10月19日に開催された「TOKYO FMリスナー感謝祭 in 渋谷音楽祭『GAME MUSIC DUNGEON supported by SQUARE ENIX MUSIC』スペシャルトーク」。ゲーム作曲家、柔道家、お笑い芸人の3名によるクロストークは軽快で笑いに包まれながらも、ここでしか聴けない深い内容であった。
TOKYO FMの“THE TRAD”内で月1回のコーナーとして2022年1月~7月までオンエアしていた“GAME MUSIC DUNGEON supported by SQUARE ENIX MUSIC”が、TOKYO FM リスナー感謝祭2024でスペシャルトークショーとして復活した。ここではその様子をレポート。とくに盛り上がったトピックを紹介していく。
なお、当日の模様は、後日TOKYO FMの音声サービスAuDee、YouTubeにて公開予定なので、このレポートを読んで気になったら、ぜひそちらをチェックしてもらいたい。
金メダリストの柔道家・髙藤直寿さんはガチのゲーマー
お笑い芸人「マヂカルラブリー」のボケ担当である野田クリスタルさん、スクウェア・エニックスで「ファイナルファンタジーXIV(以下、FF14)」のサウンドディレクターなどを務める祖堅正慶氏、2021年の東京五輪では男子60キロ級で金メダルを獲得した柔道家の髙藤直寿さんによるクロストークが展開した今回のイベント。これまで共演は無かったそうだが、“ゲーム好き”という共通の趣味を持っているため、番組はとても盛り上がった。
野田さんが祖堅さんを「FF14」のサウンドディレクターだと紹介するものの、祖堅さんは「今日はただのゲーマー」と名乗り、「セガのゲームばっかりやっていました」とぶっちゃけるなど和やかなムードで進行した。とはいえ、サウンドディテクターという職業について語るときはとても真摯に、「FF14」の効果音の作り方について語るときは内に秘めた情熱を話してくれたため、ファンはうれしかったはずだ。
そしておどろいたのが、髙藤さんのゲーマーっぷりだ。番組の序盤にはそれぞれが好きだったゲームが語られ、祖堅さんは昔のアーケードゲーム、野田さんが「ドラゴンクエスト」シリーズや「ファイナルファンタジー」シリーズを紹介するなか、髙藤さんが答えたアンケートにはコンシューマのRPGやアクションからはじまり、携帯ゲームやスマートフォンのアプリも。オールジャンルでゲームをやり込んでいることが語られた。髙藤さんによると柔道家にはゲーマーも多いらしく、髙藤さん自身も大事な大会の前にはゲームをして集中力を高めていることを明かした。
髙藤さんがハマったゲームに「Dance Dance Revolution」を見つけた祖堅さんは、専用マットはマンションで使用すると怒られるので髙藤さんの家は一軒家であるはずだと推理。髙藤さんは出身の栃木にはそもそもマンションはないと語りつつ認めた。これには野田さんも思わずマンションはあるとツッコんでいた。
また、髙藤さんはリスナーからのメールに答える形で、ゲームの経験が柔道にも役立っていることを解説。試合前には攻略本を作り、その攻略本の通りに試合を進めれば絶対に勝てると豪語した。この言葉に興味を持った祖堅さんは自身が好きな「オーバーウォッチ」をプレイしているとき、他プレイヤーから煽られて冷静さを失って負けてしまうことがあるが、これは柔道の試合でも同じことなのか質問。髙藤さんは柔道も対人であり、メンタルコントロールが重要で、普段からメンタルをコントロールする練習をしているそうだ。
なお、そんな髙藤さんがいちばん好きな効果音は「ポケットモンスター」シリーズの“こうかはばつぐんだ!”のときに流れる音。願わくば自分の試合のときにも流れて欲しいそうだ。
野田さんはリビングで父親が「ドラゴンクエストVI 幻の大地」をプレイしたときの思い出を語った。父親が裏ボスに挑むところを偶然見てしまい、翌日に学校でクラスメイトたちに伝えたものの誰も信じてくれなかったそうだ。また、「ファイナルファンタジーIII」のセーブポイントがないラストダンジョンに苦労した話を披露しているときは、祖堅さんからは、その仕様を決めたクリエイターは現在「FF14」のプランナーをしていることが明かされていた。
