ダウンロードで遊べる、気になるゲームの魅力を実際にプレイした上でご紹介する「DLゲームインプレッション」。第11回は、Nintendo Switchにて配信中の「Mindcell」をピックアップ!
「Mindcell」はインディーゲームデベロッパーのVenomized Artが開発、レイニーフロッグが販売を手掛ける、ひとりプレイ用のサードパーソン・シューティングゲーム(TPS)。主人公・セスを操作し、人体実験をくり返す研究所から脱出。追っ手を退けつつ、この研究所にまつわる謎を解き明かす、サイバーパンク風味のストーリーとなっている。
この手のゲームジャンルとしては非常に安価な600円(税込)という価格で販売されている本作。あらゆる点で「価格相応」なゲームでありながら、黙々と遊び続けてしまう、妙な魅力のあるゲームだ。
研究所の脱出を図るセスの運命は?
本作は、研究所でセスが目覚めたところから物語がはじまる。セスをはじめ、一部の登場人物の額には、長方形の切れ込みがある。どうやらこの世界では、額のカートリッジを入れ替えることで、人間の肉体に別の人間の頭脳を移し替えられるようなのだ。
自分が何故ここにいるのか分からないセスは、腕にはめられていたリストバンドから話しかけてくる、事情を知っている素振りの人物・ブライアンに導かれ、真相を知るために研究所の脱出を目指す。
ゲームをはじめるとき、まずは難易度を「易しい」「普通」「難しい」から選ぶことになる。筆者は「普通」を選んだが、詰まるようなところはなかったので、ある程度アクションゲームに慣れている人は「普通」で問題ないだろう。
敵との戦闘と、先に進むためのギミックの起動を交互に行うような流れでゲームが進行する本作。複数のチャプターに分かれており、チャプターが変わるとゲームの舞台も移り変わる。中盤からはブライアン以外にもセスに協力してくれる仲間が現れる。二転三転していくストーリー展開に注目だ。
戦闘では、近接攻撃と銃撃を組み合わせて立ち回ることに
「Mindcell」のゲームプレイの大半を占めるのは、敵との戦闘だ。本作において武器は、拾ったり、敵を倒して奪うことで使えるようになる。序盤はしばらく銃は入手できず、鈍器やナイフなどによる近接攻撃で迫りくる敵を倒すことに。
近接戦闘では、敵の攻撃をZLボタンでガードしてさばき、怯んだところにZRボタンで反撃するのがセオリーだ。一定時間ダメージを受けなければ、体力は自動的に回復していくので、ピンチになったら冷静に距離を取ることも大切。敵に見つかる前ならば後ろから先制攻撃を仕掛けるのも、有効な立ち回りと言える。
なお、近接攻撃をすると青いスタミナゲージを消費する。また、すべての近接武器には耐久度が設けられているが、武器自体が潤沢に手に入るので、ガンガン使い捨ててしまって問題ない。後述する銃の弾薬と合わせて、少なくとも難易度「普通」ならば、綿密なリソース管理は不要だ。
銃が手に入るようになったら、いよいよTPSらしいゲーム性となる。ZLで狙いを定め、ZRで撃つというお馴染みの操作で、この手のジャンルに親しんでいるプレイヤーならば、すぐに慣れることができるだろう。同系統の銃を使っている敵を倒すことで、その弾薬を補充できる。ところどころに弾薬を補充できる装置も配置されており、こちらも利用可能だ。
弾薬の補充を考えると、必然的に敵が利用しているものと同系統の銃を多用することになる。最初のうちはハンドガン、そこからマシンガンやショットガンと、それぞれに使い心地が異なる銃を使っていくことになるので、プレイフィールは緩やかに変化していく。近接武器、銃器合わせて、一度に所持できる武器はふたつなので、どんな戦いにも応用できるような組み合わせを考えるのが良いだろう。
戦闘での引っ掛かりポイントあれこれ
基本的に難易度は高くない本作の戦闘だが、少々理不尽に感じたり、プレイしていて引っ掛かりを覚えるポイントはいくつもあった。たとえば、前述したスタミナゲージはほかのシステムと上手く噛み合っているとはいえないし、より多くの問題をはらんでいるのは、銃と近接武器の相互関係の部分だ。
銃を装備しているときは近接攻撃とガードが使用できないため、近づいてきた敵に対応するには近接武器に切り替えたくなるのだが、武器の切り替えに対応しているのは十字キーだ。銃での戦闘中はふたつのスティックで移動とエイムの操作を行っているので、十字キーに指を伸ばそうとするとワンテンポ遅れてしまう。空いているL・Rボタンに武器の切り替えが割り振られていたら、武器の使い分けはもっと快適になっていたように思う。
こちらは近接攻撃を行うのに武器の切り替えが必要なのに、一部の敵はこちらが近くにいると、銃撃の途中でも瞬時にパンチをくり出してくる。こちらには不可能なローリングによる回避をくり出す敵もおり、少々不公平に感じる。
極めつけは敵のパンチを食らうと転倒させられ、転倒中は武器の切り替えが不可能という点だ。前述のとおり、銃を装備しているとガードができない。これに転倒中の武器切り替え不可が組み合わさって「近接攻撃で転倒させられる→銃撃による追撃→起き上がった直後にまた転倒させられる」というコンボを食らうことがままあり、この間はまったく反撃ができないのだ。
銃に装填された弾が尽きると自動的にリロードが行われ、この間も無防備かつ武器の切り替えができない。これらは明確にストレスが貯まる部分ではあるが、この不自由さをなんとかコントロールしつつ立ち回るのは存外たのしかったりする。敵の単純な行動パターンを利用しておびき寄せ、曲がり角で待ち受けて、近接武器でめった打ちにする――こういった戦い方で難所を切り抜けられるあたりの良くも悪くも「ゲームらしい」感じは、個人的には嫌いになれない部分だ。
ある種のゲーマーにはノスタルジーを感じられる(かもしれない)一作
本作のクリアまでに掛かる時間は、4時間~5時間程度。ゲームとしての難易度はちょうどいい塩梅で、ストーリーも(分かりづらい部分もあったが)それなりに先が気になるものだったこともあり、なんだかんだで最後まで一気に遊べてしまう引力を持ったタイトルだった。結末は次回作に続くことを匂わせるものだったが、もし次回作がリリースされた場合、筆者はせっかくなので遊んでみたいと思っている。
日々リリースされている数々の独創的で良質なゲームと比べたら、本作ならではの優れている点はほとんどない。にも関わらず、筆者がなんとなく本作を好ましく感じられたのは、初代PS~PS2やセガサターンの、100円~500円ほどで売られていた中古ソフトを買い漁ってプレイしてみたときの感覚と、重なるものがあったからかもしれない。
どんなゲームかよく分からないまま起動し、あまり良いとは言えない操作性や、ムービーシーンのチープな演出に苦笑しながらも、ネット上での口コミもほとんどないからこそ、かえって先の展開が気になってプレイを続けてしまうような、一種独特の魅力がそこにはあった。「Mindcell」をプレイしていると、そのことが思い出されるのだ。
この感覚に覚えがある人ならば、本作を手に取ってみてもいいかもしれない。