ピクセルリマスターシリーズのトリを飾る「ファイナルファンタジーVI」をレビュー。2D「ファイナルファンタジー」シリーズの集大成といえる一作はどうリマスター化されたのか。その魅力を紹介する。

目次
  1. 美麗なビジュアルを違和感なくリマスター
  2. 集大成にして挑戦作!2DRPGのひとつの到達点
  3. 今の作品としておもしろい!?RPGスタイルの娯楽大作

「ファイナルファンタジーI」から「VI」までの6作品をリマスターするというプロジェクト「ファイナルファンタジー ピクセルリマスター」も、とうとう6作品目。「ファイナルファンタジーVI」が発売された。筆者は、スーパーファミコン後期に発売されたオリジナル版「ファイナルファンタジーVI」を、2DRPGのひとつの到達点だと感じている。確かに「ファイナルファンタジーI」から「V」まで、いずれもおもしろい。しかし、完成度の面で「ファイナルファンタジーVI」が群を抜いていたことに間違いはないだろう。

美麗なビジュアルを違和感なくリマスター

筆者ががオリジナル版「ファイナルファンタジーVI」最大の特徴と考えているのは、その圧倒的なビジュアルクオリティ。それまでのシリーズとは異なる手法で描かれたビジュアルに、当時は度肝を抜かれた。当時、ゲームのビジュアルクオリティといえばアーケードゲームがトップ。ハードウェアの性能そのものが違うのだから当然といえば当然なのだが、家庭用ゲーム機のビジュアルは、アーケードと比べれば、やや劣るように感じられていた。しかし、「ファイナルファンタジーVI」は違っていた。当時のアーケードゲームに匹敵するようなビジュアルを持っていたのだ。

この点で、「ファイナルファンタジーVI」のピクセルリマスター版は、他のピクセルリマスターと比べて若干立ち位置が異なる。他のピクセルリマスターは、レトロゲームのビジュアルを現代でも通じるクオリティに引き上げるという側面を持っていた。そういう意味で、アレンジの比率が高かったように思う。当時の作品が、現代技術でどうアレンジされるのか、楽しみにしていた人も少なくないのではないだろうか。しかし、「ファイナルファンタジーVI」については、そもそも当時から美しかったのだ。

このため、本作をプレイしての筆者の感想は「ビジュアルがきれいになった!」ではなく「おお、当時のままだな」というもの。もちろん、厳密には違う。当時とは画面の解像度が異なるため、本作にはリマスターが施されている。筆者より「ファイナルファンタジーVI」に触れる頻度の高い人であれば、どこがどう変わっているのか気づくことだろう。しかし筆者からすると、当時のままの「VI」がスマホで動いているという印象だった。

なお、これは本作を否定しているのではない。そもそも「リマスター」というのは、音楽や映画などで古くなった映像・音源を、現代の再生環境に合うよう収録しなおすこと。現代の環境でも違和感なく再生できるということが主眼であって、アレンジを加えることは重要ではない。そういう意味では、本作こそ最も「リマスター」本来の概念に近い作品といえるだろう。

集大成にして挑戦作!2DRPGのひとつの到達点

ゲームシステム面に目を向けると、本作は「I」から「V」までの集大成といえる。ゲームの基本的なつくりは、「I」からの形式を踏襲。見下ろし型画面でフィールドや街、ダンジョンを探索し、ランダムエンカウントで戦闘シーンへ。戦闘シーンはもちろんサイドビュー形式。

バトルシステムは「IV」以来のアクティブタイムバトル。敵も味方も一定時間ごとに行動が行えるというスタイルだ。

一方、「III」や「V」で取り入れられていたジョブシステムは姿を消してしまったように見える。本作のキャラクターは、ティナ=召喚士、ロック=シーフ、マッシュ=モンクのようにキャラクターとジョブが固定されており、ジョブの変更はできない。しかし、その一方で自由に魔法を習得可能な「魔石」や、装備することでアビリティを付加できる「アクセサリ」によってキャラクターカスタマイズの自由度は高い。これは、「V」のアビリティシステムを進化させたものといえるだろう。

