「オーバーウォッチ」開発者インタビュー:2026年の大規模アップデートで加わる5人の新ヒーローや物語の地続き化、UI/UXの最適化について聞く

インタビュー
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オーバーウォッチ」で2月11日に行われる大規模アップデート。シリーズ史上初となる5人の新ヒーローの追加や、UI/UXの最適化などゲームが大きく変化する。今回はそのアップデートについて開発者にインタビューを行った。

前作「オーバーウォッチ」のサービス開始から10年という大きな節目を迎え、「オーバーウォッチ2」はかつてない規模の変革期に突入する。

シリーズの進化を象徴するタイトル変更として、2026年より「オーバーウォッチ2」から「オーバーウォッチ」へと改称された。従来のナンバリングに捕らわれない継続的な発展を続けてきた本作の特性を踏まえた決断で、開発チームは「2という数字が示す以上に大きな未来を見据えている」とコメントしている。今回のシーズン1は、この新しい「オーバーウォッチ」としての船出を飾る大型アップデートとなる。

今回のアナウンスで最も注目を集めているのは、5人の新ヒーローの同時参戦だが、その裏側では単なるキャラクター追加に留まらない、多くの変更がある。

本稿では、アソシエイト・ゲームディレクターのAlec Dawson氏をはじめ、ナラティブ、アート、UI/UXの各部門を統括する主要開発陣へのインタビューを統合。1年をかけて紡がれる「起承転結」のある地続きの物語、最先端技術で描かれるヒーローの表現などをお届けする。

5人の新ヒーローの独創的なプレイスタイル

ヒーローデザイナーのScott Kennedy氏、リードヒーロープロデューサーのKenny Hudson氏、アソシエイトゲームディレクターのAlec Dawson氏
ヒーローデザイナーのScott Kennedy氏、リードヒーロープロデューサーのKenny Hudson氏、アソシエイトゲームディレクターのAlec Dawson氏

Alec Dawson氏は、今回のヒーロー追加において「5人全員のプレイスタイルを明確に分けること」を最優先したと語る。

「ドミナ」は、機動力ではなく、遠距離からの空間支配に特化したタンクで、「エムレ」はライフルを主軸とした、FPSプレイヤーにとって親しみやすいデザインのDPS。そして「アンラン」は背後へ飛び込む、攻撃的でハイリスク・ハイリターンなDPSとなっている。また、サポート面では「ジェットパック・キャット」は常時飛行で味方の位置を変える戦略的サポートで、「ミズキ」はダメージとヒールのハイブリッドで、前線に留まりオーラを管理する特殊な立ち回りが求められるサポート役だ。

Alec氏は「既存のプレイスタイルに足りなかった選択肢を補い、誰か一人は必ずプレイヤーに刺さるラインナップにした」と自信を見せる。

また、コミュニティで長年伝説となっていたジェットパック・キャットの参戦について、リードヒーロープロデューサーのKenny氏は、その意外な背景を明かす。

「猫のコンセプトアートは、もう7~8年も開発チームの壁に飾られていたんです。今回、5人のヒーローを出すと決まった時、猫を入れることに議論の余地はありませんでした。満場一致でしたよ」

単なるネタキャラではなく、トレーサーのような「機動力による攪乱」と「味方を運ぶ」という独創的なアビリティが組み込まれており、プレイテストでは「猫がバスティオンを運び、そこにマーシーがぶら下がって空から掃射する」という、開発者も戦慄する凶悪なコンボも生まれたという。

また、競技シーン(eスポーツ)への影響について、Scott氏は「世界最高峰のプロプレイヤーたちが編み出す新戦術が楽しみでならない」と語る。

特にアンランについては、ゲンジのようにスキルの天井が極めて高いヒーローであるとし、「Proper選手のようなトッププレイヤーが彼女を操った時、一体どんな光景が見られるのか」と期待を寄せる。また、ミズキの高度な連携や、ジェットパック・キャットによる空中ダイブ構成など、プロの舞台でしか見られない「異次元のプレイ」が生まれることを確信していると語った。

大規模なアップデートによる複雑化への懸念に対し、Alec氏は「今こそが復帰や新規参入に最適なタイミングだ」と断言する。

これほど多くの新要素が追加される時期は、ベテランプレイヤーも含めた全員が横一線で「学び直す」タイミングであり、固定されたメタが存在しない「発見の楽しさ」があるからだという。Alec氏は「日本の情熱的なコミュニティが、この新しい5人をどう使いこなしてくれるのか、今からワクワクしている」と締めくくった。

