札幌市と、セガ札幌スタジオなど札幌を基盤とするゲーム開発関連企業が連携して行う複合イベント「Sapporo Game Camp」が、10月6日~8日の期間、札幌市産業振興センターにて開催される。本稿では、10月6日のステージで開催された基調講演の模様と、オープニングセレモニーの模様をお届けしよう。
「Sapporo Game Camp」は、札幌のIT人材およびゲームクリエイターの育成と、さらなるエンタメ業界の盛り上げを目的とし、ゲーム開発に関心を持つ社会人、学生を対象にゲーム開発企業所属のクリエイターと共に1チーム8名の16チームで3日間かけてゲーム開発を行う「Game Jam」と、小学校から高校生までの生徒を対象とした「ぷよぷよ」を題材にしたプログラミング講座×eスポーツ体験会、トークセッションなどが行われるイベントだ。
2022年に第1回が開催され、今回は第2回目となる。また、「Game Jam」の参加者は昨年の60名から一気に倍以上の128名になり、6日のトークセッションには累計700人超もの聴講者が訪れたという、今後益々規模が拡大していくことが予想されるゲームイベントである。
基調講演「札幌のゲーム産業のこれから」
基調講演に登壇したのは、ロケットスタジオ 代表取締役社長 竹部隆司氏、ハ・ン・ド 取締役執行役員 三上哲氏、スマイルブーム 代表取締役 小林貴樹氏の3名。
竹部氏は、1980年ハドソン入社。パソコン黎明期から活動。パソコン、家庭用ゲーム機のゲームソフトを多く手掛ける。1999年春、ハドソンから独立しロケットスタジオを創業。代表取締役社長に就任。開発会社として家庭用ゲームソフトの開発・移植などを中心にパソコン、携帯電話を使用したゲームソフトやシステム開発業務の指揮を取る。
三上氏は、1985年ハドソン入社。ファミコンやパソコンのプログラマーとしてゲーム開発に関わり始める。以後、コナミ札幌スタジオを経て、再度ハドソンに戻ったのちに、2005年ハ・ン・ド入社。現在は札幌本社を中心に東京・名古屋スタジオとも連携しながら、家庭用ゲーム機やスマートフォン向けゲーム開発部署のマネージメントを担当している。
小林氏は、1985年dB-SOFTでパソコンやゲーム機用のソフトを開発、1990年アジェンダ設立時からゲーム開発を経て、2008年にスマイルブームを設立。殺伐としない愉快なゲームや先端技術の無駄遣いをポリシーに集まった仲間と受託業務で稼ぎ、自社製品の開発と販売を行い、未来のゲーム開発者を育てる活動を進めている。
まずは札幌の最近の学生の傾向について、3名が一様に口にしたのは、「真面目な子が増えた」という点。その中でも竹部氏は、多様性の時代だけあって、色んな子がおり、面白い世代になってきたという。
小林氏は、ゲーミングPCでゲームを遊ぶ子が増えて、PCへの下地ができている世代と話し、三上氏は「あくまで自分の会社の場合」と前置いた上で、札幌以外の地域からのオンラインでの応募がどんどんと増えており、全国からやる気のある学生が集ってくる状態であり、このままでは札幌の学生は少し厳しい環境下に置かれるのではないかという見通しを挙げた。
札幌と他地域との違いについて三上氏は、本州の方では専門学校でも4年制のところがあってその分場数を踏んできているものの、札幌はまだ2年コースの学校が多く、2年という時間はまだ学び始めの段階と話す。その上で、2年制の学生に対しては、覚悟やゲームを作りたいという気持ちなど、“伸びしろ”も見て採用しているところもあるそうだ。そこを埋めていくためにも、地元の企業連携をもっと強くしていかないと厳しいのではないか、と札幌の学生への見解を示した。
札幌ならではの教育の特徴については、竹部氏曰く「技術力は後からついてくる時代」とのこと。最初から基礎力が高いに越したことはないが、今はインターネットや書籍などでいくらでも後天的についてくる。なので、ロケットスタジオでは1年間くらい研修期間があり、まずチームで仕事をする意識をどう作っていくかというところに重点を置いているのだそうだ。学生のうちはゲーム制作をしていても、ゲームの消費者という意識が強い。社会人になったら意識を消費者から提供者に変えていかなければならない。だからこそ1年かけて意識作りをしていくというのが目的なのだという。
