505 GamesとRabbit & Bear Studiosが手掛けた、PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch/PC(Steam、Epic Games Store)向けRPG「百英雄伝」のプレイレポートをお届けする。

本作は2020年7月、新作RPG「Eiyuden Chronicle(邦題:百英雄伝)」を開発すべくKickstarterでクラウドファンディングが行われたプロジェクトだ。「幻想水滸伝」シリーズをはじめ、名作タイトルを手掛けた村山吉隆氏、河野純子氏、小牟田修氏、村上純一氏を中心とし、このプロジェクトのために「Rabbit & Bear Studios株式会社」を設立。
「PlayStation時代に輝いたJRPGに捧げる、讃歌となるタイトル」というテーマを掲げ、2.5Dグラフィックス、ドットで表現されるキャラクター、戦争下の物語と群像劇、個性豊かな100人のヒーローたちなどクラシックRPGの現代版と呼べるタイトルを目指して制作が進められた。バッカーの名前がお墓に刻まれたり、ミニゲームに登場したり、自身のペットが登場したりするなどユニークなリワード(特典)も実施され、2024年4月23日に発売を迎えている。


筆者もかつて「幻想水滸伝」シリーズをプレイした一ファンとしてプロジェクトに参加し、本作の発売を4年ほど待ち続けていた1人だ。ここではそうしたバッカー(支援者)としての視点や本音も交えつつ、本作について紹介していこう。なお、今回のプレイには実際にバッカーへのリターンとして手元に届いたパッケージ版のPS5ソフトを使用している。
強力な力を秘めた「魔導レンズ」を巡って巻き起こる、壮大な群像劇
本作には複数の勢力からなる「諸国連合」と、強大な力を持つ「ガルディア帝国」が登場。冒頭では両者が今後、手を取り合おうとしているような様子が見られるが、さまざまな思惑が絡む中で平和な時は終わりを告げ、大きな争いへと発展していく。

本作の主人公は、辺境の村から諸国連合の警備隊に参加していた少年「ノア」だ。魔法やスキルなどの力を使えるようになる遺物「魔導レンズ」の調査で、帝国軍人「セイ」と出会うところから物語は始まる。生まれも立場も大きく異なるものの、共に過ごすうちに友情のような感情を抱く2人。そんな中、ノアたちの所属する警備隊は帝国の侵略に利用され、行き場を失ってしまう。
ノアたちは奪われた居場所を取り戻すべく、廃棄された城を拠点に仲間を集め、各地で巻き起こる帝国との衝突へ身を投じていくことになる……というのが序盤のあらすじだ。さらに、より強大な力をもつ「原初の魔導レンズ」の存在や、魔導レンズの眠る遺跡を守るガーディアンなど、さまざまな勢力や種族も絡み合い、事態は複雑化してく。
「幻想水滸伝」シリーズのファンであれば、この時点で色々と予想できることも多いだろう。紛争が軸となっているがシリアス一辺倒ではなく、多彩な仲間たちと紡いでいく期待通りの冒険譚が確かにここにある。たとえこれまで「幻想水滸伝」シリーズに触れていなくても、この王道RPGらしい壮大な群像劇にはきっとワクワクできるはずだ。




個人的にはノアたちと共に立ち上がることになった、ある気弱な青年の物語が印象に残っている。「最後はこう決着つくだろうな」とすぐに予想できる展開ではあったが、彼らしい決断をボイス付きで聞いたときは自然と胸が熱くなった。こうした各キャラクターらしい繊細な感情の変化を、緻密に描かれたドットが生き生きと表現している。

クラシックなRPGらしいバトルや仲間集めを、ほどよく楽しめる
バトルはランダムエンカウント、かつ最大6人を編成して挑むターン制のオーソドックスなコマンドバトルだ。装備した魔導レンズや特定のキャラクターの組み合わせで使用できる「英雄コンボ」をはじめ、ボス戦では特定のターンで使う「ギミック」により単純な力押しで勝つのは難しい駆け引きも用意されている。ストーリーの展開上、連れていくパーティメンバーが限定的になる場合も少なくないので、そうした状況でいかに相性やスキルを上手く使いこなすかが重要だ。レベル差もすぐに埋まるので均等に育成しやすく、色々なキャラクターをどんどん使ってみたくなる。




