「御簾納直彦ミステリィ 篝火ノ屋敷」第2回は、セガサターン用アドベンチャーゲーム「真説・夢見館 扉の奥に誰かが…」を紹介しまっせ! 賛否両論ありましたが、私は大好きな作品でした。「夢見館」シリーズが好きな方はぜひ読んでみて下さい。
Gamer読者の皆さん、こんにちは。ライターの御簾納です。連載1回目から2ヶ月以上が経過してしまいました。なんとなく「月一くらいで更新できたらいいなあ」と思っていたので、いきなりの不覚です…。しかしその間に溜めたネタを、これから一気に放出できればと思っております。
さて、それではさっそく始めていきましょう。今回は、1993年にセガから発売されたメガCD用ソフト「夢見館の物語」……ではなく、1994年にセガサターンで発売された続編「真説・夢見館 扉の奥に誰かが…(以下、真説・夢見館)」を紹介します。
「夢見館の物語」は、幻想的なグラフィックや悲哀に満ちたストーリー、登場人物のほとんどが蝶の姿をしていることなど、その斬新な設定がうけ、ユーザーから高い評価を得た名作です。そして時代は進み、次世代ゲーム機戦争の幕開けとなった1994年へ。
「夢見館の物語」の続編である「真説・夢見館」は、セガの6番目のハードとして開発された、セガサターンとほぼ同発タイトルとして登場しました。前作が好評だったため、前評判も高かった(はずの)同作。しかし、鳴り物入りで発売された「真説・夢見館」の評価は意外なものでした。「ストーリーが短すぎる」「謎解き要素がない」など、手厳しい意見が目立ってしまったのです。
確かに、レビューで指摘されていた部分は私も気になるところでした。しかしそんなマイナスを差っ引いても、私にとって「真説・夢見館」が良い意味で心に残る作品であることは間違いありません。当時の私は、人より多少ゲームが好きという程度の、なんちゃってゲーマーです。ゆえにその道程も、ファミコン→スーパーファミコンといった一般的なゲームユーザーが歩んできたもの。メガドライブやPCエンジンなどの通御用達のマシンも、親戚や友達の家で少しプレイしたことがある程度です。
そんな私が、スーパーファミコンの次にいきなりセガサターンを買ったものですから、さあ大変。グラフィックはメチャクチャ綺麗だし、キャラクターも喋りまくる! 今でこそキャラクターが喋るゲームは当たり前となっていますが、スーパーファミコンには、長いセリフを喋るゲームなんてほとんどありませんでしたから。「真説・夢見館」を初めてプレイした時は、「何これ? もうここまで来たら映画じゃん!」と、本気で思っていました。メガCDやCD-ROM2(PCエンジン)を先に買っていたら、「真説・夢見館」の衝撃は多少緩和されていたと思います。
そんなわけで、「真説・夢見館」は私にとって、これまでのゲーム観を変えるほどの作品だったのです。ちなみに、なぜライトユーザーの域から出ない私がセガサターンを買うという大冒険に出たのかというと、きっかけは3D格闘ゲームの始祖である「バーチャファイター」です。
当時、ゲーム業界に衝撃を与えた、あの「バーチャファイター」が家でできる! というニュースは、ライトユーザーであった私が、“ライト”の殻を破り“マニア”へと孵化するきっかけになった、とても衝撃的な事件でした。セガサターンの発売日は1994年11月22日なので、「これは、どうしても俺に必要なんだ!」と親に懇願し、クリスマスを利用して買ってもらいました。
もちろん最初に買ったのは「バーチャファイター」だったのですが、当時のセガサターン専門誌を見ていたら、「真説・夢見館」「クロックワークナイト」「ワンチャイコネクション」など、興味を惹かれるタイトルがたくさん並んでいるではありませんか。実写ゲームが大好きだった私は、次に「ワンチャイコネクション」を買おうと思っていたのですが、「真説・夢見館」も同じくらい興味があったので、悩み抜いた末に「真説・夢見館」を選びました(その後すぐ、「ワンチャイコネクション」も買いましたが)。
不満点も多いが、それでも俺は「真説・夢見館」が好きだ!
