コーエーテクモゲームスより2021年10月21日に発売されたPS4/Nintendo Switch/Steam用ソフト「BLUE REFLECTION TIE/帝」(※Steam版は11月9日発売予定)。本作に大きく関わるお二人にインタビューを実施した。
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今回インタビューの機会をいただいたのは、前作「BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣」に続いて、「BLUE REFLECTION」プロジェクトで大きな役割を担うプロデューサーの細井順三氏とキャラクターデザイン・監修の岸田メル氏。話の節々からクリエイティブへのこだわりが感じられるとともに、それをユーザーに届ける上でどういった意識で制作していったのかという、本作の魅力が形作られる工程を聞くことができた。
時間をかけて立ち上げた「BLUE REFLECTION」プロジェクト
――本作の立ち上げのタイミングについてお聞かせください。
細井氏:本作の立ち上げ自体は発売してから半年から1年後ぐらいにかけてスタートしました。アニメ化に関しては前作の発売前からさまざまなところと話をしていたのですが、その成果が実ったのが1年後でして、実は発売前から続編の話は岸田さんとしていました。
――「ルルアのアトリエ ~アーランドの錬金術士4~(以下、ルルアのアトリエ)」の発売当時(※前作の約2年後の2019年3月に発売)に行ったイベントでも制作を仄めかすような表現がありましたよね。アニメのお話が先に進んでいたということでしたが、その当時からゲームとアニメの世界観をつなげるようなものにしようと考えていたのでしょうか?
細井氏:今回のプロジェクト自体がスマートフォンだったり、アニメだったり、CS(家庭用)だったりといったところを展開していきたいというところから始まっているので、基本的には我々の想定をプロジェクトに入れ込んでいるような感じです。もちろん、それぞれの内容に関しては関係する方々の意向も踏まえて内容が決まっていますが、枠組み自体は我々が決めています。
――細井さんと岸田さんの間で、今回のプロジェクトの構想はどのように考えていったのでしょうか?
細井氏:前作の反応を見てという感じでしたよね?
岸田氏:そうですね。1作目の時に細井さんとの中に具体的な何かがあったわけではなく、リアクションを見てから次はこういう感じの雰囲気にしたいという話はずっとしていました。
アニメ「BLUE REFLECTION RAY/澪(以下、BR RAY)」に関しては、製作委員会の方々とこういう感じにしていきましょうというのは初期から僕自身も参加していて、土台に関して説明してからはアニメの制作の方々におまかせしていきました。結果的に、前作が発売されてから今回のプロジェクトが動き出すまではそんなに間は空いていないですね。
細井氏:「BLUE REFLECTION TIE/帝(以下、BR TIE)」が本格始動したのはそのさらに1年後ぐらいです。その期間、岸田さんには「ルルアのアトリエ」も進めていただきましたが、その間にも「BLUE REFLECTION」プロジェクトに関する話はしていました。
――前作から間が空いた感じはあったのですが、そう考えると流れとしては順番通りという感じなのでしょうか。
細井氏:そうですね。ただ、これだけ空くとは思っていなかったです。
岸田氏:コロナの影響もありましたからね。僕自身は、「ルルアのアトリエ」に取り掛かる前にはすでに「BLUE REFLECTION」の作業に入っていたんです。そう考えると「ルルアのアトリエ」の時はいろいろ並行していてすごかったですね。
――なるほど(笑)。
細井氏:実際、キャラクターデザインに関しては、岸田さんは3年くらい時間をかけていますね。
岸田氏:まだ情報が出ていない「BLUE REFLECTION SUN/燦(以下、BR SUN)」(DMM GAMESより提供予定のスマートフォン・PC向けゲーム)が一番大変だったんですよね。それに比べれば、「BR TIE」のキャラクターデザインはそこまでは時間はかかっていないです。
「BR SUN」は今未発表のキャラも含めて個人的には結構気に入ってるのですが、その中でも「BR TIE」に出てくる春日詩帆というキャラクターは、変身後のデザインを良い感じに3Dモデルにしていただきました。戦闘シーンを見ていても、僕が好きな感じだなと思いましたね。
苦労を重ねながらもクオリティを高めていった開発過程
――今作でも岸田さんはキャラクターデザイン・監修という立場でクレジットされていますが、前作との関わり方の変化みたいなものはあるのでしょうか?
