バンダイナムコエンターテインメントが展開している「アイドルマスター」(アイマス)シリーズ。約2年にわたった20周年イヤーが2026年7月に一区切りとなった。そんな20周年イヤーの振り返りやシリーズの今後について、シリーズを統括しているAE事業部 IP&コンテンツプロダクション ゼネラルマネージャー の波多野公士氏に伺った。
アイマスは、シリーズ初代作であるアーケード版「アイドルマスター」が2005年7月26日に正式稼働。2025年7月26日が20周年にあたるため、その前後1年間を20周年イヤーと位置づけ、イベントなど多岐にわたって展開し、“プロデューサー”(※「アイマス」シリーズのファン)とともに盛り上がる2年間となった。
波多野氏へのインタビューでは、20周年イヤーを振り返っての思い出のみならず、アイドル活動の拡大を目的として掲げている「“MR”-MORE RE@LITY-プロジェクト」(MRプロジェクト)や、“xRライブ”と称して開催しているアイドル(キャラクター)の3DCGライブ、さらにはシリーズにおける今後の展開、ゲーム関連の今後についても含めて、さまざまなことを伺った。

インタビュー・文:さとうかずや
構成・編集:TOKEN
※本インタビューは8月4日に実施したものです。
765AS「NEI」ライブの感動と如月千早の飛躍――脈々と繋がる20周年イヤーの軌跡
――まずは、「アイマス」シリーズの20周年イヤーが一区切りついたということで、振り返ってみて、波多野さん自身としての感想や、印象的な出来事についてお聞かせください。
波多野氏:率直な感想を申し上げますと、長かった!というのと、あっという間だった!という両方の感覚があります。20周年イヤーは、2024年7月26日に実施した配信番組(※「アイドルマスター 特別生配信 19th→20th Special Party!!!!!!」)から始まりましたが、その時にプロデューサーのみなさんからいただいた熱い気持ちを持って、なんとか走り抜けることができた、という印象です。プロデューサーのみなさんにはさまざまな展開をする中で、応援してくださったり、参加いただいたことに感謝しておりますし、あらためてこの場をお借りしてお礼をさせてください。本当にありがとうございました。
思い出深い出来事はたくさんありますし、ひとつひとつに思い出やお話したいこともあります。どうしても語るうえで外せないのは、765PRO ALLSTARSによるライブイベント「THE IDOLM@STER 765PRO ALLSTARS LIVE ~NEVER END IDOL!!!!!!!!!!!!!~」ですね。本当に素晴らしかったです。765PRO ALLSTARS+のキャストのみなさまをはじめ、当時から携わってきたクリエイターやスタッフの方々のおかげで、ここまで来られたのだとあらためて実感しました。私もあの日は見ていて、実際に叫んだり涙したりと、夢中になりましたし、20周年の重みを深く感じる1日でした。
あと個人的には、如月千早の「THE FIRST TAKE」出演から日本武道館での単独公演「OathONE」に至るまでの流れが、非常に印象的でした。私はクルーとして帯同していたのですが、如月千早自身がさまざまな舞台を経験し、プロデューサーのみなさんのお力添えをいただくことで、以前よりもさらに大きな存在になったと感じることができました。武道館公演も両日見ていましたが、DAY1でどこか緊張している様子から始まり、DAY2の最後には本当にのびのびと歌っている姿を見ることができて、本当に目頭が熱くなりました。
――その前に千早の記者会見があって、私たちも質疑応答に参加したのですけども、会見を行うことそのものも印象的でしたし、反響が「アイマス」の枠を超えて広がったことを覚えています。記者会見がひとつのステップとなって、段階を踏んで期待が高まって、武道館公演で大きな存在と感じることができたようにも思います。
波多野氏:振り返ってさかのぼると、Apple Musicさんとのお仕事(※如月千早に聞くApple Music「空間オーディオ」の世界)で、千早がひとりのアーティストとして語ったり、月村手毬のソロ曲「アイヴイ」を視聴したりということもありました。20周年イヤーだから急にスタートしたというよりは、これまでの取り組みが脈々と繋がって、きれいな成長や期待の線を描いて今に至っているという点でも、非常に印象深く感じています。
