コーエーテクモゲームスがアカツキゲームスとの共同開発で、iOS/Android向けにサービス中の「レスレリアーナのアトリエ ~忘れられた錬金術と極夜の解放者~」(Steam版は2024年1月配信予定)。同作の開発者へのインタビューをお届けする。
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今回インタビューに応じてくれたのは、「レスレリアーナのアトリエ ~忘れられた錬金術と極夜の解放者~(以下、レスレリアーナのアトリエ)」の総合プロデューサー 細井順三氏(コーエーテクモゲームス)、開発プロデューサー 作田泰紀氏(コーエーテクモゲームス)の2名。開発エピソードや運営への意気込みを中心に幅広く聞くことができたので、すでにプレイしている人はもちろん、本作が気になるという人はぜひチェックしてほしい。

「レスレリアーナのアトリエ」は新たなユーザーとのコミュニケーションの場に
――発表から2ヶ月半ほどでリリースされた「レスレリアーナのアトリエ」ですが、開発期間を考えるともっと多くの時間を費やしたと思います。リリースでの時間を振り返ってみていかがでしょうか?
細井氏:これまでガストブランドは「アトリエ」シリーズを長年制作してきています。お客様からいただく声を真摯に受け止めながら、これからの「アトリエ」シリーズについて、よりブランディングをしていきたいという想いを持っていました。そして、「ライザのアトリエ2 ~失われた伝承と秘密の妖精~」以降のタイトルラインナップを決めていく中で、新たな主人公が登場する新シリーズを本作「レスレリアーナのアトリエ」にするということを決めました。
スマートフォンタイトルである本作も含めて、「ソフィーのアトリエ2 ~不思議な夢の錬金術士~」や「マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~」、そして「ライザのアトリエ3 ~終わりの錬金術士と秘密の鍵~」はそれぞれにプロダクトとして異なる方向性を持ちつつも、「アトリエ」シリーズをより多くの方に手に取って楽しんでいただけるよう開発してきました。新しい主人公たちに関しては、ユーザーの皆さんにどう受け止められるかといった不安もありましたが、概ね好意的に受け止めていただけたようで安堵しました。
また今回、ガストブランドだけではなくTeamNINJAブランド、そしてアカツキゲームスさんという3つの開発部隊が合わさっての開発でしたので、トラブルなどもあるかと思ったのですが、そうしたことはほとんど無く、今もいろいろな面で一丸となって取り組めています。
作田氏:今回「アトリエ」シリーズの新作に関わっていくというところで、TeamNINJAブランドとしての強み、関わる意味はなんだろうというのを考えていきながら、最初は「DEAD OR ALIVE Xtreme Venus Vacation」というタイトルのようにキャラクターの魅力をしっかりと出していくということで、イメージをすり合わせながら取り組んできました。
また、運営タイトルとしても長くやっていきたいというのもありますので、アカツキゲームスさんが入ってくださってからは、アカツキゲームスさんがどのようにやっているのかというところと、我々が今までやってきたノウハウを組み合わせて、「アトリエ」シリーズの面白さをスマートフォン端末でどう楽しんでいただくか、というところを意見を出し合いながら進めていきました。
ガストブランドやアカツキゲームスさんと議論する中で、「アトリエ」シリーズとして「絶対に外してはいけない」という部分のイメージは早めに掴めていたと思いますし、そのために必要なものもスムーズに決めていくことができたので、そういう点での苦労はさほどありませんでした。
――開発における役割は明確に区分けしていたのか、それとも役割の垣根を越えてすり合わせを重ねていったのでしょうか?
細井氏:元々は区分けをきっちりして、スマートに開発していこうと考えていました。ただ、開発を進めていくうちに、「ここは自社でやるべきではないか」「この部分はアカツキゲームスさんと詰めたほうが良いのでは」といった感じで徐々にボーダレスになっていきました。
大きく特徴を挙げるとしたら、ガストブランドはキャラクター構築、TeamNINJAブランドは運営と3Dグラフィック、アカツキゲームスさんはサーバー運営について、経験やノウハウの強みがあると考えています。ガストブランドとTeamNINJAブランドは同じような指向性があると思っていますが、さらにアカツキゲームスさんにも加わっていただいたことで、それぞれの強みが合わさったワンチームになったと感じています。
――リリースされてから2ヶ月ほど(※インタビュー時点)になりますが、現状での手応えをお聞かせください。
細井氏:タイトルの発表時には「アトリエ」シリーズの約4年ぶりの新シリーズで新主人公、かつスマートフォンゲームというところで、大きな反響やご意見をいただきました。ストーリー、ゲームプレイ感は評価いただけていると感じています。
ただ、宣伝や運営の面では、新しいことをやろうとそれぞれのチームで検討し実行した結果、様々な問題が発生してしまっており、ユーザーの皆様にご迷惑をおかけすることとなってしまい、本当に申し訳ないと思っております。皆様のご意見を真摯に受け止め、それぞれのチームで改善に努めております。皆さんのご期待に応えられるように全力で取り組んでいきたいと考えています。
また、当然ではありますが、ゲーム自体の面白さや快適性を向上すべく開発に取り組んでおります。
作田氏:キャラクターのビジュアルに非常に力を入れて開発してきましたので、そこはぜひ楽しんでいただきたいと思いつつ、実際にご満足いただけているかどうかというのは、慎重になっている部分もあります。サービス開始後の反響を拝見していると、実際に手に取っていただけたことで、番組などで映像をご覧になられていた時以上の魅力を感じていただけているのではないかとは思っています。
一方、細井からもあったように我々からの説明や考えが不足していた面もあり、ユーザーの皆様が知りたいこと、我々に求められていることをきちんとキャッチして、より喜んでいただけるゲームになるよう、そしてそれらをできる限り具体的にお伝えしていくよう、引き続き取り組んでいきたいと考えています。
――そもそもの話になるのですが、なぜ「アトリエ」シリーズの最新作をスマートフォンで作ろうと考えたのでしょうか?
細井氏:今後「アトリエ」シリーズをさらに広げていくために、多くの方が触れられるプラットフォームでリリースしたいと考えたのがきっかけです。
また、昨今はゲーム開発のスケールも大きくなってきていますので、今までの「アトリエ」シリーズにおける1年から1年半での開発期間でのリリースが難しくなってきており、これまでのようなタイトルを通じたユーザーさんとのコミュニケーションも取りにくくなっていくのではないかと感じていました。
ただ、「アトリエ」シリーズは1年から1年半という短期間で開発・発売して、ユーザーさんとの対話を重ねてきたからこそ、続けてこられていると思っています。そのおかげでユーザーさんとの接触頻度が増え、いただいたご意見にお応えすべくユーザーさんに忘れられないようなスパンでタイトルをリリースしてきた結果、25年以上続くシリーズになっているのだと考えています。
そうした点からも、コンスタントにユーザーさんと対話ができるスマートフォンタイトルでも再度コミュニティを形成することで、「アトリエ」シリーズとしての発展につながる可能性もあると考えました。
――今のお話を聞いていて、「レスレリアーナのアトリエ」を「アトリエ」シリーズの最新作として打ち出すことで、今後もタイトルを通じてユーザーとのコミュニケーションをしっかり取っていきたいという覚悟のようなものが強くあるのかなと思いました。
細井氏:そうですね。ただ本作にかぎらず、「アトリエ」シリーズとしてはどのタイトル、「不思議」や「ザールブルグ」等のシリーズとしても、すべてユーザーさんとの対話を大切にしています。