岸田氏:正直に言うと、出来上がったものに関してはほとんど監修を入れていません。本当に重要な部分や最終的な色合い、イベントシーンなどは見せてもらっていますが、もう開発のみなさんが分かってくださっているので、あまり言うこともなかったです。
それよりも、もっと土台のところの話は前作と同じようにしていました。キャラクターや話のノリ、舞台といったところの共有が最初から取れていたので、そういうところが監修として関わった部分ですね。もちろん、キャラクターデザインに関しては本当に僕が見た目を一人で決めたようなものです。
細井氏:あとシナリオとエンディング周りに関しては、岸田さんの意向で変えたりもしていますね。
岸田氏:ラストのあたりをどうするのかというのを細井さんが悩まれている時があって、「どう思う?」と聞かれて、「個人的にはこれが良いんじゃないかなと思うんですけどね」と伝えました。結果的には大変なところを変えましたよね。
細井氏:ラストダンジョンに関しては、最初の想定がそもそも無くなりましたね(笑)。あとビジュアル面は岸田さんと相談しながら決めていった感じですよね。
岸田氏:僕は良いことだと思っているのですが、前作は僕と細井さんで決めたビジュアルだったのですが、今作は土屋さん(※今作で開発プロデューサーを務める土屋暁氏)やCGチームなどの開発陣がこうしたいというのを上乗せしていってくれているというのは僕の目線からするとあります。僕一人からでは出てこないような表現も反映されているなと。
――前作のコミュニケーションがあってこそということですね。
岸田氏:良い化学反応だなと思います。細井さんにも言っていますが、僕は陰キャなので強い日差しとか夏の青空とかはあまり好きじゃないんですけど、今度は夏の感じでいきたいという、プロデューサーとしての細井さんのこだわりが反映されているんですよね。僕と細井さんは近いところと全然好みの違うところがあって、そのぶつかり合いが作品作りとして僕は良いなと思っています。
細井氏:「BLUE REFLECTION」の描く夏は青みがかっているんです。岸田さんのイラストを見ると、夏でも寒色というイメージがあるからなのですが。
岸田氏:それは全部意識してやっていますね。
細井氏:そこは意識しているので、「ライザのアトリエ」とは夏の描き方も変わっていますね。でも岸田さんの感覚ではまだ寒色ではないのだと思うのですが。
岸田氏:僕は結構ドライなので、全部僕の思い通りに作ってそれが果たして良いのかと言われると、別にそういうつもりはないですね。前作の時もそうだったのですが、やはり僕はチームでモノづくりをする上で中間が良いと思っているので。今回もお互いの理想とするものに対してちょうど良い場所だなと感じています。
キャラクターのモデルも前作に比べるともう少しキャラクターよりに表現の仕方が変わっています。前作のモデルは少し人形っぽい部分があって、それはあえてやっていたものの、ユーザーのみなさんの反応を考えるともう少し抜いたほうが良いのかなと。それは僕らにとってベストの表現というよりも、その方がみなさんに楽しんでもらえるという視点で構成しています。
――そういうお話を聞くと、前作からのフィードバックが本当に大きいということがうかがえますね。
岸田氏:それはシステムも含めて大きいですね。前作でユーザーのみなさんが不満に思っていた部分はほぼ全部改善しているんじゃないかなという気がしますね。
細井氏:あと前作で光の表現は評価されていたので、そこは拡張するようにしましたね。実は今回、途中のビルドを見た時にライトが劣化していたので、一度全部変えているんです。もちろんそこに問題が起こる場合もあったのですが、理想の画作りをするためには一回全部入れてからオミットしたほうが良いという話をして。結果的には全て入れられて全てのハードで同じ体験を楽しめるようになったので、理想は高く持たなければいけないなと思いました。
――前作をプレイしていても感じましたが、類似するタイトルがない中で、コンセプトにあるものを高めていこうという意気込みが改めて伝わってきますね。
細井氏:岸田さんとも、単純な続編だと駄目だよねということはずっと話していましたね。
岸田氏:前作でやりたいことは意外と前作でできていて、あれをもうそのままやっても二番煎じにしかならないので。
――開発過程の中で一番大変だったことは何でしょうか?
