千葉・幕張メッセにて9月21日~24日にかけて開催の「東京ゲームショウ2023」。PLAYISMブースに試遊出展された「Refind Self: 性格診断ゲーム」のプレイレポートと、開発者インタビューをお届けする。

目次
  1. プレイレポート:ロボットが生きるのに必要なバッテリー、ひとつしかないなら誰に渡す?
  2. Lizardry氏インタビュー:研究期間、まる1年。「誰も作っていないゲーム」をひとりで作るのはすごく大変!

「Refind Self: 性格診断ゲーム」(以下「Refind Self」)は、PC(Steam)/iOS/Android向けに2023年11月に配信予定の探索型アドベンチャーゲーム。「ゲームって、性格が出ると思いませんか?」をテーマに、プレイ中の行動に応じて性格診断が行われるという、独自性の高いタイトルだ。

開発者は前作「7 Days to End with You」でもそのオリジナリティが話題を呼んだLizardry氏。前作とはまったく異なるコンセプトでありながら、負けず劣らず独創的な「Refind Self」がなぜ生まれたのか、話をうかがった。

プレイレポート:ロボットが生きるのに必要なバッテリー、ひとつしかないなら誰に渡す?

ゲームをはじめると、すぐに「このゲームの目的は、あなたの性格をはかることです」「全23種類の性格から5つ、選ばれます」といったメッセージが表示される「Refind Self」。その上で、作中世界で「Refind Self」は100年ほど前に作られたゲームであることが明らかになる。入れ子構造のようになっているゲーム内設定が何を意味するのかが気になり、引き込まれる導入だ。

「Refind Self」のゲーム内で「Refind Self」を起動(ややこしい)すると、自分を作った博士に先立たれたロボットを操作することに。一見して人間と変わらない外見に見えるが、背中で回る大きなゼンマイが可愛らしい。そんなことを思いつつ博士の墓石を調べると、「冒険家」の性格が1ポイント上昇した。

このようにして、さまざまな行動をするかしないか、または行動時の選択肢で何を選んだか、はたまたその行動にどれくらい時間を掛けたかといったさまざまな評価軸に各性格のポイントが設定されており、これを100%まで貯めたら性格診断は完了となる。なお、今回プレイしたデモ版では15分の制限時間が設けられており、これを過ぎると100%まで貯まらずとも、その時点で性格診断が行われた。

選択肢は選んだ時点で、それぞれの選択肢を選んだ人の割合が表示される。ゲームがリリースされてからは、オンライン上の集計データをもとに更新されていくものと思われる。

博士との想い出の場所では、回想シーンが見れることも。このゲーム内のストーリー自体も非常に気になる。

フィールドは鳥居で区切られたいくつかのブロックに分かれていて、それぞれに別のイベントが用意されている模様。2つ目に訪れたブロックでは、ベンチに座ってみてからすぐ立ち去ったら「ベンチから3秒以内に出た」という判定により「旅人」のポイントが得られた。「落ち着きがない人」と言われたような気がして、若干の気恥ずかしさを覚えた。

目の前に現れた家の中に入ってみると、“小さき人々”に体を破壊され、バッテリーを奪われそうだと訴える“大きな人”と、「そのバッテリーがなければ死んでしまう」と訴える“小さき人々”がいて、どちらにバッテリーを渡すかの選択を迫られた(第3の選択肢もある)。こういったとき、どんな倫理観をもとに選択を行うか? というのは、最終的な診断結果に大きく影響しそうだ(得られるポイントも多めだった)。

「羊の絵に色を塗るのを手伝ってほしい」という頼みごとを受け、実際にいくつかの部位に別れた絵に4色の絵の具を塗っていくというイベントも。断ることも可能だったが興味本位で引き受けたところ、完成したらコインが手に入った。一方で、性格ポイントは最初の選択肢で手に入っただけで、絵の出来による加算はなかった。使用した色やデザインによって心理テストめいた結果が得られるのかと思ったので、やや肩透かしだったのだが、先々の展開に影響を及ぼすことはあるのだろうか……?

