横方向に動かすことで動作中に身体が回転し、斜めに武器を振り下ろす袈裟懸けのような軌道の攻撃に変化する。Rスティックは一般的なFPS・TPSと同じく視点変更にあたるボタンなのだが、カメラと同時に身体の向きも変わるため、こういったアクションが可能だ。
本作では、瀕死になって地面に倒れこんでいる敵を攻撃したいという状況や、頭に攻撃がヒットするとダメージが上昇するため、こうしたテクニックで軌道を微調整することにもしっかりと意味がある。
敵と正面から戦う場合、武器の発生のタイミングが重要になる。この時、右から剣をふる場合は、身体の向きを左に回転させることで右腕が正面を向き、より正面にいる敵に対して最短距離で剣が出るようになり、攻撃の発生がわずかに早くなる。やや難しいが、至近距離での振り合いになった際にかなり重要なテクニックだ。 |
また非常に重要なアクションが、敵の攻撃を防ぐブロックの操作。本作のような中世系のFPSでは、相手の攻撃を弾くパリィのタイミングがシビアめに設定されることが多いのだが、本作ではボタンを押しっぱなししている間、スタミナが続く限りはブロックで敵の攻撃を弾けるので、タイミングをあわせてのパリィ的な操作が苦手なプレイヤーにも非常に優しい作りになっている。本作のブロックは防御可能な範囲も広めで、正面だけではなく斜めからの攻撃も防いでくれるため、かなりの安心感がある。
ブロックを破る攻撃として、それぞれ△ボタンと○ボタンで繰り出せる特殊技とキックがあるが、特殊技とキックは通常の斬撃や刺突に弱いという、じゃんけん的な相性関係となっている。またブロックは背後や横方向の攻撃に対しては無力であるため、複数の敵に囲まれると攻撃を防ぎきれない。そのため、本作では数による有利不利の差が大きく出るようになっており、同程度の敵味方の数がいる場合、お互い攻めるに攻めきれない、にらみ合いのような拮抗状態が続くことも少なくない。味方の存在を意識し、孤立しないように立ち回れば、うまいプレイヤーに一方的に瞬殺され続けるといった、「FPSあるある」的な現象が発生しにくくなっている。
またブロックと通常攻撃は、攻撃の出始めであれば他のアクションへのキャンセルが可能となっており、ブロックすると見せかけての斬撃、斬撃モーションで相手のブロックを誘いながら、キックでブロックを崩す……といったように、フェイントをかけ、相手プレイヤーとの読みあいを優位に進めることもできる。ゲームに慣れてくると、相手がブロックするのか攻撃するのかを予想しながらこちらの行動を決めて、それが上手くハマった時のしてやったり感は格別だ。
さらに攻撃以外にも、しゃがみ、ジャンプ、ステップといった豊富なアクションが用意されており、これらも攻撃やブロックと組み合わせることができる(ジャンプやしゃがみながらの斬撃や、ステップでの攻撃やブロック後の隙をキャンセル可能)ので、行えるアクションの幅がとにかく広い。チュートリアルでは、これらのアクション操作について、実際のプレイを交えながらかなり詳細に教えてくれるので、何度かチュートリルをプレイして操作に慣れておくといいだろう。
戦闘中には、基幹武器と、副次武器、アイテムの3つの装備を切り替えて戦うことができる。武器やアイテムを敵に投げつけての攻撃も可能で、装備中の武器は失われるものの、瀕死で逃げようとする敵にトドメを刺したい時など、意外と使い所は多い。武器はマップ中に配置されているものや、味方が落としたものを拾って使用することも可能だ。 |
役割が異なる4つのクラスと、それぞれに紐付いた3つの兵種
オープンβテストでは「射手」、「前衛」、「歩兵」、「騎士」の4クラスが存在し、プレイヤーはそのクラス内にある3つの兵種の中から1つを選択して出撃するという形式になっていた。「前衛」なら最初はダメージに優れた武器である斧をメインに戦う「デバステイター」の兵種のみ選択可能だが、クラスレベルが上がると攻撃力の高い基幹武器を2種類もてる「レイダー」、発生が非常に速いダガーを使える「伏兵」といった兵種が解禁されていき、選べる装備の幅も増えていく。