1年をかけて紡がれる広大なナラティブ

オーディオ&テクニカルディレクターのScott Lawson氏、リードナラティブデザイナーMiranda Moyer氏
オーディオ&テクニカルディレクターのScott Lawson氏、リードナラティブデザイナーMiranda Moyer氏

これまでの「オーバーウォッチ」は、キャラクターごとの断片的な物語を繋ぎ合わせてきたが、今年からは6つのシーズンを通して一つの大きな物語を紡ぐ「起承転結」のあるアプローチを採用しているという。

ナラティブ・リードのMiranda Moyer氏は、この変化を「非常に大きな違い」と表現した。全ての新ヒーローが年間のストーリーに深く組み込まれており、俯瞰的な視点で計画を立てることで、既存のキャラクターと新ヒーローをより効果的に物語へ登場させることが可能になったと語る。

「ゲーム内イベントと物語のどちらが先に作られるのか」という問いに対し、Scott Lawson氏とMiranda氏は、チーム間の密接なコラボレーションに言及した。

かつてのように一方が一方を定義するのではなく、ナラティブチームが提示した「タロン側の動機(Vendetta)」といった枠組みをベースに、イベントチームが具体的な内容を作り上げるなど、非常に協力的なプロセスが取られている。Scott氏によれば、チームは少なくとも週に一度は正式なミーティングを行い、実際にはその何千倍もの対話を通じて、物語、デザイン、オーディオが一貫した方向性を向くように調整を続けているという。

ジェットパック・キャットの制作において、Scott氏はオーディオ・ディレクターとして異例の「猫の執筆」を担当した。

声優のJennifer Hale氏は、わずか2時間のセッションで700行を超える「鳴き声」を収録したという。脚本には通常の台詞ではなく、“可愛い”ニャー、“怒った”ニャー、“イライラした”ニャーといった感情表現が並んだ。Scott氏は、収録した音声を分析し、攻撃時やダメージを受けた時のエモートとして細かく編集・実装していく作業は「魔法のような瞬間だった」と振り返り、言葉を話さないキャラクターにオーディオを通じて感情を乗せる挑戦の楽しさを語る。

コミュニティで飛び交う様々な考察や予想について、Miranda氏は「非常に刺激を受けている」と語る。開発はかなり先まで計画されているため、ファンの意見を即座に反映させることは難しいものの、ゲーム内に仕込まれた古いイースターエッグからユーザーが開発と同じ結論に辿り着いた時などは、「よく分かったね」と嬉しくなるという。

Miranda氏は「コンテンツの不足を感じさせることなく、常に新しい物語に触れられる状況を作っていきたい」と、ファンに向けて期待を寄せた。

魂を吹き込む「声」のドラマ

声優のKerem氏、Fareeha氏、シニア・ナラティブデザイナーのJoshi Zhang氏
声優のKerem氏、Fareeha氏、シニア・ナラティブデザイナーのJoshi Zhang氏

シニア・ナラティブデザイナーのJoshi Zhang氏、アンラン役のFareeha氏、エムレ役のKerem氏からは、キャラクターの魂とも言える「声」と「物語」の裏側が語られた。

Kerem氏は、エムレが「Overwatch Declassified」で初めて明かされて以来、8年間にわたり一ファンとして彼を追い続けてきたと明かす。ナラティブチームが描き出したエムレの物語は、彼自身の予想を遥かに超えるユニークなものであり、演技にはトルコ系アメリカ人としての自身のバックグラウンドを色濃く反映させたという。特にトルコの昼ドラに見られる、自信に満ちた「お兄ちゃん」的な振る舞いや、どこか示唆に富んだ口調を意識しており、鬱々とした状況にない時のエムレの魅力を引き出している。

また、10年間殺人マシンとして自由を奪われていたエムレが、再び人間としての言葉を取り戻す瞬間の演技は、一発撮りで収録された魂の籠もったシーンになったと振り返る。彼のお気に入りのセリフは、亡き祖父がよく口にしていた「お前が俺のじいちゃんか、俺がお前のじいちゃんか?」という冗談をベースにした格言で、若いヒーローの活躍を認める言葉としてゲーム内に刻まれている。

アンラン役のFareeha氏は、優れた声優であるためには「感情に満ちた人生を送ること」が重要だと語り、アンランの役作りに自身の武術やクラシック音楽の経験を投影した。家族の期待に応えるために自分を追い込むアンランの苦悩や、ハイリスク・ハイリターンな戦場での責任感は、特にリスポーン時の「重み」のあるセリフに込められている。