“アイマスIPの総合力”を底上げするブランド横断施策
――20周年イヤーの展開は「全国プロデューサー検定」(アイマス検定)や、オリジナルデザインのマンホール蓋を設置する「ふたマス!!!!!!」など、多岐にわたっていたのも印象的です。また、ライブイベントのみならず、こうした企画の取り組みに対しても、熱心なプロデューサーさんが実際に足を運ぶ姿を見ていると、その熱量は本当に高いと感じます。
波多野氏:本当に感謝しています。「アイマス検定」は、私も現地で実際に受験して、問題が結構難しかったのを思い出しました。マンホールも各地に納品に伺わせて頂きました。各地に「アイマス」が根付いていく実感を得ており、取り組みとして続けていきたいと考えています。
――ちなみに、各ブランドで個別に実施するものと、ブランドを横断する企画やイベントなどで、取り組みや意識することの違いはあるのでしょうか。
波多野氏:私の目線になるのですが、普段ブランドごとに実施する施策は、そのブランドの魅力を最大限に引き出すことに集中しています。一方で、ブランドを横断する取り組みについては、全ブランドの集合体である「アイドルマスター」というIP全体の総合力を底上げしたり、拡大させたりすることを強く意識して、イベントやゲーム内コラボなどを企画しています。
先ほど挙げられていた「アイマス検定」や「ふたマス!!!!!!」、ほかにもJR東海さんとの「TR@VEL MEDLEY!!!!!!~あなたの旅をプロデュースしちゃいマス♪~」(旅マス)、各地の商業施設などを巡る「アイマス、アイに行きマス!」、アイドルたちのパネルが出張する「オファマス」もそうですね。これらはまさに340人以上ものアイドルたちの個性が集まっているからこそ、生み出せる企画です。こういった点を意識して運営し、多くの方が喜んでくださったことは、とても印象的でした。
――ブランドを横断する取り組み自体はかねてから行われてきましたが、20周年イヤーを機に一段と加速して、プロデューサーさんの好みが広がった印象を受けています。
波多野氏:20周年イヤーという理由づけがあったからこそ、あえて踏み込んだ企画もありました。個人的な印象としては、2023年2月の「THE IDOLM@STER M@STERS OF IDOL WORLD!!!!! 2023」(MOIW2023)あたりから、“「アイドルマスター」としてみんなで集まると、こういうことができる”という形が、確立されていったように感じています。この時の助走を保ったまま、スムーズに20周年イヤーに入っていくことができたのも大きいかと。
――この時期は、新型コロナの流行でライブイベントにも制約が強かった中、「MOIW2023」は開催直前に客席からの声出しが可能になって、プロデューサーさんのモチベーションも高まった時期のように思います。
波多野氏:本当にそう思います。プロデューサーのみなさんの声援や拍手とともに、ようやく再始動できたという実感がありました。
蓄積された技術とプロデューサーの熱量が“そこにいる”空間を生むxRライブ
――かねてから、シリーズ20周年とその先の未来に向けて「PROJECT IM@S 3.0 VISION」を掲げ、MRプロジェクトを推進してきたかと思います。20周年イヤーの中でもMRプロジェクトは中心的なものと感じていますが、印象的なイベントや、アプローチとして面白いと感じたものはありますか。
波多野氏:まず前提として、2022年に「3.0 VISION」と、その中の重要な戦略の一つとして、MRプロジェクトを発表させていただきました。これは20周年イヤーに限った試みではなく、21周年以降も継続していく重要な取り組みと位置づけております。
その上で印象的なものを挙げますと、先ほどお話しした如月千早の一連の展開がまず挙げられます。ほかにも、星井美希のアメリカライブ(MIKI HOSHII SOLO SHOWCASE「THE FUTURE SPOTLIGHT」)ですね。「あふぅTV」という配信で発表させていただいたのですが、美希がロンドンにいるというその状況も面白かったです。
ほかにも、チーム内からの提案で立ち上がった地上波番組「愛♡MAX!!!TV」、「ゴゴスマBOX」とのコラボで現実のアイドルとのトーク、先日の「IDOL WORLD SUPER FESTIVAL 2026」(IWSF2026)など、MRプロジェクトを軸に据えているからこそ実現できた企画がどんどん増えており、大きな成長を実感しています。
