千葉・幕張メッセにて9月26日~29日にかけて開催の「東京ゲームショウ2024」。セガブースで試遊出展されていた2025年2月28日発売予定のPS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/PC(Steam)用ソフト「龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii」より、プロデューサーの堀井亮佑氏、チーフプロデューサーの阪本寛之氏へのインタビューをお届けする。
目次
2024年9月20日に放送された生番組「RGG SUMMIT 2024」にて発表された、「龍が如く」シリーズ最新作「龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii」。シリーズの人気キャラクター・真島吾朗が初の単独主人公を務める、「龍が如く8」から約半年後の世界を描いたタイトルだ。
今回はそんな本作について、プロデューサーの堀井亮佑氏、チーフプロデューサーの阪本寛之氏にインタビュー。真島が主人公に選ばれた理由から、キャスティングの裏話、新要素であるジャンプ実装の意図まで、様々なお話を聞くことができた。
なおTGS2024の会場内で試遊出展されていたバージョンのプレイレポートも掲載しているので、あわせて確認して欲しい。
「8」のコマンドバトルは、何度もトライ&エラーを繰り返して生まれた
――最初に、少し「8」についての話からお聞かせください。発売されてからある程度経ちましたが、「8」の反響はいかがでしたか?
阪本氏:「8」は春日と桐生のダブル主人公ということですごくボリュームがあるタイトルで、発売直前になってようやく全貌を公開したのですが、スタートからいろんな方面から興味をもってもらえましたね。トレーラーの再生数もすごく多くて、売上もシリーズ最高の滑り出しだったのも、最初に注目してもらえたからだと思っています。最終的なセールスがどうだったかについては、まだまだ現在進行系で売れている最中なので、もうちょっと見守りたいなと。
とくにバトルは評判が良かったですね。我々としても力をかけて作っていた部分だったので、そこを評価していただいたのは良かったと思っています。
――自分もプレイして、とにかくバトルがめちゃくちゃ面白かったです。もちろん移動だけではないんですけど、移動が入ることによってあそこまで面白くなるんだなと。
堀井氏:「7」自体はすごく納得のいっている作品なんですけど、やっぱり初めてのRPGだったのもあって、移動して看板とかを取れるようにしたかったとか、やりきれなかった部分は残っていたんです。だから「7」を作り終わった段階から、次もコマンドバトルでいくなら移動は入れようということは決めていました。
ただ、移動できればそれだけで面白くなるかといったらそうでもなくて、どこまで行けるかとか、移動によって戦略の幅を広げるにはどうすればいいか、何をできるようにしてできなくするべきか、そのあたりはかなりトライアンドエラーを繰り返して調整しましたね。
――ちょっとアクション要素っぽいものもあったり、コマンドバトルなのに「龍が如く」らしさというのがしっかり感じられたのがすごかったです。
堀井氏:そうですね、最終的には納得いく形に落とし込めたんじゃないかなと。
「8」については、ストーリーとかいろいろ好みが分かれている部分もあるとは思うんですけど、ゲームとしては「7」より遊びやすくなったということは、ほぼ100%に近いくらいの割合で言っていただけているので、そこに関しては適切な改善ができたと思っています。
「8外伝」のプロジェクトは「7外伝」発売前からスタートしていた
――そんな「8」の記憶もまだ新鮮な中で、「8外伝」が発表されて驚いたファンも多いと思います。開発の経緯はどんな形だったのでしょうか。
阪本氏:「7外伝」まで話が遡るんですけど、「7外伝」って「8」を作っている最中に、「経緯を語らないと『8』の桐生の生い立ちを深く理解できないんじゃないか」と思って、「8」とは別のプロジェクトとして同時並行で作っていたタイトルなんです。
実は「8外伝」もそれに近くて、「8」の物語の顛末を終えた時、春日や桐生については一つの区切りとなる終わり方をしているんですけど、真島たちが核廃棄物の問題にどう関わっていくのかとか、語り尽くせなかった部分が残っていたんですね。
なので「8」の開発がある程度進んだ段階で、後日談的な形で語りきれなかったキャラクター達の動向を伝える必要があるんじゃないかと思ったんです。なので「8外伝」は「8」との結びつきが強くて、本編の延長線上の物語になっています。
――開発の期間としてはほぼ「8」と同時進行だったんでしょうか。
阪本氏:そうですね。実は企画自体はちょうど去年のTGSぐらいの頃には出ていて、ステージでいろいろ発表している裏で、こういうゲームにしようみたいな話は進めていました。
――つまりは、「8」どころか、「7外伝」が発売される前からもう「8外伝」のプロジェクトが始まっていたと……(笑)。
堀井氏:そう、「7外伝」すらまだ出来てないのにっていう(笑)。もちろん開発が本格的に始まったのは少し後で、「8」が終わった時点で「8」のメンバーにも合流してもらってるんですけど、企画の種みたいなものはその頃からありましたね。
――外伝が必要となったのは、「8」のストーリーが作られる最中だったのか、一度形になってからのどちらだったのでしょうか。
阪本氏:一度形になった後だと思います。もし途中だったら、そもそも最初から「8」の中に入れるべきだという話になってくるので。我々は「巨大なサブストーリー」と呼んだりもしているんですけど、位置づけとしては「8」で一つの区切りを迎えた後に彼らはどうなったかという話になっています。
本編には入れられないけど、外伝というパッケージで切り出せば成立する、メインストーリー4~5章分くらいの規模のタイトルを作ると面白いんじゃないかというのは、今の我々にとっての一つの型になりつつある感覚がありますね。
――真島が初の単独主人公を務めるのは、どのような経緯で決まったのでしょうか?