細井氏:今回は開発チームが変わっているので作り上げるまでは本当に大変でしたが、それゆえに開発チームとしても思い入れのあるタイトルになって、クオリティも最終的にすごく上がったと思います。
開発チームの中には岸田さんと話しているメンバーもいて、そのあたりの意向や岸田さんのモノづくりへの情熱みたいなものは伝わってきているので、それに応えなきゃというのはチームとしても持っていました。それが基礎にあったので、最終的には良いものにしたいという目標は高かったです。
それをどういう風に表していいのか、どういう風に作っていけばいいのかというのが分かっていなかったので、そのレール作りが大変でした。ただ、レールが敷かれて走る方向が分かったあとのパワーはすごかったですね。今回、ゲームをプレイしてもらえれば圧倒的にクオリティが上がったなと分かってもらえると思います。
――開発チームが変わっているとなると、本質的にどう共有するかは難しいところですね。
細井氏:確かに共有は苦労しましたが、逆に楽だったのは岸田さんが納得するかしないかというレベルをバロメータとして持っていたことですね。特に前作に強く絡んでいたCGディレクターはその基準をすごく強く持っていたので、自身で判断していましたね。
――それが先ほど仰っていた、岸田さんの手元に来る時のクオリティの高さにつながっていたんですね。
岸田氏:開発の終盤ぐらいに全体のグラフィックを見させてもらって、CGディレクターに表現の意図などを聞いたりしたんです。ただ相手にもプライドがあって、僕が気になった部分はこだわりなので変えられませんと言われたので、じゃあ僕は言うことないですと(一同笑)。そういう思い入れの強さは僕にも伝わりました。ほんの少しだけ色味を調整してはいるのですが。
細井氏:色味自体は前作を基にしていて、陰影などの作法にも則っていたので、そこまで大幅なズレはなかったと思います。
岸田氏:僕のイラストからできる限りの要素を抽出しようと頑張ってくれて、僕もそこまで想定していないというのがたまにありましたね。前作ではCGモデルでそういうのが結構あって、今回はほぼ無いのですが、最後見せてもらった時に影が青すぎるという話はしましたね。
僕の絵に青みがあるからという強い気持ちでやってくれたのですが、僕から見ると「これは青すぎるんじゃないですか」と(一同笑)。それが調整ということだと思います。ユーザーの方にとって良い感じになってくれたら再現度は全然気にしないのですが、CGチームはすごくプライドがあるので、いかに僕の絵を写し取るかに命をかけてくれているので、本当に頭が上がらないですね。
今回のCGモデルはめちゃめちゃ良いですよ。これまでは自分のデザインしたキャラクターが3Dモデルになっても特に感動することはなかったのですが、今作に関しては僕が見てもめちゃめちゃかわいいんだけど、という気持ちになっています。何でかなと思っているのですが。
細井氏:表情じゃないかなと思います。
岸田氏:顔のバランスも、モノづくりなので全て同じクオリティでは無いと思うんです。モデルが終盤に行くにつれてこなれていくというのは前作でもあったのですが、今回は全部100点の中に120点、150点みたいなモデルがあるという感じですね。
――まさにそういうものの一端を体験版などの機会で見られるというところでしょうか。
細井氏:体験版でもキャラクター周りに関してはとにかく可愛いという反応をいただけていて、特に評判が良いですね。
岸田氏:今回はアニメ的な表現が3Dと上手く合致していて、なおかつ僕のモデルは若干トゥーンシェーダーが違うので、その良さを活かした上でちゃんと表情をつけてもらっているなという印象です。バランス感覚がすごいなと見ていて思いますね。
細井氏:岸田さんのデザインしたキャラクターで、ここまでだったら許されるであろうというところを検討した上で実施していますね。
岸田氏:あまりにも良すぎて、これを基準に考えたらほかの仕事が嫌になっちゃうくらいですからね(笑)。僕の中では初めて自分の絵がめっちゃ可愛く動いていることへの感動を覚えました。
「BR TIE」の主人公・愛央は日菜子との対比を意識したデザインに
――「BR RAY」の設定として前作で日菜子が原種を倒したことによってリセットされた世界ということが明かされていましたが、今回の「BR TIE」を含めてプロジェクト全体としてその時間軸の作品という認識で問題ないのでしょうか?
