スクウェア・エニックスは、2022年6月4日・5日に幕張メッセイベントホールで「THE PRIMALS Live in Japan - Beyond the Shadow」を開催した。ここでは6月5日公演と、公演後に行われた出演者インタビューをお届けする。
今回のライブは「ファイナルファンタジーXIV(以下、「FFXIV」)」サウンドディレクターの祖堅正慶氏を中心とした「FFXIV」オフィシャルバンド「THE PRIMALS」の約4年ぶりとなる単独公演だ。最新ミニアルバム「THE PRIMALS - Beyond the Shadow」収録曲をはじめ、最新拡張パッケージ「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」の楽曲を含む24曲をプレイヤーである光の戦士たちに届けた。
出演者
祖堅正慶氏(SQUARE ENIX所属/ギター&ヴォーカル)
GUNN氏(ギター)
イワイエイキチ氏(チリヌルヲワカ/ベース)
たちばなテツヤ氏(SPARKS GOGO/ドラム)
マイケル・クリストファー・コージ・フォックス氏(SQUARE ENIX所属/ヴォーカル)
不本意そうにしながらも、なんだかんだと案内役を果たす星海の人物によるアナウンスでライブはスタート。トレーラー映像とともに届けられた「ENDWALKER」では「漆黒のヴィランズ」から新たな冒険を待ちわび、指折り数えた日々すらも思い起こされる。映像を映し出していた紗幕が落とされると、いよいよTHE PRIMALSのメンバーがステージへ。「輝ける蒼 ~希望の園エデン:覚醒編~」では青く、「究極幻想」では赤く染められた客席が、歓声はなくとも雄弁にプレイヤーたちの感情を語っていく。
文字と拍手でGUNN氏との「どこから来たのー?!」「家ー!!」というコール&レスポンスもこなしつつ、力強いコールとサウンドの響く「メタル ~機工城アレキサンダー:起動編~」「忘却の彼方 ~蛮神シヴァ討滅戦~」へ。もともと女性キーの曲だったものをバンドアレンジしたところ、歌入れの直前にキーが合っていないことに気づいたと明かされた「目覚めの御使い ~ティターニア討滅戦~」や、こちらもオリジナルは女性キーの「女神 ~女神ソフィア討滅戦~」を艶のある低音で披露していく。
星海から投げかけられた「プレリュードを創造した人物を知っているか」という言葉にステージを見やれば、そこにはエルピスでよく見かけたローブ姿の人影が。懐かしくも新しい「悠久の風」「メインテーマ ~ マトーヤの洞窟」「ビッグブリッヂの死闘」を生演奏してくれたのは、長年「ファイナルファンタジー」の音楽を手掛けてきた植松伸夫氏だ。「FFXIV」でもお馴染みとなっているこれらの楽曲は、植松氏が自ら手がけた名曲たちを“Modulation(変調)”するというコンセプトで届けられるアナログレコード「Modulation - FINAL FANTASY Arrangement Album」に収録されるという。
祖堅氏と植松氏はスクウェア時代の思い出話で盛り上がりつつ、制作中のアルバムについてタイトルの意味やアルバムジャケットについてもトーク。植松氏は35年前から感じていたユーロビートとの親和性も実現させたと明かしていた。また、なかなかお高くついたらしい衣装の元を取るため、祖堅氏が植松氏へTHE PRIMALSへのさらなる参加を打診したところ植松氏は快く快諾。今後のライブも期待して待っていよう。
続いては、プレイヤーから募集した動画と共に「貪欲」「To the Edge」を演奏する企画に。大罪喰いなどインスタンスダンジョンのボスや、ウォーリア・オブ・ライトと戦う迫力ある映像と楽曲の相乗効果はかなりのもの。バトル自体は見慣れたプレイヤーも多いだろうが、異なる視点で見る映像は一味違う感動を呼び起こしてくれた。そして漆黒の旅路で出会い、別れた人々の記憶を「Shadowbringers」で振り返っていく。
ライブの終盤戦を飾ったのは「THE PRIMALS - Beyond the Shadow」に収録された4曲だ。アコースティックアレンジの「知恵の巻貝 ~オールド・シャーレアン:夜~(Acoustic Version)」から始まり、星の海を超えて辿り着いた「Close in the Distance」を経て、これまでの旅路に「Flow Together」が問いかける。しかし、冒険はここで終わらない。それを証明するかのように響き渡ったのは、新たな冒険のひとつ「此処に獅子あり ~万魔殿パンデモニウム:辺獄編~」だ。さらにプロのダンサーを迎えた「ロングフォール ~異界遺構 シルクス・ツイニング~」で、盛り上がりはさらに加速していく。
