デジタルハリウッド大学は、11月23日から24日にかけて「PlayStation Mobile GameJam 2013 Winter」を開催する。初日となる11月23日には、開発テーマの発表や中間報告での作品発表などが行われたので、その模様をお届けする。
「PlayStation Mobile GameJam 2013 Summer」は、事前応募による参加者たちで即席チームを組み、PlayStation Mobile向けのゲームを約30時間かけて開発するイベント。今年の7月にも「2013 Sumeer」として同様のイベントが行われ、2日間のレポート(1日目、2日目)をお届けしているので、すでに内容を知っている人もいるだろう。
GameJamそのものについては、CEDEC 2013で講演のひとつとして取り上げられるほど実施内容もさまざまで、それぞれにメリットや課題が存在するが、今回は7月に開催されたものとほぼ同じ流れでの進行となっていた。
開催スケジュール
11月23日(土)
10:00 主催挨拶、チーム編成、テーマ発表
10:45 ゲーム制作スタート
18:00 中間発表(ゲームコンセプト発表)11月24日(日)
11:00 進捗報告会
16:00 ゲーム制作終了 完成発表、審査、表彰
関係者の顔ぶれもあまり変わらず、主催者を代表してデジタルハリウッド大学の講師を務める香田氏をはじめ、ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジア(SCEJA)からPlayStation MobileのSDKに関わるメンバーたちがイベントの進行などを担当。
ただし今回はゲストとして、アクワイアの遠藤琢磨氏、ノイジークロークの坂本秀城氏、ビサイドの南冶一徳氏、ムームーの森川幸人氏と、各社の代表が集まった“社長チーム”も参加していた。
さて、肝心の制作テーマだが、発表されたのは「スタート」という非常にシンプルなもの。香田氏はこのテーマにこだわりすぎず、何とでもとらえて構わないと話していたが、参加者たちの反応を見ると、簡単すぎて難しいという印象を持った人が多かったように思う。
このテーマを元に、まずは18時に予定されている中間発表に向けて企画立案、進行具合によってはゲームの原型まで作ったり、発表用資料を用意していくこととなる。
チーム編成も行われ、実際に作業に入った班を順に見ていくと、やはり企画の考え方から異なっているのが興味をそそられた。紙にスタートから連想する言葉を書き連ねていくオーソドックスな方法をはじめ、夏にも参加した人は前回こんな企画があったと話をしていたり、交流も踏まえていろんな作品を元に“スタート”と関連するアイディアを出し合ったりとさまざまだった。
紙にアイディアをまとめるだけでなく、アイディアを書いた紙をちぎってバラバラにしているチームも。 | |
前回の終了間際を見ているとまだまだ序の口といった感じだが、 机が資料や機材、飲食物で散らかってきている様子を前にすると、不思議とゲーム開発現場という印象を受ける。 |
そのようにして考えられた企画はどんなものがあるのか、中間発表でそれらが披露されたので、1日目のレポートの締めくくりとして各チームの作品を紹介していこう。
中間発表I
Aチーム
Aチームはメンバーに外国人が2人いることから思い浮かんだというグローバルをはじめ、カオスやフレンドシップをコンセプトに掲げていた。大元のテーマであるスタートは、フレンドシップの始まりの部分が関わっている。ゲームのタイトルは「カオスフレンド(仮)」で、ジャンルはカオスアクションゲーム。
タッチによる操作がメインだが、十字ボタンでキャラクターを動かせるようで、プレイヤーの後ろをついてくるフレンドと共に、ステージのギミックや障害物を超えてゴールを目指すものになるようだ。発表内容は簡潔で分かりやすく、あとは本作の見どころがどのように仕上がるのかが注目ポイントとなるだろう。
Bチーム
Bチームは「スタートしないよ」というタイトルで、怠け者の魔王がゲームをスタートさせないために、戦いを避けていくゲームを考案。システム的にはタイミングよくボタンを押してくことがメインのようで、ゲームの中身まではできていなかったが、企画兼グラフィックデザイナーによる魔王のラフイラストが披露された。
また、ゲームとは直接関係ないものの、しきりにプレゼン資料に開発中であることが書かれていたり、チームのスローガンとして挫折禁止を掲げているなど、所々にネタを織り込み、笑いを誘っていたチームでもある。
