ドラマチックアイドル育成ゲーム「アイドルマスター SideM」初の舞台化作品となる「ドラマチックライブステージ「アイドルマスター SideM」(通称、「サイステ」)が、6月16日~26日まで天王洲銀河劇場にて上演中。ここでは、そのゲネプロ公演のレポートをお届けする。なお、ネタバレにはご注意を。

目次
  1. 齋藤社長の激励から始まる 「サイスタ」メインストーリーパート
  2. 3ユニット合同ライブまでの衝突と成長を描く 舞台オリジナルパート
  3. 努力の成果が発揮される ドラマチックで個性輝くライブパート
  4. 「SideM」の入口となる 「ひとりじゃダメでも、誰かと出会い前に進める」物語
  5. 公演概要

「サイステ」が描くのは、アプリ「アイドルマスター SideM GROWING STARS」(通称、「サイスタ」)を原作とした舞台オリジナルストーリー。315プロダクションに所属する全16ユニットのうちDRAMATIC STARS・High×Joker・C.FIRSTの3ユニットに着目し、「サイスタ」メインストーリーと同様に新人アイドルの登竜門である「JAPAN IDOL FES」を目指す様を生き生きと描き出す。

およそ100分にわたる本作は、大きく3つのパートに分かれている。

齋藤社長の激励から始まる 「サイスタ」メインストーリーパート

ひとつめは「サイスタ」のメインストーリー第1章を中心としたパート。3ユニットの普段の様子や活躍が並行して描かれ、各ユニットメンバーの特徴やその関係性が垣間見えるだけでなく、3ユニットがそれぞれのユニットを気にかける様子から315プロダクションが持つ気持ちのいい雰囲気が感じられるパートである。

まずは315プロダクション代表取締役社長の齋藤孝司社長(声の出演:立木文彦)から、さまざまな経歴のアイドルたちが集まる315プロダクションや「JAPAN IDOL FES」のこと、初めての事務所の楽曲のことなどが説明される。

おなじみの姿と声での「諸君!」という呼びかけやパッション溢れるわかりやすい説明に、客席を瞬く間に315プロダクションのプロデューサー気分に。

その時、たまたま外で事務所初の楽曲を聴いていた天峰秀(北川尚弥さん)と出会い、音楽的センスが光る彼をスカウトすると、自分と同じく都内で有名な生徒会長である花園百々人(中島優斗さん)、眉見鋭心(平賀勇成さん)とであればユニットとして活動してもよいとの回答が。同じ高校生であるHigh×Jokerの助言をもとに百々人と鋭心を探し出し、それぞれの理由を胸に新ユニット・C.FIRSTを結成することに。

一方で、Vo.:伊瀬谷四季(土屋翔さん)・Gt.:秋山隼人(櫻井圭登さん)・Dr.:若里春名(高橋祐理さん)・Ba.:榊夏来(設楽銀河さん)・Key.:冬美旬(大見拓土さん)からなる高校の軽音部からアイドルになったHigh×Jokerは、ライブ中に隼人が憧れのギタリストを真似た演奏を披露。するとその動画がSNSで本人から好意的な反応をもらうほどに大バズり、しまいには来日中の本人から招待される事態に。大きく飛躍すると同時に自身も刺激を受ける彼らの姿からは、音楽とメンバーが好きという想いが彼らの核であり原動力であることが伝わってくる。

その最中、DRAMATIC STARSもパフォーマンスの練習に励んでおり、常に朗らかで明るく振る舞いダジャレを言ったり桜庭薫(澁木稜さん)を茶化したりと言ったやんちゃな面も見せる元弁護士・天道輝(加藤良輔さん)、音への感覚が鋭くメンバーの音程やダンスに厳しい元外科医・薫、誰にでも優しく温和で衝突の多い輝と薫の間を取り持つことも多い元パイロット・柏木翼(宮田龍平さん)といった、ドラスタのいつもの姿もしっかり健在だ。

そして初仕事としておもちゃ屋の宣伝をすることになったC.FIRST。なじみのない懐かしのおもちゃをどう宣伝するべきか悩むものの、有能な生徒会長らしい活発な意見交換のもと、他のアイドルやプロデューサーに力を借りたり生徒会長として生徒に呼びかけたりすることで、イベントを大成功に収める。

随所でアイドルたちや事務員の山村賢(三好大貴さん)が観客に「プロデューサー」と呼びかけてくれるため、このパートで観客の意識はしっかりプロデューサーに染め上げられているはずだ。

3ユニット合同ライブまでの衝突と成長を描く 舞台オリジナルパート

その後、3ユニットの合同ライブという新たな仕事が入る。「JAPAN IDOL FES」への出演を目指し315プロダクションの宣伝を目的としたもので、315プロの全ユニットがいくつかに分かれてライブをするという舞台ならではの展開だ。

ライブの演出は出演アイドルたち全員で決めるべしというプロデューサーからの指示に従い、それぞれ前向きに意見を出し合っていく3ユニット。しかし各ユニットとしてはそれぞれ個性的な魅力を持っているものの、バラバラの個性をまとめあげる演出案が見つからない。そんな中「良いライブにしたい」という想いは同じものの性格とアプローチが異なるがゆえに輝と薫が大きく衝突、練習を一時中断せざるを得ない事態となる。