阪本氏:「8」で顛末を描ききれなかったキャラクターの中でも、操作キャラクターとして一番楽しそうだったのが真島だったというところですね。
今回は物語的にも最初に真島が記憶喪失になるので、プレイヤーとのシンクロ率みたいなのも高くなっているかなと。本来の真島ってやっぱり狂人的な行動が多いんですが、だからといってプレイヤーに意図しない行動を強いるようなゲームにはできないじゃないですか。
一度記憶を失った真島が、記憶と共に本来の強さを取り戻していくような意味合いも含めていて、今回の記憶喪失という設定はハマってくれたんじゃないかと思っています。
――記憶を失った真島は、普段とはちょっと性格も違っていたりするんでしょうか?
堀井氏:性格というか、知識がないという部分が大きいかもしれないですね。自分が何者かも分からない状態から始まるので、自分の強さとかに対しても戸惑いがあって、その中で少しずつ自分を取り戻していくような流れなので。
性格もすごく変わったっていうわけではないんですが、やっぱり人間ってその知識や経験の有無で物事の捉え方は変わると思いますし、そういった意味では「プレーンな真島」みたいな姿も見られるんじゃないかなと。
あと今回は、ノアっていう少年と一緒にいるので、子供の前で「ヒヒヒ」みたいなことばっかりやってられないじゃないですか(笑)。やっぱりそこは大人として、真島なりの信念や背中を見せるようなシーンも描かれるので、まともな一面みたいなのも結構見られるタイトルになると思います。
――「8」では、桐生の老いみたいな部分を感じられる描写が結構ありました。真島も本作で還暦を迎えますが、そういう老いみたいなのを感じさせる描写はあるんでしょうか?
阪本氏:「老い」はないですね、真島に関しては(笑)。
堀井氏:「老い」どころかジャンプするし、分身までしますからね(笑)。
ただ、やっぱり人間的な部分でいえば、もう酸いも甘いも経験してきているので、それを「老い」と呼ぶのが相応しいかは分からないんですけど、昔よりは丸くなった部分があるのは確かだと思います。
――人間としての器が大きくなったというか。
堀井氏:そうですね、やっぱりそういうものの見方って、どんな方でも若い頃から変わってくるもののだと思うので、そういう意味では成長したと言ってもいいのかもしれないですね。
阪本氏:まだ成長し続けてますね、真島は。たぶん今までのシリーズの中で、「8外伝」の時が一番肉体的にも強いと思います(笑)。
「面白そう」というノリで生まれたパイレーツスタイル
――堀井さんはこれまでシリーズにはディレクターという形で関わられていたと思いますが、プロデューサーというのは初めてですか?
堀井氏:そうですね。ただ、自分はこの作品ではプロデューサーではあるんですけど、それとは別に「龍が如くスタジオ」全体のチーフディレクターでもあるので、ゲームの中身に関する部分にも引き続きしっかりと関わっています。
――ディレクション的な業務にも引き続き関わられているんですね。
堀井氏:今回は自分とは別に上原というディレクターがいて、中心になって現場を回してくれているんですけど、最終的なゲームの味付けみたいなところは、引き続きこっちでも見ているような形です。
なので明確に今までとやることが全然違うというわけではなくて、分担の比率みたいなのが変わったみたいなイメージですね。引き続きやりやすい体制でやれているんじゃないかと思います。
阪本氏:「8外伝」は、結構若手のスタッフに中心を担ってもらって作っている面もあるんです。ちょうどスタジオとしても世代交代をしているところで、年寄りが思いつかないようなアイディアみたいなのを出してくれたり、若いからこそ作れるエネルギッシュさみたいなのが反映されているタイトルなんじゃないかなと思います。
――今回もっとも大きい変化はジャンプの追加だと思うのですが、今までのシリーズでもジャンプアクションを入れるという話は出たことがあったんでしょうか?