ギリギリまで追求したグラフィックへのこだわり
――「アトリエ」シリーズで2人の主人公というのは過去作でも何度かありますが、本作で採用した理由についてお聞かせください。
細井氏:「ライザのアトリエ」などの「秘密」シリーズで多くの方にシリーズを知っていただけた一方で、ライザのような「アトリエ」としては少し意外なキャラクターとは異なる、いわゆる「アトリエ」シリーズと聞いてファンの方が想像するような、かわいらしい主人公(レスナ)を立てたかったというのがあります。
また、ライザのような活発なイメージも必要だと思っていましたので、ヴァレリアも加えた2人の主人公というかたちにしました。
また主人公が2人いると、ひとりのときに比べて世界も広がります。錬金術士であるレスナの視点から描く物語と、ヴァレリアという「アトリエ」シリーズとしては特殊な立ち位置のキャラクターから描く物語では、それぞれ違った世界の魅力を描けますので。

――毎作グラフィックへのこだわりを見せている「アトリエ」シリーズですが、スマートフォンで展開する本作ならではのこだわりのポイントはありますか?
細井氏:開発当初はセルルックで作っていたのですが、クオリティの高いセルルックゲームが世の中にたくさん出ているなか、作田と「このままセルルックで2、3年後に出した場合に絶対埋もれてしまう」という話になりました。そこから今のモデルに変更したというのが一番大きなポイントです。
作田氏:TeamNINJAブランドの中でも特にグラフィックに長けているメンバー、そしてガストブランドのグラフィックの知見があるプログラマーを集めて、CGのリーダーと一緒に、細井からもらっているこの方向性を実現しつつ、運用することを考えようとなりました。
また、細井からルックの方向性を変えたという話が出ましたが、クオリティラインの確認をした際に、細井から要望がありもう一段クオリティを上げました。
クオリティの高いゲームが多くある中で、「レスレリアーナのアトリエ」として存在感を確立していくための要望であるというのも理解できましたし、私も絶対にグラフィックは妥協してはいけないと思っていましたので、あとはどうやってこの道をつなげるかというのを考えました。
――最終的に引き上げのポイントになった要素はどのあたりなのでしょうか?
細井氏:主にライトや被写界深度といった部分ですが、一番はライトの落とし方に非常にこだわりました。あとシャドウの入れ方でも全くイメージが変わるので、そこも手を加えた部分はあります。

