スマートフォン向け弾幕シューティングRPG「東方幻想エクリプス」をレビュー。ケイブが「東方Project」を題材に作り上げた、弾幕シューティングファン注目の一作。その魅力を紹介する。
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「東方幻想エクリプス」は、ケイブからリリースされたスマートフォン向け弾幕シューティングRPGだ。タイトルについた「東方」という言葉が示す通り、本作は上海アリス幻樂団の「東方Project」を原作とした公認二次創作ゲームとして作られている。「東方Project」といえば、博麗霊夢や霧雨魔理沙といったキャラクターや世界観の認知度が高い。しかしそもそもは、弾幕シューティングゲームとして作られた作品だ。一方、本作を手掛けるケイブも、弾幕シューティングゲームのデベロッパーとして高い評価を獲得している。つまり本作は、弾幕シューティングというジャンルにおける、トップレベルのコラボレーションといっても過言ではない。当然、期待していた人も少なくないだろう。もちろん筆者もそんな一人だ。

「東方」らしさとケイブらしさを併せ持つ横スクロール弾幕シューティングRPG
本作のメインパートは、もちろん弾幕シューティングパート。大量に散らばった敵弾をかわしつつ、敵をショットで倒していく…という内容だ。ただし、縦スクロールではなく横スクロール。筆者の中では「東方」やケイブというと縦スクロールというイメージが強かったので、横スクロールという画面構成はちょっと意外だった。

ただ本作において、横スクロールという画面構成は2つの意味で成功していると感じた。1つは、上海アリス幻樂団による本家「東方Project」との差別化をはかるという点。本作はあくまで公認二次創作ゲームなので、本家とは違う、本作ならではのテイストが求められる。この点で、本家とイメージがかぶってしまう縦スクロールではなく、横スクロールを選んだという点は正解だと感じた。

2つめは、キャラクターの演技が描写される点。本家「東方Project」がそうであるように、本作もシューティングパート内でキャラクター同士のかけあいが表示される。この時本作では、キャラクターがアップになり、アニメーションによって演技を行うのだ。ただ、もし本作が縦スクロールだったなら、2体のキャラクターのうち1体はどうしても後姿で表示されていただろう。しかし、横スクロールとして作られているので、全キャラクターの表情や演技を見ることができる。この点も横スクロールの恩恵だと感じた。

本作のゲーム的な特徴は「弾幕ブレイク」。敵破壊時に出現する「ブレイクアイテム」を集めると、一定時間ショットがパワーアップし、敵弾を破壊可能になるという要素だ。「弾幕ブレイク」によってピンチを打開することもできるし、ボスをはじめとした高耐久力の敵に対して一気に畳みかけることができる。

とこでこの「弾幕ブレイク」は、見方によっては弾幕というゲーム性を否定するものに感じられるかもしれない。なにせ、避けるべき弾幕を破壊できてしまうのだから。しかし、実際には弾幕シューティングというゲーム性の魅力を強めると同時に、「東方」らしさを強調するものとなっている。

弾幕シューティングの醍醐味といえば、弾幕をギリギリで回避するスリル。だが、決してスリルだけが醍醐味というわけではない。弾幕をかわし切った時や、敵を破壊した時の爽快感もまた、弾幕シューティングの魅力。そして本作においてこの「爽快感」の部分を担っているのが「弾幕ブレイク」だ。

「弾幕ブレイク」は単純に弾を破壊するだけでなく、主人公を強化するための「界力」アイテムへと変化させる。「界力」アイテムを消費することで、ステージクリア時に様々なスキルを獲得できるという仕組みだ。このため、「界力」アイテムはあればあるだけいい。ということは、弾幕が大量であればあるほど、「界力」アイテムが手に入ってうれしい、気持ちイイ…ということになる。回避時のスリルがブレイク時には逆転し、爽快感へと変わるわけだ。

ここで、本家「東方Project」をプレイした人であればピン!ときたかもしれない。「弾幕ブレイク」の「弾幕を避けつ敵を倒し、アイテムを集めて育成」という立ち回りは、本家「東方Project」の立ち回りに近いのだ。このため見た目やシステムは独自のものなのに、プレイ感は「確かに東方Project」というものになっている。

また、ステージ読み込み中に出る「少女祈祷中…」といった演出も本家「東方Project」を踏襲。細かい点まで「東方Project」らしさを追求していることが伝わってくる。