こうした、それまでのシリーズのいいところを継承する一方で、本作は新たなチャレンジも多数行っている。そのひとつが、シリーズ初の群像劇スタイル。本作は、ゲーム開始直後こそ、ティナという少女の視点で進むが、物語が進むにつれ視点を担当する主人公が入れ替わったり、複数のパーティーを切り替えつつ進行したり…といった状況が発生する。これによってストーリー展開が奥深くなっただけでなく、キャラクターの個性が強力に打ち出されたことが特徴といえるだろう。

ストーリー面の挑戦としては、「V」まで「剣と魔法の西洋風ファンタジー」を世界観のベースしていたのに対し、蒸気や機械といったモチーフが象徴する「スチームパンク」が世界観のベースとなっていることも触れておきたい。「ファイナルファンタジーVII」以降も含めて考えると、必ずしも「ファイナルファンタジー」=「剣と魔法」というわけではないが、「I」~「V」までの流れを踏まえると、いかに「VI」の世界観が独特か、わかってもらえると思う。世界観の変更を反映してか、シリーズの象徴となっていた「クリスタル」が登場しないというのもチャレンジングだ。

また、多彩なイベントが盛り込まれているというのも、本作の行った挑戦のひとつだろう。有名な「オペラ」のシーンもさることながら、筆者が気に入っているのは、ナルシェの炭鉱ダンジョンのミニゲームイベント。3つのパーティーを操作し、リアルタイムに進行してくる敵シンボルをシンボルエンカウント型の戦闘で倒しつつ、ボスの元に向かうというタワーディフェンス的なイベントが発生する。

他にも、リターナー本部からいかだでナルシェへと向かうイベントでは、移動が自動進行となり、分岐の選択以外操作不能に。そして、発生する戦闘では、リターナーのリーダーであるバナンの護衛が条件づけられる。

つまり、単にダンジョンの形が違う、出題されるパズルが違う…というのではなく、イベントごとに異なる「娯楽」を提供しようとしているのだ。これは、現代のゲーム作品としてプレイしても意欲的に感じるポイントではないだろうか。

2D「ファイナルファンタジー」の集大成でありながら、意欲的な試みを多数行った挑戦作でもある。さらにはビジュアルクオリティが圧倒的。筆者が「ファイナルファンタジーVI」を2DRPGのひとつの到達点と考えるのは、こうした理由からだ。

今の作品としておもしろい!?RPGスタイルの娯楽大作

筆者はこれまでのピクセルリマスターシリーズのレビューで、「今でも通用する楽しさ」と表現してきた。この言葉には、「レトロゲームではある」が、今プレイして「も」おもしろいというニュアンスが込められている。ただ、本作については、今で「も」ではなく、今の作品としておもしろいと感じた。

「それは褒めすぎじゃないの?」と思う人もいるかもしれない。ただ、ここまでに書いた通り、本作にはRPGという枠を超えた「娯楽」が詰め込まれている。とにかく、いろんな手法で楽しませてくれるので、レトロとかリマスターとか関係なく、純粋にプレイしていて楽しいのだ。その上、「プレイヤーを驚かせよう、楽しませよう」という当時のクリエイターの熱が感じられるように思う。単なるRPGというより、娯楽大作という言葉がふさわしい。

今回プレイして気づいたのだが、本作のこの娯楽の多彩さを正統進化させると「ファイナルファンタジーVII」になるのだろう。「ファイナルファンタジーVII」もまた、ディフェンスゲーム的なミニゲームやレースゲーム的なミニゲームなど、様々な形の娯楽が詰め込まれた作品だった。「ファイナルファンタジーVII」がリリースされた当時は3Dであることにただただ目を奪われてしまったが、「ファイナルファンタジー」の歴史を踏まえて改めて各タイトルをプレイすると、以前は気づかなかったことに気づかされる。こういう楽しみ方もまた、「ピクセルリマスター」の醍醐味といえるだろう。かつてシリーズをプレイした人は、ぜひ他の「ピクセルリマスター」シリーズと併せて楽しんでほしい。

ファイナルファンタジーVI ピクセルリマスター

スクウェア・エニックス

PCダウンロード

  • 発売日:2022年2月24日
  • 12歳以上対象
  • Steam

ファイナルファンタジーVI ピクセルリマスター

スクウェア・エニックス

iOSアプリiOS

  • 配信日:2022年2月24日
  • 価格:2,200円(税込)

    ファイナルファンタジーVI ピクセルリマスター

    スクウェア・エニックス

    AndroidアプリAndroid

    • 配信日:2022年2月24日
    • 価格:2,200円(税込)

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