疾走感をそのまま受け止めた「魔神 ~魔神セフィロト討滅戦~」や、吹き上がる炎の熱気を帯びた「過重圧殺! ~蛮神タイタン討滅戦~」に対し、プレイヤーも負けじと拳やサイリウムを突き上げる。ラストは「エスケープ ~次元の狭間オメガ:アルファ編~」で締めくくられた。
もちろん、ここで終わるライブではない。鳴りやまない拍手へのアンサーとして、アンコールは軽快なトランペットがリズムを刻む「メタル:ブルートジャスティスモード ~機工城アレキサンダー:律動編~」、時間停止ギミックの一体感が心地よい「ライズ ~機工城アレキサンダー:天動編~」、ダメ押しと言わんばかりの「ローカス ~機工城アレキサンダー:起動編~」がプレイヤーを全力で戦闘不能に追い込んでいく。最後に祖堅氏は「今日のライブが楽しかった人は、きっと『FF14』を真剣にやってた人だ!」と叫び、満面の笑みでステージを去っていった。
なお、6月4日の公演は有料ストリーミング放送を行っており、アーカイブ視聴も可能だ(販売期間は6月12日(日)23時59分、アーカイブ視聴可能期限は6月13日(月)23時59分まで)。残念ながらリアルタイムでの視聴が叶わなかったプレイヤーや、この感動を何度でも味わいたいプレイヤーはぜひ、こちらを利用しよう。
THE PRIMALS 公演後合同インタビュー
――今回の公演の感想をお願いします。
祖堅氏:パンデミックや自分の病気でライブの最前線から離れていた部分もありますが、ゲームはずっと休むことなくアップデートを続けていました。パンデミックの中ですが自分の体調もやれるだろうと判断したところ、こんな大きな会場にたくさんのプレイヤーが集まってくれて、感無量というか。ゲームというエンターテインメントのパワーはものすごく強いなと、そして、そのサウンドを手掛けていることは光栄だなと、このライブを通じて改めて思いました。
コージ氏:今回のライブで、ソーシャルメディアでの声でよく見られたのが「ライブに行ってTHE PRIMALSからパワーを貰った」というものでした。逆に、私も同じことを言いたいぐらいなんですよ。パンデミックなどもあり、私たち開発者としても長い間、自宅で作業をしていたりして、人やファンから離れていたので辛かったのです。今回は皆の前に立てて、私たちもパワーも貰ったので本当に感謝しています。
イワイ氏:数年ぶりの有観客ということで最初は緊張しましたが、ステージに出れば昔の感覚を思い出せて、2回目の今日はいい感じになったと思ったら……終わりかっていう(笑)。そんな感じでした。
たちばな氏:ライブは無事に2日間終わってよかったなというのが感想です。あとはスタッフ含め色々な人に支えていただいて本当にありがたいと思っていますし、何より光の戦士の皆さんが変わらず元気そうだったので、そこが1番よかったですね。ここ最近、色々あるところでTHE PRIMALSのライブで少しでも解消できたのなら本当によかったなと思います。
GUNN氏:まず無事に終えられたのがすごく嬉しく思いますし、来てくれる皆のことを考えながらメニューや演出を揉んで考えたので、それが伝わっているといいなと思います。昨日少しツイートも見させてもらったんですが、喜んでもらっていたようなので今日もイケてたらいいなと。僕個人としてもすごく楽しくて、皆の顔を見れて、ライブができてよかったです。
――「暁月のフィナーレ」実装後の初めてのライブとなり、暁月で初めて登場した曲もありましたが、皆さんがその中で気に入った曲を教えてください。
祖堅氏:「THE PRIMALS - Beyond the Shadow」に収録された4曲と「ENDWALKER」の中からということになりますが、思い入れがあるのはアコースティックの「知恵の巻貝~オールド・シャーレアン:夜~」ですね。
コージ氏:「ENDWALKER」ですね。私は歌っていませんが、歌詞を手掛けて「えっ、この人が歌うんですか?!」と驚いたし、光栄でした。
祖堅氏:「此処に獅子あり~万魔殿パンデモニウム:辺獄編~」じゃないんだ?