「真説・夢見館」は、主人公(ジュン)を操作しながらストーリーを進めていく一人称視点タイプのアドベンチャーゲームで、バーチャルシネマとも呼ばれているジャンルの作品です。この手法は、「夢見館の物語」を始め、「RAMPO」や「月花霧幻譚~TORICO~」といった作品にも使われており、当時のアドベンチャーゲームの手法としては、比較的オーソドックスと言えると思います。
また、インタラクティブ・シネマは映像がメインのジャンルなので、ゲーム性こそ希薄ですが、その分、世界観に凝っている作品が多かったのも特徴です。
さて、肝心の「真説・夢見館」ですが、設定や操作方法は、前作「夢見館の物語」とほぼ一緒(ストーリーは違います)。現世に絶望し、すべてを捨て去った者だけが入れるという夢見館。
ゲームは、館を探索しながら「赤い満月」の謎を解き明かすのが目的です。操作方法は至ってシンプル。方向キーで移動し、気になる部分を調べるだけなので、難しい操作は一切要求されません。
また本作を語る上で、「館の住人」の存在を無視することは許されないでしょう。先にも述べた通り、「夢見館」とは、すべてを捨てた者だけが入ることを許される場所。人間の姿であることすら許されない。であるならば、何の姿をしているのか。答えは「蝶」です。そう、館の住人は皆、蝶の姿をしているのです。登場人物がほぼ全て蝶というのも、なんとも大胆な発想ですが、この設定もユーザーから支持される要因の1つではないかと思います。
館の住人は、今でこそ蝶の姿をしているものの、昔は人間だったため、その個性もさまざまです。好奇心旺盛な好青年で、ゲームではジュンのサポート役を務めるマイク。古くからの住人で、館の管理を司る長老。元冒険家で、威風堂々とした立ち振る舞いのレイモンド。タロットカードを使った占いが得意の古株、ジョゼ。館の情報的な存在で、がめつい性格のネズミ。明るく無邪気な性格で、イタズラ好きの一面もある少女、キャシー。人間の頃は犯罪を繰り返し、蝶となった今でも攻撃的な面を持つダニー。人間嫌いで警戒心の強いショーンなどなど。
言い忘れてましたが、本作は住人との会話において、ボタン入力で自分の感情を伝えることが可能です。肯定ならAボタン、否定ならBボタン、何も答えないなら放置。これらの操作で、住人たちと上手くコンタクトを取っていくことが、本作のキモなのです。
ちなみに会話中は、住人が人間だった頃の顔がイメージとして現れるのですが、実はこれが、賛否両論の嵐を巻き起こしました(否がほとんどだと思います)。前作「夢見館の物語」では住人の顔は表示されなかったので、「人間の頃はどんな顔だったんだろう」と想像する楽しみがあったのですが、本作は顔がバッチリ表示されるので、想像する余地はありません。しかも首だけが表示されるので、まるで生首みたいでなかなか不気味です。
私は「真説・夢見館」の後に「夢見館の物語」をプレイしたクチなのですが、「これに関しては、前作のほうがいいな」と思ってしまいました。加えて、ユーザーレビューで指摘されていたストーリーの短さも、やはり気になりました。ハードとほぼ同発のタイトルだったので、開発期間の問題も大きかったのではないかと推測しますが、もうちょっとプレイしたかったというのが本音です(このフィードバックは、後に発売される「RAMPO」や「月花霧幻譚~TORICO~」などに活かされていきます)。
ただ、本作が私のゲーム観に与えた影響と言うのはやはり大きく、今でもセガサターンを引っ張り出してプレイするくらい好きな作品であることは間違いありません。偉大なる前作「夢見館の物語」に隠れてしまった感の否めない「真説・夢見館」ですが、私のような奇特な人がいることを願いつつ、今回はここまでとしましょう。それでは!