1万本以上のゲームを所持しているゲームコレクターの酒缶さんが、ゲームアーカイブスで配信されているタイトルに携わった方々にインタビューを行う連載企画「ゲームコレクター・酒缶のリコレクションアーカイブス」。第7回目は、「だんじょん商店会」に携わった藤浪智之氏と佐々木亮氏へのインタビューをお届けします。

プレイステーションのタイトルの中でもそこそこ手に入れにくかったこともあり、昨年、ゲームアーカイブスの配信が始まった頃から、このタイトルを何らかの方法で情報発信したいと思っていたのですが、開発者の方へのインタビューを出来る段取りができたため、ゲームアーカイブス版を配信しているガンホー・オンライン・エンターテイメントさんの会議室で取材をさせていただきました。
今回のリコレクター:藤浪智之氏&佐々木亮氏
藤浪智之氏:アナログゲームを中心に活動しているゲームデザイナー。「だんじょん商店会」では、世界観、シナリオ、ゲームデザインを担当。
佐々木亮氏:漫画家兼イラストレーター。「だんじょん商店会」では、キャラクターデザイン、イラストを担当。
酒缶:今回は「だんじょん商店会」の藤浪智之さんと佐々木亮さんにお話を伺っていきます。実は、複数の方にインタビューをするのは今回が初めてなので、話が飛び飛びにならないように気をつけながら進めていきます。
「だんじょん商店会 ~伝説の剣はじめました~」
1998年10月29日に講談社がプレイステーション向けに発売したロールプレイングゲーム。道具の扱いに精通した魔女の女の子になり、町の人と一緒にダンジョンを冒険して、商品を調達しながら、道具屋を経営していく。どのお得意さまの手助けをするかによって、エンディングが変わる。2011年10月26日よりゲームアーカイブスで配信されている。
ゲームアーカイブス版
http://www.jp.playstation.com/software/title/jp0747npjj00609_000000000000000001.html
酒缶:佐々木さんは子どもの頃は弟さんとゲームで遊んでいたんですか?
佐々木氏(以下、敬称略):遊びましたね。テーブルトークRPGの存在を知ったのも、弟が雑誌とか買っていたからなんですよ。ゲームって面白いぞ、という時代でした。
酒缶:ゲームについては弟さんからの影響をかなり受けていると思うんですけど、一方で、ゲーム以外でご自身で何かはまっていたことはありました?
佐々木:その頃って何だろう?
藤浪氏(以下、敬称略):アニメとか漫画じゃない?
佐々木:アニメとか漫画は好きで、小学生の頃からクラスで漫画を描く子でしたけど、漫研があることを理由に高校を決めたので、高校の頃からそっちの方に来ちゃったんだと思います。
酒缶:それがそのまま今のお仕事に繋がっていますか?
佐々木:そうですね。グラフィックデザインの専門学校に通って、卒業する頃に、「ゲーム関係のお仕事をください」と双葉社さんに持ち込みをしたんですよ。そしたら、キャラクターの絵を描いていたのがよかったのか、「うちでゲームをネタにした4コマ雑誌を出すことになったので描いてよ」と言われて、いきなり表紙を描かせていただいたのが、双葉社さんの「ファミコン4コマまんが王国」です。
酒缶:いきなり、フリーで仕事を始めているんですね。すごいですね。その一方で、藤浪さんは、ゲームをご自身で作られていた中でシミュレーションゲームにはまっていったようですが。
藤浪:はい。私には3歳違う兄がいまして、その兄が高校生の時「シミュレーションゲームというものがあるらしい」と。当時日本に入ってきたボードゲームSLGですね。教えてくれたのは兄なんですよ。最初は、詳細も知らずに買ってきました。
酒缶:(笑)。
藤浪:それで兄と二人でゲームをはじめたんですが、当時、全然勝てませんでした。その後兄のほうは大きくハマったりはしなかったですが、私はシミュレーションゲームの世界にはまりこんでしまいまして、専門誌も探して買い始めたんですよ。そして「タクティクス」4号の海戦ゲーム特集で、鈴木銀一郎さんの記事を見て、ゲームデザイナーというモノがこの世にあることを知ったんです。「ゲームというモノは思想を持って作るんだ」ということを初めて語っていて、ゲームというモノを作る人がいて、思想があって、ゲームデザインという過程があることを初めて知ったんです。
酒缶:それが元でゲームデザイナーを目指したんですか?