ダンジョンの仕組みは徐々にクリアの難易度が高まっていき、マップを見ながらでも一筋縄ではいかない。ただし行き止まりには宝箱が配置されている昔のRPGらしいケースも多く、それも含めてきちんとフロアを回ればクリアできる絶妙なバランスになっているように思う。このほか、互いに軍勢を率いて戦う「戦争モード」や、信念を貫くためぶつかる「一騎打ち」といった「幻想水滸伝」シリーズにはお馴染みの要素がストーリーを大いに盛り上げてくれる。




そしてノアたちが拠点とする廃城は、仲間を集めることで発展していく。ストーリーを進めていくだけでも多数の仲間が登場するものの、アイテムや装備などの売買を行える店を増やす、アイテムの所持数を増加させるといった利便性に直結する仲間は自分の足で探さなくてはならないことも多い。時にはバトルやミニゲームで勝利する、時にはパラメーターで競う、時には必要なアイテムを見つけ出す、時には関係者を先に仲間にしておくなどの条件を満たし、各地を巡っていこう。



さて、プレイヤーが気になるのは「こうしたクラシックな要素を、現代的な感覚で楽しめるのか?」といった部分だろう。筆者をはじめ、本作が掲げるような「PlayStation時代のRPG」を経験しているならある程度は「こういうの懐かしいね」で済むかもしれないが、利便性の手厚さが当たり前に求められる今、果たしてプレイのモチベーションを保てるのか。
もちろん「『幻想水滸伝』の一ファンとしては理解できるし、あの頃と比べたらずっと便利だけど、仲間が頻繁に入れ替わるストーリーなんだしダッシュや倉庫の仕組みはもっと便利なほうが……」とか「素材倉庫と宿屋の位置は逆じゃダメだったのか」とか「オートセーブ、もうちょっと使い勝手よくならないか」とか、言いたいことは確実にある。ただ、やはり生き生きと描かれる魅力的なキャラクター、味わい深い王道ストーリーとそれを盛り上げるここぞの戦い、仲間を集めることで徐々に発展していく拠点と、いくらかの不便を差し引いても「こういうゲームが遊びたかった!」と言えるものが待っている。
それに、序盤の「ボスはともかく雑魚戦で6人分のコマンド入力は面倒だな……」と感じ始めるタイミングで、事前にキャラクターの行動を指定できる「おまかせ」が解放される。アイテムを使わずスキルだけで戦ったり、HPが少なくなったら回復させたり、同じ敵を狙うよう仕向けたりなど、パーティ全体とキャラクター個別への作戦指示をうまく組み合わせればあとは勝手に戦ってくれる。

バトルの倍速設定はほしいところだが、そもそもレベル差のある敵と戦うと膨大な経験値が入るので、後から加入したキャラクターも1回2回戦えばすぐにスタメンのレベルへ追いつく。これに加え、ダンジョンをきちんと探索しておけば、ほどよいタイミングで経験値アップやドロップ率アップの装備品も入手可能。仲間のために特定の敵を倒してアイテムを集めることはよくあるが、プレイヤーごとにいくらかブレはあるだろうが筆者は大半が難なく手に入ったので、ストーリーの攻略以上にバトルを重ねる理由がそう多くはないように思う。PS5版ではロードなどにストレスもなかったので、テンポにそこまで不満を感じる必要がなかったのも大きいかもしれないが。
「これ以上はいちいち拠点に戻っていられない!」と思う距離を移動する頃にはテレポ(ファストトラベル)が解禁され、拠点を多少ウロウロすれば仲間になるキャラクターの情報を知ることができる「占い師」の関連イベントが発生するので「仲間探しに詰まったがインターネットで答えを知りたくはない」というジレンマもほどよく解消してくれる。対価は必要だが仲間のプロフィールも教えてくれるので、ストーリーに大きく絡まないキャラクターも背景を知ることができるのは嬉しいポイントだ。


現在は発売から約1カ月が経過したところだが、遊びやすさを改善するさまざまなアップデートも順次行われている。6月上旬にはNintendo Switch版のパフォーマンス関係の改善、6月中旬にも各プラットフォームでストーリー進行の問題や安定性の向上をはじめ、多数の改善を行うそうだ。8月、9月、10月には追加シナリオの配信も予定されているので、焦らずに自分なりのタイミングで遊んでみてほしい。