細井氏:そうですね、基本的にはその時間軸になります。ただ物語ひとつひとつは独立したものになっていて、そこにキャラクターがまたがって登場するという感じです。
――作品の時系列などを明示する機会はあるのでしょうか?
細井氏:いつか明示するとは思いますし、ユーザーさんも「BR TIE」をプレイすることで感じ取ってくれるかなと思います。
岸田氏:最後までプレイしてくれたらアニメ見た人も何となく理解できるようになっていると思います。
――「BR RAY」も気になる終わり方をしていたので、ぜひ楽しみにしたいと思います。ここからは具体的なゲームの内容に触れていければと思うのですが、今回岸田さんはプロジェクト全体でたくさんのキャラクターデザイン・原案を担当されていますが、その中で「BR TIE」のメインキャラクターである愛央、こころ、伶那、勇希のデザインやキャラクターとしての特徴をお聞かせください。
岸田さん:主人公の愛央に関してはストーリー的な役割は決まっていたので、隠喩のようなものが直接的ではなくてもキャラクターから匂い取れるような感じが良いなと。日菜子に関しては白くてひらひらしたようなデザインでそれをスタートだと仮定すると、対比として逆の属性だったほうが良いかなと思い、色合いはダークトーンにして、性格的にも日菜子は陰に入ったタイプの子でしたが、愛央は明るい感じが分かるように制服、変身後ともにデザインしています。
特に変身後の状態は細井さんのこだわりとして、前作よりももっと大きな武器を振り回すカッコよさや、アクロバティックな良さをもっと出していきたいという話をしていたので、それが活きてくるような感じにしています。前作は本当に魔法少女、という感じでしたが、今作はもう少しアクロバティックな動きをするバトルスーツ的なシルエットで、なおかつドレス的な要素もあるという僕っぽさを突き詰めてああいう衣装になりました。
キャラクターとしてはまずこころのデザインが最初に出来たのですが、変身後の衣装は愛央を一番に作ったので、残りの2人は愛央を基準としてもう少し振れ幅をもたせています。こころに関してはふわふわとしたキャラクターなのでギャップがあったほうが良いだろうということで、銃を扱うという要素が匂い立つようなパンキッシュな衣装にして、伶那はお姉さんっぽい感じがあるのでドレス感を強めています。
勇希に関しては、やっぱりああいう黒髪ロングの幼いキャラクターがいたほうがいいだろうという僕の一存でああいう見た目になりました。結局シナリオ上もそのイメージどおりのキャラクターになっていましたが、デザインを作った段階ではキャラクターとしてはまだ固まっていなかったので、キャラクターのデザインに引っ張られたんだと思います。
細井氏:やはりキャラクターに引っ張られているところはありますね。シナリオ自体も何回も作り直しているんですが、その過程では岸田さんのキャラクターを見た上で修正したり、配置などを反映したりしていきました。
――確かにシナリオ的にもキャラクター同士がどんどん交わっていくような作りになっていますよね。
岸田氏:前作では日菜子が主人公でありヒロインですが、今作では愛央はヒロインというよりは主人公であることを意識してデザインしていて、ヒロインは周りの女の子たちという感じです。
――先日公開されたプロモーションムービー第2弾を見ていても、愛央はカッコいいなという印象でした。
岸田氏:愛央を可愛がってもらうというよりは、愛央を遊んでくださるユーザーさんの分身として捉えられるほうが多いかもなと僕もプレイしていて思いました。
細井氏:愛央自身も迷い込んだ世界のことが何も分からないところからスタートするので、ユーザーの方にとっても同じ目線でプレイしやすいのではないかと思います。日菜子はどちらかというと客観的に応援するような主人公だったと思うのですが。
