「機甲大戦アイアンブラッド」をレビュー。近未来を舞台に、ロボット戦争を描くスマートフォン向けのシミュレーションRPG。ロボットファンの心をアツくする、その魅力をお伝えしたい。
「機甲大戦アイアンブラッド」は、SuniceからリリースされたシミュレーションRPG。2117年という近未来を舞台に、「人型鋼兵」と呼ばれるロボット戦争を描いた作品だ。特徴は、3DCGで描かれた戦闘アニメーション。そのビジュアルは、ロボット好きならば思わず興味を持ってしまうことだろう。ではその内容はどうだったか。
オーソドックスなターン制ストラテジーを巧みにスマホRPG化
本作の全体的なゲームシステムは、スマートフォンRPGのスタイルを踏襲している。ストーリー進行はステージ毎に区切られており、クリアすることで次のステージへ。シミュレーションパートでユニットとして使うロボット「鋼兵」はパイロットなどは、ガチャで獲得する形だ。
各ステージは、オーソドックスなターン制ストラテジーとなっている。四角いマスで区切られたフィールドに、敵味方のユニットが配置。ターン毎にユニットを動かし、攻撃を行う。ステージ毎にクリア条件は異なるが、基本的に敵ユニットを全滅させればクリアとなる。
ユニット同士の戦闘結果は、おおむね「鋼兵」のパラメーターによって決まる。しかし、パイロットのスキルが与える影響も大きい。攻撃の命中率を100%に高める「必中」や、「必中」ですら回避する「必避」など、パラメーターを超えた結果をもたらすからだ。
命中率や攻撃力といった数値はプレイヤーに開示されているため、敵・味方の相互の情報を確認しつつ、「どのユニットでどの敵を攻撃するか?」「スキルを使うべきかどうか?」を見極めていくことになる。ターン制ストラテジーの醍醐味、戦術的な楽しさが味わえる部分だ。
ところで、スマートフォン向けのゲームはフィールドマップのサイズが小さく、敵の数も少なく作られていることが多い。これは、スマートフォンゲームの多くが、スキマ時間にプレイされることを考慮してのものだろう。電車でひと駅移動する程度のスキマ時間でもクリアできるボリュームという前提で考えると、必然的に、フィールドの大きさはそれなりの大きさに留まる。
しかし、本作はスマートフォンゲームだからといってフィールドサイズをことさら小さくしていない。もちろん、ステージによってはフィールドが小さいこともあるが、基本的にどのステージも、「小さい」という印象を受けないサイズだ。このため、ターン制ストラテジーをプレイしている実感をしっかり味わえる。
本作のフィールドの大きさを活かした要素が、宝箱だ。フィールド中に配置された宝箱のマスへユニットを移動することで、アイテムが獲得できるという要素。宝箱は敵ユニットの方向とは異なる場所へ配置されていることが多いため、宝箱を手に入れようと思うと、戦力を分散するか、多くのターン数をかけるかのどちらかになる。
一方で、各ステージには「味方のダメージを一定範囲内に抑えること」や「一定ターン内の敵撃破」などのミッションが用意されている。これらのミッションを達成せずともクリアは可能。しかし、条件が設定されているのであれば、全部まとめて達成したくなるのがゲーマーの性というものだろう。ただ、「ステージクリア」「全宝箱の獲得」「ミッションの達成」を一度にめざすなら、各ターン、無駄な手数を踏まず的確に行動しなければならない。クリアするだけなら正直カンタン。しかし、宝箱やミッションを気にし出すと難易度が跳ね上がるわけだ。
こうした本作のバランス調整は、非常に秀逸だと感じた。本作の「ロボットもの」としての部分にだけ魅力を感じているのであれば、ステージクリアだけを目指せば、さほど苦もなくプレイできる。本作には武器選択せずダイレクトに「攻撃」ボタンをタップするとオートで攻撃してくれるという機能も用意されているので、ストラテジーが苦手というプレイヤーでも楽しめるだろう。一方、ストラテジーゲームとして、「最善の一手」に悩む楽しさを味わいたいのであれば、宝箱全回収やミッション全達成を目指すと、一気に歯ごたえが増す。「ロボットもの」というジャンルの好き嫌いを度外視しても、ストラテジーゲームとして満足できる仕上がりだと感じた。
