Toplitz Productionsが配信中のオープンワールドゲーム「Sengoku Dynasty」(戦国ダイナスティ)について、プロデューサーのJan Cieslar氏のインタビューをお届けする。

目次
  1. 「ソウルライト」化したバトルの開発チームは「ソウル」シリーズの大ファンだった
  2. 「Sengoku Dynasty」は、豊臣秀吉の逸話からインスパイアされていた

日本の戦国時代を舞台にした、オープンワールドサバイバルシミュレーションゲーム「Sengoku Dynasty」。2024年11月8日には正式リリースとなるVer.1.0の配信がSteamでスタートし、2025年内にはH2 INTERACTIVEから日本語PS5版のリリースも予定されている。

「Sengoku Dynasty」インタビュー:当初サンドボックスではなく、戦国時代のRPGとして作られていた!?の画像

今回はそんな「Sengoku Dynasty」について、プロデューサーのJan Cieslar氏にメールインタビューを実施。日本の戦国時代に込める想いから今後のゲームのアップデートまで、様々な質問にご回答いただいた。

「ソウルライト」化したバトルの開発チームは「ソウル」シリーズの大ファンだった

――正式リリースを迎えた現在のご心境を教えてください。

Jan Cieslar氏(以下、Jan):まずは感謝と期待、そして意欲でいっぱいです。私たちチームにとってはバージョン1.0のリリースはゴールではなく、道のりの途中です。今回のリリースのおかげで、アーリーアクセス開始時以来の本作が非常に成長してきたこと、そして今ではさらに幅広い人々に遊んでもらう準備ができていることを皆さんにお伝えできます。

プレイヤーの皆さんからは多大なお力添えをいただきました。リリースから2か月後にあたる1月に行ったセールで、本作がSteam売上ランキングのトップ50に入っているのを見たときには、私たちのゲームにはまだ手付かずのポテンシャルが大いに秘められているということを教えてくれました。

新たに寄せられたフィードバックを収集し、パフォーマンス改善のアップデートや、襲撃システムやクエストを回想できる機能、ステータスエフェクトなどの面白い機能の開発にすでに着手しています。長期的な計画で動いていますが、それぞれの販売期間ごとに繰り返し人々の関心を集めることができています。

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――そもそも、日本の戦国時代をモチーフにすることになったのは、何がきっかけだったのでしょうか?

Jan:熱意と戦略的判断の両方からです。戦略的判断の面では、サバイバル建築ゲームの分野ではこの時代はまだモチーフとされていませんでしたし、西洋での日本人気も高まり続けているということで、題材に選びました。

熱意の面では、日本が本当に大好きだからです。私個人にとっては、「切腹」や「七人の侍」といった時代劇への情熱を再び滾らせる機会でもありました。これらの映画からは単にビジュアル面で影響を受けただけではなく、当時の精神や社会の複雑さを理解するための参考にもなりました。

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――リリース後の日本のプレイヤーからの反響はいかがでしたか?

Jan:日本での人気と皆さんの盛り上がりにはただただ圧倒されました……! 我々の想定をはるかに超える評判で、日本とポーランドの間には、魅力的な文化の類似性があるようですね。

どちらの国の人々も、他の国が自国の伝統に真に敬意を示してくれたとき、心からの感謝の念を抱くのです。日本のプレイヤーが、侍の鎧や着物を着て本作をプレイしている様子を見たときは、本当に嬉しく笑顔になりました!

――正式リリース版でのもっとも大きな追加要素は、地域を支配する「大名システム」かと思いますが、どのような狙いで実装されたのか教えてください。

Jan:本作の開発を始めた段階の我々の目標は、建築や農業、村での生活なといった、村人として遊べるゲームシステムを充実させることでした。

しかし、戦国時代を舞台とした作品である以上、もっと野心に満ち溢れたシステムが必要です。そこで大名システムを実装しました。これにより、どの資源を得るためにどの地域を支配するのか、どうやって勢力を拡大していくかを考える必要が生まれ、本作は大いに戦略的になりました。弊社のデザインチームではすでに、よりダイナミックなバトルシステムに絡めてこのシステムを磨き上げていく方法を検討中です。

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――キャラクタークリエイトも可能になりましたが、まだ物足りないプレイヤーも多いのではないかと思います。今後こちらの要素をより充実させるような予定はありますか?

