ソニー・コンピュータエンタテインメントが発表した「プレイステーション 4」(PS4)。まだ謎に包まれている仕様面が多いものの、周辺機器を含めたハードウェア面についてSCEワールドワイドスタジオのプレジデント・吉田修平氏に話を聞くことができたので、その内容をお届けする。

――PS4では中古タイトルは動作するのでしょうか?

吉田修平氏
吉田修平氏

吉田氏:動きます。例えばディスクで購入し、ほかの人のPS4にセットして動くかといわれれば動きますが、今は動くということだけをお伝えさせていただきます。

――PS3ではNVIDIAのグラフィックコアが使われていましたが、PS4ではAMDのAPU(Accelerated Processing Unit、CPUとGPUの機能を統合したもの)が使われています。こうしたアーキテクチャ変遷の理由を教えてください。

吉田氏:PS3に搭載しているCellはすごいものだと思いますし、「The Last of Us」のようなCellを使いこなしているタイトルもありますが、使いこなすことの難易度が高いという面もあります。それは今も同じで、PS3での開発に慣れてきているデベロッパーでもやりにくい部分が存在します。

最近のコンソール向けタイトルは開発規模も大きくなっていますし、サードパーティーさんからすると、マルチプラットフォームでの展開も当たり前になってきています。プレイステーションのプラットフォームにだけものすごく労力をかけて、特別なコーディングをしてもらうことは中々できませんし、それをする時間があるならゲームに力を入れていただくことの方が大事です。ですので、開発しやすい今の形に落ち着いたという感じになっています。

――会場で発表されたSCE Japan Studioの「KNACK」の開発期間はどれくらいでしょうか?

吉田氏:2、3年はやっていると思います。基本的にはマーク・サーニー氏によるゲームディレクション、ゲームデザインで進んでいます。彼は「クラッシュ・バンディクー」や「スパイロ・ザ・ドラゴン」といったタイトルを手がけていますが、PS VitaやPS4などハードの開発にも関わっています。そうしたハードの仕事をしつつも、もう一度自身がゲームディレクター的な立場でゲームを作りたいと話していたので、「ではJapan Studioでやりますか」ということになりました。Japan Studioは昔「サルゲッチュ」などを作っていた人たちもいますので、「KNACK」のようなゲームを好む人もいますし、そうしたメンバーの師匠のようなイメージで、我々のチームを率いて開発しています。

――Japan Studioなのにワールドワイドで受けそうなタイトルなのはそれが理由なのでしょうか?

吉田氏:はい、それは最初から狙っていますね。やはり日本の市場だけで開発コストをリクープ(回収)するのは難しいので、まず全世界で受けるものを考えます。

――開発期間は2、3年程とのことですが、はじめからPS4をターゲットに開発していたのでしょうか?

吉田氏:そうです。PS4をターゲットにしていましたので、初期のころはずっとPCでやっていました。マークもPS4の仕事ばかりに関わっていると、ゲームクリエイターとしての腕とでも言いますか、それが鈍ってしまうので、ゲームもあわせて作りたいといっていましたので、「KNACK」はワールドワイドスタジオと、PS4はSCEIと契約して、そこをうまく調整しながら開発に関わっています。

――コントローラーにタッチパネルを搭載した理由は何でしょうか?

吉田氏:タッチパネルだけでなく、ライトバーやシェアボタンもですが、我々ソフト側とハード側の双方でアイディアを出し合い、いろんなプロトタイプを作ってきました。PS Vitaでも同じことをやっていましたし、今回のデュアルショック4でもいろんな機能を付けては外しを繰り返してきました。今回の形に落ち着く前は、とっぴなデバイスを乗せ、それを使ったゲームを作ってみるといったテストも行っていました。

その中で、最近はやっぱりスマートフォンやタブレットが当たり前のように使われているので、タッチインターフェースはほしいという意見が出てきました。ではどのように搭載するかというところで、すごく大きなものを乗せてみたりもしたのですが、結局、スティックとボタンがすごくよく使えるものを作ろう、となったんです。デュアルショック3も悪くはありませんが、まだまだよくできると思い、そこに手を加えつつ、空いたスペースでタッチを入れられるなら入れてみようという順番ですね。

そのため、タッチパネルがあるからゲームが大きく変わるといったアプローチではなく、スワイプ操作などはスティックよりもタッチの方がやりやすいので、ゲームによって、場面によって、使いたいところで使いたければ使ってくださいという位置づけになっています。

――コントローラーのライトバーは、PlayStation Move(PS Move)と比べてどれくらいのことができるのでしょうか?

吉田氏:まずライトバーでは、色によってユーザーを認識することができます。どうせ色を付けるなら、カメラでトラッキングすればPS Moveのようなこともできるのではないかと考え、現在の形になっています。ライトバーで難しいことは、奥行きの測定ですね。PS Moveの先端についているスフィアはよくできた球体なので、大きさを測れば距離を正確に取ることができますが、デュアルショック4のライトバーではそれができません。

ただし、カメラに対してのX軸、Y軸の情報は正確に取ることができます。さらに、デュアルショック4にはPS Moveよりも性能がいいセンサーを入れていますので、少しだけ傾けるといった微妙な操作も可能です。

――PS4 Eyeは二眼なので、深度も取れるのではないでしょうか?

