12月3日に開催された「PlayStation Partner Awards 2025 Japan Asia」にてACCESSIBILITY AWARD(アクセシビリティアワード)を受賞した2タイトルと、プレイステーションがこれまでに実践してきたアクセシビリティに関する試みを辿るコラムをお届け。
アクセシビリティとは、日本語に訳すと「アクセスしやすさ」「使いやすさ」などの意味があり、障碍者や、高齢者などを含む身体機能が低下している人などにとっての製品の「利用しやすさ」を示す言葉として広まっている。
コンピューターゲームはその多くが両手でコントローラーを握ってプレイし、視覚も聴覚も活用する必要があるため、健常者向けの娯楽だと思われがちだ。また、十分に楽しむために“慣れ”が必要でもあるため、興味があるタイトルがあってもユーザーの習熟度によっては、楽しいと感じるラインに到達する前に苦痛が上回ることもあるだろう。
こうしたハードルを減らし、より広いユーザーにゲームプレイを楽しんでもらうための試みが、コンピューターゲームにおけるアクセシビリティ(=利用しやすさ)と言える。
本稿では、プレイステーションのアクセシビリティに関するこれまでの試みについて順を追ってまとめつつ、「PlayStation Partner Awards 2025 Japan Asia」で新設されたACCESSIBILITY AWARD(アクセシビリティアワード)の受賞タイトル「モンスターハンターワイルズ」と「龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii」の試みを紹介する。

全盲のゲーマーがクリアできた「ラスアス2」や「Access コントローラー」など、近年のプレイステーションの試み
プレイステーションに“アクセシビリティ”と呼ばれる機能が搭載されたのは、2015年に行われたPS4のバージョン2.50のアップデートから。ここでは視力が弱い人や色覚異常を持つ人のためのズームや色の反転、ハイコントラスト、文字を大きくしたり太くするなどの“視覚サポート”や、ボタンの割り当てをハード側で変更する機能が追加されている。
その後もアクセシビリティの設定項目はアップデートによって増えていき、“音声読み上げ”や“クローズドキャプションの見た目カスタマイズ”などが2019年時点の紹介動画では確認できる。なお、この時点での音声読み上げ機能は本体言語が英語であることが前提で、日本語に対応したものではなかったようだ。
こういった一連の“アクセシビリティ”に関する試みが広く知られるようになった切っ掛けは、全盲のゲーマーが他者のサポートなしでエンディングまでクリアできたことで世間を驚かせた「The Last of Us Part II」ではないだろうか? 本作はプレイステーションと同じくソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が販売しており、開発はアメリカのノーティドッグが担当している。
この「The Last of Us Part II」には膨大な数のアクセシビリティに関する設定項目があるだけでなく、視覚、聴覚、運動のサポートに適した3つのプリセットが用意されており、これを基本として障碍の特性にあった設定変更がしやすくなっている。ゲームの起動時には最低限の操作でテキスト読み上げ機能をオンにすることができ、視覚障碍がある人も健常者によるサポートを受けずに設定変更に辿り着きやすくなっているのも特筆すべき点だ。

この試みは前作のリメイク版「The Last of Us Part I」にも反映され、現在ではシリーズを通して“ゲームソフト屈指のアクセシビリティ”の恩恵を受けて楽しむことができる。ほかにも「Horizon」シリーズや「GOD OF WAR」シリーズなど、近年SIEが販売しているタイトルはアクセシビリティオプションが充実しているものが多く、幅広いユーザーが楽しめるようになっている。
プレイステーションにおけるアクセシビリティに関する試みは、PS5でさらに包括性を増し、この最新ハードではナビゲーションに従えば多くのユーザーが戸惑うことなくゲームの初期設定を終えられるようになっている。こうした機能を実際に視覚障碍者が利用した際の所感については、YouTubeの「IGL(インビジブル・ゲーミングラボ)チャンネル 視覚障碍者ゲーマー実況プレイ」などに詳しい。
2023年12月6日には「Access コントローラー」が発売。このコントローラーは障碍の特性にあわせた幅広いカスタマイズが可能で、両手の指が自由に動かせない人や、握力がない人にとってPS5のゲームをプレイするハードルは大きく下がった。
複数のコントローラーを連携させることも可能で、ひとりでプレイするのはもちろん、複数人で協力しながらひとつのゲームをプレイすることも出来るようになっている。

