「ほの暮しの庭」を約50時間プレイして見えてきた恐怖の先にある中毒性――ホラーゲームの“緊張”と“安堵”から生み出される快適なスローライフホラーを土台としているからこその「面白さ」を紐解く

プレイレビュー
0コメント 近藤智

日本一ソフトウェアが、2026年7月30日に発売したPS5/Nintendo Switch 2/Nintendo Switch/PC(Windows/Steam)向け生活シミュレーションゲーム「ほの暮しの庭」。ここでは発売後、約50時間ほど遊んだプレイレポートをお届けする。

「ほの暮しの庭」を約50時間プレイして見えてきた恐怖の先にある中毒性――ホラーゲームの“緊張”と“安堵”から生み出される快適なスローライフの画像

筆者は「ほの暮しの庭」が発表されてから発売までの約1年、ずっと本作を追いかけていたプレイヤーのひとりだ。発売日にデジタルデラックスエディションを自腹で購入し、今日も今日とて彼ヶ津村(かがつむら)で生活しているほどドハマりしている。

常にゲームで忙しい読者の方は「50時間プレイ」と聞くと身構えるかもしれないが、別にそれだけ時間をかけないと面白さが分からないわけでは決してない。実際、この記事の構成を練り始めたのはプレイ10時間ほどの段階だったが、一プレイヤーとして遊んでいたところ気が付けば約50時間が経過していた。ただそれだけだ。

ちょっと気合いの入ったゲームファンは、おそらく11月のカウントダウン、それに伴う9~10月のゲーム発売ラッシュでスケジュールに頭を悩ませている時期だろう。そうした1人として遊ぶ予定のタイトルをこれでもかと詰め込んでいたが、もう全てを諦めて一旦積みゲーにする覚悟を決めた。それほど「ほの暮しの庭」が面白い。

そんなわけで、ここでは序盤のストーリーや、実際にゼロから進めて感じた内容をお届けしていく。基本的な操作感については、先行プレイレポートを参照してほしい。

※編集部注:以下では核心とはならないまでも発売後だからこそ語ることができるゲーム内要素やストーリーなどにも一部言及しています。まっさらな気持ちでプレイをしたいという人は注意してください。

八つの掟と不穏な空気から始まる、リアルでノスタルジックな村暮らし

本作は、まだ幼い主人公が山間で保護される場面から始まる。村人によれば、主人公は単なる迷子ではなく、神隠しから舞い戻った存在らしい。真相は不明だが、主人公は村の一員となるため荒れ果てた土地を開墾し始める。契約書の締結に加え、借地料や自治会費といったリアルな金額を請求されて面食らったものの、今のところ督促はなくホッとしている。

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傾きかけたあばら家、段ボールのベッド、最低限の農具だけを与えられて始まった彼ヶ津村での生活。掟に縛られた村人とは会話もままならず、種を購入するお金もない。食堂も利用できず道端の「つくし」や「タンポポ」で空腹(スタミナ)を凌ぎ、釣りで日銭を稼ぎ、その合間に少しずつ畑を広げて実らせた“大切な作物”すら土地神へ捧げることになってしまったが、やっとのことで主人公は正式な村人として迎えられる。

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こうして本格化する田舎暮らしは、古き良き日本のノスタルジーを感じさせる一方で実にリアルだ。市役所の人間がソーラーパネル設置の勧誘に来たり、粗大ごみが散乱する場所があったりと、理想化されたファンタジーの田舎暮らしではなく、現代的な雰囲気も描かれている。

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徐々に村へ溶け込むと同時に、主人公も古くから伝わる「八つの掟」と無縁ではいられなくなる。例えば「掟の一、午後十一時以降外出禁止」は不自由な制限に見えるが、夜間の村には謎の化け物が徘徊。掟を破った村人の様子がおかしくなるケースや、悲しい犠牲も目撃する。

つまり、掟とは住人を締め付けるものではなく“何か”から守るためのものではないか……とも解釈できるだろう。主人公は日々の暮らしの中、自ら掟を破って真実を解き明かそうと試みる。

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しかし、村に隠された不穏な謎は掟だけにとどまらない。正式な村人として交流が可能になると、頼み事に応えて報酬を得たり、料理レシピを教わったりと生活の幅が広がっていく。好物を贈って仲を深めていけば、新たな人間関係が見えてくるのも楽しい。だが仲良くなるにつれ、違和感も膨らむ。