藤浪:ゲームデザイナーってカッコイイな、と思いましたけど、ゲームデザイナーになろうと思っていたわけではありません。憧れはあったんですけど、自分がなるとは思っていなかったです。その後、鈴木銀一郎さんの会社(翔企画)にゲーム雑誌の編集者として入ることになるのですが、当時、翔企画から出版された「ナイトメア・ハンター」というテーブルトークRPGがありました。この開発に深く関わったことが大きな経験になり、これがゲームデザイン系の仕事を始めるきっかけでした。編集者という立場としては、やり過ぎてしまったとは思いますが。
酒缶:編集の仕事としてはよくなかったけど、ゲームデザイナーというスタンスだといいお勉強になったということですよね。
藤浪:翔企画を辞めてフリーになったときに、鈴木銀一郎さんが「フリーになったら仕事がいるだろう」と紹介してくださったのがアスク講談社さんの「ネクロスの要塞」でした。その開発で現場の方々とも仲良くなりまして「今度はオリジナル企画を」と持ちこんだ結果が「百の世界の物語」です。システム開発自体は、アスク講談社さん内部の方々でしたが、コンセプトやイメージは、ボール紙などアナログな素材で実際ゲームボード等を作って伝えたりしました。
元々の発想はボードゲームなんですけど、アナログゲームというのは例えばシークレットな情報や複雑な数字計算は難しいんですよね。その部分をコンピュータの特性を活かしたものを作れば面白くなるのではないかという考えがありました。その後コンピュータゲームに表立って関わる機会はなく「だんじょん商店会」までブランクがあります。余談ですが「百の世界の物語」のアスク講談社さんと「だんじょん商店会」の講談社さんは直接の関係はなく、この二つのタイトルに関わることになったのは単純に偶然です(笑)。
酒缶:では、「だんじょん商店会」にどう繋がっていったか、その経緯について教えてください。
藤浪:当時雑誌記事のイラストの仕事をしたおり、担当編集さんが飲み会を企画してくれまして。記事の著者さんが御夫婦共にゲーム関係の仕事をしている方だったんですね。飲みの席で自分も好きな「風来のシレン」などの魅力を熱く語ったりしてたら、後日「ゲームの企画をやりませんか?」と誘っていただきまして。
そんな経緯もあって「シレン」のダンジョンに出てくる「商人」のほうが主人公のようなゲームはどうだろうと考えた企画が「だんじょん商店会」のプロトタイプでした。初期案では、ダンジョンの中をうろついて、モンスターを倒して、空き部屋を見つけて、そこを陣取って店を広げて、客が来なくなったら別の部屋に移動していくような…。
酒缶:ダンジョンだけのゲームだったんですか?
藤浪:そうです。そういうイメージが最初にあったんですよ。ただ、主人公は女の子で魔女にしましょう、とかそういう企画だったんです。でも、どうやらそれが受けたらしくて、企画が通っちゃって。
酒缶:(笑)いやいや。
藤浪:「ちゃんと実現できるものにせねば」と焦りまして(笑)。初期イメージは、ローグタイプの巨大なダンジョンの中で商売する、自由度の高いゲームだったんですが、これは素人目にも開発が大変だろうと思いました。幸い「ファンタジー世界でお店をやる」部分が面白がられ企画が通ったようなので、それを軸に、ゲーム内容を設計しなおしました。
ダンジョンと経営部分を分離して、全体で繋がったときに機能するようにしつつ、ダンジョン探索や経営パートなどの個々のパーツは、開発現場の人に説明しやすい、既存の技術で作れるようにしないとダメだろうと。それが、実際製品になった「だんじょん商店会」です。
佐々木:だから、ダンジョンパートとお店パートが分かれているんです。
藤浪:たとえば開発上の都合で、ダンジョン部分だけ別の開発会社が作ることになっても矛盾しないようにしようと考えていました。
酒缶:僕は「だんじょん商店会」というゲームを最初に見た時、お店をやって冒険もして、かなり面倒くさそうなゲームだと思ったんですけど、実際に遊んでみると、店とダンジョンがきっちりと分かれていてわかりやすく感じていたんですよ。これだけくっきりと分かれていると、遊び方もはっきりしますよね。
藤浪:どうしてこうなったかというと、自分で全部を作るわけじゃないことは経験上わかっていたので、パーツごとに分かれてちゃんと開発できるものにしないといけないという設計思想なんです。シームレスにして全部を融合した世界にしちゃうと、全部を把握したデザイナーがプログラムをしないと完成しないだろうと、仕様を考えながら思ったので。
酒缶:ゲームの企画の段階で、お二人で色々と話をして作っていったんですか?