少し前の話しですが、2018年に当時のDMM VR THEATERにて開催した「THE IDOLM@STER MR ST@GE!! MUSIC♪GROOVE☆」が、私にとって「アイマス」チームに加入してから初めて取り組んだイベントでした。
このときに、アイドルたちの3DCGをはじめとするさまざまなデータについて、社内データベースの構築や資産のストックをしていき、都度のバージョンアップを加えて提供するという考えを、チームとして持ち始めたんです。その結果、2021年に完成した社内スタジオである「MIRAIKEN studio」にあるモーションキャプチャースタジオを活用し、データベースとの掛け算で、すぐにアイドルたちが現実の舞台で活躍できる環境が整っていきました。
実際の取り組みを始めた初期のころは、システム面を含めてどう進めるべきか暗中模索だったのですけど、2023年の「315 Production presents F@NTASTIC COMBINATION LIVE」や、2024年の「菊地 真 ・ 萩原 雪歩 twin live“はんげつであえたら”」の内容であったり、プロデューサーさんからの反響や反応をみて、これは喜んでいただけるものと確信したんです。そこからこの数年間は、例えばゲーム内のモデルデータをどのようにすれば、ライブイベントなどで活用し、お届けできるかといったことなど、技術的なやり取りを意識的かつ急ピッチに進めてきました。非常に重要なステップだったと考えていますし、だからこそ「IWSF2026」のような多人数のアイドルによる越境ライブも、このタイミングで実現できたと思います。
――「IWSF2026」では平日を含めた3日間の開催ながら、全日程で現地チケットは完売していました。それが象徴的だと思うのですが、「アイマス」の“xRライブ”と称して開催している3DCGライブであっても、プロデューサーのみなさんが足を運んで会場を埋める動員があり、キャストライブと遜色ないぐらい熱心に声援やコールを送っていて熱気にあふれています。そうした“本当にアイドルがそこにいた”という興奮の感想を、SNSを通じて見受けられます。
波多野氏:私たちが意識しているところとして、各ライブを担当している制作側のプロデューサーや演出担当をはじめとした各スタッフの皆さんが、そのライブを「1日限りのイベント」で終わらせないよう工夫してくれている点があります。
「IWSF2026」で765プロダクションと961プロダクションのxRライブ企画(※2027年7月24日と25日に、京王アリーナTOKYOにて開催予定の「IDOL ULTIMATE ONCE AND FOR ALL」)を発表させていただきましたが、開催から1年前に発表というのは、かなり早いタイミングです。それをしたのは“ここから1年をかけて、彼女たちや彼らの物語を紡いでいく”という覚悟の表れです。当日に、ただ来てライブを見て盛り上がるというだけでなく、ライブに向けてみんなで気持ちを醸成していく過程が大切だと思っています。そうした積み重ねがあるからこそ、アイドルたちが歌う姿に意味合いが出てくると考えています。
キャストライブについても、そのアイドルを感じてもらう、ある意味降臨させるようなものでもあるのですけど、キャラクターライブも同様だと思っていて。その場にいらっしゃるプロデューサーのみなさんの力で「本当にそこにいるんだ!」という空間を作り上げていただくことで成立しているものととらえています。
もちろんキャストライブでも、そのアイドルがその場にいて歌っているように思わせてくれるパフォーマンスをすることは、キャストのみなさんの血のにじむような努力と思いの賜物ですし、xRライブに関しても、そういった強い思いがしっかりと乗っかっているのを感じます。
「シンデレラガールズミュージカル」など新たな挑戦をする理由
――20周年イヤーの新しい取り組みはブランド単位でもある中で、ミュージカル形式の演劇を盛り込んだ「シンデレラガールズミュージカル」が印象的でしたし、実際好評だったかと思います。この経緯を教えていただけますか。
波多野氏:これまで関わってくださっている歴代の先輩方も含め、「アイマス」というのは常にチャレンジングな企画が多いプロジェクトです。なぜそうした挑戦をするかというと、アイドルの魅力をプロデューサーのみなさんと一緒に掘り下げたり、「アイドルマスター」の世界観を解釈して「こういう展開があった方が良いのではないか」というアイデアを、プロデューサーさんや制作側のスタッフ、キャストのみなさんと対話しながら形にしているからだと思います。