弟のウーヤンに対しては、彼の可能性を信じているからこそ厳しく当たる「ツンデレ」的な側面があり、自分が親の期待を一身に背負っている分、自由な弟に嫉妬しながらも、その自由を守りたいという複雑な姉心を抱いている。彼女が個人的に気に入っているセリフは、多くのアジア系家庭で共感を呼ぶであろう「時間の無駄はやめなさい」や、キリコに対して「一人っ子になりたいといつも思っている」と言いつつ、ウーヤンがいない時には「彼を失いたくない」と本音を漏らす掛け合いだという。

制作全体を統括するJoshi Zhang氏は、かつてないペースで進むヒーロー開発において、文化的なリサーチとリアリティの追求を最優先し、チーム内での即座なフィードバックによって課題を解決してきたと語る。今回欠席となったミズキ役のJulian氏のディレクションにおいては、ヤクザの家系に生まれた彼の荒々しさを表現するため、「チンピラ・エネルギー」をリクエストしたというエピソードを披露した。

ビジュアルが語る世界観

リード・キャラクターコンセプトアーティストのDaryl Tan氏、アソシエイトアートディレクターのPeter Lee氏、キャラクターアーティストのMelissa Kelly氏
リード・キャラクターコンセプトアーティストのDaryl Tan氏、アソシエイトアートディレクターのPeter Lee氏、キャラクターアーティストのMelissa Kelly氏

リード・キャラクターコンセプトアーティストのDaryl Tan氏、アソシエイトアートディレクターのPeter Lee氏、キャラクターアーティストのMelissa Kelly氏の3名は、新ヒーローたちのビジュアル設計や、異例の「サンリオ」コラボレーションの舞台裏について詳細を語った。

リード・キャラクターコンセプトアーティストのDaryl氏は、新ヒーローであるドミナのデザインにシンメトラとの共通点を感じるという指摘に対し、それが明確な意図に基づいたものであることを明かした。ドミナはシンメトラが所属するビシカル社の副社長という設定であり、彼女が使用する機械の腕には、シンメトラと同じ「ハードライト・テクノロジー」が採用されている。そのため、バリアのビジュアルを含めた両者のスキルセットには、可能な限り共通の技術的モチーフが取り入れられている。

アートディレクターのPeter氏は、今回一挙に登場する5人のヒーローを差別化するためのアートコンセプトを紹介した。ミズキは「帽子のヒーロー」、アンランは「現代の炎の魔術師」、ドミナは「常にアシスタント(機械の腕)を伴うCEO」、そしてエムレは「AIに取り憑かれた問題多き兵士」という核となるイメージがあると語る。

日本人ヒーローであるミズキの武器に鎖鎌(くさりがま)が選ばれた経緯について、Daryl氏は源氏の刀やキリコのクナイと被らない、忍者としてのユニークな個性を求めた結果だと説明した。開発初期にはショットガンを持たせる案もあったものの、最終的に「信仰心の強い忍者」というコンセプトに合わせて鎖鎌が採用されたとのこと。この武器の独創的な点として、鎖がミズキの両腕や肩の内部を通って装備されており、アビリティ使用時には左腕から火花を散らしながら鎖が繰り出されるという、細かなVFXのこだわりが詰め込まれている。

「サンリオ」との異色のコラボレーションについて、Daryl氏はFPSという暴力性の伴うジャンルと、サンリオの持つ「キュートで柔らかい」世界観をいかに融合させるかが最大の課題であったと振り返った。

この架け橋となったのは「オーバーウォッチ」が掲げる「明るく楽観的な未来」というメッセージであり、サンリオ側もこのポジティブな姿勢を非常に気に入ったことが、長期にわたる交渉の末に実現へと繋がった。

アートチームは武器に至るまで形状を丸く、キュートに再設計し、ウィドウメイカーのライフルを傘のようなシルエットにして視認性を保ちつつ可愛さを追求した。サウンドや物理挙動も「ぷるぷる」とした可愛らしさを重視し、サンリオ側も最終的なデザインに太鼓判を押したという。

10年にわたる開発の歩みの中で、チームは常に「このヒーローのファンタジーは何か?」という自問自答を繰り返してきたそう。この問いが揺らぐと、キャラクターの魅力がプレイヤーに伝わらなくなってしまうからだ。今回の新シーズンにおけるエンジンアップデートも、このファンタジーの実現に直接寄与している。アンランの衣装には新しい布シミュレーション技術が適用され、彼女が移動する際に、まるで揺らめく炎のように衣装が滑らかに動き、彼女の「炎の魔術師」としてのイメージを際立たせている。また、影の描画システムが向上したことで、これまで困難だった帽子の影などが正しく落ちるようになり、世界観の没入感とリアリティがさらに深まった。