歴代作品のキャラクターも「一人の登場人物」として見せる物語作り
――歴代のキャラクターを登場させるというのは従来のファンへの反響が大きい反面、本作のオリジナルキャラクターの印象を薄くしてしまう恐れもあると思います。このようなかたちを採用した理由と、その上でレスナとヴァレリアをはじめとしたキャラクターたちの魅力をどのように見せていこうと考えたのでしょうか?
細井氏:本作は、今までの「アトリエ」シリーズとはまた違う、新しい「アトリエ」シリーズのひとつのかたちを見つけるための物語というコンセプトのもとで、シナリオ原案・シリーズ構成・シナリオ監修はタカヒロさんにお願いしました。
そこから、今までの「アトリエ」シリーズとは違った、新しい「アトリエ」シリーズを見つけるための物語というコンセプトでスタートし、オリジナルキャラクターをどのような配置にするのか、という点はタカヒロさんと話しながら決めました。
その上で、なぜナンバリングなのに歴代作品のキャラクターが登場するのか、という点については、物語としてきちんと意味があり、「アトリエ」シリーズとして面白さや驚きをさらに増やせるのであれば、可能性としてはあっても良いのではないかと私は考えています。
これまでのユーザーさんにも新しいキャラクターの魅力を発見してもらえるのではという思いもあり、今作では歴代作品のキャラクターを登場させるかたちを採用しました。
――そういう点では、歴代のキャラクターたちは思った以上にストーリーに関わってきますし、やり取りもすごく馴染む部分がありますね。特に新規のユーザーですと、ストーリーの中でキャラクターの説明が最小限になっているので、変に意識せずに入りやすいのではないかと思いました。
細井氏:これまではとは違った新シリーズを作り上げるという意志を持ち本作を立ち上げましたので、「アトリエ」シリーズの生みの親である吉池真一さんにも「アトリエ」シリーズ監修として参加していただきました。「ネルケと伝説の錬金術士たち ~新たな大地のアトリエ~」ではお祭り感のあるオールスターのような感じで歴代作品のキャラクターを登場させましたが、本作では歴代のキャラクターたちを知らない人が見たときに「レスレリに出てくる1人の登場人物である」という見せ方をしたかったんです。
ですので、作中ではキャラクターの説明自体はほとんどしていません。知っていたらピンとくるくらいまでにすることで、本作で初めて「アトリエ」に触れるユーザーさんに「このキャラクターは、レスレリの登場人物なんだな」とすんなりと受け入れていただけるものを作るというのが、タカヒロさんと相談しながら一番バランスを取っていたところです。
ですので、作中ではキャラクターの説明自体はほとんどしていません。知っていたらピンとくるくらいまでにすることで、本作で初めて「アトリエ」に触れるユーザーさんに「このキャラクターは、レスレリの登場人物なんだな」とすんなりと受け入れていただけるものを作るというのが、タカヒロさんと相談しながら一番バランスを取っていたところです。
オリジナルキャラクターだけ、もしくは歴代作品のキャラクターだけが活躍する物語になっていないかといったところはすごく気をつけています。

――システム的にもメインストーリーを軸に遊ばせる仕組みになっていたことに驚いたのですが、このかたちに落ち着いた判断材料などはあったのでしょうか?
作田氏:最初から今のかたちでした。メインストーリーを柱にして楽しむゲームという根底があり、その過程でどこを遊んでもらうか、どのアイテムを作るかといった部分から調合やバトル、採取が絡んでくるというのが組み立てられていきました。
「メインストーリーを見たい」というモチベーションがメインになって、その過程でいろいろな楽しみ方をするというのは、従来の「アトリエ」シリーズに近いかたちだと思いますので、「アトリエ」シリーズとして楽しんでいただくためにも自然な流れでした。
――その観点で言うと、メインストーリーを進めるのにスタミナを使わないというのも、ストーリーを楽しませるためのポイントとしてあるのでしょうか?
作田氏:それはこだわってるポイントです。メインストーリーを進めていく上で、スタミナがブロックになるのは結構なストレスになってしまうと思うんです。そのため、極力ストレスなく進められるよう、メインストーリーの進行にはスタミナを使わない、という方針は最初から決めていました。
スタミナを消費しない、いわば一気に進められてしまうようなメインストーリーのなかで、ゲーム体験としての壁をどう用意するかについては、今までの多くの運営タイトルを経験されたアカツキゲームスさんに、どういう設計にすると壁を感じてもらえるか、そしてそれをどうやってケアできるかといった部分をコミットしていただきました。