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閉鎖的な村にもかかわらず、住人はまだ10~20代の若者が大半。さらに、血縁や養子関係こそあれど「親子」の組み合わせがろくに存在しない。どうやら10年ほど前、この村で“何か”が起きたらしいことは分かるが……。また掟にまつわる謎とは別に、村人たちが個々に抱えている切実な願いもあるようだ。

なぜ化け物が当たり前のように徘徊しているのか。なぜ掟を守らねばならないのか。そして、村人たちが胸の内に抱える悩みや、ひた隠しにする過去は何なのか。主人公は掟の謎だけでなく、村人が抱える秘密にも向き合うことになっていく。

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――と、非常に先の気になる展開なのだが、実のところ筆者の進行度はおそらく中盤をそこそこ越えたくらいだろう。約50時間プレイしてもなお、だ。

ストーリー進行には特定の生産品を納品したり、決まった時間帯に行動したりする必要がある。これらを農作などと並行しなくてはならず、ひとつのイベントをこなすまでどうしても時間はかかってしまう。ただ、遅れている最大の理由は単純に「ストーリーを後回しにしていたから」に尽きる。

とくに最序盤は、まるで炭鉱夫のごとく石切場とあばら家を往復していた記憶しかない。というのも、ちょっと頑張ればより使い勝手の良い上位の農具が手に入るのが目に見えていたからだ。本作はストレスを感じやすい部分へ丁寧に手が入っているため、初期の農具でも大きな不便はない。とはいえ、この手のアイテムは遅かれ早かれ絶対に欲しくなるもの。それならばと素材集めに没頭した結果、ストーリーが遅々として進まなくなってしまった。

当然ながら、ストーリーを進めることで解放される要素も多い。これから遊ぶプレイヤーへアドバイスを送るなら、ひとまず「図書館」が解放されるところまで一気に駆け抜けるのがおすすめだ。

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恐怖は慣れる!ホラーが苦手でも何とかなる(かもしれない)絶妙な夜の探索

本作の大きな醍醐味が、掟で禁じられた夜間の探索だ。暗闇を懐中電灯で照らすと、スキルツリーを解放する「勾玉」、化け物の対処法や村の歴史が記された「本」、さらには日中に入手できない特殊な家具や貴重なアイテムも見つかる。生活基盤を整えるためにも、夜の探索は欠かせない。

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となると気になるのは「実際、どのくらい怖いのか?」という点だろう。序盤は化け物からひたすら逃げ回るしかなく、不意を突いて脅かされるジャンプスケア演出もちらほら用意されている。アクションゲームの類が得意でない人はアイテムを拾おうとして化け物に接触してしまい、ろくに探索できないまま体力が尽きるケースもあるはずだ。

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しかし、最初は恐怖で悲鳴を上げても10回、20回と挑めば化け物の行動パターンやギミックの手がかりが見えてくる。プレイ感としては純粋なホラーゲームというよりも「パターンが決まったお化け屋敷の周回」に近くなっていき、何度も同じシチュエーションで脅かされるようなものなので、怖さは自然と薄れていくだろう。

当初は何もかも「それどころじゃない!!」と、とにかくアイテムを拾うボタンを連打し続ける感じだったが、周囲の様子を冷静に観察し、農具なども活用すれば十分に攻略できるバランスだ。具体的なやり方は伏せるが、実際に筆者はいくつかの化け物を手がかり入手前に対処できている。きっちり攻略できれば、ちょっとしたオマケがあるのも嬉しい。

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探索は午前0時に始まり、体力が尽きるか午前6時を迎えると終了する。化け物は午前5時に消えるため、釣りなどをしながらじっくり待てば最後の1時間は安全に散策できる。村の外へ逃げ込めば追跡を一旦振り切れるし、コストは大きいがダメージを肩代わりするアイテムも生産できる。スマートではないが、食事で体力を回復し続けて強引に突破するのも手段のひとつ。アイテムの配置場所も概ね固定されているため、挑戦を重ねるほど効率的な回収ルートも見えてくるはずだ。

そもそも、たとえ体力が尽きて倒れても「集めたアイテムを没収される」といったペナルティは一切ない。プレイを重ねるほど着実に快適になり、最初は怖いと感じたプレイヤーも真顔のまま淡々と化け物を攻略できるようになっていく……かもしれない。