コージ氏:それも好きなんですけど!
祖堅氏:まあいいや、分かったから(笑)。
イワイ氏:「此処に獅子あり~万魔殿パンデモニウム:辺獄編~」ですかね。
一同:(笑)
たちばな氏:「Flow Together」ですね。THE PRIMALSとしては新しい感じかなと。
GUNN氏:悔やまれることも含めて「知恵の巻貝~オールド・シャーレアン:夜~」です。
祖堅氏:「Close in the Distance」が残ってるのに!
GUNN氏:それは分かってたんだけど(笑)。皆そうだと思うんですけど、僕も色々いじるところからやっていたので思い入れは全部あるんですが、レコーディングする中でシンプルにというのは「Close in the Distance」に集約されたので、それも含めて「Close in the Distance」と「知恵の巻貝~オールド・シャーレアン:夜~」です。
――今回のセットリストは新生から暁月までひととおり入っているように思えますが、ゲーム内でも「暁月のフィナーレ」がひとつの締めくくりになりました。今回のライブでもそうした部分を狙って作成されたのでしょうか?
祖堅氏:そうとも言えるし、そうとも言えないとも。やはり音楽の流れとゲームのストーリーの流れがあって、ゲームをプレイすればその場面が思い浮かぶのがゲームサウンドですよね。ライブにはライブのセットリストの流れがあって、例えば最後に泣かせる曲を持ってくるのもいいんですけど、ライブでそれをするとシュンとして終わってしまうじゃないですか。
そういうことではなくて、最後は皆で盛り上がろうぜとか、そういう組み方をしています。決してゲームの流れをそのままライブでということでもなく、ライブというひとつのコンテンツとして、どの曲をどこに配置したらいいのかと考えてこういうセットリストになりました。一概に暁月まで締めくくってというよりは、THE PRIMALSとして今までやってきた集大成を今回作ったという感じのほうが強いかと思います。演出もゲーム体験を蘇らせられるようにこだわりました。
――アンコールの3曲も、テンションを上げたまま帰らせようという感じですね。
祖堅氏:そうです。やはりお祭りで帰るのが一番ライブとしていいなと。今まで何度もライブをしてきて色々なパターンで終わってみましたが、やっぱりこれが一番いいという結果を得ているので、この形になりました。
――今回のライブはプレイヤーから動画を募集する試みがありましたが、実際やってみていかがでしたか?
祖堅氏:めちゃくちゃカッコいいプレイ動画を送ってきてくれた方がたくさんいたので、どれを使ったらいいのかと。クオリティもめちゃくちゃ高くて。僕らもリハから見ていてテンションがすごく上がりましたし、プレイヤーの皆さんと一緒にあの2曲を演奏したような感じがしてすごく楽しかったです。パンデミックならではというか、ライブは限られた時間でしかやれませんが、「FFXIV」のプレイヤーは全世界にたくさんいますから、そういう人たちも参加できるように策を練ったつもりです。
――またライブがあるとすれば、こういう企画をまたやりたいと?
祖堅氏:やりたいですね。次の企画ももう思いついているので、もしライブがあればぜひお披露目したいと思っています。
――今回のTHE PRIMALSのライブは約2時間半と、これまでの約1時間半と比べてかなり尺が長くなっていたかと思います。今回これほど詰め込もうと思った理由を教えてください。
祖堅氏:これははっきりとした理由があって、今までの1時間半尺はファンフェスティバルのTHE PRIMALSなんです。ファンフェスティバルの演目のひとつで、僕らはメインではないのでコンパクトになっています。今回のライブは僕らが主導で動かしているので、ファンフェスティバルとは座組も違いますし、今回は僕らがやりたい「THE PRIMALSのライブとは」みたいなものをやったので全然考え方が違います。ファンフェスティバルの場合は、限られた時間でどうやろうかという、まったく別の組み方をしているので長さも違います。
今回は僕らがやりたかった内容になっていますが、テツさんからは「こんなに詰め込んだら疲れちゃうだろ!?」って。
たちばな氏:疲れちゃうっていうか(笑)、プレイヤーの様子がお客さんに伝わるのもよくないかなっていうのがあって。ミュージシャンの端くれとしてそこを心配したんですよ! 結果的にはよかったと思います。
――会場もZeppから大きくなりましたが、やりたかった演出ができたなど変化はありましたか?
