スクウェア・エニックスが2024年12月5日に発売するPS5/PS4/Xbox Series X|S/Nintendo Switch/PC(Steam)用ソフト「FANTASIAN Neo Dimension」のレビューをお届けする。
本作はApple Arcade向けに配信されている「FANTASIAN」の前後編に分かれていたコンテンツを一纏めにし、各キャラクターボイスを追加した「FANTASIAN Neo Dimension(ファンタジアン ネオ ディメンジョン)」としてコンシューマ向けに生まれ変わった作品だ。
ジオラマを用いたマップを3Dスキャン技術で取り入れているのも特徴で、その総数は150を越えている。特撮業界のベテランもジオラマ作りに参加しているなど、ジオラマでの街作り、世界観作りに対する熱量の高さが伺える。
実際、ゲームをプレイしているとマップが寄りになった際にジオラマの片鱗を感じ取れる。とくに木々やガラクタ置き場など、細かなものにズームアップすると手作りの質感が非常によく分かる。その緻密さは、先日の東京ゲームショウ2024で、ゲーム内に登場する船“ウズラ号”の模型がスクウェア・エニックスブースに飾られていたことでも確認できる。
オーソドックスさから劇的に変わる後編
冒頭でもお伝えした通り、ゲームは前後編に分かれている。前編は基本的に一本道。サブクエストによる道草はあるが、自由に街を行き来できなかったり、通行止めされたりとシナリオ進行の核のみ追いかけていく往年のRPGスタイル。ここまでは正直、懐かしさと古臭さの感情が入り混じる状態だった。しかし後半に差し掛かると急激にゲーム性が変わる。
船でマップを自由に行き来できるようになっただけでなく、各地にストーリーやサブクエストも大量に湧いてきた。つまり、ここからはどのエリアをどの順番で攻略するか完全に自由になったということ。また、各キャラにスキル自由に獲得していく“成長マップ”が追加され、ただレベルを上げるだけだった前半と異なる育成要素が追加された。おまけにこの“成長マップ”はいつでもポイントをリセットしてスキルを獲得し直せるのだから面白い点だ。おまけに装備品の強化要素も解禁されたりと、プレイヤーに選択肢が増えたときの嬉しさ、ハマる感覚はいつだって胸が躍るのを見透かされているんじゃないかと思うほどの解禁の嵐だった。
ここで“成長マップ”による育成が進んだことでバトルもより戦略的になり、敵の強さも格段に上昇していた。本作のバトルは基本ターン制なのだが、戦闘で使う技(スキル)に特別なギミックが施されている。それはスキルが特別な軌道を描くように動かせること。そもそも本作のバトルにおける敵は横並びではなく、奥行きがあり、敵を貫通させるかのようにスキルを放ち、ワンターンでいかに多くの敵にダメージを与えていく点が重要と言える作りだ。
スキルによっては一直線にしか飛ばなかったり、カーブのように軌道を曲げられるほか、円範囲の衝撃波タイプなど、さまざまなパターンがあり、敵の配置や陣形に対して効果的なスキルを選択していく戦略性が面白い。それらを更に面白くさせているのが“ディメンジョンシステム”というエンカウントした敵を一時的にストックさせておけるシステムだ。
この“ディメンジョンシステム”は一度エンカウントしたことのある敵をストックさせておける装置で、任意のタイミングもしくは最大ストックを越える敵とエンカウントした際にバトルが行われるというもの。通常のエンカウントは5~6体ほどの敵を倒す小さな戦場だが、システムを起動させると30~50体の敵が出現する特殊な空間でバトルが行われる。ただ敵が増えているのではなく、逆に敵が増えたことでスキルによる一掃の爽快感がとんでもなく楽しいものになっているのがポイントだ。
システム内でのバトルには攻撃力ブーストや再行動など、特殊なアイテムも出現しており、30体もの敵を3人で相手にすることが劣勢にならないような仕組みがしっかり施されている。反対に敵を複数倒すギミックをしっかり活用しなければ、数十体の敵のターンを許すことになり全滅になることもあるほどだ。一気に倒すことができれば大量の経験値やアイテムを獲得でき、確実なパーティの戦略アップに繋がるため、リスク・リターンも考えられた秀逸なシステムだと感じた。
また“ディメンジョンシステム”による敵のストックは、探索をスムーズにできるメリットもある。要はストックされている間はエンカウントしないので、物語の進行やフィールド探索に集中できるということ。システムの改良が進めば、最大で50体もの敵をストックしておけるので、それだけ長く探索でき細かなストレスが軽減されていた。
前編は力押しでなんとかなっていたターン制バトルだったが、後編は“成長マップ”によるスキルの広がりもあり、バトルの難易度がかなり大きく上がっている。敵の攻撃力、防御力ダウンをはじめ、状態異常の併用など、さまざまな手段を駆使していくことが前提なほど。とくに後編のボス戦はどれもギミックが用意されているので、“死んで覚える”ことが増えていった。耐性系のアクセサリーを装備したり、敵の回復を阻害する状態異常を使用したりなど、前編と後編における戦闘難易度は大きな開きがあるとハッキリ言える。それだけやり甲斐があったし、ただレベル上げるだけでは済まない面白さ、攻略していく楽しさが格段に増えていた。
各地を自由に動き回れることで、行き来が面倒に思えるが本作にはワープ(ファストトラベル)もある。このワープの便利なところはクエストの開始地点や重要な場所に直接ワープできること。ワープポイントこそ決まっているが、移動の手間を省いて達成できるのが非常に楽だった。
また楽な面といえば、マップのポイントに対してオートラン機能が実装されていることだ。マップには赤い矢印のようなポインターがいくつか置かれており、ここに対してオートランが起動できるシステムが用意されているため、道に迷うことなく動けるのが快適だった。とくに本作はカメラが自動で回転し、操作方向が混乱することがあったため、それらに迷うことなくスムーズな移動ができるオートランは画期的で多用していた。ちなみにカメラの自動回転は建物の横に隠し通路が用意されていたり、視認しにくい場所に宝箱が置かれているのを発見できるシステムとして機能しており、私のような隠しアイテム探しに没頭するような探索好きな人間にはたまらない要素だった。
全体的には前編と後編と評価が一転した。前編はオーソドックスなRPGだったが、後編の戦略性の拡大や探索の自由化、トライアル&エラーなボス戦の緊張感など、かなりやり応えを感じるRPGになった。記憶喪失の主人公が徐々に思い出していく様子や特殊な世界のあり方など、特異な世界設定やシナリオにも非常に注目のし甲斐がある。要所要所で小説のようなフルボイスのミニストーリーが展開し、それらが世界の肉付けを手伝っていた点も本作の魅力だろう。
またコラボ楽曲として「ファイナルファンタジー」シリーズから戦闘BGMがいくつか用意されている。このコラボ楽曲の凄い所は通常戦闘曲とディメンジョンバトル、2種類のボス戦で異なる曲が流れるのだが、「ファイナルファンタジー」シリーズの戦闘のシチュエーションに対応した楽曲が流れるのは手が凝っている。戦闘中、任意のシリーズの曲に切り替えられるので聞き馴染みのある曲を選んで遊ぶのもまた一興だ。
しっかりとしたストーリーとバトルシステムの「FANTASIAN Neo Dimension」。一筋縄ではいかないバトルを所望しているプレイヤーにぜひとも体験してもらいたい一作だ。
(C) MISTWALKER/SQUARE ENIX
※画面は開発中のものです。
コメントを投稿する
この記事に関する意見や疑問などコメントを投稿してください。コメントポリシー