Ujoy Gamesからリリースされた「ソウルタイド」をレビュー。ダンジョン探索の楽しさをスマートフォン向けRPGの形へと巧みに落とし込んだ作品。その魅力を紹介したい。
「ソウルタイド」は、Ujoy Gamesからリリースされたスマートフォン向けダンジョン探索RPG。「人形」と呼ばれる美少女キャラクターを収集、編成しダンジョンを攻略するというその内容は、一見、スタンダードなスマホ向けRPGに見える。しかしプレイすると、ダンジョン探索の楽しさを巧みにスマホ向けRPGのシステムへと織り込んだことがわかる…。そんな一作だ。
美少女たちとともにダンジョンを探索するスマホ向けRPG
本作の舞台は、教団と魔女の戦いが繰り広げられる「三日月大陸。この大陸に、無尽蔵の魔力を持つ「境界」が出現。魔女たちはこの「境界」を自分たちの陰謀に利用しはじめる…。
教団側は魔女たちに対抗するため、「境界」の探索を開始。しかし人間の魂を飲み込んでしまうという「境界」の特性から、生身の人間では探索できない。そこで教団は、他の世界で死んだ人間の魂を召喚、実体化させるという手法を編み出した。この召喚によって実体化した存在が「眠り人形」…通称「人形」。プレイヤー=主人公は「人形」を操る「人形使い」という立場で本作へ関わることになる。
本作の中心となるキャラクター、「人形」はいずれも美少女。2Dイラストとして描かれた素材を動かす技術「Live2D」を使用しているので、見た目にかわいいだけでなく、よく動く。このため、会話シーンの臨場感が高い。
この魅力的な「人形」たちとのやりとりは、本作の大きな魅力。ゲームシステム的なメインはダンジョン探索なのだが、メインストーリーや「人形」たちの育成・好感度アップといった形でキャラクターとしての「人形」たちに触れられる機能が多数存在。お気に入りの「人形」を愛でる楽しさをしっかり味わえる。
だが、筆者が本作で推したいのは、「境界」を探索するダンジョン探索パート。「人形」たちとのコミュニケーションももちろん楽しいのだが、個人的にはダンジョン探索にハマった。本作のダンジョン探索パートはマジでおもしろい!
探索達成率100%を目指せ!パズル要素を攻略する楽しさ
ホーム画面から「探索」を選ぶことで「境界」の探索を行うことができる。「境界」は複数のステージに区切られており、クリアすることで次のステージがアンロック。このステージというのがダンジョン1つ分で、探索達成率100%を目指すことがステージ内での目的となる。
ダンジョン内は、いわゆる「すごろく」のようにマス目で区切られている。止まったマスによってアイテム獲得や、敵との戦闘といったイベントが発生。もちろん、イベントのないマスも存在する。表示されるのは基本的に踏破済みのマスか、自分のマスの1歩先のマスのみ。マスをタップすることでそのマスへと進行し、一歩先のマスが明らかになっていく…という仕組みだ。
戦闘が発生すると戦闘シーンへ。戦闘システムはオーソドックスなターン制コマンド選択式となっている。ターンが回ってきたら、使用スキルと対象キャラクターを選択。敵を全滅させると再び探索シーンへ切り替わる。プレイヤーが手動で行動を選択する以外に、フルオート機能にコマンド選択を任せることも可能だ。
このシステムは、一般的なマップ探索型RPGと大きく変わらないように見えるかもしれない。しかし、マップ「すごろく」式になっていることで、選択の比重がアップしている。新たなマスに到達すると分岐が出現したり、次のマスのイベントが明らかになったりするので、「どちらに進むか?」「次に何を行うのか?」という選択を移動の度に突き付けられるのだ。一般的なマップ探索型RPGだと、どうしても「敵やアイテム、行き止まりに当たるまで、何かを判断する必要もなく、ただただ歩いている」という瞬間が生じてしまう。つまり本作は、一般的なマップ探索型RPGと比べて、判断の楽しさがより強いといえるだろう。
また、マップにパズル要素が組み込まれているのも楽しい。踏むたびにオン・オフの入れ替わる複数のスイッチすべてを揃えると開く扉。あるいは、一個で複数の扉を開閉可能なスイッチなど。移動する順番と方向をパズル的に考えなければならないシーンが多く、頭を使って攻略する楽しさが味わえるのだ。
思えば、ファミコン世代やスーパーファミコン世代のRPGは、本作のようなパズル的なダンジョンを備えていた。しかし、時代が進むにつれRPGは、ダンジョンからパズル性を省くようになっていったように感じている。これは恐らく、探索より戦闘の方がメインと捉えられたからだろう。メインである戦闘の楽しさを高めるため、ルールが複雑になっていった。そうなるとダンジョン攻略の際、プレイヤーの思考はパズルと戦闘、両方に分散されてしまう。マップを移動しながらパズルの解き方を考えている時、ランダムエンカウントで強制的に思考を打ち切られ、戦術を考えなければならない…というのはたいていの人にとってストレスだろう。そう考えると、ダンジョンからパズル性が失われたことにも納得できる。ただ、筆者は個人的に、ダンジョンからパズル性が失われたことを残念に感じていた。
この「戦闘」と「パズル」の兼ね合いについて本作は、マップを「すごろく的」にすることで上手に解決している。敵との戦闘はマスとしてあらかじめ表示されているため、プレイヤーの意志で回避可能。パズルを考えたければ戦闘マスを回避すればいいし、戦闘を優先したければ戦闘マスに飛び込めばいいわけだ。本作のこのシステムは、レトロRPGが持っていた課題を巧みに解決し、失われてしまった楽しさを現代的に復活させたものといえるだろう。
ちなみに、本作のフルオート機能は結構賢い。任せっきりでも回復やバフ・デバフを有効に活用してくれる。なので、戦闘はフルオートに任せてしまい、プレイヤーは探索だけに専念する…なんてことも可能。パズル好きにとっては快適この上ない。
探索好きなRPGファンはプレイすべし!だがテキストは人を選ぶ…かも?
ここまで書いた通り、筆者としては、本作の探索要素を存分に楽しませてもらった。その一方で若干気になったのが、ストーリー演出などに関わるテキスト。本作は「境界」や「人形」、「人形使い」など独自の設定が多く、説明のために少なくないテキストが使用されている。テキストで設定や専門用語の説明を行うこと自体は悪くないのだが、個人的には一度に説明しすぎと感じる部分が少なくなかった。設定そのものは決して難しいものではないのだが、ひとつのシーンで複数の設定を一気に説明しようとするため、やや理解しづらいものになっていると思う。段階を追って少しずつ説明するような形式にしてもらえると嬉しかった。
テキストの表現はやや気になった一方で、それ以外に気になるところはなかった。ストーリー展開や設定そのものは寝られており、魅力的だと思う。完成度の高いRPGだ。それも、探索重視で完成度の高いRPG。戦闘重視の作品が多い中、本作のようなRPGは貴重といえるだろう。探索系のRPGが好きなプレイヤーは、ぜひ本作に触れてほしい。また、戦闘重視のRPGファンも、本作に触れてもらえれば、ダンジョン探索のおもしろさに気づくかもしれない。ぜひトライしてほしい。