阪本氏:もちろんありました。実際に試そうとしたこともあったんですけど、神室町の中で飛んだり跳ねたりしても、コリジョンが邪魔して気持ちよくならなかったり、建物の屋根の上に登って遊ぶみたいなゲームでもないですからね。
それよりはフルコンタクトな喧嘩アクションという部分を重視した方がいいんじゃないかと、話には挙がるものの採用まではいかない……というのが、何年も続いていたような形でした。
今回は真島が主人公で、今までのアクションよりも爽快感みたいなのを高めたかったり、広いハワイならではのアクションバトルにしたかったり、条件がちょっと変わってきたのもあったので、ジャンプを入れても破綻しないんじゃないかと、堀井の方から早い段階で提案がありました。
堀井氏:「7外伝」の時も、桐生がドローンを使ったり派手なアクションをしてたじゃないですか。アクションとしての気持ちよさも含めてそうしているんですけど、せっかく真島主人公でのアクションアドベンチャーを作るわけですから、ガワだけ違って手触りがそんなに変わらないみたいなことはやりたくなかったんですよね。
なので明確に桐生との違いを感じられる要素を入れた方がいいと思っていて、その中の一つがジャンプだったという形です。真島のキャラクター性なら、ジャンプを使った戦闘スタイルにも納得感みたいなものがありますし、さっき阪本もいった通り、ハワイの広さにマッチしたアクションでもあるので、ジャンプを入れるならこのタイミングしかないんじゃないかなと。
――ボタンで任意のタイミングでジャンプできるのとは別に、基本の攻撃モーションの中にジャンプが組み込まれていたりしたのも印象的でした。
堀井氏:アクションバトルにおいて、ジャンプをするメリットって結構難しいんですよ。だからジャンプは入れてはいるんですけど、別にしないと成り立たないようなゲームにはなってないんで、極力まったく使わなくても楽しめるようにはなっています。
ただ、かといってジャンプを一切使わない人にとっては、今まで通り地べたでずっと戦っているのは新鮮味がないと思うので、ボタンを連打してるだけでも簡単に空中コンボみたいなのが攻撃が決められるようになっているのは、工夫して入れた部分ですね。
――今回登場する2つのバトルスタイルの内、「狂犬」の方は従来の真島らしいスタイルになっていますが、「パイレーツ」のスタイルの方はどのような発想で生まれたのでしょうか。
堀井氏:海賊要素については、「8」のアフターストーリーを作るなら、主人公は真島で行こうというのは先に決まっていたんですけど、ただ続編にするのはパンチが欠けるので、掛け合わせるのは何がいいか考えた時の、言ってしまえば思いつきですね(笑)。
阪本氏:「どういう真島が面白いんだろう」と話し合った結果、海賊という単語が候補として残って。昔どこかで話したかもしれませんけど、元々「龍が如く」でマグロ漁船に乗る話があってもいいんじゃないか、というアイデアが出たこともあったんです。まぁ、最終的にはなんか面白そうみたいなノリで決まったんですけど(笑)。
堀井氏:話としても広がりそうだし、眼帯もつけてますし、真島なら実際にやりそうだし……(笑)。
阪本氏:あとはそこから、設定だったりの辻褄をあわせていったような流れでしたね。
ファーストサマーウイカさんの少年演技は、想像を遥かに越えていた
――今回、新キャストの中でもインパクトがあったのが、ロバートの秋山竜次さんの参加だったのではないかと思います。これにはどういう経緯があったのでしょうか。
堀井氏:秋山さんに演じていただいたマサルは、船の中でのムードメーカーでもあり、結構重要な立ち位置のキャラクターなんですけど、ユーモアがあって、仲間を大切に想いながらも皆を笑わせてくれそうな存在として候補に上がったのが、ロバートの秋山さんでした。元々僕ら自身もすごくファンですし、彼のユニークさみたいなのをサイドコンテンツで活かせるかもみたいな目論見もあったので、オファーさせていただきました。
阪本氏:「クリエイターズ・ファイル」とかでもそうですけど、秋山さんって本当にいろんなユニークなキャラクターをご自身で作られた上で演技をされているじゃないですか。だからゲームでこういう設定の役をお願いする時も、より面白いものに仕上げてくれるんじゃないかという確信はありましたね。
あとはOKをいただけた時に、我々が秋山さんでどう面白いコンテンツを作るのかというところで思いついたのがミナト区系女子のコンテンツで、我々は実写系でパンチ力のあるコンテンツを作るのが得意というところもあるので、それを活かそうと(笑)。発表の時に出した映像も、良い反響をいただけました。
――もう一つ、キャスティングでインパクトがあったのが、ノアの声を演じられるファーストサマーウイカさんで、「7外伝」の時とはまったく違う声を出されていて、ファンも驚いたのではないかと思います。
堀井氏:今回ノアって本当に重要な役どころで、真島のストーリーであると同時にノアのストーリーでもあったりするんです。それくらいキーになる存在なので、しっかりとした演技力はもちろんながら、「龍が如く」って結構突飛なことをやったりもするので(笑)、そういうシリーズの世界観を理解してもらっている方がいいだろうなと。「7外伝」の赤目もすごく良かったですし、あの時からちょっと声に少年みのようなものを感じていた部分もあったので、ハマるんじゃないかとオファーさせていただいた形です。
ただ、正直なことをいうと、まさかここまでとは思っていませんでした。僕らが想像していたものよりも、俄然上でしたね。
阪本氏:あれはもう、天才の域だと思います。
――これはストーリーでもシステムでもいいのですが、本作において一番「真島ならでは」の要素が詰まった部分はどこになるでしょうか?