Jan:ええ、もちろんです! 女性のキャラクタークリエイトの実装という最初の一歩をすでに踏み出し、現在はより豊富な髪型やカスタマイズオプションを開発中です。

フィードバックを見たところ、現時点でもそれなりに満足していただけてはいるようですが、まだまだ改善の余地がたくさんあることも見えてきました。この機能に関しては、プレイヤーの皆さんからのフィードバックをもとに、これからもっと充実させていきたいと考えています。

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――バトルシステムは、8月の「生き甲斐(Ikigai)」アップデートから大きく変わりました。現状のバトルシステムの特徴や、楽しんで欲しいポイントについて教えてください。

Jan:バトルシステムの開発チームは「ソウル」シリーズのファンがほとんどでして、「ソウル」シリーズのような体験を、本作ならではの形で遊びやすく取り入れたかったんです。いわゆる「ソウルライト」ですね。

腕前が必要とされ、勝てたときに達成感のある、だけど複数のアプローチでクリアできる戦闘になるように尽力しました。高難易度の戦闘に燃えるタイプの方は戦いを極めて基本装備だけでゲームをクリアしてもいいし、お金の力に頼る派の方は強力な装備で戦闘を楽にすることもできます。現在は長距離戦を充実させ、より戦術的な戦い方ができるようにするための開発を行っています。

――本作には、バトル・村・シミュレーション・サバイバルなど様々な要素があります。開発にもっとも苦労したのはどの要素でしょうか?

Jan:むしろ大変だったのは、それぞれのシステムを作り上げることではなく、すべての要素が自然に、かつ同時に機能するようにすることでした。複数のタスクを同時に抱えてゲームを遊んでもらうには、それぞれがシームレスに結びついていないといけません。

例えば、プレイヤーキャラクターが空腹になったとき(サバイバルというタスクを抱えた状態)、そのプレイヤーは村の資材を確認するでしょう(資源の管理というタスク)。そこで村人が足りていないことに気付き(コロニーシムというタスク)。そして村の食料生産の自動化が不十分であることに気付くかもしれません(自動化というタスク)。

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このような状況では、自然とプレイヤーは選択を迫られます。狩りをしてもいいですし、取引で食料を入手することもできます。盗賊の野営地を制圧して難民を救出し、新たな村民を確保してもよいでしょう。あるいは、空腹によるデバフを無視してそのまま他の目的に集中する、なんてこともできるかもしれません。複数の要素間のつながりを自然に見せつつ、どの選択肢も同じぐらい面白く仕上げるという作業は、我々が現在も調整を重ねている点です。

しかし、プレイヤーの皆さんからの声を聞いた限り、徐々に理想的なバランスに近づけられている実感を得られつつあります。

「Sengoku Dynasty」は、豊臣秀吉の逸話からインスパイアされていた

――本作はサンドボックスゲームのジャンルの中でも、クエストが豊富で「何をすればいいか分からない」という状態になりにくいと感じました。こうした要素を充実させた理由を教えてください。

Jan:素直に作った、というのが正直なところです。実は、もっといろいろやりたいことがあり、当初はほぼ完全なRPGとして開発を始めていました。そこから後々アプローチを変え、クエストを利用して本作のシステムを少しずつ知ってもらいつつ、戦国時代の日本の魅力的な歴史を見せていく方式に変えたんです。

今思えば、この時の決定のおかげで、サンドボックスでありながらも順序立ったゲーム進行が確立できましたね。プレイヤーに自由を与えながらもゲーム内での目的を明らかにできました。

「Sengoku Dynasty」インタビュー:当初サンドボックスではなく、戦国時代のRPGとして作られていた!?の画像

――Toplitz Productionsは、本作以外にもシミュレーションを軸としたタイトルをリリースされています。シミュレーションゲームというジャンルの魅力や、スタジオとして拘っているポイントを教えてください。

Jan:今の世界は、どんどん断絶されていっています。狩猟や栽培を行うのではなくオフィスで働いて食料を買い、自分たちで家を建てる代わりに建築会社に依頼します。シミュレーションゲームは、このような原始的な人間の生活を思い出す、ここでしか得られない機会を与えてくれます。

例えば、刀の鍛造という工程をゲーム内で再現することで(実際には会得するために何年もかかる技術ですが)、昔の技術を知り、その価値を理解する手段をプレイヤーの皆さんに提供できるのです。

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――本作は、戦国時代の日本についてしっかり考証されているかと思いますが、どのようにして歴史考証を行ったのでしょうか?

Jan:私たちの望みは歴史的に正しい作品を作ることであり、そのためには専門家の助けが必要でした。そこで東京大学で研究を行っているポーランド人の博士課程学生と提携し、歴史考証を手伝っていただきました。

歴史的文書のスキャンや翻訳、博物館を訪問して史料のデータをまとめていただき、また当時の生活や風習についての私たちからの質問攻めにも答えていただきました。戦国時代を熱心に研究する彼のおかげで、我々は細部にいたるまで理解を深め、単なる歴史をモチーフとしたゲームではない正確な作品を生み出すことができました。

Szymonさん、あなたもこのインタビューを読んでくれているでしょうか。今一度お礼を言わせてください!

