千葉・幕張メッセにて9月21日~24日にかけて開催の「東京ゲームショウ2023」。インディーブースに出展されていたHYPER REALブースのレポートをお届けする。
9月21日より千葉・幕張メッセで行われている東京ゲームショウ2023に、産経デジタルが運営するゲームレーベルのHYPER REALが出展。ここでは、その模様をレポートする。
ブースでは、新たにレーベルに加わった「SAEKO: Giantess Dating Sim」のほか、「青十字病院 東京都支部 怪異解剖部署」「Dome-King Cabbage」の最新デモもプレイすることができた。今回は「SAEKO: Giantess Dating Sim」と「青十字病院 東京都支部 怪異解剖部署」のプレイレポートとともに、これらの作品を手掛けるクリエイターへのインタビューもお届けしよう。
「SAEKO: Giantess Dating Sim」
不思議な力をもつ少女“冴子”によって小人へと縮められてしまった主人公が、彼女の話し相手になりながら生きていくことになるアドベンチャーゲーム。デモは2種類存在しており、冴子の机の引き出しで暮らす小人たちの生活を体験するパートと、帰宅した冴子と交流するパートを遊ぶことができた。
部屋にあるアイテムをドラッグ&ドロップすることで、小人たちに渡すことも可能。冴子の髪留めクリップを使ってレーションを削り、粉を食べるシーンなどが存在した。
小人は「体力」と「魅力」のパラメーターがあり、これらが一定の範囲を超えると死んでしまうとのこと。今回は操作のチュートリアルだったが、ゲーム本編では与えるアイテムでパラメーターを調整し、みんなで生き延びられるように考える必要もありそうだ。
こちらのデモのラストは小人の仲間のひとりが帰宅した冴子に食べられるという衝撃の展開。自分たちの置かれている危険な状況が伝わる内容で、一気に本作の世界観に引き込まれるものになっていた。食料を分け与えたりしながらみんなで生きる方法を考えていたのに、冴子の気まぐれひとつで簡単に殺されてしまうという状況は、とてもインパクトがある。
もうひとつのデモは、そんな冴子との交流を描くパート。選択肢を間違えて彼女の機嫌を損ねると簡単に握りつぶされてしまうし、反応が遅くても握りつぶされてしまう。
展開としてはホラーではあるのだが、あまりにもプレイヤーの命が儚すぎるし、冴子がこちらの命をなんとも思っていないことが滑稽で、プレイしているとおもしろくなってきてしまう。また、簡単にこちらを殺してくれる冴子の存在が愛おしくなってくるのは、筆者の“癖”がおかしいのかもしれないが、この気持ちが分かってくれる同志が多いことを祈る。
SAFE HAVN STUDIOのkyp氏インタビュー
――デモをプレイさせていただき、いきなり冴子に仲間が食べられる展開には驚きました。もとからこういったホラーが強めの作品を想定されていたのでしょうか?
kyp氏:そうですね。ただ、ホラーは半分で、残り半分は萌えや可愛さを意識して作りました。
――大きな女性と交流して、コミュニケーションに失敗するとつぶされるという内容は最初から決まっていたのでしょうか?
kyp氏:そうですね。もともと大きな女の子が出てくるゲームを作りたいと思っていました。ゲームとしてバッドエンドを入れるならどういうものがいいのかなと考えた結果、殺されるのがキャッチーでいいかなと思いました。
――本作を制作するに当たり、影響された作品はありますか?
kyp氏:本作は2000年代の個人サイトで、笛地静恵先生が発表した「冴子」という作品が元になっています。巨大な女の子がいる部屋に閉じ込められて、その女の子と会話しながら生き残るという展開で、その感銘を受けた作品と似た設定のゲームを作りたいと思いました。最終的に笛地静恵先生とコンタクトを取って、同じ設定とキャラクターの名前でゲームを作る許可をいただきました。
――「冴子」は偶然見つけたんですか?
kyp氏:はい。そもそも、“大きな女”がすごく好きだったので、いろいろなサイトを漁っていて見つけました。中学生ぐらいのときに見つけたのですが、そこからずっと好きで、今回コンタクトを取らせていただきました。
――今回プレイした範囲はホラーチックな展開でしたが、ゲームが進むとラブコメのような展開にもなったりするのでしょうか?
kyp氏:形式としてはホラーではあるのですが、だんだんと冴子との仲が深まっていくことになります。最初は冴子が気に入らないことを言ったら、すぐにつぶされちゃいますが、徐々に仲が深まっていくにつれて、冴子が悩んでいることについて、ちゃんと自分の意見を言ってあげることができるようになります。
――基本的なゲームシステムは変わらない感じでしょうか?
kyp氏:はい。選択肢を選んでいく形です。
――プレイ時間はどれぐらいを想定されていますか?
kyp氏:おそらく4、5時間ぐらいで終わると思います。
――HYPER REALさんがパブリッシャーになった経緯を教えてください。
kyp氏:僕が最初に「SAEKO」を発表したのが、Tokyo Indiesというイベントだったのですが、そこで「いい絵だね」とお声がけいただきました。そこからビルドを何度か見せてパブリッシングしてもらえることになりました。自分としてもHYPER REALさんはゲームっぽくないものなど、ユニークな作品を発表しているので、相性が合うかなと思いました。
――ゲームの完成は近いのでしょうか?
kyp氏:うーん、まだちょっといろいろやらないといけないことがありますね。
――来年中には遊べそうですか?