Cチーム
Cチームは、スタートからレースのスタートをイメージし、スタートダッシュするゲームを企画。しかし誰でも思いつく内容だと考え、ゲームの仕様面でのアイディアで「ボタン連打で力を溜める」を思いつき、そこから加速度センサーを使おう、本体を振って力を溜めてタイミングよくスタートしようと、発想を飛躍させていったようだ。
そして“振って力を溜める”ところからコーラを連想し、PS Vita本体を振ってコーラの瓶を飛ばし、標的に当てるゲームを作ることにしたという。当初のレースとは関係なくなってしまったが、なかなか面白いアイディアだ。
Dチーム
Dチームの「Life Born(仮)」は、スタートを地球の原点と捉え、紀元前の地球で微生物を冒険へと旅立たせるゲームに。具体的な内容は、ジャイロ機能を使った縦スクロールとなっており、数多くの仲間と共にゴールを目指すというもの。人類の未来がプレイヤーにかかっているというかなり壮大なテーマとなっており、現時点でストーリーまで用意されていた。
Eチーム
Eチームのタイトルは「神々の遊び(仮)」。Dチームと同じく“スタート”から想像や破壊、ビッグバンといった規模の大きなものを思いついたようだが、このチームはGameJamだからできることやPS Vitaならではの遊びを取り入れている。そしてマルチプレイのゲームであること、ビッグバンを自分たちで起こすことなどの内容をもとにプレイイメージを作成。
しかし、プレイスタイルが前回の参加者が作った作品とかぶってしまう部分があったため、できることなら背面パッドも活かし、3人で遊べるようにしたいと、実現できるかをプログラマーがリサーチ中とのこと。
Fチーム
Fチームは自己紹介を丁寧に行い、自分たちの得意なことを活かせるものを、と企画を考え「ワンボタンJK(仮)」を考案。一日の始まりをテーマに、女子高生の忙しさを詰め込んだゲームにするという。身だしなみから何まで女子高生の大変さを実現すると複雑になりそうだったため、ワンボタンで遊べるゲームを目指しているようだ。
チーム内にはドット絵が描けるデザイナーがおり、すでに主人公の女子高生がかなりのバリエーション用意されていた。ドット絵のキャラクターが移動する程度ではあるが、この後に控えたゲストチームをのぞき、唯一実機で動かせる状態のものも披露された。あくまでこの時点ではあるが、ゲームに使うための素材やプレゼン資料なども含め、一番まとまっていたように思う。
ゲストチーム
お待ちかね、ゲスト参戦の社長チームは、坂本氏がプレゼンを担当。「こんな大変なことを毎日やっているのかと思い、社員に謝りたい(笑)」と出だしから笑いを取りに行くが、ゲームタイトルの「STAR Tou!」も「スター」と「10(とう)」というギャグから名付けられたものとなっていた。
しかし、さすがにプロであるため、ゲーム内容は「楽器を鳴らしてフィールドに隠されている星を10個集める」と、実際にありそうだと思わせるものになっていた。仕様も、音を鳴らすと波紋のような「リング」が広がり、星が埋まっている場所があるとそこでリングがストップ、また別の場所で楽器を鳴らし、今度はどこでリングが止まるかを確認して星が埋まっている場所を絞っていくという、かなり現実的なものに。
フィールドに隠されている楽器を拾うことで楽器もパワーアップし、リングの速度や届く範囲が変わるなど、細かいとこまで考えられていたのは驚きだ。実機上でもだいぶ形になっており、完成が楽しみに思えるのは「さすが社長たち」といったところか。
SCEJAチーム
中間発表のトリを飾るのはSCEJAチーム。前回の作品「THE 指摘」を作った際は2人だったが、今回は5人が参加と、かなり力を入れている様子。企画は社長チームと同じようにギャグから思いついたもので、ミーティング自体は約3分で終わらせ、その分を制作に時間を費やしたという。
発表資料に2度も「本気」と盛り込んでいることから、本当に本気なのだと思うが、肝心のゲーム内容については「制作順調」というにとどめ、詳細は秘密に。
ちなみに筆者が会場内を取材している際、SCEJAチームの近くを通りかかったら「ジャガイモは爆発させましょう」といった声が聞えたことを覚えている。どんな話の流れでそうなったのか、ジャガイモが爆発する内容は没にならずに済んでいるのか、気になることは多いが、今回はどんなゲームを出してくるのか楽しみにしておこう。