アニプレックスが6月25日、iOS/Android向けにリリース予定(PC(Windows)版のリリース日は後日発表)の「オルタナヴェルト -青の祓魔師 外伝-」(以下、「オルエク」)の先行プレイレポートをお届けする。
「青の祓魔師」はジャンプSQ.で2009年より連載中の加藤和恵先生によるダークファンタジー漫画だ。累計発行部数2500万部突破やアニメ化も果たしており、最新シリーズとして2025年にはTVアニメ「青の祓魔師 終夜篇」が放映された。
そのような盛り上がりの中でリリースされる「オルエク」は、「外伝」とタイトルが付けられているように原作の世界観を活かしたゲームオリジナルのシナリオが描かれる。今回はリリースに先駆けてプレイする機会をいただいたが、筆者は「青の祓魔師」についてこれまで触れてこなかった立場だ。そのため「原作を知らなくても楽しめたか」という視点を軸にして、先行プレイレポートを記していきたい。なお記事執筆にあたっては、先行プレイ用のアカウントを使用している点には留意してほしい。
「青の祓魔師」の裏側を描くオリジナルストーリーが展開
まず「青の祓魔師」の世界観を紹介したい。本作は人間が住む「物質界(アッシャー)」と、悪魔が住む「虚無界(ゲヘナ)」という2つの次元が存在する世界が舞台だ。悪魔は物質界の物質に憑依することで、異なる次元に干渉し人間たちを害している。そうした悪魔を祓う「祓魔師(エクソシスト)」をテーマにしたストーリーがシリーズの共通点だ。原作では悪魔の王(サタン)の息子「奥村燐」をはじめとした、祓魔師を目指す養成機関「祓魔塾」に通う高校生の学園生活が描かれている。

一方「オルエク」では、原作でもおなじみの正十字学園町を舞台に、ゲームオリジナルのストーリーが展開。物語は祓魔師として活動していた主人公が、突如「特立捜査係」へと異動を命じられる場面から始まる。プレイヤーの分身となる主人公は、外部からスカウトされた「ごく普通の祓魔師」という立ち位置だ。そのため筆者のような原作未読のプレイヤーでも置いてきぼりにならないように、定期試験や主人公に教えるという形で作中用語が解説されており、作品へのスムーズな導入が図られている点が好印象だった。

「特立捜査係」は、「幕外有史」によって設立されたばかりの部署。世界の命運を左右するような大事件に立ち向かう花形部署ではなく、ユビシステムを通して寄せられる地域住民の困りごとに対応しながら、日常に潜む異変を解決していく「何でも屋」といった趣だ。

「特立捜査係」に集うメンバーも一筋縄ではいかず、主人公と同時期に異動してきた「紅羽亜鳥」や、任務での失敗続きから退職を考えていた「居切一飛」など、いずれも事情を抱えた人物ばかり。不器用でエリートとはほど遠い“落ちこぼれ”感のある彼らの成長こそが、本作のストーリーの大きな魅力だ。
序盤では各キャラクターとの出会いに焦点があてられ、それぞれの弱さや過去が少しずつ掘り下げられていく。そうした個々の背景を知っていくことでバラバラだったキャラクターが「仲間」として結びついていく過程に自然と感情移入させられる構成も見どころである。

“サタンの子”や“高名な寺の跡取り”といった特別な血筋を持っておらず、あくまで「何者でもない」一般人の祓魔師たちが、それぞれの悩みと向き合いながら少しずつ前進していくシナリオは、同じように平凡な立場にいるプレイヤーにこそ強く響くのではないか。
また、オリジナル展開の紹介ばかりで、本編キャラクターが登場しないのではないかと感じた読者もいるかもしれない。たしかに外伝のためストーリー上ではスポット参戦という形になるが、たとえばプロローグに奥村兄弟が登場したり、正十字学園町の南裏門に猫又のクロがいたりと、原作を知っていればもっと楽しめた&ピンときたのだろうというポイントが多数見られた。そのためゲーム単体だけでもストーリーを楽しめたが、“「青の祓魔師」をもっと知りたい”という橋渡しとしても機能しているだろう。