サウンドクリエイターの苦悩
祖堅さんからは普段は聴くことができないゲームのBGMや効果音の制作の裏側を聴くことができた。MCの野田さんも自身でゲームを制作しているため、実際のプログラミングなど、よりディープな話にまで展開したのが特徴だった。この部分はぜひゲーム好きはもちろん、ゲームクリエイターや、クリエイターを目指している人にも聴いて欲しい内容だ。
気になったところをピックアップするとサウンドという職業について。現代のゲームはフォトリアルであるため、現実に出る音はゲームでもすべて出さなければいけいないほか、そういった音を作る作業以外にもゲーム内に音を実装していくシンセサイズの作業やゲームサウンドを作るためのオーサリングツールの仕様を作ったりと多岐に渡るそうだ。また、プランナーがどういうゲームを作るのかプランニングしたり、モーションデザイナーが動きつけたあとにサウンドが音を付けることになるので、作業としては最下流のほうに位置するそうだ。QAというデバック作業の手前がサウンドであり、プロジェクトは途中で遅延することが多いので〆切との戦いになるそうだ。
音の作り方については、現代ではキャラクターのいる場所や距離によって聴こえ方が変わるのが基本となっており、FPSのようなゲームはとくにその方法で作られているそうだ。祖堅さんは趣味のゲームを遊んでいるとき、音が変わる境界線がきちんと作られていないことに気付くこともあり、そのミスを確認している間に撃たれてしまうこともあるとか。
祖堅さんが関わる「FF14」は足音にもこだわっており、足が設置している地面の素材はもちろん、キャラクターの大きさや履いている靴によっても音が変わるそうだ。なんと、足音のファイルだけで1万もあるとのことなので驚きだ。
また、実際に人間が歩くときは一定のリズムではなく、アンバランスになるのが普通なので、10種類の足音のなかからランダムに選ばれた音が流れるようになっているとのこと。
さらにほとんどの音はリアルの音だと迫力が出ないため、加工をしたり別のものが使われたりしているとのこと。たとえば焼肉のテレビCMで肉が焼ける音は、実際に肉を焼いてもそこまでの音にはならず、水を含んだスポンジを鉄板に押し付けることで、それっぽい音になるという種明かしも披露された。
そんななかで髙藤さんが実際に柔道の投げ技をしている映像の音を聴いてみることに。それまでの“リアルの音は迫力が出ない”という話題がフリになっていたかのように、大迫力の音が流れて出演者や会場を驚かせた。なお、映像では手で受け身を取っていないため、本来はもっと迫力の音が鳴ることが髙藤さんより説明された。祖堅さんは「FF14」にもしも柔道家のジョブが追加されたときは、ぜひ髙藤さんの試合の音をそのまま使いたいと伝え、髙藤さんも快諾した。
収録の最後のほうにはeスポーツが正式にスポーツ競技と認められ、2025年にはサウジアラビアではじめてのeスポーツオリンピックが開催される話題にも発展。髙藤さんは昔こそスポーツとeスポーツを同一に扱うことには否定的だったものの、プロのeスポーツ選手たちと交流していくうちに、このふたつは変わらないものであると認識を改めたそうだ。野田さんはeスポーツがスポーツであるかどうかはずっと続く議題になると考えつつも、髙藤さんがその架け橋になる存在になるとエールを送った。髙藤さんは柔道の人気が下降していることを嘆きつつ、ゲームを通じてもっと盛り上げていきたいと誓った。
祖堅さんは「FF14」公式バンド・THE PRIMALSのメンバーとして頻繁に海外公演をおこなっていることもあり、日本のゲームの人気を肌で感じているそうだ。日本のゲームは素晴らしいものであり、もっと誇りを持っていいことを語りつつ、自身も誇れるものを作り続けるように今後も邁進していくことを伝えた。
ゲーム音楽を題材に多彩なトークが展開した今回のイベント。ぜひ後日AuDeeとYouTubeにアップロードされる音声を楽しみにして欲しい。
コメントを投稿する
この記事に関する意見や疑問などコメントを投稿してください。コメントポリシー