クラウドファンディングでゲームを遊ぶということ
前述の通り、筆者は約4年前に本作のKickstarterへ参加した。クラウドファンディングの場合、プロジェクトの成功そのものとゲームの発売は必ずしもイコールではなく、とくに本作は発売約2カ月前にプロジェクトリーダーである村山吉隆氏の急逝が発表されたのも記憶に新しい。そんな中、この「百英雄伝」を手元で遊べているということに、まずは一ファンとして感謝を伝えたい。
そのうえで、こうしたクラウドファンディングに参加し、ゲームを遊ぶことへの難しさも強く感じている。こうしたプロジェクトでは、一般的に発売されたタイトル以上に信頼や期待が重くなる。もちろん大型タイトルであれば存在が明かされてから4~5年以上待つこともよくあるが、本来ならまだ企画が水面下にあるような状態から完成を信じて待ち続けることになるのだから、思い入れもひとしおだ。
その分、期待通りにいかなかった際の失望や落胆も比例して大きくなってしまう。本作は、おそらく多くのプレイヤーが期待したであろう、現代らしさも加味して蘇った「PlayStation時代のRPGらしさ」はしっかり描いてくれたように思う。しかし、それ以外の要因で「もったいない」と感じることがいくつかあったのは、一ファンとしても非常に歯がゆいのが正直な気持ちだ。
例えば、筆者個人はアートブックなど物理リワードの受け取りはまだ残されているが、4月16日時点でPS5版ソフトが届いていたため約72時間のアーリーアクセスは可能な状態にあった。一方、4月28日にRabbit & Bear Studiosの公式サイトで発表されたように、すべてのバッカーがこうはいっていない。プロジェクトを支援するほど熱心なファンほど、なかなかプレイできない状態になってしまったケースがあるのは率直に残念だ。
本作は当初の目標を大幅に上回るほどの支援を集めたが、より多くの支援を集めるのであればプロジェクトの場に日本国内ではなく海外ファンも利用しやすいKickstarterを選択するのは理解できる。ただ言語の差と、それに伴う国内外へのフォローがやや不足していたのもこうした事態に拍車がかかった一因だろう。余談だが発売日についてもバッカーに直接連絡があったのはずいぶん後で、別の形で知ったのも寝耳に水だった。
また、本作は非常にハイペースで順次アップデートが行われており、筆者の環境では問題なくプレイできている。とはいえ発売日をもう少し遅らせればアーリーアクセス時点での追加修正パッチを含め、プレイヤー側も「自分の選択したプラットフォームではもう安全に遊べるのか?」と混乱せずに済んだのではと感じてしまう。
そもそも「クリエイターの納得がいくものを自由に作ってほしい」という願いでバッカーになった以上、当初の予定から延期が発表された際も「もう4年待ったんだからあと1年でも待つよ!」くらいの気持ちでいたし、そうした自由こそがクラウドファンディングを選んだ理由なのではないかと思っていた部分もある。
発売後の今も多様なプラットフォームで快適に遊べるよう尽力してくれているからこそ「最適化にもっと時間を確保できていれば……!」と思わずにはいられない。「1日でも早くプレイしたい!」という支援者の気持ちを汲んで「これ以上は待たせられない」と判断してくれたのかもしれないが、個人的には「初めて触れた際のゲーム体験」を重視してほしかったと思う。
今から2年ほど前には名作「ワイルドアームズ」「シャドウハーツ」を手掛けたクリエイター陣や、「ペルソナ」シリーズや「真・女神転生」シリーズの楽曲を手掛けた目黒将司氏のプロジェクトも実施され、こちらも本作同様に当初の目標を超える形で成功している。当然、まずはプロジェクト自体が成功を収めなければゲームが開発されないので、個人的には今後も遊びたいと感じたゲームは可能な限り支援していきたい。
その一方、多くの支援者はクラウドファンディングがさまざまな面で簡単ではない挑戦であることを理解しているだろうが、そうした支援を考えるファンが「時間や金銭、仕様変更のリスクを負うより、一般のゲームとして流通してから買うほうがいいのでは?」と尻込みしてしまいかねない事態は、今後改善されていくことを願うばかりだ。
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