「東方Project」らしさを持つ一方で、ケイブらしさを感じさせるのが、画面左右の余白の部分だろう。本作に限らず、たいていのスマートフォンゲームは操作を画面タッチで行う。このとき、指でタッチした部分は画面が見えなくなってしまう。もちろん、ターン制RPGなどリアルタイムな操作が要求されないゲームであれば、多少画面が見えなくとも問題ない。しかし、弾幕シューティングゲームをはじめとしたアクション性の高いゲームジャンルにおいては、一瞬でも画面が見えないというのは致命的。死角から出現した敵や敵弾によって死んでしまう可能性が高いからだ。

この点を踏まえて、ケイブのスマートフォン向けシューティングゲームは、画面に余白が設けられている。余白部分はステージ以外のものが描写されており、そもそも自機も敵も敵弾も移動できない。このため、心置きなく指を置いて操作ができる。

弾幕シューティングゲームである以上、弾幕の美しさや回避のスリル、破壊の爽快感といったものが魅力の根幹であることは間違いない。しかしUIが原因で、魅力が損なわれてしまうということは少なくない。とても細かい点ではあるが、そんな細かい点をおろそかにせず、快適性を追求する職人芸は、ケイブらしい部分だ。

本作ならではの魅力!ローグライト的な式化キャラクター育成
本作は「東方Project」らしさとケイブらしさを継承しつつ、同時に独自の魅力も持っている。それは、「式化」キャラクターの育成。

本作では、霊夢や魔理沙といったキャラクターに対し「想起カード」「式化キャラクター」という装備ができる。いずれも装備することで自機の能力がアップ。また、習得可能なスキルが変化する。

「想起カード」はガチャによって獲得、プレイによって経験値が貯まって強化されていくという要素。これに対し「式化キャラクター」は、「異変解決」モードを通じて生み出す要素となっている。「異変解決」モードでは、既に紹介した通りステージクリア時に「界力」アイテムを消費した強化が可能。ただこの強化は次のステージへの進行条件にもなっており、一定以上の強さに到達していないと次のステージへ進むことができず、そこでゲームが終わってしまう。と同時に、そこまで育てた時機が、「式化キャラクター」となるのだ。

これがとてもおもしろい。単純な弾幕シューティングゲームの場合、ゲームオーバーになってコンティニューが尽きればそこで終了。プレイヤー自身が上手くならない限り、先のステージを目指すことができない。しかし、本作は違う。上手いプレイをすればその分強い「式化キャラクター」を生み出すことができ、強い「式化キャラクター」を装備すれば、その分先のステージへ到達できる可能性がアップする。つまり、次は今回よりきっとうまくプレイできるのだ。だからこそ、次のプレイをすぐはじめたくなる。この感覚はローグライトRPGの持つ中毒性に近い。やめ時を見失う楽しさだ。

また、シューティングパート以外に会話劇によるストーリー描写があることも、本作ならではの特徴といえるだろう。シューティングパートでもキャラクターの演技をともなうストーリー演出が用意されているものの、キャラクターはディフォルメタッチ。しかし会話パートでは、等身大のキャラクターによるアニメーションでリッチに物語を体験できる。ストーリーとして描かれる内容も、幻想郷が崩壊の危機を迎えるというスケールの大きなものになっており、「東方Project」ファンとしては見逃せない内容だ。

「東方」シリーズの魅力とケイブのシューティングゲームの入り口としても相応しい良作
画面中に大量の弾が散らばったビジュアルから、弾幕シューティングゲーム=難しいという印象を持つ人は多い。しかし弾幕シューティングゲームは自機の当たり判定が極めて小さく設定されている上敵弾の動きが遅いので、プレイすると実は見た目ほど難しいわけではないと気づくだろう。特に本作は弾幕シューティングRPGとして作られており、「式化キャラクター」によってプレイを重ねれば重ねるほど攻略しやすくなっていく。なので、弾幕シューティングゲームが苦手…という人でも、バッチリ楽しめるはずだ。

また本作は「東方」シリーズの魅力とケイブのシューティングゲームの魅力、両方が込められた作品でもある。このため、「東方」シリーズとケイブシューティング、両者の入門作としても相応しい作品だと感じた。これまで「東方」シリーズとケイブシューティングのどちらか片方にしか触れてこなかったという人は、本作をきっかけにもう片方へ手を出してみてほしい。きっと楽しめるはずだ。

(C)上海アリス幻樂団 (C)2023 CAVE Interactive CO., LTD.
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