スクウェア・エニックスから2023年4月20日に発売される、PS4/Nintendo Switch版「ファイナルファンタジーVI ピクセルリマスター」のレビューをお届けする。
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2021~2022年にかけてPC/スマートフォン向けに「ファイナルファンタジー」~「ファイナルファンタジーVI」の全6作がリリースされた「ファイナルファンタジー ピクセルリマスター(以下、FF ピクセルリマスター)」シリーズが、PS4/Nintendo Switch向けに登場。本稿では「ファイナルファンタジーVI ピクセルリマスター」PS4版レビューをお届けしよう。
なお、本稿は極力ネタバレを避けているが、【多少のネタバレが含まれる】ので、ご注意願いたい。
「FF ピクセルリマスター」とは?
まず改めて、「FF ピクセルリマスター」シリーズについて説明しよう。
本作は「FF」の「I」~「VI」まで……2Dのドット絵時代だった作品を、ドット絵のもつ良さはそのままに、グラフィックを一新した作品。オリジナル版の頃からドットキャラを描き続けてる渋谷員子氏が、全プレイヤーキャラを制作しているのも魅力のひとつだ。
最初はPC/スマホ向けに出されたタイトルだったが、この度ついに家庭用ゲーム機で遊べるようにと移植が行われた。この移植で、オリジナル版BGMとピクセルリマスター版アレンジBGMとの切り替えや、ピクセルフォントとオリジナルフォントの切り替えなどの機能も新しく実装されているのが嬉しい点。
エンカウントオンオフ機能の搭載などもあって、現代風に遊びやすさを追求した作品となっている。
なお、PS版やGBA版を始めとした移植作品の移植ではなく、あくまで原作版のリマスターに追加要素を施したものとなる。よって、一部移植作品でのみ追加されたダンジョンなどはピクセルリマスター版にはない。注意してほしい。
今回プレイするのは「FFVI」、演出の妙が光る!
「FFI」~「FFVI」まで一気に発売される家庭用ゲーム機向け「FF ピクセルリマスター」版だが、今回は筆者も大好きな「FFVI」をプレイさせてもらうことにした。
「FFVI」は1994年4月2日に発売された作品で、SFC最後の「FF」となった。当時としては非常に大容量な24MB(メガビット)ロムカセットを使用しており、そのボリュームに応じた美しいグラフィックや壮大な演出、美しい音楽、重厚なストーリーが魅力的な作品だった。当時は「SFCの作品としては間違いなく最高峰レベルの作品」と謳われた。
「FF」といえばクリスタル、という印象を一新、本作にはクリスタルはまったく登場しないのも、大きな特徴のひとつと言っていいだろう。また、「FF」というと「機械+魔法」の世界観を印象付けた作品とも言え、「FFVII」以降の作品作りにも大きな影響を与えた一本となった。
さて、「FFVI」だが、1000年前、全てを焼き尽くしたという魔大戦が終わり、それと共に世界から魔法という力が消えた。その代わりに、人々は機械の力を使って生きていた。だが、魔法を蘇らせんとするガストラ帝国によって、世界は再び混乱へと巻き込まれていくこととなる。
この世界でプレイヤーはまず生まれながらにして魔導の力を持つ少女「ティナ」を主人公に、物語を進めることになる。
意識を奪うアイテムによって帝国にむりやり操られていたティナだが、とある事件をきっかけに己の意識を取り戻す。そしてティナと行動を共にするのは、トレジャーハンターで帝国に反する組織「リターナー」の一員であるロックだ。
物語冒頭で、帝国の兵士として炭鉱都市ナルシェを襲ったティナの護衛をする、ロック。だが、さまざまな出来事が起こりティナがパーティから離脱してしまう時期もあるため、実質物語前半の中心人物はロックだと言っても過言ではないだろう。
他にも、帝国の将軍であるセリス、フィガロ王国の国王エドガー、その双子の弟マッシュ、ドマ国の戦士で「ござる」という語尾が特徴のカイエン、ギャンブラーのセッツァー、アサシンのシャドウとその相棒の犬インターセプター、幼いころに捨てられて野生児として育ったガウ、モーグリのモグ、モンスターの使った技を覚えることができるストラゴスとその孫娘リルムなど、総勢14名もの様々な魅力的なキャラクターが登場する。
主人公はティナと思われがちだが、実質全員が主人公という、群像劇に近いスタイルの作品となっている。ほぼ全員が何かしらの過去を抱えていて、特徴的な演出とセリフ回しで、プレイしている側に非常に深い感慨を与えるようなイベントシーンが多い。
ボイスがある時代の作品ではないため、文字とドット絵、そして音楽という主にこの3つでの演出に頼らざるを得なかった時代で、よくこれだけ豊かな演出ができたと思うほどだ。例えば「いたーい!」というセリフひとつも、「い」……「たーい!」のようにあえて時間をおいて表示することで、そのキャラクターの言い回しが想像できるような演出となっている。
そこにドット絵の動きと共に流れる楽し気な音楽、悲し気な音楽、コミカルな音楽などがあわさることで、感情の機微が受け取れる。
また、ストーリーが中盤を過ぎた頃、世界に大きな変化が訪れる。一般的に「崩壊前」「崩壊後」と呼ばれているが、この崩壊後はセリスが物語の中心となるのも、大きな変化のひとつだ。
これまで主人公とされてきたティナを最後まで抜いたままラスボスに突入することすら可能になってしまうことからも、主人公がティナひとりではなく、群像劇のような体で作られていることがわかるだろう。
ゲーム上必須ではないイベントも多く、本筋ではないイベントの中で描かれる過去も多い。そのため、やりこみ要素も多い作品となっている。
バトルはお馴染みアクティブタイムバトル、途中からガラリとかわる育成システム!