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ストレスは徹底除去!圧倒的な快適性と没入感

ちょっぴり不穏なストーリーや、恐ろしい化け物が徘徊する夜の探索を進めるのも、全ては日中の農作、牧畜、狩猟、釣り、家具や加工機づくりなどのスロー(とは言えない)ライフを快適にするため。効率と快適さを追い求めるうち、いつしか夜の徘徊すら「日課」であり「日常の一部」へと変わっていく――こうなったら最後、もう彼ヶ津村から抜け出すことはできない。

繰り返しになるが、本作はプレイヤーがストレスを感じやすい要素へ、とことん手が加えられている。何をするにもリソースが不足する序盤から「作物を○回収穫する」「畑を○回耕す」など、日々の実績に応じて達成報酬が手に入るのも、その一例だ。村人からの依頼の報酬も物々交換ではなくお金のため、使い道の自由度が高いのも嬉しい。

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そうして貯めたお金で、所持品枠や農地を早々に拡張できる。早い段階でスプリンクラーも手に入り、毎日の水やりという地味に時間が取られる労働からも即座に解放。家畜の生産品を自動回収する機械も用意されていて、農作物の収穫や設置物の撤去もボタン長押しでまとめて完了する快適さだ。農具の強化にはそれなりの時間とコストを要するものの、必要な素材はショップや石切場ですぐ手に入るため、次の目標として設定しやすい。

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そしてスキルツリーを開けば「これを取得したらQOLが上がること間違いなし!」の技術や機械が目に入り、心を揺さぶってくる。「現状でもそんなに困っていないし……」とスルーしようとしても、いざ解放してみれば「もうこれなしの生活には戻れない!」と痛感するほど、段違いの利便性だ。

さらに感心したのが、攻略情報がゲーム内でほぼ完結すること。ストーリー進行で手に入るカレンダーやマップを見れば、村人たちの誕生日やイベント日程、好物、村人の現在地、イベントが起きる場所などを一目で確認可能。必要な材料などをボタン1つで記録/呼び出しできるメモ機能のおかげでアレコレ調べ直したり、記憶したりする必要もない。一度入手したアイテムであれば、図鑑から「どの加工機で使えるか」「品質向上に必要な収穫数」「釣れる季節や時間帯」までチェックできる。

ゲームを遊んでいて「あの素材を落とす敵はどこだっけ?」など、一旦手を止めて検索した経験のあるプレイヤーは多いことだろう。しかし本作は疑問の答えの大部分がゲーム内にあるので、プレイを止める必要がほとんどない。公式のアップデート情報以外にネット検索を一切挟まずにいられるのは、没入感を高く維持できている大きな要因だと感じる。

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本作にとってエンドコンテンツとも呼ぶべき、熱心なプレイヤーが挑むような目標もメインストーリーのそこそこ早いタイミングで解禁されるのも、やり込み派に寄り添った素晴らしい構造といえるだろう。収穫物には最適な季節があり、時期を逃すとしばらく待たなくてはならないため、この手の指針は早く把握できればできるほどいいに決まっている。ストーリークリア後のようなタイミングではなく、操作に十分慣れた頃にさっと提示されるのは、プレイヤーのモチベーションを絶やさないための親切な設計だと感じる。

もちろん最初から1日も無駄にせず、最高効率を叩き出すようなプレイも一興だろう。だが、明確な終わりのないジャンルだからこそ、あまり気負いすぎず「明日は何をしようかな」と気ままに思考を巡らせるくらいが、本作と心地よく付き合えるスタンスだと思う。

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ちなみに、家具や装飾品で家を自分好みの空間にカスタマイズする要素もあるが……筆者は現在あばら家こそ改築したものの、未だに段ボールベッドで眠る日々を送っている。それは当然、資材を片っ端から使い切ってしまうため家具に回す余裕がないからだ。雑貨屋では服なども購入できるが、計画性がなさすぎて「服を買ったらお金がなくなり、着替えるために必要な家具が買えない」とか、そんなことになっている。

「適当に置くだけでも、何となくイイ感じになるんだろうな……」と設計図を眺めつつも、結局この辺りに手を出せるのは農作や牧畜のサイクルがひと段落ついてからになりそうだ。というか「収納箱の連結」の技術を覚えたこともあり「もしかして家の中に収納箱を並べまくれば、時間を気にせず一生アイテムを整理できるのでは?!」と気づいてしまったので、残念ながら普通にインテリアを楽しむことはないかもしれない。この辺りは、センスのあるプレイヤーたちにお任せしようと思う。

