スクウェア・エニックスは、オンラインRPG「ファイナルファンタジーXIV」(以下、「FF14」)の世界を舞台としたTRPG「FINAL FANTASY XIV TTRPG」(以下、「FF14 TRPG」)を2024年5月に発売する。これに先駆け、2月17日に実施された東京体験会の模様をお届けしよう。
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「FF14」やTRPGファンが体験会に参加
「FF14 TRPG」は、物語の進行役であるゲームマスター(GM)と、冒険者を操作するプレイヤーに分かれて卓上で遊ぶオリジナルシステムのテーブルトップロールプレイングゲーム(TRPG)だ。物語の展開は振ったダイスの出目とメンバーの会話で決定され、全員で協力しながら与えられた役割を自由に楽しんでいく。
会場には「FF14」のグッズを身に着けた熱心なプレイヤー、仲間同士で2~4人PTを組んできたプレイヤー、ソロ参加のプレイヤーをはじめ、「FF14」は詳しくないがTRPGが好きだという参加者が集合。初めて顔を合わせたチームも「いつから『FF14』を遊んでいるのか?」「メインジョブは?」といった話題を通し、TRPGを始める前から会話が弾んでいたのが印象的だった。
2日間にわたり開催された東京体験会は1日あたり100人ほど、合計200人が体験できるが、多数の応募が集まりスタッフも驚いたそうだ。
ちなみに、会場内にはスターターセットのプレイ風景イメージも展示されていた(※アクリルスタンドなどはセット対象外)。ダイスの数字にはメテオマークが刻まれているほか、フライテキストなどで非常によく見るものと一緒だったので、これだけでも少しテンションが上がる。
TRPG向けのグッズではないが、マジックカーペットを模したディスプレイマットやデスク向けライトのミニチュアエーテライトがあると雰囲気が出るし、すでに所有しているプレイヤーも多いだろうが、ジョブアクリルマグネットやジョブピンバッチも状況を把握するためのアイテムとして使いやすい。「FF14 TRPG」の世界をさらに盛り上げるため、ちょっとした小道具もあるとないでは大違いだと感じた部分だ。


今回、筆者は「FF14」を遊んでいるが、TRPGについては「概要は分かるがほぼ遊んだことはない」という立場で参加させてもらった。そうした参加者は少なくないようだが、「FF14 TRPG」は当然ながら「FF14」のシステムがベースとなっているので、TPRGは初めてでも「『FF14』でいえばこういうことだよね」と直感で理解しやすいのが特徴だった。ここからはネタバレを抑えながら、実際に体験したシナリオをもとにゲームの流れや仕組みを紹介していこう。
「これは間違いなく『FF14』だ!」と感じられる展開やバトルをTRPGでも体験
今回はGMが1人、プレイヤーが4人という構成で行った(※GMを含め5人プレイが推奨されているが3人からでも遊べる)。TRPGでは、いわゆる「神の視点」のようなものでもあり、ゲームでいえば「ゲームシステムそのもの」であり、小説でいえば「地の文」のような役割をGMが果たす。例えば「ここはウルダハのクイックサンド。ひとつの仕事を終えて一息ついていた冒険者たちは、何やら困った様子のモモディが目にとまった」といったように、冒険者たちが置かれた状況や場所の説明、これから何をしたらいいのかといった指針などについて話をしていく。


もしこれが「FF14」のクエストであれば、決められた場所へ向かい、さまざまな指示をこなし、ときにはバトルをクリアして目的を達成することになるだろう。だが、TRPGにこうした決まった流れはない。
プレイヤー側は、例えば「特定の場所に行きたいが、道が分からない」といった状況になった場合に「知っていそうな人の目星をつけて探す」「手当たり次第に聞いてみる」といったオーソドックスなやりとりから「ガラの悪い連中に喧嘩をしかけて情報を引き出す」「賭けをふっかけてみる(勝ったら教えてもらえるかも?)」という強引なやり方まで自由に考え、実行していける。

ここでプレイヤーの選んだ行動がうまくいくのか、いかないのか。成功はするが何らかのデメリットを受けるのか、失敗するがなんらかのメリットはあったなど、行動の結果は振ったダイスの目で決まる。ひとまず「FF14 TRPG」では、できるだけ大きい目を出せば概ね成功と考えてよさそうだ。
こうしたやりとりをプレイヤー同士、またはGMも交えてコミュニケーションを図りながら物語を進めていく。いくらか想定外だったり突拍子もないことが起きたりしても、その場にいる全員が納得できればそのまま話を進めてOKなのもTRPGの醍醐味だ。
「FF14」をベースとしたバトルも発生し、戦士、白魔道士、竜騎士、黒魔道士の4人PTで敵に立ち向かった。ここではターン制のRPGのように順番が来たら行うアクションを選び、ダイスを振ってどれだけ敵にダメージを与えられたか、味方を回復できたかなど、その結果を都度共有していく。
TRPGではどんな能力やステータスかを自分で考える場合もあるが、「FF14 TRPG」のスターターセットにはすでに4ジョブ分の「キャラクターシート」が同梱され、すぐに遊ぶことができる。そしてバトルでは、用意されている「予兆マーカー」から想像できる通りの事態も起きる。
ゲームのようにキャラクター同士が集まるのが正解だが、あえて「対象となったプレイヤーを見捨てる」のも手段のひとつとして選べる……というか、プレイ中に実際そうした提案が飛び出したりもした。当然バトルは不利に進むだろうが、普段「FF14」ではやらないようなロールプレイも可能なのがTRPGのユニークなところ。