「シンデレラガールズミュージカル」については、「3.0 VISION」や20周年イヤーの期間中に行われた大事な公演であったことは間違いありませんが、それ以前から根底にある挑戦の意識があったからこそだと思います。
直接的な経緯についてお話すると、「シンデレラガールズ」のイベントプロデューサーや、演出家など含めた主要スタッフによるブレストを経て、企画されたものです。公演を拝見しても、ミュージカルの入門編としての分かりやすさと、「シンデレラガールズ」を知らなくても楽しめるカジュアルさ、そして深く知っているからこそ笑える要素が絶妙なバランスで組み込まれていて、新しいチャレンジとしてとても素晴らしいと感じました。
――アニメやゲーム原作のミュージカルだと、声を担当しているキャストとは別の方が演じる場合もありますが、「シンデレラガールズミュージカル」では、キャスト自ら舞台に立っているのも特徴的と感じています。
波多野氏:イベントは定型に縛られずに、様々な形でのお届けの仕方があると考えています。今回の舞台ではキャストの皆さんに舞台に立っていただき、それが特徴的な個性となりましたが、過去にはドラマチックライブステージ「アイドルマスター SideM」など違った形での舞台のチャレンジもあります。
――ちなみに、各ブランドにおける企画や展開については、基本的に各ブランドのチームから上がってきたものを波多野さんが確認したり、すり合わせを行ったりするという流れなのでしょうか。
波多野氏:はい。ブランド展開はマーケティングやゲームチームで検討を重ねたり、イベントはブランド担当プロデューサーやイベントプロデューサーが合議の中でブラッシュアップしていたり、案件によって検討の体制を調整しています。バンダイナムコエンターテインメント所属のスタッフや近い距離にいるクリエイターが、ブレストを行いながら企画を生み出していくことが多いです。
ほかにも別企画として、「シャイニーカラーズ」のユニット「アンティーカ」がxRライブとして実施したミュージカルもありました(※2025年12月に開催した「283 Production MUSICAL Performance 騎士団のヴェール - Veil of Order -」)。
この企画を聞いたときに、「MR(3DCG)キャラクターでミュージカルが成立するのだろうか」という懸念もありましたし、議論の中では「これをミュージカルと呼んでいいのか」、「ミュージカルをうたうと、お客様の想像を裏切ってしまうのではないか」といった意見も確かに出ました。
しかし、制作スタッフから「ここまでしっかり考えているから絶対大丈夫です」という熱い説明を受け、最終的に皆の合意の上で、企画が通っていきました。私自身も全公演を拝見しましたが、「確かにこれは新感覚のミュージカルだ」と納得できる公演でした。ミュージカルに挑む場合でも、「シンデレラガールズミュージカル」のようにキャストと共に歩む形もあれば、ブランドごとのチームが「今これをやりたい」という思いで進めて、形になっているものもあります。
企画や今後の展開を考える中では、プロデューサーみなさんからのアンケートをチーム全員で読み込んでいますし、SNSでのご意見を制作チームで共有して「これについてどう思う?」と議論して意見を交わすなど、みなさんの声をしっかり聞きながら、健康的にものづくりができていると感じています。
“ライバーアイドル”として存在感を確立した「vα-liv(ヴイアライヴ)」
――「ヴイアライヴ」の展開についても、現状の印象や今後の期待についてお聞かせください。
波多野氏:20周年イヤーという枠組みの中でお話ししますと、2025年に京セラドームで開催した「THE IDOLM@STER M@STERS OF IDOL WORLD 2025」(MOIW2025)の前夜祭に立ち会って、本編でも出演している光景も見ていたのですが、彼女たちがプロデューサーのみなさんから応援され、背中を押していただける存在になれたと強く感じました。そこには本人たちの努力もあってこそですけども、その後の「876プロフェス」(※「THE IDOLM@STER 20th Anniversary 876 PRODUCTION FES.」)や、先日の「IWSF2026」を経て、“ライバーアイドル”としての存在感をしっかりと出すことができ、確立されたと思います。