個人的に、近接系クラスで使いやすかったのが騎士クラスの兵種の1つである「ガーディアン」で、射撃武器も防御可能な大型の盾である「重シールド」を所持しており、ブロックが非常に強力なので、敵の包囲とスタミナにさえ気をつければ初心者でも倒されにくい。敵との読みあいになかなか勝てないという初心者は、騎士クラスのレベルを上げてガーディアンを解禁し、味方の盾となって、エリア制圧などの作戦目標の達成をサポートすることでもチームに貢献できる。
ある程度エイミングに自身があるなら、射手で弓やクロスボウで遠距離から攻撃するのもオススメ。敵に接近されると非常に弱いものの、近接系のクラスに対しては安全圏から一方的な攻撃が可能で、盾がなければパリィも難しいため、安定してダメージを与えられる。ただ、射手にはチーム内での人数制限があり、出撃時に選択できないこともある。 |
またPS5版ならではの要素として、「DualSense」コントローラーの新機能であるアダプティブトリガー及び、ハプティックフィードバックにも対応。ハプティックフィードバックでは、武器をふった時の風を切るような感覚や、武器同士がぶつかったり、パリィされた時の反動が振動で再現されている。
一方のアダプティブトリガーは、スタミナが減るとブロックや弓、ボウガンを発射する際、トリガーが固くなるという形で活用されている。最初はボタンの押しにくさを感じたものの、ボタンが固くなるとスタミナが減っていることを知らせる合図にもなっているので、リアルさ操作感の再現という面だけではなく、スタミナ管理をミスしがちな初心者にとっては、ゲーム的な機能としてもなかなかありがたい機能だと感じた。
なお筆者は本作が「Chivalry」シリーズを初体験。チュートリアルで体験するアクションがかなり本格的なため、最初は比較的プレイヤーを選ぶタイプのゲームかとも思ったのだが、いざプレイしてみると、予想以上にカジュアルな感覚で遊ぶことができるゲームだと感じた。
味方と一緒に戦い、数の不利を背負わないようにさえ意識すれば、初心者でも何もできずにやられ続けるという展開にはほとんどならない。数による有利不利が大きいため、自然と敵味方が集まりやすいシステム上、激しい乱戦がいたるところで発生するので、殺して殺されあうワチャワチャ感も楽しい。
味方を襲っている敵を不意打ちで斬り殺したと思ったら、今度は視界外の敵に殺されることもしばしば。戦国時代の大規模な合戦シーンなどが好きな人にとってはかなりツボにハマるはずだ。
ある程度のアクションゲーム慣れさえしていれば、FPSで求められがちなエイム力もさほど必要ないし、1チームが20~32人と人数が多い分個々のプレイヤーの責任も少なめなので、オンライン対戦の敷居は決して高くない。それでありながら、1対1での戦いは個々のアクションの腕前や読みあいが問われるし、慣れてくるとある程度なら数の不利を背負いながらも戦えるようになったり、上達をしっかりと実感できるようになっているので、ただカジュアルなだけのゲームでは決してないのも優れているポイントだ。
ゲーム的な意味はほとんどないのだが、□ボタン2度押しで咆哮を上げるエモートを使用できたり(突撃する際や勝利時は、多くのプレイヤーがこれで雄叫びを上げる)、LR1・2ボタン全押しでその場で自害するコマンドがあったり、中世の騎士らしい戦いを演出するための機能が充実しているのも面白く、現代やSF的な世界を舞台にしたFPSタイトルとは、ひと味もふた味も違う体験ができるようになっている。とくに「大規模チーム同士の対戦は好きだけど、ちょっとシューター系には飽きてきたな……」というプレイヤーには、是非ともプレイしてもらいたいタイトルだ。