岸田氏:日菜子はとにかくユーザーさんに好かれるように細心の注意を払って作り上げたキャラクターです。そういう意味では愛央は爽やかな子ですね。
――前作はかなり邦画のような映像作りを意識していたように思えるのですが、今作はそういう雰囲気をそこまで強くは感じないですよね。
岸田氏:今回に関しては親しみやすい映画的な表現なんだけども、アニメ寄りという雰囲気の印象ですね。
細井氏:前作は邦画を作ろうみたいなところがあって、リアルな表情しか採用しなかったりしていたのですが、今回はジト目などのフェイシャルモーションを入れてアニメ的な表現を入れていて、邦画的なエッセンスを持っているアニメとしての表現になっていると思っています。前作とは違う作品表現にあえて変えているという感じです。
岸田氏:前作もあえて分かっていて若干ニッチな方向に向けて、すごくピーキーな調整をして邦画的な表現にしていました。それは唯一無二なので、今でも好きと言ってくださる方も多いのですが、それはもうやり切ってしまったので、違った方向性のほうが良いのかなと僕も思います。
――今回の変化によって、確かに受け入れる側の幅も広がっていそうですね。
細井氏:その上で「BLUE REFLECTION」が持っている光の表現は確実に入れているので、良いとこ取りにはなっているかと思います。前作は私が初めてプロデュースしたタイトルで、その後はガストブランドのタイトルを全て見るようになったので、そこから来ているものがいくつもあります。
――序盤では表情のバリエーションもコミカルなものを多く見ている印象があるのですが、話が進むことで苦悩する表現なども見えてくるのかなと。
細井氏:表情もそうですが、動きや手の感情といったところも含めて演出はこだわっているので、一つの壮大な映画を見ているような感覚になっていただけると思います。
変身シーンは岸田氏の妄想がそのまま形に!?
――ココロトープの探索中に用意された「サーチモード」はこれまでにない要素だなと思ったのですが、どういった意図で導入したのでしょうか?
細井氏:サーチモードを使うことで敵の索敵範囲を見てするする逃げていったり、ゲームとしても使わなくてはいけない場面があったりと、ゲームの幅を持たせたいというところと、ストレスを軽減させるようにするためにどうしたら良いかというところから導入しました。
――あのしゃがみの姿勢で歩く様子を見ることはあまり無くて、それが印象的でした。
細井氏:単純に見栄えを変化させることで新鮮さを与えるというのもありますね。
――バトルは前作から結構ガラッとシステムを変えていますが、改めて特徴をお伺いできればと思います。
細井氏:前作はターン制のRPGでしたが、その部分は好評で受け入れてもらえたと考えています。ただ、昨今の流れからターン制バトルは主流では無くなってきているのを事実として感じていたこともあり、ターン制ならではの戦術性・戦略性があって、その上でリアルタイム制ならではのスリリングなバトルが楽しめるものを作りたかったんです。
基本的にはリアルタイムで進んでいくのですが、キャラクターのスキルを選択した時に時間が止まって、そのタイミングは本当にゆっくり考えることができます。選択後はすぐにスキルが発動して、ここで通常のゲームだとそのまま次のターンが回ってくるまで待つことになりますが、今回はエーテルポイントが溜まっていればスキル発動中でもすぐにほかのキャラクターのスキルを選択して攻撃できます。ユーザーの方がキャラクターの操作を能動的に可変できるところが、バトルシステムのポイントになっています。
ゲームの速さに慣れていけば、すごく忙しく立ち回れるバトルになっています。畳み掛ける時には3キャラクターのスキルを一気に選択することもできますし、逆に特定のキャラクターをあえて待機させるようなこともできるので、まずはご自身の戦略に沿うことのできる、懐の深いバトルシステムになっていると思います。
――岸田さんは今回のバトルに触れてみていかがでしたか?