もともと、PROJECT IM@Sの中でアイドルたちの活躍の幅を広げるという役割を「ヴイアライヴ」には期待していましたし、今まさにその役割を実現してくれています。立ち上げ期や候補生時代など最初の不安な時期を抜け、現在は非常に良いコンディションにありますし、PROJECT IM@Sのチームの一員として、私たちとしても彼女たちを強力に後押しし、逆にプロジェクトを引っ張っていく存在にもなってもらいたいと考えています。
「アイマス」の枠にとらわれず、外部のイベントにも精力的に出演できるのは、彼女たちならではのポジションだからこそですし、今後さらに力を入れて伸ばしていきたい領域です。
961プロや876プロはオリジン的存在――20周年イヤーで意識的に企画を増やした
――「アイマス」シリーズが20年以上展開する中で、さまざまな事務所やキャラクターをはじめとして、世界観における設定などが積み上がっているかと思います。「ヴイアライヴ」を876プロ所属という形で活用しましたが、こうした掘り起こしをする取り組みや活用についての考えをお聞かせください。
波多野氏:まず前提として、「アイマス」におけるプロジェクトとして、961プロや876プロなどをレガシーだからと意図的に封印してきたわけではありません。ただ、大きなプロジェクトを運営していく上で、どうしても動きの大きいブランドに力点がかかっていたのも事実としてありました。
今回、チームメンバーとともに20周年イヤーの企画を考える中、961プロや876プロはオリジン的存在であり、力点がかかって動いているブランドにも当然影響を与えている存在だという意見が出たんです。それならば、20周年イヤーという特別な期間だからこそ、彼らや彼女らにも出てきてもらって活躍してもらおうということで、意識的にそういった企画が増えたところはあります。
実際にやってみると非常に大きな反響があり、それを見るに「お待たせして申し訳ありませんでした」という気持ちにもなりました。20周年イヤーの期間中にその反響を肌で感じることができたからこそ、765プロと961プロのxRライブ企画の発表にいたったところもあります。そして先ほどもお話ししましたが、この1年間をかけて両プロダクションの物語をしっかりと描いてお届けしていきます。
――20年以上展開していると、“かつてのもの”というのが懐かしさとともに、今新たに提供されると新鮮さも感じるところがあります。楽曲「GO MY WAY!!」は往年のプロデューサーさんには耳なじみがあって、かつてライブなどでも相応に歌われていたかと思うのですが、少し前に「学園アイドルマスター」のカバーとして発表された際、新曲だと思われたという反応を見ていると、特にそう思います。
波多野氏:「GO MY WAY!!」を新たに知っていただいたこともそうですが、そこから魅力に気づいてサブスクリプションサービスなどで検索して、過去の名曲に触れてもらえるきっかけにもなります。それは、20年以上にわたって先輩方が誠実に向き合って作ってきたものが、本当に良いものであった証拠だと思います。私たちの役割は、自分たちが担当している期間において真摯にものづくりに取り組み、それを次の世代へとしっかりと託していくことだと考えています。
「アイマス」は「三位一体」で動くプロジェクト――プロデューサーは一緒に作っている仲間
――「アイマス、アイに行きマス!」や、さまざまな催しを一堂に集めた「THE IDOLM@STER M@STER EXPO」(アイマスエキスポ)など、現地のリアルイベントでプロデューサーさんとコミュニケーションをとる企画も多数ありましたが、波多野さんはどのように感じられましたか。
波多野氏:「アイマス」はもともと、キャストである声優のみなさん、制作陣、そしてプロデューサーのみなさんの「三位一体」で動いているプロジェクトで、三者の距離が他の作品に比べて非常に近いことが、大きな魅力のひとつだと感じています。プロジェクトを運営する側としては、プロデューサーのみなさんとの対話を通じて、“次はどんな面白いことをやろうか”と一緒に、作品づくりをしている意識を持って取り組んでいます。
20周年イヤーとして、この節目にプロデューサーのみなさんと意見交換をする機会を作りたいと考えて、実現したのが「アイマス、アイに行きマス!」であったり、「ふたマス!!!!!!」であったりです。チームが本当に頑張ってくれて、多くの企画を実行できました。