魂に語りかけてくる…!ロボットものとしての熱さ
続いては本作の「ロボットもの」としての側面に触れたい。「ロボットもの」には様々なテイストのものが存在している。本作は、国家間の戦争というややリアル寄りな世界設定を持っているが、SFミリタリーほどリアルではない。リアルな設定はスパイスとして使いつつも、本質的にはヒーローもの的な「熱い展開」を見せる作品だ。
本作の舞台、2117年は第三次世界大戦終結後の世界だ。第三次世界大戦は、月の資源「He3」を巡って勃発したが、突如現れたロボット…「人型鋼兵」によって終結した。その後、資源を管理する組織が設立され、世界情勢が均衡したかに見えたが、ある日リントン帝国の鋼兵が盗まれ、各国の首脳が暗殺される。これをきっかけに再び世界は戦争へ向かい始める。
ストーリー的な意味で本作の主人公となるのは、ジェイ・パーカーという青年。パーカー家という名家出身だが、家柄だけに頼るようなタイプの人間ではなく、能力や性格の良さもしっかり持ち合わせている。主人公としては申し分のないキャラクター。なお、プレイヤーは彼の所属する軍の司令官という立場。残念ながらストーリー的には強く関わってこない。
本作はまずこのジェイが熱い。まさに主人公・オブ・主人公。「そこは自分を犠牲にしてでも、味方を守るだろ?」という場面ではキッチリ体を張って味方を守るし、戦力差的にピンチという場面では、打開のための秘策をバッチリ思いついてくれる。「べタ」と思う人もいるかもしれないが、「べタ」と分かっていても熱くさせてくれるキャラクターだと感じた。見ていて、「これだよ、ロボットものの主人公はこういうヤツだよ!」と心が奮える。
次に、敵として登場する「アンジェ」が熱い。任務であれば汚れ仕事でも手を染めるという覚悟を持っていながらも、散っていった仲間のことを決して裏切らない、軍人としての矜持を持ち合わせている。その上、強い。搭乗する赤い機体「アリスター」のゴツさもあいまって、圧倒的にキャラクターが立っている。
また、ストーリー展開が熱い。ネタバレを避けるため詳しくは書かないが、「盗まれた新型機」「突如現れる謎のキャラクター」「謎のキャラクターとの間にある過去の因縁」などなど、ロボットものの作品に触れてきたファンであれば、もはや条件反射で興奮してしまうような展開が次々押し寄せてくるのだ。
さて、ここまで本作の魅力について触れてきたが、残念な面もないわけではない。それは、ロボットや背景の3DCGのクオリティが、低く感じられること。本作の特徴は戦闘「アニメーション」だと書いた通り、エフェクトと併せて動いているところを見るとさほど気にならないのだが、静止画だと、何世代か前のゲームのように感じられる人もいるのではないだろうか。ただ、先に触れた通り、動いているところは非常にカッコイイ。攻撃モーションやエフェクトが「これを求めていたんだよ!」と感じるツボを押さえた作りになっているからだ。プレイ前はクオリティが気になったとしても、プレイを始めると、気にならなくなることだろう。
ロボットものとしてもストラテジーとしても満足度の高い良作
本作はロボットものとしてプレイしても、ターン制ストラテジーゲームとしてプレイしても、一定以上の楽しさを与えてくれる、満足度の高い作品だと思う。この記事で触れた通り、3DCGのクオリティに物足りない部分はあるが、アニメーションやエフェクト、熱いストーリー展開のおかげで、そこまで気になることはないだろう。ロボットもののファンであれば、プレイしないのはもったいない。良作といって差し支えない作品だ。