コージ氏、イワイ氏:(火が吹き上がるようなリアクション)
祖堅氏:じゃあそれで。ただ、どちらかというと光と絵にかなり力を入れた感じですね。そこに特殊効果が入ったらいいなと思っていたら、できるというのでやってみたんですけど、思いのほか熱くて。色々なアーティストさんに聞いたんですけど「サビ中で火を出すくらいならやるけど、1曲最初から最後まで火を焚くのは聞いたことがない」って言われて(笑)。だいぶすごいライブだったんじゃないでしょうか。僕もびっくりしました。
――今回の「Beyond the Shadow」というサブタイトルはどういった意味を込めたのでしょうか。
コージ氏:今までの単独ライブのタイトルでは必ず「Shadow」が入っていました。これは「SHADOWBRINGERS」から取ってきて、あとは「PRIMALS」は、ゲームの中では悪役なので、闇の感じがあるタイトルがいいかなと。
今回は「SHADOWBRINGERS」が終わって「ENDWALKER」に行くということなので、この「Beyond the Shadow」はShadowを超えるんですよ。Shadowの部分もあれば、そこを超えた次のステップに行く。あとは英語の熟語で「beyond a shadow of a doubt」という「絶対に」というものがあって「PRIMALSは絶対的」という二重の意味もあります。
――今回、アコースティック版で「知恵の巻貝~オールド・シャーレアン:夜~」を演奏された理由を教えてください。
GUNN氏:「これをやりたいんだよな、どうしようか分からないけど……」というのを祖堅くんと話していて。そこから、やるだけやってみようとやり始めたんだと思います。
たちばな氏:デモとはだいぶ変わってるよね。
GUNN氏:そうですね。デモとも違うし、実装されている元の曲もあるので、その世界観もすごく大事にしたかったので。レコーディングの時は、バンドで一発録りをやるというのにこだわったんです。昨日、十数回という話が出ていたけど、僕の記憶では24回ぐらい録ったと思います。
たちばな氏:1日半ぐらいかかったもんね。
――今回の2DAYSは大成功となりましたが、今後こんなフェスに出たいなどの展望があればお聞かせください。
祖堅氏:僕は野外のフェスに早く出たいです。
コージ氏:同じく外でやりたいです。涼しいだろうなと(笑)。
イワイ氏:もっと大きな、アリーナクラスで演奏してみたいな。色々なところでもやってみたいですけど、ゲームとはまた違う音楽フェスみたいなものにも出たら面白いとも思います。
たちばな氏:僕もそれは思います。国内もですけど、海外のそういうフェスとかも出てみたいですね。
祖堅氏:THE PRIMALSってロンドン、パリ、ドイツ、韓国、中国、ラスベガスとか、日本でも4~5か所回ってますし、意外と日本よりも海外のほうが多いのかもしれません。日本問わず海外のフェスでも演奏してみたいですね。普段から皆でそういう話をしています。お話があれば喜んで行きますので、ぜひ(笑)。
祖堅氏&植松氏 公演後インタビュー
――本日の公演の感想をお願いします。
祖堅氏:今回スペシャルゲストということで植松さんにご協力いただきましたが、最初は「前座がいい」とかヒヨられてですね(笑)。何を言ってるんだと、そんなことは考えてなくて「何を言っているんですか」と何度かお伝えしたんですけど「前座がいい!」と仰るので、これはアカンと説得しに何度か植松さんの元へ足を運びました。「中でやったほうが絶対お客さんは喜ぶからやってくれ!」ってお願いしたら「じゃあ、そういうことならやるわ」と。
植松氏:それで正解だったよね。
祖堅氏:演目のひとつとして、そして「FFXIV」の世界観の中にいる古代人というか、レジェンドというか、そういうキャラクターに植松さんを投影させて演出できたというのは、ゲームとの親和性……僕はゲーム体験を大事にしているので、今回来たお客さんがゲーム体験と植松さんがオーバーラップして「ゲームってすごい!」と思ってくれたら嬉しいんですが、たぶん出来たんじゃないかと思っています。