それと発売当初こそ一部不具合が指摘されていた本作だが、継続的なアップデートで順次解消され、より遊びやすくなる改善も行われている。幸いにも筆者は、約50時間プレイしている中で進行不能などの致命的なトラブルに悩まされることもなく遊べている。注意を払いながらも必要以上に不安に思わず、どっぷりと生活に浸ってみてほしい。

ホラーゲームのもつ「緊張」と「安堵」に生活シミュレーションが融合した、心地よいサイクル

農作や牧畜を軸とした生活シミュレーションの金字塔といえば、シリーズ30周年を迎えた「牧場物語」だ。これ以外にもRPGのような戦いをエッセンスとして取り入れたもの、人間関係やストーリーを重視したもの、特定の農作業に特化したもの、リアル志向の農場経営が行えるもの、自由度の高いクラフトに特化したものなど、多彩なタイトルが世に送り出されている。

その表現手法は実に幅広いが、これらは全て「生活シミュレーションにさらなる深みを持たせるための要素」だと感じている。一見すると遠回りに思えるバトル、探索、住民との交流などが、ゲーム内での「もうひとつの日常」をより豊かにし、プレイヤーを世界観へ深く引き込むために機能しているからだ。多彩な要素が噛み合うことで、プレイヤーが過ごす時間はより彩り豊かなものになっていく。

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そして本作「ほの暮しの庭」もまた、不穏なストーリーと恐怖を伴う夜の探索によって、このジャンルへ新たな可能性を示してみせた。ただし本作が面白いのは「生活シミュレーションを広げるためにホラー要素を加えた」といった方向性ではなく、むしろ「『夜廻』シリーズのようなホラーを土台に、ファーミングゲームの要素を見事に組み込んだ」という点にある。

例えるなら、構造としては「バイオハザード レクイエム(バイオ9)」のような手触りに近いかもしれない。あちらが息の詰まる恐怖を味わうグレース編と、爽快なアクションが楽しめるレオン編で絶妙な緩急を生み出していたように、本作もまた「恐怖」と「安堵」のサイクルが美しいほどにハマっている。

「夜廻」シリーズでお馴染みの、大きく聞こえる心拍音や画面が脈打つ演出の中、襲い来る化け物から逃げ回る緊迫感はまさしくホラーゲームそのもの。とはいえ化け物の行動パターンを覚えたり、農具を活用したりすることで徐々に対処できるようになる。恐怖に呑まれすぎず、一定の緊張感を保ちつつ立ち回れる調整に収まっているので、過度なストレスを感じることなくゲームのサイクルに没頭できる。

「あれもしたい、これもやらなきゃ」とストレスフリーで快適な昼の時間を忙しく駆け回っているうちに夜が訪れ、恐ろしい時間を乗り越えれば再び自由気ままな生活へと戻れる。この「極限の緊張」と「解放された安堵」が交互に訪れる絶妙な緩急こそ、ホラー体験を軸に据えた本作だからこそ味わえるサイクルだろう。

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だからといってホラー要素以外がオマケ程度なのかといえば、50時間ほど遊んでいる筆者でさえ一向に終わりが見えてこないのが「生活シミュレーションにも本気」である何よりの証拠だ。やりたいことが山積みで時間がいくらあっても足りず、一度足を踏み入れてしまえば全てを忘れて没頭してしまうのは間違いない。

ゲームの新作ラッシュに怯え、積みゲーの山に多少の罪悪感を覚えつつも、今日も今日とて筆者は彼ヶ津村の生活へと帰っていく。もし日常を忘れて、のめり込める生活シミュレーションを求めているなら、ぜひこの怪しくも魅力的な本作の門を叩いてみてほしい。大丈夫、何もかも諦めてしまえば案外すっきりするものだ。

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趣味のゲーム系をはじめ、IT/ビジネス系などWeb媒体を中心に活動。AAAタイトルから乙女ゲーム、インディーズまで何でも遊ぶ雑食ゲーマー。あらゆる次元のアイドルと映画も愛してます。 https://contacos.hatenadiary.jp/

プレイレポートを読んで本作が気になった人はこちらもチェック!

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