ユーザー体験の劇的な進化

UIアーティストのSadie Boyd氏、UI/UXリードのJay Bacuetes氏、ゲームプロデューサーのBrian Saucedo氏
UIアーティストのSadie Boyd氏、UI/UXリードのJay Bacuetes氏、ゲームプロデューサーのBrian Saucedo氏

「オーバーウォッチ」の新シーズン開始に伴い、ゲームの顔とも言えるホーム画面やユーザーインターフェース(UI)が劇的な進化を遂げた。この大規模な刷新の舞台裏について、リードUX/UIデザイナーのJay Bacuetes氏、ゲームプロデューサーのBrian Saucedo氏、そしてUIアーティストのSadie Boyd氏が、その設計思想とプレイヤーへの想いを語った。

リードUX/UIデザイナーのJay氏は、オーバーウォッチ1から2への移行時を上回るほどの劇的な変化をこのタイミングで行った理由について、今シーズンが掲げる「ヒーロー」と「物語」を軸としたビジョンを現実のものにするためだったと明かした。開発チームには10年間の運営の中で温めてきた「いつかやりたいこと」のバックログが膨大に存在しており、今シーズンの目的とこれらのアイデアが合致したことで、長年の悲願だったUIの全面改修に踏み切ったという。

その象徴的な要素の一つが、自身の選択したヒーローが現在のスキンを纏って3Dで登場する「ライブロビー」である。これにより、ゲームがより躍動感を持って感じられるようになり、配信者やプレイヤーが自慢のスキンを見せつけられる社交的な場としての役割も強化された。さらにシーズン2からは、試合後の活躍を称え合う投票画面も3Dへとアップグレードされ、キャラクターたちが踊りながら入場したり、MVPが特別なダンスを披露したりといった、よりヒーロー中心の華やかな演出が予定されている。

「スタジアム」モードにおいても、UIの刷新は徹底されている。新要素「ヒーロービルダー」では、初心者でもビルド選択に迷わないよう、ヒーローに合わせたおすすめ設定をシンプルに提示するインターフェースを導入した。UIアーティストのSadie Boyd氏は、アイコンデザインの一新についてもこだわりを語っており、例えば「食料配分」のアイコンをマカロニ&チーズの容器にするなど、オーバーウォッチの世界観に基づいた遊び心を取り入れつつ、ステータスごとに色分け(HPは黄色、シールドは青など)を行うことで、瞬時に情報を理解できる判別性を追求している。

UXの最適化については、コミュニティからの切実な要望であった「メニュー画面で戻るボタンを何度も押さなければならない不便さ」がようやく解消された。また、ログイン時に溢れかえる告知バナーを整理し、ヒーローの調整や新イベントなどの重要情報だけを蓄積して確認できる「通知ハブ」を新設することで、必要な情報を見逃さない仕組みを構築した。また、試合後の情報過多を解消するために画面をタブ化し、ランク進行やヒーローの熟練度など、見たい情報へ最短距離でアクセスできるように改善された。

一方で、「全ロール選択(フレックス)」時にタンクばかりに割り振られる現状についても、開発チームは数ヶ月にわたり深い議論を続けている。まだシーズン1での実装には至っていないが、理想的な着地地点を求めて現在進行形で話し合われているという。

インタビューの最後には、この10年間で録音されながらもボツになっていた音声データを活用した「称賛(Praise)」ボイス機能の追加も明かされた。これは、コミュホイールやキーバインドから、味方の良いプレイをポジティブに称え合える非常にシンプルな機能だが、制作したSadie氏は「オーバーウォッチに漂うポジティブなエネルギーを象徴する、個人的にもお気に入りの機能だ」と締めくくった。

今回の一連のインタビューを通じて浮き彫りになったのは、開発チームが抱くヒーローへの深い愛情と、プレイヤーの没入感を何よりも優先する揺るぎない姿勢だ。

5人の新ヒーローの同時追加やUIの全面刷新は、単なる機能のアップデートではない。それは、10年来のベテランプレイヤーから初めて戦場に足を踏み入れる新規プレイヤーまでが、同じスタートラインに立ち、新たな楽しさを発見できる体験なのだ。

※画面は開発中のものです。

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2026-03-14 04:52:53