自動戦闘にワープなど、ストレスなく没入できるアクションRPG
「オルエク」は3DアクションRPGとして、プレイヤーが正十字学園町を自由に散策できるのが大きな魅力だ。画面左下に配置されたバーチャルパッドを動かして、「下層部」や「中層部」といった複数のエリアを自在に移動し、祓魔塾など原作ファンにはおなじみのスポットも訪れることもできる。特に「特立捜査係」の依頼で何度も足を運ぶことになる商店街エリアは、キャラクターデザインにも通ずる和洋折衷の街並みが印象的だ。「原作ではどこまで描かれていたのだろう」と感じてしまうほど背景同士のつながりが自然で、「青の祓魔師」シミュレーターとしての側面も強く感じ、ファンは資料集めという点でも探索が止まらなくなるかもしれない。

本作のメインシナリオは、プレイヤーレベルに応じて段階的に開放される形式を採用している。レベルはストーリー進行だけでなく、マップ各所に配置された宝箱の回収や「木花精(エシル)」の収集によっても上昇可能だ。先述したようにマップの作り込みは寄り道への探索欲をかき立てており、報酬とモチベーションが連動する設計になっているため、先行プレイ中にはレベル制限で詰まるような場面はなかった。
また、広大な正十字学園町内の移動も快適で、各エリアの「防魔課職員」から鍵を受け取ることで、ファストトラベル機能が開放される仕組みだ。探索中に煩わしさを感じることは少なく、移動のストレス・作業感を抑えつつ、広がりのある世界をじっくりと堪能できた。
バトルは操作キャラクターだけが参加するのではなく、自由に戦う4名を切り替えながらスキルをタップして敵にダメージを与えていく。悪魔にはHPだけでなく「ブレイクゲージ」があり、攻撃を加えていくことで0までゲージを削ると「ブレイク状態」に移行して、一定時間行動不能になり被ダメージが上昇。通常スキルや固有の「アクティブスキル」を中心に戦闘を組み立て、ブレイク状態に向けて必殺技「奥義スキル」を温存するなどの戦略が必要だ。

本作独自のシステム「バーストゲージ」は、パーティーメンバーがスキルを使用したりジャスト回避に成功したりすることで溜まっていく。ゲージ満タン時にタップすると味方全体が、「バースト状態」になり各自のパッシブスキルが発動し戦闘を有利に進められる。「オルエク」のシナリオは「特立捜査係」の切磋琢磨を中心に描かれるが、バトルにおいても味方の行動に呼応する「バーストゲージ」を通して共闘感が強調されており、本作らしいシステムと言えるだろう。

また興味深く感じたのが「自動戦闘」機能が実装されている点だ。アクションRPGというジャンルにおいては、一般的にプレイヤーが操作する“アクションの楽しさ”が体験の核となる要素であり、ゲームの魅力として前面に押し出されることが多い。しかし本作ではバトル自体が一定以上の完成度を備えつつ、あくまで「任意」として位置づけられている。
この仕様は「オルエク」が「青の祓魔師」という他メディアのスピンオフ作品であるという出自を踏まえ、コアなゲーマー層だけでなく原作ファンや普段あまりゲームに親しみのない層までを広く想定した作りになのではないか。ユーザーにとって“戦闘を必ずしも自力でこなす必要がない”のはプレイへの敷居を下げており、アクションRPGでありながら「原作の世界観を追体験する場」としての側面が強調されているように思う。
「青の祓魔師」の世界観を拡張する外伝作
最後に、冒頭で投げかけた「原作を知らなくても楽しめるか」という問いの答えを述べたい。結論から言えば本作は、原作未読の立場であっても非常に楽しめた。「オルエク」は「青の祓魔師」の外伝という位置づけであるため、物語や登場キャラクターが逆輸入されない限り、原作の進行に影響を及ぼすことができない。つまりシリーズ全体にとって「必須ではない」タイトルでありながら、「青の祓魔師」として違和感なくゲームを成立させる必要がある。
その前提のもと、高校生がメインの原作ではあまり焦点があたらなかった“一般人の祓魔師”を題材にして、作品の補強と拡張を図っている。ファンも知らないストーリーが描かれるため、シリーズ初心者とのスタート地点があまり離れておらず、メディアミックス作品にありがちな「原作の知識が前提」というハードルをあまり感じさせない構成だった。原作を知らないプレイヤーにとってもとっつきやすく、逆に「青の祓魔師」ファンにとっては新鮮な切り口から世界観を再発見できるスピンオフとして楽しめるだろう。結果として入門作としても、シリーズの拡張作としてもバランスを備えたタイトルであり、「外伝」という呼び名にふさわしい仕上がりだと感じた。
(C)オルタナヴェルト -青の祓魔師 外伝-
(C)加藤和恵/集英社・「青の祓魔師」製作委員会
※画面は開発中のものです。
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