また「FF14 TRPG」では味方のHP/MPの継続管理、ステータスで行動順を決めるダイス振りなどをする必要がない設計になっている。「まずはタンクが敵視を集め、ヒーラーがサポートし、DPSが攻撃を行う」といった、いつも遊んでいるゲームと同様のスタイルでバトルを進められ、バトルが終わったらHP/MPは最大まで回復する仕様なので安心してほしい。
今回でいえば、まず戦士の筆者が敵視を集める行動を取ることは満場一致となったが、その後は「安全を優先して敵視を集める」や「DPSがダイスでいい目を出すと信じて一斉に攻撃する」など、方向性を話し合いながらバトルを進めていった。結果、DPS陣が見事なダイスの引きで完勝できたが、もし失敗していれば一転ピンチに陥っていたかもしれない。そんな場合も、必殺技のリミットブレイクで切り抜ける、GMが状況に応じてドラマチックに「超える力」を発動させる、ゲーム内のように一度仕切り直しをするなど「FF14」らしく切り抜ける方法も自由に考えていける。
スターターキットにはメインストーリーにも関連する3篇のシナリオが記載されているので、まずはそれらをスタンダードにプレイし、徐々に遊びの幅を増やしながらもう1回遊んでみるのもいいだろう。


TRPG初心者でも自由な冒険を楽しめる!シナリオ制作にも挑戦してみよう
「FF14 TRPG」を遊んでみて、なかなかハードルが高いと思っていたTRPGを思った以上に手軽にプレイできたというのが率直な感想だ。
筆者の周囲のTRPGプレイヤーでいえば、シナリオに登場させるキャラクターの背景をかなり綿密に練っている印象で、そこまでできる気がしない……と避けてしまいがちな部分だった。しかし「FF14 TRPG」でいえば、ひとまず「FF14」で長年プレイしているキャラクターやリテイナーをイメージしてもいいし、この「FF14 TRPG」用にゲーム内でキャラメイクしてみてもいいだろうし……と、遊ぶためのキャラクターを用意する手段が色々と考えられるのがありがたいところ。「ゲーム内のキャラクターは世界を救った英雄だが、もしただの冒険者として過ごしていたら……」など、外見や名前は流用しつつif設定として遊んでみるのも面白いかもしれない。
また、何も知らない世界ではシナリオの一場面を想像するにも少し苦労しそうだが、ここでは「ウルダハ」や「リムサ・ロミンサ」など国名や地名を提示されれば、街の風景や住人の雰囲気、どこになにがあるかといった地理的な要素もすぐ目に浮かぶのはTRPG初心者にとても助かるポイント。「FF14」のプレイヤー同士で遊ぶのであれば、かなり明確にイメージを共有できるのでスムーズなコミュニケーションを図ることができそうだ。
もちろん「FF14」を知らないプレイヤー向けに、世界設定本「Encyclopaedia Eorzea~The World of FINAL FANTASY XIV~」を基にしたさまざまな説明もきちんと用意されているので安心だ。

バトルでの行動も各ジョブの持つアクションの方向性はそのままに、TRPGらしい遊び方になっている。
例えば、戦士であればヘヴィスウィング+メイム→シュトルムヴィントのコンボがあり、HP回復も行えるのでヒーラーから離れてもある程度は耐えながら戦えるだろう。黒魔道士であればブリザド系のアクションを行えば「アンブラルブリザード」が付与されてターンごとのMP回復量が増え、ファイア系のアクションを行えば「アストラルファイア」が付与されてより高いダメージを与えられるようになるが、MPを回復できないというのも「FF14」の設定そのまま。さらに、移動を行わなければ追加でアクションが行えるという特性も実に黒魔道士らしいといえる。
今回はアクションの一部を制限して体験したが、すべて使える状態になればどのように活用していくか――「FF14」でいうスキル回しを練るような楽しみ方も増えそうだ。

これはTRPGへ十分に慣れたプレイヤー向けの遊び方になるが、今後は基本的なルールや自分だけの冒険者を作成するルールを収録した「スタンダードルールブック」、オリジナルシナリオやGM向けのガイド、自分だけのシナリオを作成するためのデータを収録した「シナリオ&ゲームマスターガイド」の発売も予定されている。
例えば「リテイナーはどういった冒険を経てアイテムを持って帰ってくるんだろう?もしかして……」「聖アンダリム神学院記のような学園モノのクエストをもっと楽しんでみたい!」などと考えたことのあるプレイヤーであれば、こうしたガイドブックをもとにTRPGのシナリオを作成してみるのも一興だ。メインクエストとは異なる、自分だけの冒険譚を描いてみよう。
そして、これほど「FF14」の世界がしっかりTRPGに落とし込まれているのは、制作スタッフにオンラインRPG「FF11」をはじめ、いわゆる根性版から「FF14」を遊んでいる熱心なプレイヤーが存在するのも大きい部分だろう。「どうしたら『FF14』らしくTRPGを遊べるのか」という点については、プレイヤー目線でしっかり考えてくれているのをすぐに理解できると思うので、ぜひ実際にプレイして確かめてほしい。
「FINAL FANTASY XIV TTRPG」公式サイト
https://www.square-enix-shop.com/ffxivttrpg/jp/
(C)SQUARE ENIX
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