情報発信に対する反省と今後への抱負を語る
――メインストーリー以外ですと、現時点で行われているイベントのほか、どのような形式のイベントを行っていくのでしょうか?
作田氏:運営タイトルということもありますので、メインストーリーのほかに原作にフィーチャーしたイベントや季節を感じて遊んでいただけるようなシーズナルイベントのようなものを想定しています。
原作フィーチャーイベントは、「続きの物語」や「新しい発見」をテーマに制作しており、好評をいただいていると感じております。
ただ、シーズナルイベントは、メインストーリーの世界観とは全然違うパロディテイストで楽しめるイベントに寄ってしまっており、その点に関してユーザーの皆様から多くのご意見をいただきました。
その点に関しては、今後はすべてではありませんが、パロディテイストは排除し、レスレリの世界の中で起こっている内容に刷新しています。
また、イベントのシナリオに関しては、タカヒロさんには監修していただいておりませんでしたが、タカヒロさんからのお申し出もあり、監修にご参加いただくかたちになっております。
――原作フィーチャーのイベントは、過去作のキャラクターたちの新たな物語を楽しむ機会になりそうですね。
細井氏:本作ではそこも含めて楽しんでいただきたいと思っています。「ザールブルグの錬金術士」イベントは「ザールブルグ」シリーズの生みの親である吉池さんにシナリオを書いていただいたこともあり、非常に高い評価をいただきました。ファンの方に喜んでいただけて大変嬉しいです。

――今後のガチャではオリジナルキャラクターとシリーズキャラクターの双方から満遍なく登場するなどのかたちになるのでしょうか? 特にオリジナルキャラクターの登場については気になるところではあるのですが。
作田氏:ヴァレリアがメインストーリー4章のタイミングで追加されたように、今後もメインストーリー更新のタイミングで、今遊びたいなと思ってもらえるようなタイミングできっと登場するのではないかと思いますので、今はちゃんと盛り上がっていく流れを作りたいなと思います。
――これまで何度か生放送を実施されてきましたが、今後の情報発信についてはどのように行っていくのでしょうか?
細井氏:SNSおよび開発チームからのお知らせが情報発信の基本になりつつも、生放送も含めてどういったペースで行っていくのか、ユーザーさんのご意見を拝見しつつ、検討しています。
ただ、リリース後のユーザーの皆様とのコミュニケーションにおいては多くの課題があったと感じております。今後は情報発信だけを第一に考えるのではなく、ユーザーの皆様に発信した情報どう捉えていただけるのか?ということを第一に考え、運用を行うようチーム全体で改善していければと考えております。
作田氏:我々が運営として大事にしたい方向性を、ユーザーの皆さんや「アトリエ」シリーズファンの皆さんに、きちんとお伝えできるかたちを考える必要があると思っています。
まだまだ、チームとしての経験が浅いチームですが、全力で改善に取り組んでいきたいと思っています。
――最後にゲームを遊ばれている方々にメッセージをお願いします。
細井氏:サービスを開始して2ヶ月が経ちました。様々な問題が発生していますが、常にユーザーの皆様のご意見を真摯に受け止め改善に努めており、より満足度の高いゲーム体験を提供していきたいと思っています。
11月30日よりVer1.2.0が配信され、いままでよりも快適性や面白さが格段に向上しました。また、最大100回のガチャを無料で引ける施策や、ライザ祭といった大型のイベントを12月いっぱい行って参りますので、ぜひ遊んで頂けると嬉しいです。

また、本作やコンシューマタイトルなども含めて、これからも皆さんに「アトリエ」を楽しんでいただけるよう、いろいろ考えていきたいと思っておりますので、ぜひこれからも応援していただけますと幸いです。
作田氏:多くのユーザーのみなさんに遊んでいただけたことを本当に嬉しく思っていますが、我々の力不足によりユーザーの皆様が安心していただけていないところもありました。皆様からいただいているご意見について真摯に受け止めて、改善すべき点をできる限り早くに対応しつつも、新しい喜びを感じてもらえるような提案を並行して続けていくことで、常に心からこのゲームが楽しいと感じていただけるよう、運営していきたいと思っています。
運営タイトルとして、皆さんと楽しんでコミュニケーションをとっていくことがいちばんだと思いますので、これからもいろいろとご意見いただけますと幸いです。
――ありがとうございました。

(C)コーエーテクモゲームス / Akatsuki Games Inc.
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