本作のバトルは、これまで「FF」シリーズをプレイしたことがある人ならば大抵は馴染みがあるであろう、アクティブタイムバトル(ATB)システム。画面右下の行動ゲージが貯まった順番から行動していき、コマンドを選択していくというタイプのバトルだ。
コマンドを選んでいる間に敵もどんどん行動してくるので、コマンドバトルながらも緊迫したバトルを楽しむことができる。
そして本作の育成システムは、序盤のうちはいわゆるレベルを上げて強くしていくタイプのゲームだ。魔法が失われた世界という設定のため、生まれながらにして魔導の力を持つティナと、人工的に魔導の力を加えられたセリス以外は魔法を使用できないのも特徴である。
しかし、ゲームも中盤にさしかかるというところになって、突如登場する育成システムが「魔石」。この魔石を手に入れられるようになってからが「FFVI」の真髄とも言え、他のキャラクターたちも魔法を覚えられるようになる。また、ティナやセリスも新たな魔法を覚えていくことが可能だ。
この魔石システムが、本作のやめどころが解らくなってしまうという、恐ろしい沼なシステムである。魔石そのものは、単純に言うと召喚獣の残された力の結晶のようなもので、魔石を使うことで召喚獣を呼び出せるのは「FF」らしさがある。
魔石が手に入るようになってから、バトルでは「魔法修得値」というポイントが入るようになっており、この魔法修得値に修得倍率があわさって、魔法を覚えられるスピードが決まる。例えば修得倍率が5倍なら、修得するのに必要な魔法修得値は20ポイントとなる。魔法修得値は最低でも1は入るので、最高でも20回バトルをしたらその魔法を覚えられるということだ。魔法修得値が2ポイントはいれば10回のバトルで済む。
それのどこが沼なのかというと、「この魔法……あと2回バトルすれば覚えられるかも……」となった場合、「どうせなら覚えておこう」と2回バトルをする。そうすると今度は他のキャラクターが別の魔法をあと数回で覚えられる状態になったりする。そうなると、やはり覚えてしまいたくなる。
他にも新たな魔石が手に入ると、「この魔法、覚えたいな」となる。修得倍率が1倍とかだと諸々諦めもつくのだが、修得倍率がそこそこに高いと「あとちょっとバトルしたら覚えられるなぁ……」となってしまう。これをついつい繰り返してしまう恐ろしい沼システムが、魔石システムなのである。
さらに、魔石にはレベルアップ時「HP+10%」「力+1」といったようなボーナスが入るものがある。これが更なる沼で、魔法修得値を稼いでいけば必然的に経験値も入るため、レベルが上がっていく。レベルが上がっていけば、この魔石ボーナスがほしくなる。「あと1回戦ったらレベルアップか、それまでにこのボーナス魔石につけかえておきたいけれど、ここでやめてしまったら次に遊ぶときに忘れそうだな……」となってしまうので、「ならレベルアップまでやるか!!」という気持ちにさせられる。
そしてレベルアップをさせてしまうと、今度は他のキャラクターのレベルが上がりそうになってしまい……以下無限ループである。
という、魔法修得値と経験値とがダブルに襲ってきて、ついついバトルをやめられないのが「FFVI」。だが、本作ではエンカウントオンオフ機能がついたので、若干この沼から抜け出しやすくはなった……ようには感じられる。
筆者は魔法修得値の効率の良い場所を狙うよりも、その場その場で魔法を覚えさせたいタイプのため、そこまでエンカウントオンオフ機能を使用していないのだが、この機能を使用すれば魔大陸やサボテンダーなど、魔法修得値が高い場所までボス戦と必須エンカウントの場所を除いて、ひたすらストーリーだけをダッシュし続けることができる。
結局は魔法修得値の効率の良い場所で全魔石マスターを狙ってしまうようなことに陥るので、完全に沼から抜けられるというわけではないが、魔法修得値の効率があまりよくない場所よりは沼にハマっている時間が短くて済むだろう。
「ストーリーの偶数、システムの奇数」と言われがちな当時の「FF」だったが、この魔石システムについては充分にハマれる要素があり、ストーリーももちろん良かったが、筆者としてはこの魔石システムについても非常に推したい部分だ。
全魔石をマスターにしてしまえばそれでおしまいではあるのだが、レベルアップボーナスもあるので、結局魔石をつけたり変えたりするのは変わらないと感じる。この手間が、手間のように見えて楽しい、それが「FFVI」である。
オペラなどの要素もリファイン!