その後もいくつかのイベントをこなしつつ、ポイントを44%まで貯めたところでタイムオーバー。今回のデモ版では、ここまでの結果を参考に性格診断が行われることになった。ちなみに、製品版では最大で5つの性格が診断されるが、今回のデモ版で選ばれるのは1つのみということだった。

診断の結果は「聖職者」。「かわいそうな人がいたら、手を差し伸べることができる」性格と評されるのは悪い気はしない。しかし、前述のバッテリーを渡す選択で“小さき人々”に渡した辺りなどに左右された気はするのだが、“大きな人”に渡す人や、第3の選択を選ぶ人にも、それぞれの言い分がある気がする。この辺りは製品版が発売されたとき、「どの選択肢を、どんな理由で選んだのか」をほかのプレイヤーたちと語り合ってみたいところだ。

前作「7 Days to End with You」とはまた違った意味で、大いに話題を呼びそうな「Refind Self」。発売後、性格ポイントを100%まで貯めて、完全な形での診断結果を確認できる日が楽しみだ。

Lizardry氏インタビュー:研究期間、まる1年。「誰も作っていないゲーム」をひとりで作るのはすごく大変!

Lizardry氏

――「Refind Self」の「ゲームプレイを通して性格診断を行う」というコンセプトはどのように生まれたのでしょう?

Lizardry:「ゲームって性格が出るよね」というのは、ゲームのプレイヤーなら誰もが感じたことがあると思うんです。

それから、前作「7 Days to End with You」はありがたいことに、いろいろな方に実況していただいています。僕自身、けっこう視聴しているんですけど、プレイヤーによって解き方や考え方が大きく違うんだなと改めて思ったんです。

実況配信に寄せられるコメントにも「この人はそういうふうに考えるんだな」と気付かされるような受け止め方がたくさんありまして……。そういった違いを抽出できたらおもしろいんじゃないかと感じたのが開発の出発点です。

――ゲームで下される性格診断は、心理学などのノウハウを取り入れた、本格的なものなのでしょうか?

Lizardry:専門家の方の監修などを入れているわけではないので、どちらかというとエンターテイメント寄りの診断になっていることは、前置きとしてお伝えしておきたいなと思います。「行動によってほかの人と違いが出る」「相対的な自分の傾向が分かる」という部分を楽しむものと考えていただければと。

――ゲームに登場する23種類の性格というのは、既存の性格診断にあるものですか?

Lizardry:一応、いろいろな性格診断を参考にしているのですが、その上で自分の中でブラッシュアップして「こういう感じで分けられるよね」と用意したのがあの23種類ですね。

――TGS2023に出展されたデモ版では最後に「結果画面をTwitterにシェアしていただけませんか?」というメッセージが表示されましたが、製品版にも診断結果の違いを共有するような機能があれば、教えてください。

Lizardry:製品版では性格診断の結果に対応したIDが発行されるんです。ゲーム内に「性格を比べる」という機能を導入するので、ほかの人のIDを知っていれば、自分と相手の性格の違いの比較が楽しめます。

性格の比較だけならそこまでかもしれないのですが、「Refind Self」で大事にしているのは“性格が出るまでに取った行動”という過程の部分です。たとえば「このプレイヤーは花を拾ったけど、ほかのプレイヤーは花を拾わなかった」とか、「ベンチに座っている時間がこっちのプレイヤーは長かったけど、別のプレイヤーはすぐ席を立った」とか。そういう部分も含めて違いを比べてもらえるような機能になります。

ゲームそのものがおもしろくなるような設計にも力を入れていますが、その外側にあるコミュニケーションにも楽しさを感じてもらえたらなと思っています。

――有名な配信者さんがプレイしたら、その行動を自分と比べてみたくなりそうですよね。

Lizardry:そうなんです。自分が好きなタレントさんと自分はどう違うんだろう? と比べてみて、共通点があったら嬉しいですよね。そういった形で遊んでもらえたら、ファンの方にも喜んでいただけるんじゃないかなと。

――製品版では診断後、最大5つの性格が選ばれるということですが、この辺りについても詳しくお聞きしたいです。

Lizardry:まずは「もっとも近い性格」が1つ。それから、メインの性格を補助する「サブ性格」みたいなものがふたつ。4つ目は本人も気付いていないけど、実はその性質を持っているというような「秘められた性格」です。最後の5つ目は「もっとも遠い性格」です。その人と真逆にあるのがどんな性格かが分かります。

――真逆の性格を持っている相手を探してみるというのもおもしろそうですね。話を聞いていて改めて感じたのですが、前例のないコンセプトを、しっかりした結果が導き出せる形で開発するゲームに落とし込むのは、途方もなく難しそうです……。

Lizardry:めちゃくちゃ大変でした(苦笑)。これはぜひ聞いてほしいんですけど、昨年の3月頃に企画を考えて開発をスタートしたのですが、そこからまる1年は「どうすればゲームに落とし込めるのか?」といった部分の研究期間になりました。途中でPLAYISMさんに見てもらったビルドはかなり微妙で……。

――では、そこからブラッシュアップしていまの形に?