筆者個人的に印象的だったのが、衝突後11人がユニットの枠を超えて会話し、解決の糸口を見つけていくシーンだ。意外な組み合わせで相談し合う彼らが響き合い共鳴し、時にアイドルになった理由を語りながら新たな演出案というひとりでは見つけられなかった未来を拓いていく様は、315プロダクションという事務所でたくさんの仲間と出会ってよりアイドルとして成長していく「SideM」の醍醐味が感じられるシーンであり、またアイドルたちの組み合わせからも本作ならではのシーンであると感じた。

事務所全体の、そして各ユニットの絆を深めたアイドルたちは、ついに全員の想いが詰め込まれた案を完成させ、クライマックスのライブパートへ。

努力の成果が発揮される ドラマチックで個性輝くライブパート

ライブ前、ステージ袖で期待と興奮と自信が混ざった表情で待機するアイドルたちとの会話を映した映像から始まる本パート。このシーンがあることで、ライブでアイドルとしての成長を描き続けてきた「アイドルマスター」らしさが増しているように感じた。

披露される楽曲は、サイステオリジナルのユニット曲3曲と全体曲1曲を含む全5曲。全員の圧巻の歌唱力とハンドマイクなしのダンスパフォーマンスからは、これまでとはまた違った視点でアイドルたちの魅力が見つかるはず。クラップやペンライト、うちわで直接応援しよう。

C.FIRSTによる“Don't U Worry”は、リスナーが参加できるポイントが多く、また会場の支配力の高さと言う意味でもカリスマ性あふれるC.FIRSTにふさわしい、重低音とクールさが光るダンサブルな一曲だ。歌詞にも彼らの高潔さや強さを持つ立場から孤独な弱さを救いにいくC.FIRSTの信念が感じられる。またキャストのダンススキルが存分に発揮されたダンスには圧倒された。

続くDRAMATIC STARSによる“Sunrise Dreamer”は、多種多様な楽器によって奏でられる贅沢で晴れやかなメロディが特徴のナンバー。ぶつかりあいながら絆を深めていく3人の関係性、それぞれの理由から抱くアイドルへの強い想い、そして彼らが目指すアイドル像が詰まっている。全ユニット歌唱力が高いが、中でも抜群の歌唱力に聞き惚れてしまうこと間違いなしである。

そしてHigh×Joker の新ユニット曲“LET'S GO ALL THE WAY!”は、ハイパーアゲアゲボーカル・四季のノリノリな呼びかけで序盤からかっ飛ばす、楽器を使ったパフォーマンスが魅力の一曲だ。高校生という今を一緒に最高速度で青春し続ける5人の姿を彼らの名前にちなんだワードも交えながら爽やかなバンドサウンドに乗せた楽曲で、明るくエネルギッシュな気持ちがふつふつと湧いてきた。バンドと言えば!なメンバー紹介やコールもたまらなく盛り上がる。

最後に全員で歌う“Our Colorful Stage!!!”は、3ユニットが悩みながらも見つけた演出方法が反映された前向きな1曲。「理由(ワケ)あってアイドル!」という「SideM」のコンセプトや3ユニットの個性とアイドルとしてのあり方が綴られた歌詞には「サイステ」の物語が凝縮されており、作中のエンディング的な立ち位置の楽曲として清々しい気分を届けてくれる。

「SideM」の入口となる 「ひとりじゃダメでも、誰かと出会い前に進める」物語

振り返って、全体的にテンポは速いものの、今回の登場アイドル全員のアイドルになった理由や個性、魅力をひもときながら3ユニットの葛藤と成長が1本にまとめあげられた脚本が非常に巧みで、「SideM」が持つ重要なテーマを押さえつつも原作知識の有無にかかわらず万人が楽しめる作品に仕上がっていた「サイステ」。

3ユニットの普段の様子に触れ、高め合う姿を目の当たりにし、その成果をライブパートで感じ取れるという非常に「アイドルマスター」らしいこのひと時のプロデューサー体験は、きっと観た人の「SideM」への興味をより湧きたてるはずだ。

原作を知らない方やご無沙汰な方は「サイスタ」をダウンロードしてみたり、原作を知っている方はよく知るアイドルたちの新たな魅力の発見に繋がったり……これを切り口に「SideM」のプロデューサーがもっと増え、もっと活発なプロデュース活動に繋がるような1作だと感じた。

公演概要

公演名:ドラマチックライブステージ「アイドルマスター SideM」
開催日程:2022年6月16日(木)~6月26日(日)全14公演
会場:天王洲 銀河劇場
https://www.gingeki.jp/access
出演者:
DRAMATIC STARS 天道 輝役 加藤良輔/桜庭 薫役 澁木 稜/柏木 翼役 宮田龍平
High×Joker 伊瀬谷四季役 土屋 翔/秋山隼人役 櫻井圭登/若里春名役 高橋祐理/冬美 旬役 大見拓土/榊 夏来役 設楽銀河
C.FIRST 天峰 秀役 北川尚弥/花園百々人役 中島優斗/眉見鋭心役 平賀勇成
事務員 山村賢役 三好大貴
代表取締役社長 齋藤孝司役 立木文彦(声の出演)
原作:アイドルマスター SideM GROWING STARS
演出:荒木宏文
脚本:佐野瑞樹
公式サイト:https://sidem-stage.idolmaster-official.jp/dramatic_live_stage/

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