「Sengoku Dynasty」インタビュー:当初サンドボックスではなく、戦国時代のRPGとして作られていた!?の画像

――好きな日本の戦国時代の人物はいますか? もし理由もありましたら教えてください。

Jan:もちろんいます。豊臣秀吉です。農民としての平凡な出自から、日本で最も敬意を集めた大名に成り上がったという彼の物語は、この時代の魅力をまさに体現しています。

実際、「Sengoku Dynasty」本編の進行システムは彼の逸話にインスパイアされています。一介の村人から始まりやがて支配者になるというのは、ただのゲーム内のシステムではなく、歴史において実際に起こったことなのです。

――日本の戦国時代をゲームに落とし込むにあたり、特にうまくいったと手応えを感じている要素はありますか?

Jan:私たちが力を注いだ箇所が2点あります。当時の日本の製造業をゲームのクラフトシステムにうまく落とし込むことと、ゲーム内アセットのグラフィックを歴史的に正しいものにすることです。

クラフトシステムに関しては、日本酒の醸造や和紙の製造、刀の鍛造など、深い歴史を持ち繊細な手順を踏む製造業の作業工程を調べました。現実の世界で行われてきたこれらの複雑な手順を、ゲームとして遊んで面白いシステムにするのは大変でしたね。私たちの目標は、プレイヤーの皆さんに実践的な体験を味わっていただき、戦国時代の文化と産業にとって、こうした事柄が重要だったと知ってもらうことでした。

デザインの面では、当時の衣服や武器、建築物、その他さまざまな物の見た目や形状を正しく再現することに尽力しました。細部まで可能な限り正確に作り込むことで、プレイヤーが戦国時代という設定に浸り、もっと普通のデザインをしているであろう他のサバイバルゲームとの違いを感じていただけるようにしたかったんです。

もちろん改善の余地はいくらでもありますし、これらのシステムやグラフィックの改善のため、常にプレイヤーからのフィードバックを収集しています。しかし全体的には、こうした要素が「Sengoku Dynasty」の独自性の確立に役立っている現状に満足しています。

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――アーリーアクセス版のリリース時に一度プレイを止めてしまったプレイヤー、正式リリースを機に購入を考えているプレイヤー、それぞれに向けて楽しんで欲しいポイントを教えてください。

Jan:開発チームはアーリーアクセス期間中本当によく仕事をしてくれました。ここまで来れたことを本当に誇らしく思っています。

ゲームの核となるシステムを改善し、新たな機能を実装し、そして既存のシステムを洗練させて、本作は劇的に進化しました。一度はプレイをやめてしまった人たちが戻ってきてこれらの変更点を体験し、低評価レビューを高評価に更新してくれたときには、本当に頑張った甲斐があったと思いましたね。

パフォーマンス面もかなり改善されましたが、現在も新機能関連の最適化を行っている最中です。変更点をただ一覧するよりは、プレイヤーの皆さんにはぜひ実際にこの変化を体験していただければと思います。本当に大きく変わりましたよ!

「Sengoku Dynasty」インタビュー:当初サンドボックスではなく、戦国時代のRPGとして作られていた!?の画像

――今後のアップデートや予定されているコンソール版について、現時点でお話いただけることはありますか?

Jan:本作のコンソール版を今年リリースしたいと考えています。詳細な情報をお伝えする準備ができた際には告知しますので、具体的なリリース日については公式SNSアカウントやSteamページをぜひチェックしてください。

より直近の予定としては、パフォーマンス面のアップデートを2月に行うほか、プレイヤーの村への襲撃など面白い新要素を含むアップデートを3月に予定しています。

――日本のプレイヤーへのメッセージをお願いします。

Jan:日本の皆さんからこれほどの注目を浴び、ご支援をいただけて、身が引き締まると同時に恐縮な思いです。皆さんからの詳細なフィードバック、そしてこの重要な時代に対する私たちなりの解釈の形を受け入れていただけたことに、本当に感謝しています。

私たちはこれからも戦国時代の遺産に敬意を抱き、そして「Sengoku Dynasty」の開発と改善を続けていきます。どうもありがとうございます。

――ありがとうございました。

ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。WEBのアニメ・ゲーム系媒体を中心に、様々なゲームの攻略本にもライターとして関わらせていただいています。ガンプラと美少女フィギュアに部屋のスペースを専有され、自分の生活空間がどんどん狭くなっているのが最近の悩みのタネに。ここ数年は「原神」を毎日プレイするのがすっかりに生き甲斐になりつつあります。

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Sengoku Dynasty公式サイト
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