Lizardry:ブラッシュアップというか、合計で4回くらいイチから作り直しています。それくらい大変でした。

――プレイしてみると、性格診断だけでなく、ゲーム内で語られるストーリー自体も、謎めいた設定が徐々に明かされるような、先が気になるものになっていますよね?

Lizardry:アドベンチャーゲームという体を成していたほうが、プレイする動機付けになるかなと。「なぜプレイヤーは性格診断ゲームをプレイしているのか?」というところからストーリーが始まって、周回プレイを通して、最終的には納得のいく結末が迎えられると思います。

ただ、ユーザーさんは「どうしたらクリアできるんだろう? トゥルーエンドに行ける条件は何?」と考えると思うのですが、それを優先すると性格診断にはならないので、「そういうゲームではないよ」と伝わる設計になるようには意識して作っています。

――前作「7 Days to End with You」に続いて「Refind Self」と、2作連続でユニークなゲームで、それぞれのコンセプトも大きく違うことに驚いたのですが、そうなった理由みたいなものってあるのでしょうか?

Lizardry:やはり「新しいゲームを作りたい」というのがモチベーションとしてあるんだと思います。加えて、既存のフォーマットでおもしろいものを作ろうとすると、「グラフィックがすごくいいんです」とか、「戦闘システムが極まっています」みたいなクオリティ勝負になってくると思うんです。

――まず、絵面で目を引かないと、なかなか注目されないみたいな面は多かれ少なかれありますよね。

Lizardry:売るために作っているという訳ではないのですが、せっかくの個人制作なので「ほかでは見たことがないゲームだ」という面で注目してもらいたい気持ちもあります。

たぶん「7 Days to End with You」も「Refind Self」も、一度は「こんなゲームがあったらいいな」と思ったことがある人は多いテーマだと思うんです。だけど、それを具現化できなかったのだとしたら、作るのを困難にさせる、ある程度のハードルがあったからだと思うんですよね。そこは個人制作だから乗り越えられる部分でもあるのかなと。妥協もできちゃうんですけど、それも良いところで。

――「この要素だったら妥協しても、いちばん大事なコンセプトは守れるな」みたいな取捨選択もしやすいということでしょうか。

Lizardry:そうです、そうです。いろいろと削っていった上で、いちばん大事なものを貫いたら、“尖る”じゃないですか。どうせ尖らせるなら、ほかにないゲームを作っていこうという想いがありますね。すごく大変ですけど!

――「誰もやっていない」というのは、それだけの理由があるでしょうからね(笑)。

Lizardry:しばらく開発を続けていると「あ、だから誰もやってないんだ! 理由が分かったわ」となります(苦笑)。

――最後に、「Refind Self」が気になっている方々へのメッセージをお願いします。

Lizardry:改めてになりますが、診断結果はエンターテイメント性を重視しているので、すごく学術的なものだったりする訳ではありません。でも結果が出る過程で、プレイヤーひとりひとりに必ず違いは生まれるので、そこに注目してもらうことで、コミュニケーションの切っ掛けなどになったなら嬉しいです。

それから、「Refind Self」ではプレイヤーの皆さんの行動の集計データが出るので、僕としてはこれがめちゃくちゃ気になっているんです。「いちばん多いのはこの性格」や「この行動を取る人は何%」といったデータは、クリエイターとしてゲームデザインのヒントにもなるんじゃないかと思うんですよね。

――あ~。「こう感じる人が多いのであれば、ここのツボを突けば、より多くのプレイヤーが楽しめるゲームになるハズ」みたいな(笑)。

Lizardry:そういったデータサイエンス的なおもしろさも楽しみにしています。

――「Refind Self」のデータが活きるであろう次回作にも、大いに期待できそうですね! 本日はありがとうございました。

※画面は開発中のものです。

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