堀井氏:やっぱりさっきもお話しした、バトルスタイル的なところが大きいんじゃないかと思います。
あとはプレイスポットとかも、例えば春日でやったクレイジーデリバリーとかでも、真島らしさを感じられるように味付したりしているので、真島でハワイを歩き回る楽しさとか、真島を操作している感覚みたいなのは感じていただける作品になっていると思います。
――今回も「7外伝」の桐生の時のように、真島を成長させていく遊びもあるのでしょうか。
堀井氏:もちろんあります。真島自身が能力を増やしていくみたいなのもそうですし、今回は指輪という装備品もあったり、「8」ほどの長い成長ではないんですけど、真島を育てていくという楽しみはしっかりと用意しています。
――少し答えにくい質問かもしれませんが、真島といえばやはり「0」の印象が強いシリーズファンも多いと思います。「0」との繋がりを感じる要素は「8外伝」にはあるのでしょうか?
阪本氏:そこはないですね。「0」からは時間がすごく経っているので。
堀井氏:「0」での真島は、現在の真島になる前のプレーンな状態なので、そことの繋がりみたいな要素はあまりないかなと思います。やっぱり「8」との結びつきが強いので、まずはとにかく「8」をやっていただくのが、一番楽しめるのではないかなと。
阪本氏:「7外伝」、「8」、「8外伝」は3部作みたいな側面もあるので、全部プレイしていただくと、真島の変遷というのも分かりやすいんじゃないかと思います。
堀井氏:ただ「0」で真島に感情移入いていただいている、熱い「真島愛」を持っている方は、これ以上ないくらい楽しめる作品にはなっているので、そこはご安心いただきたいです。
――最後に、発売を楽しみにするファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
堀井氏:今回は海賊ものということで、なんかスピンオフの思いつき作品みたいな感じに見られる方もいらっしゃるんじゃないかと思うんですけど、そこはやっぱり「龍が如く」の外伝なので、ちゃんと「8」の後の世界観を描きつつ、熱い人間ドラマやシリアスな展開あり、すごく面白い作品になっていると思っています。
バトルも本当に過去最高レベルで気持ち良さを達成できたと思ってますし、僕らにとって真島はとても大切なキャラクターで、今回は満を持しての単独主人公作品でもあるので、彼の魅力をちゃんとパッケージングしたいという想いは強いです。桐生や春日とは違った、真島主人公じゃないと描けない部分だったり、新しい真島の魅力も感じていただけるように頑張って作っています。発売に向けて、これからまだ出してない情報もどんどん出していきますので、楽しみにしていただければと思います。
阪本:本作は、「こういう展開の『龍が如く』も面白いですよ」っていう、本編とは違う1つのパッケージの形のご提案みたいな側面もありまして、従来の真島ファンは言わずもがななんですけど、ちょっと「龍が如く」シリーズが気になっていて、興味があって遊んでみたいと思われている方にとっても、ゲームとしてはすごく遊びやすいものになっています。
「龍が如く」については、こうじゃなきゃいけないとか、こういうサイズのものだっていう固定観念は実はあんまりないんですね。常に新しい提案をしたり、現代に適した形でリリースするのも、その1つの表れかなとも思っていて。ちょうどいいゲームサイズで、ちょうどいい満足感だったりとか、新しい「龍が如く」として、我々が狙っているところも感じていただけると、すごくありがたいなと思っています。
――ありがとうございました。
(C)SEGA
※画面は開発中のものです。
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