意識作りの点で制作側になって変わることと言えば、小林氏は「面白いという評判のゲームを買うと、つい分析してしまう。純粋に遊びとして楽しめていない、続編を作るとしたらとか、余計なことを考えてしまう」と笑い混じりに答え、竹部氏、三上氏も頷いていた。
また、竹部氏、三上氏、小林氏、3社とも東京に拠点を持っているが、それについてはいずれも「東京にも拠点があると仕事がしやすいから」ということを挙げた。とはいえ、東京の拠点の運用はそれぞれ違うようだ。
特に小林氏の会社スマイルブームはフルリモートワーク制。先日は、業界経験も全くなく、山梨に住んでいるという人を採用したのだそう。札幌にマンスリーマンションを借り、研修を行ったという。
竹部氏の会社ロケットスタジオでは、ゲーム以外にも医療系のシステムなどの開発も行っているそうで、それもありクライアントに東京の会社が多いので、営業拠点を東京にも置いているという。ただ、リモートワークは馴染むフェーズと馴染まないフェーズがあったため、今のところは出社という形を取っているとのことだ。
東京に拠点を持ちつつ、それでも札幌の会社であることにこだわる理由について、三上氏は札幌はとても良い場所であり、ゲームを作るだけならば、今や世界中のどこにいても作ることができるが、会社を一歩出た時の環境が大きく違うと語り、「生活と仕事のどちらも両立するのに、札幌は非常に良い環境」なのだと述べた。
話題は一転、昨今話題のAIについて話が及ぶと、竹部氏は「面白いと思う」としつつ、「まだ仕事の中ではそこまで活かしていない」と語った。続けて、ゲーム業界は昔から流行りの技術を貪欲に取り込んできた歴史があるものの、AIをどう利用していくかは、まだ壊して作ってを繰り返していかないと、これは面白いというところまで辿り着かないと思っており、個人的にはAIは否定するものでもないので、遊びに展開できるのであれば利用していきたいと、語っている。
それを受けて三上氏としては、AIが発展して作業が楽になるならありがたいので、今はどんどん吸収したいそう。小林氏はすでにAIを取り入れた開発を行っており、数年後にはプログラマーはコードを書かなくなり、逆にプランナーを積極的に人材を集めていかなければならなくなるのではないか、と今後の展望を述べている。
最後にこの日の参加者の大半を占めていた学生に向けて、3名は一様に「まずは出力しよう」という言葉を口にした。竹部氏は「今はネットで入ってくる情報は多いけれど、出力しない人が多い。消費者から提供者になるためには、とにかく出力してほしい。失敗は恥でもなんでもない、失敗をしても知見を得られたという、ポジティブな解釈をすると良い」、三上氏は「札幌の企業同士は仲が良く、『こういうことをしてみたい』という要望に、それならうちよりもこちらの企業のほうがいいかもしれないという紹介もできたりするので、非常に恵まれた環境になっている」、そして小林氏は「個人でもSteamなどに登録できるので、どんなに稚拙なゲームでもまずストアで1本売ってみてほしい。ストアで売るという手順を調べて実際にできる人を歓迎している」と述べ、この講演は幕を下ろした。
札幌市長も登壇したオープニングセレモニー
オープニングセレモニーでは、「Sapporo Game Camp」実行委員長である瀬川隆哉氏と、7日、8日の2日間でゲーム開発に挑戦する「Game Jam」参加者たちにエールを送るため、札幌市長の秋元克広氏が来場。「Game Jam」参加者たちへ、歓迎と激励の言葉を送った。
なお、この場で「Game Jam」参加者たちに、今年のゲーム制作のテーマも発表された。今年のテーマは「増殖」。この文字から連想されるゲームならばどのようなものでも良いとのこと。会場では早速参加者たちがさまざまな発想を話し合う光景が広がった。
そんな参加者たちの様子を、瀬川氏と秋元氏が視察に訪れるシーンもあり、参加者が緊張からか背筋を伸ばす場面も見受けられた。
6日に行われたトークセッションでは「新卒からみたゲーム業界」、「悩める若手プランナーセッション」、「悩める若手プログラマーセッション」、「悩める若手デザイナーセッション」、「QAってどんな仕事?」など、聞いていて非常に楽しいセッションも数多く開催されており、このトークセッションは「Game Jam」参加者以外の一般開放も行われているので、興味のある人はぜひ今後の開催予定などをチェックしてみてほしい。
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