岸田氏:前作に比べてやれることがむちゃくちゃ増えていますよね。また、イラストレーターとしての目線ですと、演出面がカッコよくてかつ可愛らしくて、すごく良いなと思いました。
各キャラクターがどういう変身をするのかは全くのノータッチなので、気がついたらみんな可愛くて、しかもキャラクターの個性を活かした変身になっていたのですごかったですね。詩帆の変身はデザインでチェーンを付けていましたが、それを演出に取り込んでくれていて、僕が妄想したものが何も言わずに映像化されている感じでした。
バトル中は変身後も後ろ姿なので、いつも3Dのゲームを作る時にはすごく気を使いながらデザインしているのですが、実際にプレイしているとメチャクチャ良いじゃんと。それを味わいながら、しかもインファイトモードのようにキャラクターを大画面で楽しめるシステムも用意されているので、プレイしていて楽しいシステムとキャラクターを見ていて楽しい演出が高次元で融合されているなと思いました。
――学校生活での工作や学校開発に関しては、テキストや演出にどこか土屋さんらしさを感じるところはあったのですが、どのように作っていったのでしょうか?
細井氏:基本的には私と演出担当とディレクターで作っていきました。システム自体は難しくせず、キャラクターによってアビリティを変えることはやろうとなったのですが、それによって演出がきちんと走らないと簡素に見えると思っていました。今作はキャラクターの魅力をちゃんと伝えたいので、生活している感じの風景を抽象的に説明したいと思って作った演出でした。その上で、土屋がきちんと見てディレクションしています。
――正直笑ってしまいましたね。それからそのアイテムはできないだろうと(笑)。
岸田氏:そういうのが重要なんですよね。前作もツッコミどころを残さないと面白くないという話をしていて、そこは変わらずに味わい深いポイントが結構あるなと思いました。
――あとデートの仕組みもすごく印象的でしたが、どういった理由で実装したのでしょうか?
細井氏:キャラクターを好きになっても、触れ合うことがイベントだけだと物足りないというところがあり、一緒に行動を共にして二人だけの秘密を語り合うような要素がほしいということでデートシステムを追加しました。それによってタレントポイントを入手できるといった、強化システムにつながるものにしています。
今回は何するにしてもきちんと戦闘に活かされたりと、ゲームループがきちんと回るものにしたいと思っていましたが、その一方で交流のパターンを増やしたいとも考えた結果です。最初は一緒に歩くだけですが、そこからタレントレベルが上がっていくと手を繋ぐという行為があって、ここまで仲良くなったんだというのをシステムとしてきちんと表現したかったという感じです。
――デートのときは歩く速度もゆっくりにしていますよね。システム的には効率とは逆行するものですが、そこにも二人の時間の大事さが表現されていると思いました。
細井氏:効率からすると走ったほうが良いのですが、実際に走っているデートは無いので(笑)。走るという行為は中途半端なので、我々として表現したかったデートならではの環境を歩く速度で表現しつつ、ショートカットも用意しているので、すぐに目的地に向かうこともできます。
――登場するキャラクターも少しずつ発表されていきましたが、紹介されている以外のキャラクターが登場する可能性はあるのでしょうか?
細井氏:あと1人だけいますが、そちらは作品の中でも特殊な立ち位置のキャラクターなので、ぜひゲームでご確認いただければと思います。
――最後にユーザーの方々にメッセージをお願いします。
細井氏:今作は、前作からいろいろ継続してユーザーのみなさんの反応やフィードバックを活かしてきた作品になっていて、ゲームシステムやグラフィックなど全てにおいて大幅にクオリティを向上できたかなと思っています。ぜひ手にとっていただけたらと思います。
岸田氏:プレイしたことのある方は分かっているとは思いますが、ガストさんのタイトルはゲームのサイクルが面白くて、今回もプレイしていて楽しい、良くできたゲームになっていて、ビジュアル表現と両方同時に楽しめる良い作品だと自信を持ってオススメできます。前作やアニメでファンになってくれた人にはもちろんプレイしてもらいたいのですが、本作だけでも完結するのでここから入ってもらって、興味を持ったらほかのコンテンツにも行ってもらえる、入り口としても取っつきやすいものになっています。あまり敷居を高く感じず、初めての人もぜひプレイしてもらいたいと思います。
――ありがとうございました。