また制作陣も、プロデューサーさんと名刺交換するための名刺を作らせていただいたのですけど、私自身も期間中に1,000枚ほど交換させていただきました。自分でこの枚数であれば、他のスタッフはもっと多くの名刺交換の機会をいただいたはずです。
この名刺交換は日本国内にとどまらず、海外のさまざまな地域でも行わせていただきました。そして国内外問わず、プロデューサーのみなさんから「こういうことをやったら面白いのではないか」「この間のイベントはこうでしたね」など、直接のご意見をいただく機会が多くありました。この対話の時間は本当にかけがえのないもので、きちんと耳を傾けることは、今後のものづくりにおいて必要なものだと実感しています。
少し話は逸れますが、一緒にもの作りをするということに関して忘れられない出来事がありまして。JR田町駅(※本社であるバンダイナムコ未来研究所の最寄り駅)に応援広告を出していただいたことがありました。朝にSNSでその応援広告の存在を知り、会社に行く途中に見に行って、写真をプロジェクトのメンバーに共有して、何人かのスタッフも実際に見に行っていました。これまでもコミュニケーションの機会はありましたけど、「アイマスエキスポ」や各地を巡回するイベントを通じて、その機会がどんどん増えていますし、その機会と繋がりはなくさずにずっと続けていきたいと強く思っています。
――「アイマスエキスポ」にも行っていましたが、特に配信番組などで出演している制作陣の方々との名刺交換や写真撮影に、順番待ちの行列ができていたのが印象的でした。他のゲームコンテンツを見ても、珍しいように思いますし、いわゆるゲームクリエイターとそのファンとはまた違った関係にも感じられます。
波多野氏:憧れの存在というよりも、プロデューサーのみなさんが“一緒に作っている感”を持ってくださっているからかもしれません。特に各ブランドの担当者に対しても、作品作りや解釈を共に行っている仲間のような感覚があるのかもしれないですね。
「アイドルマスター ポータル」はプロデュース活動の起点を目指して本格アップデートへ
――「アイドルマスター ポータル」についてお伺いします。「3.0 VISION」にあわせて、デジタルツインのWeb3.0型バーチャル拠点を見据える形で、いわゆる公式サイトをフルリニューアルしましたけども、現状の運用と、今後の課題や改善、情報発信以外の役割について、どのように考えられているでしょうか。
波多野氏:20周年イヤーの期間中は、情報発信はもとより、チェックイン機能を活用した取り組みを行いましたし、本当に多くの方にポータルサイトをご利用いただいたと思っています。一方で、私たちもプロデューサーさんのプロデュース活動に貢献できるようになるには、どんな課題があるか、を考えており、今後さらに発展させていきたいと考えています。
20周年イヤーの期間中は、情報発信源の主となっているポータルの操作性を大きく変えてしまうと、プロデューサーのみなさんに混乱をきたしてしまうのではないかという懸念から、アップデートを控えていた部分がありました。ですが、20周年イヤーが一区切りしましたので、本腰を入れていきます。UIまわりもそうなのですが、「アイドルマスターで遊ぶなら、アイドルに会いに行くには、まずここを立ち上げよう」と思っていただけるような、プロデュース活動の起点となる場所にしていくという考えをより進めていきます。これまで以上に積極的にアップデートを行い、日々担当スタッフとも会議を重ねながら、しっかりと向き合っていきます。
“IPの中心は間違いなくゲーム”。さまざまな映像の活用についても語る
――ゲームの展開についてお聞かせください。「アイマス」といえば起点がゲームというイメージがあり、プロデューサーのみなさんは、やはりアイドルのプロデュース活動をゲームで体験したいという気持ちも少なからずあると思います。近年では「学園アイドルマスター」(学マス)のリリースとヒットもありましたが、今後のゲーム領域についてどのようにお考えですか。
波多野氏:「アイマス」においてIPの中心にあるのは間違いなく“ゲーム”です。ですので、ゲームに関してもこの先しっかりと継続してローンチしていきます。今後は、ゲームに関する次の展開への期待を高めていただけるような発信にも、取り組んでいきたいと考えています。
様々なチャレンジに取り掛かっている一方で、昨今のゲーム開発は難易度が非常に高くなっていますし、市場環境も厳しさを増しています。それでもプロジェクトを真摯に進めて、少しでも多くのみなさんにお届けできるよう、開発一同全力で頑張ってまいります。