植松氏:前座というのは本当に本気で思っていて。何故かといえばTHE PRIMALSさんのライブだし、そこに先輩面して出ていくのは恥ずかしいし。やろうとしていた音楽は今までやっていなかった、1人でシンセサイザーをいじってやるものなので、1からやり直させてほしいという意味で前座としてサッと1曲2曲やって……と本気で思っていたんです。昨日、今日とやってみて「祖堅はこういうことを考えていたんだな」というのがよく分かって、従ってよかったなと思います。
驚いたのが、最初から最後まで遊園地にいるようなライブだったなと。これはロックバンドじゃなくて、ゲーム音楽をやっているロックバンドだからこういうことができるんだと。ゲーム音楽の歴史も今となっては何十年かになるわけで、初めの頃は細々とやっていたものが今回のTHE PRIMALSのようなライブを見ると花が咲いちゃってるなと思って。ここまで来たなと、傍で見ながらも嬉しかったですし、このエンターテインメントは素晴らしいなと思いました。
全体の印象はそんな感じなんですけど、僕は気持ちよく演奏させてもらいました。まずお客さんが僕のことを覚えてくれたのが嬉しかったし、何となくステージから見ていて、自分がやっているシンセサイザーの音楽を面白そうに聞いてくれている、興味をもってくれているみたいな印象もあったので、2日間やらせてもらえて嬉しかったですし、手応えがありました。
――今回のライブは演出プランにこだわられたそうですが、祖堅さんと植松さんの間でどのようなご相談があったのでしょうか?
祖堅氏:まずは服を着てくれって言いましたよね。
植松氏:そういうの嫌だったんだよね。いつもの格好でやったほうが気楽だし、客席から見ててどうか分からないんですけど、すごく動きにくいんですよ。ローブが長いから歩いて引っかかるし、ステージも階段を登っていかないといけないから裾をまくらないと上がれないし。あと、何かするときって腕まくりをするから袖の長いのって弾きにくいのもあるし。なおかつ1曲目はフードをかぶってくださいと言われて、譜面もよく見えないし(笑)。
祖堅氏:色々注文しましたね(笑)。
植松氏:でもTwitterとかを見ていると「植松が古代人の格好で!」とか皆が喜んでくれてて。やっぱり祖堅はちゃんと分かってたんだなと、祖堅の思い通りのことができて、僕も協力できたんだろうなと。僕がいつものジーパンで出たら違うもんね(笑)。
祖堅氏:まず「FFXIV」のプレイヤーというのが大きくて。ゲームを遊んだ体験があるからこそ、植松さんがローブを着ることに意味がある。そこに「悠久の風」が流れてくるというゲームの体験と密接にリンクしているというのが、やはりゲーム音楽ならではなのかなと思って。
―植松さんがペンペン草が生えている中を切り分けてきたゲームサウンドというジャンルは、僕が生まれたときから存在しています。それがすごい体験として心にあって、今のゲームプレイヤーに「ゲームサウンドって本当にすごいんだよ!」というのをゲーム体験と共に伝えるのが僕の使命のように思っています。そこに植松さんがしっかり応えてくださって、一緒にできたのが感無量だなと思います。
――植松さんが今回演奏された3曲は鋭意製作中で、11月9日発売のアナログレコード「Modulation - FINAL FANTASY Arrangement Album」に収録されますが、この作品についてコンセプトなどをお聞かせください。
植松氏:10曲くらい収録しようと思っているんですけど、基本的にゲーム中で流れている音楽を土台にしています。例えばライブでやったファミコンの頃のPSG音源なんかは鳴らしつつ、もう1回フレーズを今のシンセサイザーでなぞっていたりするところとか、切り貼りしたり、逆回転させて編集したりとか色々やっています。
