京都・みやこめっせにて7月14日(金)~16日(日)の期間で開催されたBitSummit Let’s Go!!(一般公開日は15、16日)。ドリコムブースにて出展されていた「Tokyo Stories」のプレイレポートと開発者インタビューをお届けしよう。

目次
  1. プレイレポート:静かに、けれどエモーショナルに描写される体験が心に染みる
  2. プロデューサー/ディレクター 池田佑基氏インタビュー

「Tokyo Stories」は“誰もいなくなった東京”を舞台としたアドベンチャーゲーム。PC(Steam)と家庭用ゲーム機での発売に向けて、開発が進められている。

主人公は突然消えてしまった友人を連れ帰るために、東京の街をさまよい歩く。ピクセルアートと3Dを融合したグラフィックで表現された、キャラクターや真夜中の街、そして音楽が一体となって紡がれる、叙情的な世界観が深く印象に残る一作だ。

本稿では、BitSummitの会場でプレイできた最新版デモのプレイレポートと、プロデューサー/ディレクターを務める池田佑基氏へのインタビューをお届けする。「Tokyo Stories」をプレイできる日を待ちわびているファンや、いま初めてこのゲームを知り、興味を持った人に読んでいただけたら嬉しい。

プレイレポート:静かに、けれどエモーショナルに描写される体験が心に染みる

最新版デモは、短い試遊時間で世界観やストーリーを味わってもらうためのバージョンということで、ゲームプレイは簡略化されているとのこと。

消えてしまった友人を探すため、人がいない東京の街を歩き出す主人公。主人公が画面の端まで行くと固定カメラが切り替わる仕様は、PS1の時代のゲームを思わせる。計算されたアングルが、街の風景を1枚の写真のように切り取っていることで、寄る辺のない主人公の孤独感が強調されているように感じる。空間に表示されるモノローグの味わいも、固定カメラだからもたらされるものだ。

どうやら記憶を失っている、主人公の友人。このあと、プレイヤーは主人公がずっと大切にしてきた友人との思い出が垣間見える心象世界へと、いざなわれることになる。

主人公の心象世界では、思い出に強く関連付けられた対象物にインタラクトすることで、断片的な回想がその場に現れる。主人公はこれを第三者として眺めるような形となり、この客観性がプレイヤーと主人公の距離を縮めてくれていると感じた。

ふたりで腰掛けられるサイズの横長のソファ。「ICO」を思い出す人も多いはず。

いくつかの回想を経て、ふたりが名前を名乗りあったところで、心象世界は終了。主人公はまた、ひとりぼっちの東京に取り残されてしまった。主人公にとって、とても大切だったであろう場面の記憶と、そこから始まった関係が、すでに失われてしまっているという事実による感傷を、まるで寄り添うように奏でられていた音楽が盛り上げる。

東京の街で再び主人公が前へと歩き出したところで、デモは終了。大切だと感じていた相手が、いつしか遠い存在になってしまったといった経験は、少なからず誰しもが持っているものではないかと思う。「Tokyo Stories」は、そういった普段は記憶の片隅に追いやったまま蓋をしている感傷的な気持ちを、優しく思い出させてくれて、肯定してくれるゲームであるように感じた。

まだ発売時期は未定の本作。この旅路の果てに何が待っているのか、確かめることができる日を、いまは気長に待とうと思う。

プロデューサー/ディレクター 池田佑基氏インタビュー

池田佑基氏

PS3「rain」やPSP「100万トンのバラバラ」(ともにソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)より発売)を手掛け、本作「Tokyo Stories」ではプロデューサー/ディレクターを兼任している。

――「Tokyo Stories」の開発体制はどのようなものになっていますか?

池田:いまは5人くらいの小チームで開発しています。それとは別に、音楽はnewlyさんというトラックメイカーの方に作曲してもらっています。

――公式Twitterの投稿で日本語と英語を併記しているのが印象的ですが、ああいった運用をしているのは何故なのでしょう?

池田:もともと日本以外の国の方にも注目してほしいタイトルとして開発してきたので、最初は日本語と英語で別々にアカウントを運用することも考えていたんです。ただ、それは大変だなと思ったのと(笑)、日本語の反応と英語の反応が、お互いに見えたほうがおもしろいかなと思い付いて、いまの運用にしました。

――日本語と英語のリプライで、コメントの傾向に違いなどはありますか?

池田:そこはけっこう似ていますね。どちらも「キャラクターがかわいい」というものと、「世界観が好き」というものが多いです。海外の方も、日本のゲームが好きという方が注目してくださっているようなので、注目するポイントも自然と似るのだと思います。

――3D+ピクセルアートという組み合わせや、画面全体に青みがかった色彩といったアートスタイルが印象的ですが、どのようにして現在のスタイルにたどり着いたのでしょう?

池田:最初にピクセルアートのゲームを作りたいという想いがありました。ただ、横スクロールや俯瞰視点などのすでにあるスタイルではなく、もう少しチャレンジがしたいと考え、試行錯誤してたどり着いたのが現在の形です。

――3D表現とピクセルアートを馴染ませるために工夫した点はありますか?

池田:細かい調整はしています。マップはピクセルアートらしい魅力を感じてもらえるように意図して荒くしつつ、“ただ解像度が低い”画面には見えないように、キャラクターはマップの解像度と変化を付けたり、色数を落として落ち着いた雰囲気を持たせつつ「このポイントにはグラデーションを使う」とか、細部でこだわっていますね。

――先ほど仰っていたとおり、まず世界観で注目を集めているタイトルだと思いますが、ゲームプレイの面で注目してほしい点を、いま言える範囲で教えてください。

池田:皆さんが期待しているのって「東京の街をどんなふうにさまよえるのか?」といったところだと思うんです。そこはしっかり応えた上で、今回のデモでは違う世界に行ったりしましたけど、そうしたちょっと裏切る部分も用意して、意外性も含めて楽しんでもらうことができればというのがあります。

それから、「カギを探し出して、扉を開ける」みたいなアドベンチャーゲームの定石から、もうちょっと凝ったものを取り入れようと考えているので、ご期待いただければと。

――トレーラーの映像ではシネマティックな演出が多数用いられていて、ゲームプレイよりもカットシーンを眺める時間が長そうなタイトルという印象を受ける人もいるかもしれないと感じたのですが、そのあたりはいかがでしょう?

池田:我々もしっかりゲームとして楽しめるタイトルが好きなタイプなので、ゲームプレイを大事に開発を進めています。演出面でも、プレイがいったん途切れてしばらくカットシーンを眺める時間が続くようなものではなく、ゲームプレイと物語体験を連続性のあるものとして描くように意識しています。

探索中の画面に表示されるテキストも、そうした考えで取り入れたものです。感情が動く場面も、それがゲームプレイによってもたらされたように感じてもらえる伝え方を大切にしています。

――最後に、「『Tokyo Stories』は、こういう物語が好きな人にプレイしてほしい」という希望のようなものがあれば教えてください。

池田:「こういう物語が好きな人におすすめ」という確固たるイメージがあるわけではないのですが、たとえば「寂しい」という気持ちとか、自分の感情と向き合いたいときに触れてみてほしいと言えるゲームになればいいなと思っています。

起伏に富んだ物語ではないんですけど、ゲームを通してプレイヤーの内面が整理されていくような体験になったのなら、それが理想です。

――ありがとうございました。

「Tokyo Stories」Steamストアページ
https://store.steampowered.com/app/2251970/Tokyo_Stories/

「Tokyo Stories」公式Twitter
https://twitter.com/tky_stories

※画面は開発中のものです。

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