――シリーズで見れば20年以上経過する中で、その時代にあわせたゲームコンテンツを展開してきたと思いますが、ゲームハードを含めてデジタルゲームを取り巻く環境は大きく変化しています。開発も長期間化していますし、今後数年単位で見ても変わる可能性もある状態です。
波多野氏:ゲームのあり方そのものが変化している中で、例えば新規の企画を立てる際に“5年後のお客様の感情やニーズはどうなっているか”を見据えなければなりません。意欲的に、そして大胆に検討を続けつつも、慎重に丁寧に進める必要もあります。
――シリーズを積み重ねていく中では、映像コンテンツも蓄積されているかと思います。アニメ作品もそうですが、「アイマス」では多様なライブイベントがあり、それを配信したり映像商品化もしています。取り巻く視聴環境の変化もある中で、こうした豊富な映像コンテンツの活用については、どのように考えているでしょうか。
波多野氏:さまざまな映像コンテンツに触れられる機会がほしいというニーズは、把握しておりますし、そうした機会を作ってお届けしていきたいと考えています。ゲーム内イベントやライブなどのタイミングにあわせた、アニメや過去のライブ映像の一挙上映みたいな形で提供し、思い出を共有した上でゲームやライブに向けて気持ちを高めてもらうというアプローチも考えられます。
ほかにもライブイベントにおける、国内外での配信や、映画館でのライブビューイングもそうですし、ニーズがあれば、映画館で過去のライブイベント、xRライブ公演を振り返る企画にチャレンジしてみたいと思っております。もちろん、ライブイベントの配信に関してもオンライン上での同時視聴などといった企画は続けていきたいです。
やはり、もう見られない状態のまま眠らせてしまうということはなるべく避けたいというのは、我々としても考えていることです。ゲームと同様に提供方法やデバイスが変わっても、何らかの形でお届けしたいという思いは強く持っています。
――ライブイベントの映像商品化はかねてからありましたが、次第に映画館でのライブビューイングが行われ、そして配信で自宅でもリアルタイムで見られるようになるなど、ここにも時代の流れとニーズの変化もあるように思います。
波多野氏:「ASOBISTAGE(アソビステージ)」が立ち上がったのが2020年頃だったかと思います。こうしたライブイベントのストリーミング配信自体、ここ5、6年で定着したものだと感じています。
先日の「IWSF2026」では、国内では「ASOBISTAGE」、海外向けには「Stagecrowd」と「bilibili」での配信も行いました。また一部の地域に限られましたが海外の映画館と、日本全国の映画館でのライブビューイングを実施しました。今後も提供方法を工夫して、ライブ公演の感動をお届けしたいと考えています。
海外の熱量とニーズに応えるために、多言語化など展開を模索
――海外の動向や展開についても伺います。最近はシカゴでの星井美希公演や、海外イベントへの参加も見受けられます。かねてから海外に熱心なプロデューサーさんたちが存在していること自体は感じていますが、実際どのような状況になっているのかをお話しください。
波多野氏:私も海外に視察に行くことがあるのですけど、各地域で確かな熱を感じています。ひとつ印象的だったこととして、2023年に上海へ視察に行った際、秋葉原のようなショップが立ち並ぶ百聯ZX創趣場(ZX)という大型商業施設があるのですが、日本のアニメやゲーム関連グッズはたくさんあったのに、「アイマス」のグッズを全く見かけなかったんです。
そのときに、さまざまな展開の計画を立てて、2025年までに中国でのポップアップショップやファンミーティング、xRライブの同時放映などを実施して、物販も徐々に強化していきました。それもあってか、先日(2026年7月)に「シンデレラガールズ」と「学マス」でポップアップショップをそのビルで開催できました。今、中国では応援広告が毎月のように掲出されている状況でして、しっかりとアプローチをすれば、確実に応えてくださるニーズがあることを実感しました。
