168万ユーザー獲得の運営型VRゲーム「Devil's Roulette」――その裏にあった短期開発の成功と失敗【CEDEC2026】

CEDEC 2026
0コメント 咲文でんこ

7月22日~24日にかけて、パシフィコ横浜 ノースにて開催のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2026」。本稿では24日に行われた講演「運営型VRゲームのユーザーが累計100万人に至るまでの記録 短期間開発における成功と失敗」のレポートをお届けする。

168万ユーザー獲得の運営型VRゲーム「Devil's Roulette」――その裏にあった短期開発の成功と失敗【CEDEC2026】の画像

登壇したのはMyDearestでディレクター・ゲームデザインを務める渋谷宣亮氏。同氏がディレクションを手掛けたMeta Quest向けVR対戦ゲーム「Devil's Roulette」は、マルチプレイでロシアンルーレットを行う作品で、応募時点で累計100万人、講演直前の調査ではなんと168万人ものユーザーを獲得しているという。

国内ではまだ前例や知見の少ない「運営型VRゲーム」というジャンルにおいて、どのような判断がユーザー定着につながり、どのような施策が離脱を招いたのかを、成功談としてではなく試行錯誤の過程として発表された。

MyDearestでディレクター・ゲームデザインを務める渋谷宣亮氏
MyDearestでディレクター・ゲームデザインを務める渋谷宣亮氏

VR化にあたって浮上した3つの課題

開発は2023年12月、社長から次回作のアイデアを問われた渋谷氏が「ロシアンルーレットが流行では」と答えたことに端を発する。「1週間で完成できるか」と返され「無理」と即答したというが、翌月には社内で30~40人の開発メンバーを5人チームに分割し、2~3ヶ月で一斉にゲームを完成させるプロジェクトが始動。渋谷氏自身が、自ら提案したロシアンルーレットVRの開発を担うことになった。

課題としてまず挙げられたのが、ターン制とVRの相性の悪さだ。自分の番でない間は何もできないターン制は、対戦人数が増えるほど待ち時間が倍増する。対策として「銃の使用権のみターン制、それ以外はリアルタイム進行」を採用し、妨害アイテムや確率操作をターンを問わず使用可能にすることで、プレイヤーが常に駆け引きに関与できる状態を作った。

次に、入力自由度の高さゆえの不正リスクが挙げられる。頭部・両手の3点トラッキングによる上半身の自由度の高さは、卓の下に隠れるなどの不正の温床にもなりうる。渋谷氏は「身体のアドリブと柔軟性こそVRの面白さ」と定義し、身内間のプレイでは容認、ランダムマッチのみ不正対策を実装するという線引きを行った。ダメージ判定も「弾の身体接触」とし、あえてギリギリ避けられる弾速に調整している。

最後に、思考力の低下という課題があった。ヘッドセット装着中はメモも取れず、残弾管理すら困難になる。これを排除すべき欠点ではなくランダム性を高める要素として受け入れ、「深く考えずともそこそこ楽しめる」バランスへ舵を切ったことで、敷居の低さと同時にガチ勝負にも対応できる懐の深さを両立させた。

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リリース後に直面した運営トラブル

リリース1週間前、当初予定していた7ドルの買い切り販売が、会社方針で急遽基本プレイ無料のモデルへ変更。収益化の仕組みを用意する時間が取れず、リリース後1ヶ月間は収益源が皆無という事態に陥った。

さらに深刻だったのがパブリックロビーの設計ミスだ。スキン販売を機能させるための「見せつけ合う場」としてリリース4ヶ月後にロビーを実装したところ、滞在するだけで対戦しないユーザーと対戦目的のユーザーの間に断絶が生まれ、4人対戦の成立率は導入前の4分の1程度まで急落。従来の野良マッチが自動で空席に割り振る仕組みだったのに対し、ロビーの「テーブル」は自ら着席しないと人が集まらず、見知らぬ相手への声掛けのハードルも重なった結果だった。

その後、複数のゲームモードをテーブル単位で分けたことで人数分散は緩和。個室機能についても、交流志向と対戦志向のユーザーがほぼ半々だったため廃止せず共存させる形に落ち着いたという。

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渋谷氏は、短期開発では相応の割り切りが必要であり、メディア特性に応じてインタラクティブ性を調整すべきと総括。その中でも「人間の身体の自由度をどうゲームデザインに落とし込むか」がVRならではのアドリブ性・戦略性を生む核心であると強調した。加えて、リリース・運営計画は事前に固めておくべきこと、ソーシャル体験の設計を誤るとゲーム全体のUXが悪化しうることにも言及した。

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今回の講演で興味深いのは、パブリックロビーの失敗が「ソーシャル性を足せば良くなる」という単純な設計思想への反証になっている点だ。後付けで社交の場を挿入したことがかえって対戦人口を分散させ、ゲームプレイそのものを毀損する結果を招いた。後発でソーシャル機能を足す設計判断には、実装前からマッチング動線への影響を織り込んでおく必要性を強く示唆する事例と言えるだろう。

なお、本稿では、フォロワー作品において独自性を出す/出さない判断基準や、企画段階でコンセプトが迷走した際の軌道修正の考え方など、講演で語られた内容の一部を割愛している。詳細が気になる方はぜひタイムシフト配信でご確認いただきたい。

CEDEC2026公式サイト
https://cedec.cesa.or.jp/2026/

得意分野はビデオゲーム全般だが、メタバースやAI関連の記事も積極的に執筆中。ライター業以外にもVTuberとしての活動や、メタバース内ではラジオパーソナリティや、DJとしての顔もあり、肩書きが混雑してきたのが最近の悩み。 X(旧Twitter):https://twitter.com/denpa_is_crazy note:https://note.com/denpa_is_crazy/n/n57f97c18adef

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