藤浪:そうです。今日は、企画書を持ってきていて、これが一番最初の企画書です。
藤浪:キノトロープさんで関係者、主要メンバーが一堂に会して、こういうプロダクトを始めますよ、というキックオフミーティングがあって、その時のために作った資料です。これはその次に出した基本仕様書で、いわゆる普通の仕様書とは違って、こちらで思っているイメージを文章化しました、という仕様書です。
佐々木:こちらはコンピュータゲーム開発のプロという立場ではなかったので、最初はとにかくイメージ作りをして見て頂こうというアプローチを行ったわけです。
藤浪:一番最初の企画書の最初に、佐々木先生の描いたラフ画がありまして「ダンジョンの中で、ゴザみたいなものを広げてアイテムを並べ、露天商をやっている魔女」。それにキャッチコピーのように「伝説の剣、はじめました」と書き添えられたもので、これが「だんじょん商店会」の基本のイメージになったと思います。当初は3タイプの魔女がいて、どのキャラクターを選ぶかで、傾向が変わる構想でした。
佐々木:こちらはゲームの原画です。
酒缶:おー。
藤浪:これは実際に使われたものです。これはパッケージですね。アナログなんですけど。
佐々木:1回ボツだったので、2回目に描いたものです。
藤浪:実際にゲームで使うのは線画なので、線画と着色見本作って提出すると、開発会社の方でCGにしていました。
佐々木:差分もアナログで作っていました。
藤浪:アニメのセル時代の原画みたいなもので。
佐々木:ただ、馬鹿正直に作りましたね。こんなこともやってみたいというのを口で説明するだけだとわからなかったので、実際に描いて持っていったり、そういう作り方をしていました。開発側の方にも面白がっていただいたみたいで、私達が本当に出来なかったダンジョンの中のところとか、お店の中のシステムなんかはすごく工夫してくれて。
藤浪:カウンター側から見てお客が動いていくところは、当初の仕様にはなくて、ソフトハウスさん側のアイデアなんです。
酒缶:歩いて窓のところで止まったり、さっと消えて中に入ってきたりとか。
佐々木:そういう仕様を作ったので、原画を描いて下さいという話が後で来て、「それはすごい面白いからやりましょう」って。作って頂いたら、本当に面白くできていました。
藤浪:先ほど話したように、ソフト開発力に依存しない基本設計だったので、ある意味消極的というか、あんまり余計なことを仕様書に盛りこんでなかったんですね。例えばダンジョンの中でモンスターとも商売できるようになったのは、ソフトハウスさん側からの提案です。「このほうが面白いですよ」と。
佐々木:現場の人がもっと面白くしよう、もっと面白くしよう、とやってくれたのでラッキーでした。
藤浪:その意味で、図らずというと失礼ですが、開発現場の皆さんも、大変いい仕事をしてくださいました。当時、実際の開発の担当だったシエスタさんも、ソフトハウスを始めたばかりの若い方々で、いい作品を作ろうと頑張ってくださったようです。結果、とてもいい形になったと思います。
(インタビュー後編へ続く。後編は来週11月11日に掲載予定です)
●プロフィール
酒缶(さけかん)/ゲームコレクター
1万本以上のゲームソフトを所有するゲームコレクターをしつつ、フリーの立場でゲームの開発やライターなど、いろいろやりながらゲーム業界内にこっそり生息中。ニンテンドードリームにて「酒缶が訪う」連載中。最新作は3DSダウンロードソフトウェア「ダンジョンRPG ピクダン2」。
■公式サイト「酒缶のゲーム通信」
http://www.sakekan.com/■twitterアカウント
http://twitter.com/sakekangame■電子書籍「ゲームコレクター・酒缶のファミ友Re:コレクション1」
http://www.pubooks.jp/item/detail?id=386
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(C)藤浪智之/佐々木 亮
(C)講談社/キノトロープ
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