ほかの地域でも、シカゴでの星井美希の公演も、3,000~4,000人ほどの方が並んでくださったと聞いています。韓国のフェスイベント「KIMCHIKURA Fes」にも、2025年は「ミリオンライブ!」と「シャイニーカラーズ」が出演して大変な盛り上がりを見せましたし(※本インタビュー後に開催された2026年の「KIMCHIKURA Fes `26」には、「765PRO ALLSTARS」と「ミリオンスターズ」が出演)、他地域イベントでも、「アイマス」のブースが出展されているのを確認しております。
私たちが供給できていなかっただけで、しっかりとお届けすれば反応があることがわかりましたし、世界中にファンはいるのだと実感しています。あとプロデューサーさんの層ということでいうと、やはりアニメ「アイドルマスター」の存在が大きいのと、一部ゲームタイトルでは言語対応など海外での展開を行っていたこともあるので、それらに触れていた方々だと推察しています。
――かねてからそうですけど、ライブイベントに足を運ぶと、海外から日本に来ている熱心なプロデューサーさんは珍しくないですし、むしろ当たり前に来ているというぐらいに感じます。
波多野氏:本当にありがたいことです。逆に海外現地でもプロデューサーさんにお話する機会がありますが、その中で、海外で盛り上がりがあるタイミングのときに、ライブなどでこちらに来てほしかったというお声も少なからずいただきました。
最近は海外出張時でも、アニメショップなどに行くと現地のプロデューサーさんに声をかけていただき、名刺交換をすることがあります。そのときに「この間の『NEVER END IDOL!!!!!!!!!!!!!』に行きました」と、ぱっと見でも数百人規模で映っている海外プロデューサーさんの集合写真を見せていただくこともありました。そのうえで、これだけのファンがいるので、もっとこちらでも展開してほしいとお伝えいただけるのもありがたいです。
海外のプロデューサーさんにとっては今さらと感じられるかもしれませんが、私たちが提供するコンテンツにおいて、少しずつでも多言語対応を進めるなど、なるべく多くの方にお届けできる方法を模索していきたいと思っています。日本でこれだけの方に背中を押していただいているコンテンツですので、ワールドワイドで愛好してくださる方々がいらっしゃると思っています。
「アイマス」は“いつまでも挑戦者”。“輝きの向こう側”を見据え、25周年に向けて走り続ける
――20周年イヤーが一区切りした今、今後に向けてどのような展望を描いているのか、そしてプロデューサーさんに向けてお伝えしたいことがあればお話ください。
波多野氏:まず20周年イヤーという節目で新しく実施できた取り組みについて、みなさんに喜んでもらえたと実感できたものは、今後も継続していきたいと思っています。まだまだ社内やプロジェクトとしての検討や調整も必要なので、あくまでも私の願望としてのお話ですが、「ふたマス!!!!!!」のマンホールは、もっと各地に設置していきたいですし、「アイマスエキスポ」はこちら側としても本当に楽しかったです。ほかの企画も含めて、せっかくいただいた機会からチャレンジして芽吹いたものがありますので、継続する取り組みとしていければと考えております。
また、プロデューサーのみなさんに向けては、この20周年イヤーのお祭りを一緒に走り抜けていただき、本当にありがとうございました。心からのお礼と拍手をお送りしたいです。
20周年を迎えられたことは、皆さんで喜び合いつつ、ですが、いつまでも続くアイドルたちの物語の通過点、ともいえると思います。2026年で21周年を迎え、まもなく四半世紀となる25周年も見えてきました。プロジェクトとしては、いつまでも挑戦者であり続けること、新しいことにチャレンジし続けられるIPでありたいです。先輩方の言葉を借りるなら、“輝きの向こう側”をしっかり見据えられるように、プロデューサーのみなさんとの対話を続けながら種まきもしていきたいです。
この2年間、制作陣は日本だけではなく世界中に伺わせていただきました。みなさんの力をお借りしながら、この「アイドルワールド」を世界中に一緒にお届けできればと思っています。2022年に発表した「PROJECT IM@S 3.0 VISION」のアクションスローガンとして「CRE@TE POWER WITH YOU ! あなたらしさが、きっと誰かの力になる。」を掲げました。この言葉を忘れずに、これからも、しっかりと走り続けていきます。

THE IDOLM@STER(TM)& (C)Bandai Namco Entertainment Inc.
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