吉田氏:取れます。二眼の使い方のひとつとして、深度はメジャーですよね。例えばユーザーと背景を切り離して、背景だけを別のものに差し替えるといったこともできます。

――ではデュアルショック4ではPS Moveのようなことが“ほぼ”できると。

吉田氏:一番の大きな違いはZ軸の正確性です。やはり二眼よりもPS Moveのやり方の方が、正確に距離を測れるんです。あとは片手で使うもの、例えばラケットを振り回すといった使い方は物理的に無理ですよね。PS MoveにはPS Moveのよさがありますし、これ以上性能を高くしなくてもいいぐらいよくできていますので、PS Moveはそのまま使えるようにしました。

――ではPS Eyeと比べてPS4 Eyeのコストは高くなっているのでしょうか?

吉田氏:そうですね…PS Eyeにもマイクアレイは付いていますし、センサーは2つになっていますがセンサーのコストは下がっていますからね。多少はコストが上がっているかもしれませんが、驚くほど上がっていることはありません。我々は安い部品で性能を出す、というところに自信がありますので。

――PS4 Eyeは本体に付属するのでしょうか?

吉田氏:現状で言えるのは、本体にデュアルショック4と、それにつながるヘッドセットが同梱されるということぐらいです。カメラを含めてほかに何が入っていて、価格はいくらぐらいになるのかというのは、まだお話できません。

――ですがライトバーはカメラとそのためにあるのではないのでしょうか。

吉田氏:いえ、カメラがなくても使えるんです。先ほど話したように色を変えるでユーザーを特定したり、「Killzone:Shadow Fall」のデモでは撃たれるたびに緑から黄、赤へと色が変わっていく、インジケーターの役割としても活用できる場面を披露させていただきました。三原色のLEDが入っていますので、PS Moveのようにどの色でも表現できますし、カメラがなくても意味のあるものだと思っています。

――HDDの換装はPS3と同じ仕様になるのでしょうか?

吉田氏:そこはまだお答えできません。最近のPS3だとHDDの容量が500GBと大きく、「torne」を使ってテレビ番組を録画していない人であれば、容量がいっぱいになった人はそれほど多くないと思います。PS4はPS Vitaのように、基本的に全タイトルデジタル販売を行い、大きいタイトルはディスク販売もありという感じで考えていますので、容量がいっぱいになることは想定できますが、例えばサーバーからダウンロードしてインストールするための待ち時間が極力少なくできた場合、過去にインストールしたデータはどんどん消していってしまってもいいのでは、という考えも持っています。

――ソニーとして4K解像度をプッシュしていますが、PS4では4Kのゲーム開発は行えるのでしょうか?

吉田氏:PS4で4K出力はサポートしていますが、今のところは写真やカメラで取ったビデオといった、パーソナルコンテンツのサポートのみとなっていますので、ゲームには対応していません。今のPS3でも1080pは出ますが、720pを選んでいるゲームも少なくありません。デベロッパーと話をしていても、無理に解像度を上げるよりも、いろんなものを動かしたいというのがあるようです。

――PS3ではリモートプレイ対応タイトルは少なかったですが、今回のPS4では要件に入るのでしょうか?

吉田氏:今回は要件ではなくシステム側でやっていますので、何もしなくても動きます。カメラベースのダンスゲームなど、リモートプレイができないタイトルも出てくると思いますが、基本的にゲームはすべてリモートプレイで動くようになっています。

要件として我々がお願いしているのは、PS Vitaでつなげたとき、デュアルショックと比べるとボタンの数が足りないですし、逆に大きいタッチパネルがあったりするので、ユーザーが自分でキーアサインをしなくてもいいように、自動的にPS Vitaに合わせたボタン配置になるように、ということをお願いしています。

――ソニーブランドのスマートフォンでのリモートプレイに対応する予定はありますか?

吉田氏:その予定はありません。基本はPS4とPS Vitaという考えなので、そこを一番密にやっていきたいと思っています。これからのPS Vitaは、PS4のコントローラといいますか、ペリフェラル的な存在で、PS4で出たゲームが全部遊べるようにしていきたいですね。

――最後にPS4のアピールをお願いします。

吉田氏:PS4は、ただ単純にPS3よりもグラフィックがよくなったとか、そういったものではありません。もちろん、そこは要件としてすごく大事な部分なので、当然のように進めていきますが、PS4で一番大事に思って作っていることは、ゲームを遊ぶだけでなく、ゲームを遊んでいないときもゲームに触れられるところです。自分がやっていることをほかの人にすぐ伝えられますし、ゲームに触れていないときでも何が面白いのか、何がはやっているのかをすぐに見ることができます。

それからPS Vitaとの連携ですね。PS Vitaをお買い上げいただいた方は、すでに半分PS4をお買い上げいただいたことに近いです。PS Vitaユーザーの方にPS4を購入していただければ、さらにVitaライフが充実することも魅力として感じていただきたいと思います。

――ありがとうございました。

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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