同じく2023年には、「PlayStation Partner Awards 2023 Japan Asia」のSPECIAL AWARD(スペシャルアワード)を、「日本・アジア地域で開発されたソフトウェアメーカー各社のタイトルにおいて、さまざまな障碍に配慮したアクセシビリティに優れた作品」として「ストリートファイター6」が受賞。
「ストリートファイター6」は障碍者eスポーツユニット“ePARA”の協力などにより、視覚障碍などがある人でも対戦格闘ゲームの駆け引きを楽しめる機能が充実している。「全人類に遊んでもらう」ことを目標にしているという本作が、プレイステーションが掲げるアクセシビリティに関する取り組みと合致したことによる受賞と言えるだろう。
なお、翌2024年に開催された「PlayStation Partner Awards 2024 Japan Asia」のSPECIAL AWARDは、アクセシビリティとは異なる選定基準での授賞のみとなっていた。
そして「PlayStation Partner Awards 2025 Japan Asia」には、ACCESSIBILITY AWARDというアクセシビリティのための賞が用意された。選考基準は以下の通りだ。
2025年に発売された日本・アジア地域で開発されたソフトウェアメーカー各社様のタイトルにおいて、プレイスタイルに合わせたコントロールスキームの提供、色覚サポートや、画面読み上げなどを含むクオリティの高いアクセシビリティ機能の実装と、それに伴う開発で注目すべき活動成果を残した作品に贈られる。
ここで受賞したのが「モンスターハンターワイルズ」と「龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii」だったというわけだ。

「モンスターハンターワイルズ」と「龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii」のアクセシビリティ
ここからは、「PlayStation Partner Awards 2025 Japan Asia」でACCESSIBILITY AWARDを受賞した「モンスターハンターワイルズ」と「龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii」のアクセシビリティについて見ていこう。

「モンスターハンターワイルズ」は、“色覚特性サポート設定”、“視覚アクセシビリティ自動設定”、“聴覚アクセシビリティ自動設定”などの豊富なアクセシビリティオプションが用意されている。“画面酔い防止の推奨設定”や文字の大きさを変更する機能も、プレイヤーが自身の特性にあわせてより快適にゲームを楽しむために設けられた設定項目だ。
少しユニークなのは“蜘蛛恐怖症対策モード”で、これは一部の多脚小型モンスターや環境生物がゼリーっぽい抽象的な姿になり、蜘蛛が苦手なプレイヤーがそれらモンスターの蜘蛛っぽい見た目を直視することなくプレイできるというもの。
この“蜘蛛恐怖症対策モード”は「Satisfactory」や「Grounded」、大作なら「ホグワーツ・レガシー」など、海外のゲームでは先行事例が存在するアクセシビリティだが、国産の大作タイトルで導入されたことには意義があるだろう。

「龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii」は、“色覚特性サポート設定”、ハイコントラストモード、サイズと色をオプションで調整可能な字幕などが用意されている。また、“自動QTE”の機能で反射神経が要求される操作を緩和できたり、ボス戦の難易度をゲーム内で自動調整するといった機能も搭載。左右のスティックの機能の入れ替えも可能ということで、片手でもある程度のプレイができるものと思われる。
ただ、これらのアクセシビリティオプションの詳細は日本語圏のインターネット上には情報がなく、「龍が如く8外伝」の公式WEBマニュアルにも記載されていなかった(アクセシビリティについて検索するのではなく、「龍が如く8外伝 設定」などで検索すればヒットするサイトは存在)。
ゲームを購入してから「自分には満足に遊べなかった」では遅いし、逆に「遊べないかもしれないからこのゲームは買わないでおこう」と判断された場合はメーカーにとっても機会損失だろう。購入前に「自分にプレイできるかどうか?」をひとりひとりが判断できる材料は不足しているように感じた。
調べていく過程で、英語圏のレビューにはアクセシビリティの内容を記したものがかろうじて見つかったが、日本語圏のレビューにこうした言及を見つけることはできなかった。これはつまるところ、「日本語圏のゲームメディアのレビューは、障碍を持つ人にとっては“大して参考にならない”」ということでもある。いちゲームライターとして、改めて心に留めておこうと思った。
障碍の特性や進行度も障碍者ひとりひとり千差万別であり、そのすべてに十分に対応するのは困難を伴うだろう。それでも、ノウハウが蓄積されればそれだけ実装コストは下がるはずだし、「Access コントローラー」のようなハードウェア側の取り組みと、ソフトウェア側のアクセシビリティを組み合わせることで解消する問題もあるはずだ。筆者個人としては、いちゲーマーとして、ゲームの楽しさを共に語れる仲間がひとりでも増えるならそれだけでうれしい。メーカー各社の取り組みは、引き続き追って行きたい所存だ。
参考文献
https://automaton-media.com/articles/newsjp/20200630-129139/
https://www.youtube.com/@igl3359
https://esports-world.jp/news/28732
https://www.eurogamer.net/like-a-dragon-pirate-yakuza-in-hawaii-review
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