kyp氏:そうですね。できれば来年中には出したいです。
――発売を楽しみにしているユーザーにひとことお願いします。
kyp氏:これまでのゲームの情報や今回の試遊で、本作のユニークさについては伝わっているのではないかと思いますが、最終的には深みがあり、心のなかに残るようなものを作っていますので、どうぞよろしくお願いします。
「青十字病院 東京都支部 怪異解剖部署」
1999年の日本を舞台にしたジャパニーズホラーノベルアドベンチャー「青十字病院 東京都支部 怪異解剖部署」。都市伝説が具現化した“怪異”が起こす凄惨な事件を究明する組織“青十字病院”の一員となって、事件に関わっていくことになる。
本作はタイトルの通り、“怪異を観察して解剖する”というのがキーワード。事件を起こした怪異の遺体を解体し、事件の謎を解き明かしていくことになる。今回のデモでは、未確認動物の“スカイフィッシュ”を解剖可能。解剖なので余計な部分をたくさん切り刻んだりすると失敗になってしまうが、内部を透かして見ることができるレントゲン機能があり、この機能を使えばどこを切ればいいのか分かるようになっている。
以前のデモには存在しなかったレントゲン機能だが、この機能が追加されたことでプレイフィールが大きく向上した。
また、本作で注目したいのはキャラクターたちのビジュアル。作者の田平孝太郎氏が性癖をぶちまけてデザインしたというキャラクターは、サイケデリックな色使いの服装を中心に独特な雰囲気を作り出している。ほかの作品とは違う本作ならではの魅力があるので、ぜひ体験してみて欲しい。
Furoshiki Lab.の田平孝太郎氏インタビュー
――本作のジャンルがホラーなのでビクビクしながらプレイしたのですが、デモでプレイするのがUMAの解体で驚きました。普通の幽霊のようなホラーよりも超常現象全般がお好きで、今回のような作品になったのでしょうか?
田平氏:いえ、そうではなくて、超常現象などのホラーで霊がなぜ退治されるのかという疑問からです。退治されたあとも、生き物のまま処理されてしまうこと、とくにバックグラウンドが掘り下げられないことが非常に気になって、自分でそういうゲームを作ったのがきっかけになります。
――霊などの超常現象側のドラマも描きたいと。
田平氏:そうですね。起きた事件の結末は変えられませんが、“なんでこういう事件が起きたのか”ということを掘り下げたゲームになります。
――なぜ、こういった怪異になってしまったのかが描かれるのでしょうか。
田平氏:はい。たとえば、過去にどんなことがあったのか、取り巻く環境はどうだったのかということも描かれます。
――キャラクターたちのビジュアルもすごくいいですね。
田平氏:キャラクターデザインは自分が担当していますが“秘密結社”というのがポイントですね。こういう格好をしているということは、力を持っている人物たちであることが分かるのではないかと。あとは自分の性癖をぶち込んだだけですね(笑)。
――素晴らしいと思います(笑)。彼らは政府公認の組織なんですよね。
田平氏:はい。警視庁公認で。裏でも影響力がある組織になっています。
――彼らのバックグラウンドもストーリーを進めることで明らかになっていくのでしょうか?
田平氏:そうですね。彼ら自身にも、民俗学のバックグラウンドがありまして、名前にも表れているので、分かる人には分かると思います。
――本作にはどんな怪異が登場するのでしょうか?
田平氏:1999年が舞台なので、その当時に流行した口裂け女や紫の鏡、テケテケが登場します。
――懐かしいですね。人面犬も登場するのでしょうか?
田平氏:はい。人面犬も登場します。ただ、かなり新しいデザインの人面犬になっているので、登場を楽しみに待っていて欲しいです。
――プレイ時間はどのぐらいになるのでしょうか?選択肢も存在しますか?
田平氏:選択肢もあり、場合によってはゲームオーバーにもなります。プレイ時間は30時間ぐらいですね。
――けっこう長いですね。開発期間はどれぐらいかかったのでしょうか?
田平氏:1年半ぐらいですね。アイデアはたくさんあったので、それを使い切りました。
――題材的に続編も作れそうですが、シリーズ化は意識していますか?
田平氏:メールマガジンでお話させていただいているのですが、ちょっと裏でいろいろと進めています。
――本作のどんなところに注目して欲しいですか?
田平氏:1999年の日本は今の時代と似通っていますが、非常にジメジメとした雰囲気があり、そのジメジメした感じ、オカルトが現実に寄り添っていた感じが皆さんに伝わってくれたらうれしいですね。あとは、キャラクターを好きになってもらい、みなさんにとって大事なゲームになってくれればうれしいです。
――ゲームはホラーですが、キャラクターのやりとりはコミカルなものもあるのでしょうか?
田平氏:キャラクターはコミカルですね。ただ、重いバックグラウンドを背負わせているので、その明るさも重要な意味があるものになっています。
――今回、HYPER REALさんがパブリッシャーですが、組んでみていかがですか?
田平氏:自分のディレクション能力を信じてくれていて、いい意味で放っておいてくれるので、やりたい放題やれています。
――クリエイティブに集中できるわけですね。
田平氏:はい。今回も試遊とは別に本編のプロローグとなる漫画を用意することを企画したのですが、すぐにOKしてもらえました。自分がディレクター気質なので、いろいろなことを許可を取らずにやらせてもらえるのはありがたいです。
――発売を楽しみにしているユーザーにひとことお願いします。
田平氏:今はインディーでホラーのゲームがたくさん発表されていますが、そんななかで本作を見つけてくださってありがとうございます。夏ぐらいにはゲームをお届けできると思いますが、そのときにはもうひとつ大きな情報を発表できると思います。みなさん、末長くこのキャラクターたちを見守っていてくださるとうれしいです。