本作では、画面右上の地図の大きさを3段階まで変えられるようになった。細かいようだが、非常にありがたい機能で、筆者は普段は邪魔になりにくい2番目の大きさの地図にしており、初めての場所や久しぶりで地形を忘れがちな場所へといくときは、いちばん大きな地図にして見ていた。
さらには一度訪れた場所が一目瞭然にわかる地図も重宝しており、「○○の街へ行けと言われたけどどこだったかな」という時に大変ありがたい機能だった。
このように細かいところのUIにも手が加えられ遊びやすくなった本作だが、ピクセルリマスター版の新要素としてどうしてもここは紹介したい、という場所に「マリアとドラクゥ」のオペラシーンがある。
このオペラは7か国語で収録され、SFC版のリマスターに留まらないリマスターが行われている箇所だ。オペラのシーンだけは、音源を「オリジナル」(SFC版)にしていても、リファイン版が流れるようになっている。オリジナル版の、歌声を彷彿させる音の出し方も良かったが、ここはぜひ生の歌声に酔いしれてほしい。
ちなみにこの7言語によるオペラについては、昨年度のCEDECの記事でも触れているため、ぜひこちらも改めて目を通してもらえれば幸いだ。
サウンドプレイヤーは、オリジナル版とリファイン版のどちらも収録されているのが嬉しい。
他にもオートバトルの搭載、オートバトル継続のオンオフ(ボス戦時は強制的にオフになるのが有り難い)、通常移動速度の強化、獲得経験値の調整など、さまざまな調整が入っている。さらに本作から、カイエンの必殺技の名前変更も再び可能となった。
これらの調整により、大半の要素を回収しても(コンプリート要素を除く)、およそ20時間前後でクリアが可能になったのも嬉しい。何せ原作は40時間ほどかかった覚えがあるので、随分と遊びやすくなった印象だ(「FFVI」は遊び方次第でクリアタイムを相当短縮できるため、時間は目安だと思ってほしい)。
特にエンカウントオンオフ機能を駆使して、面倒な状態異常をかけてくる敵が多い場所はボスしか戦わないようにダッシュすることができるようになったのは、やはり大きいと言えるだろう。
少々不安だったPC/スマホ版でのバグについてだが、少なくとも今回筆者が遊んだ限りでは特に気になるバグはなかった。細かいバグは、拾いきれていない可能性もあるため不明だが、少なくとも普通にプレイをしていて困るようなバグには遭遇していない。ただしこの点についてはあくまで筆者の経験だけであることは、ご承知いただきたい。
アルテマウェポン、魔列車に三闘神……何か知っている用語があるのでは?
「FFVI」は後世の「FF」に大きな影響を及ぼしている。その大きなひとつが、後の「FF」シリーズでもほぼ全作に何かしらの形で登場することが多くなった「アルテマウェポン」ではないだろうか。「FFVI」では武器、そして敵としてアルテマウェポンが登場する。
その他、ドマ国関連イベントから戦うことになる、名ボスのひとつとして名高い「魔列車」や、世界の行く末に大きく関わることになる「三闘神」などが登場するのも「FFVI」である。これらの名前に聞きおぼえのあるひとは、ぜひ本作をプレイしてみてほしい。
筆者も10数年ぶりくらいにプレイしたのだが、今遊んでみても改めて非常に面白いゲームだと感じることができた上に、古臭さを全く感じさせない出来栄えのゲームとなっている。家庭用ゲーム機で気軽にかつ快適にプレイできるようになった今だからこそオススメしたい、そんな一本である。
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LOGO & IMAGE ILLUSTRATION:(C)1994 YOSHITAKA AMANO
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