ライブ中にも言ったんですけど、僕は昔の自分の作った曲は2度とと言ってもいいほど聞かないタイプです。恥ずかしい曲を作ってしまったなという想いがずっとあったんですけど、そうは言っても、あの曲を作ったのも自分の歴史の事実なわけで、それをずっと見ないようにしていく人生も嘘っぽいなと年と共に思うようになって。じゃあ実際に聞いてみたら、やっぱり恥ずかしいわけですよ。だったら、これをどうしたら面白おかしく発表できるかなと考えて。
分かりにくいかもしれないけど……若い頃に撮られた写真って「なんでこんな恥ずかしい顔をしちゃったんだろう」とか、皆さんにもありますよね。もう2度と見たくないようなものが。でもPhotoshopを使えば面白い写真にできるんですよ。僕はそういうような感覚で、昔作った恥ずかしい曲も面白い曲に変調(=Modulation)できないかなと。昔作ったものを自分なりに変調して、こんなふうにしたら面白いんじゃないかなと。「ファイナルファンタジー」の1作目を作って35年経って、やっと今面白がれるようになったって感じですね。35年かかりました。
――今回のライブにご来場いただいたファンの方、配信をご覧になった皆様に一言ずつメッセージをお願いします。
祖堅氏:とりあえず無事に終わったのがよかったというのと、僕は若い頃に植松さんにそれはそれは多大な迷惑をかけまくっているので、今回のライブで少しでも楽しい気持ちになっていただけたのなら、ちょっとした恩返しができたかな……いや、でも全然足りてないなということで、これからもそんなことを考えつつ、たかりにいくのでよろしくお願いします(笑)。植松さんには本当にありがとうございました。
ファンの皆さんには、植松さんの元気な姿を見せられて、僕はそれだけで満足です。皆も満足だったと思うので、同じ気持ちです!
植松氏:こんな素敵なライブの中で15分という短い時間でしたけど、参加させていただけたことはすごく嬉しかったです。あまりこういう言い方はしたくないんだけど……祖堅も偉くなったというか、大きくなったという感じはしますよね。
祖堅氏:そう思いますよ。僕が植松さんと飲みに行ってる頃はクソガキでしたから(笑)。
植松氏:本当にクソガキだったよね(笑)。いやそれは冗談だけど、こんな場を祖堅が仕切っているというのが嬉しくもあり、羨ましくもあった。羨ましいと思った時に、まだいけるなって思ったの。祖堅にまだライバル心を持ってるかもって思った時に「Modulation - FINAL FANTASY Arrangement Album」をもっと頑張ろうと思いました。
祖堅氏:アルバムが楽しみですね(笑)。
植松氏:こんなにたくさんの人間を見たのは久々でした。また人間を見に来たいと思います(笑)。
――ありがとうございました。
セットリスト(6月4日/6月5日共通)
01.ENDWALKER
02.輝ける蒼 ~希望の園エデン:覚醒編~」
03.究極幻想
04.メタル ~機工城アレキサンダー:起動編~
05.忘却の彼方 ~蛮神シヴァ討滅戦~
06.目覚めの御使い ~ティターニア討滅戦~
07.女神 ~女神ソフィア討滅戦~
08.悠久の風
09.メインテーマ ~ マトーヤの洞窟
10.ビッグブリッヂの死闘
11.貪欲
12.To the Edge
13.Shadowbringers
14.知恵の巻貝 ~オールド・シャーレアン:夜~ (Acoustic Version)
15.Close in the Distance
16.Flow Together
17.此処に獅子あり ~万魔殿パンデモニウム:辺獄編~
18.ロングフォール ~異界遺構 シルクス・ツイニング~
19.魔神 ~魔神セフィロト討滅戦~」
20.過重圧殺! ~蛮神タイタン討滅戦~
21.エスケープ ~次元の狭間オメガ:アルファ編~
22.メタル:ブルートジャスティスモード ~機工城アレキサンダー:律動編~
23.ライズ ~機工城アレキサンダー:天動編~
24.ローカス ~機工城アレキサンダー:起動編~