ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアが2013年10月17日に発売を予定しているPS3用ソフト「BEYOND:Two Souls」。ここでは、ディレクターを務めるDavid Cage氏へのインタビューをお届けする。

不思議な能力を持ったジョディ・ホームズの数奇な運命を辿るPS3用アドベンチャーゲーム「BEYOND: Two Souls」。東京ゲームショウ2013でもプレイアブル出展されている本作について、ディレクターを務めるDavid Cage氏にお話しを伺った。

――完成を迎えた感想をお聞かせ下さい。

David氏:とてもチャレンジングなプロジェクトでした。長い期間かけて制作してきたこともあり、今は解放された気分になっているとともにプレイヤーの方がどのように感じるのかが不安でもあります。

――東京ゲームショウ2013でプレイアブル出展されますがどのような点に注目してほしいですか?

David氏:「BEYOND: Two Souls」はこのようなイベント向けに作られた作品ではなく、家でプレイするのが一番良いと思います。なので、実際に操作して楽しんでいただき、もっと遊びたいなと感じてもらいたいです。

ひとつのシーンだけを遊んで全体が理解できるわけではありません。本作にはさまざまなシーンがあり、全てを通して遊んでもらうのがベストだと思います。

――翻訳や吹き替えといった日本語へのローカライズで重視した点は?

David氏:非常に多くの点です(笑)。日本に限って言えばすぐに理解してもらったので、あまり多くの指示をせずに素晴らしい作品に仕上がりました。

本作は23言語にローカライズされており、すごく労力のかかる作業でしたし、時間もかかりました。各地域へはさまざまな指示をしており、キャラクターのバイオグラフやストーリーのほか、罵り言葉など日常的に使う言葉を使用することで、よりリアルになるよう心がけています。ジョディ自身も成長するため、それぞれの年齢にあった話し言葉になるよう注力してもらいました。

――日本語ボイスを聞いた感想はいかがでしたか?

David氏:他の言語をジャッジするのはとても難しいのです。母国語であるフランス語であっても変な感じでした。エレン・ペイジとウィリアム・デフォーと何ヶ月も撮影を行ってきたので、彼らの声を他の声で聞くのはとても変な感じなんです。

ただ、日本語においては、すごく高いクオリティに仕上がっていると聞いています。前作「HEAVY RAIN」でも日本語ローカライズは好評でしたし、同じ方々が担当しているので安心して下さい(笑)。

――国によって異なる表現などはありますか?

David氏:全て同じです。

――各国の規制などを考えて制作されたのでしょうか?

David氏:規制というのは常に難しいもので、地域ごとにルールが異なります。映画と違いゲームには制限が多く、映画で表現できることがゲームではできない場合も多々あります。

ゲームでは暴力表現に寛容であるにもかかわらず、セクシャルなことや人間関係には規制が厳しいです。人を斬るのは大丈夫でも恋愛することが規制されていることもあります。

深いテーマを探求するにあたって表現できないことが多くあり、実現しようとしていたことが規制によりカットされることもありました。しかし、本作では、若干の修正はありましたが、思い描いたことのほとんどを実現することができたので誇りに思っています。

――「HEAVY RAIN」でどのようなことを学びましたか?

David氏:「HEAVY RAIN」でプレイヤーがどのようなプレイをしたかがひとつです。「HEAVY RAIN」をリリースする前は感情や物語性の強いものを押し出していたんですが、発売を迎えるまではプレイヤーの反応があまりなく、プレイヤーの多くはシューティングといったゲームを求めていたようでした。しかし、「HEAVY RAIN」リリース以降は、物語性を重視したゲームが多くリリースされるようになりました。本作では、「HEAVY RAIN」をさらに進化させて、物語の伝え方などに力を入れました。

――ファンタジーのように多くの人が特別な力を持った作品はたくさんありますが、本作で、主人公一人だけが特別な存在である物語を選択した理由は?

David氏:今まで作ったゲームではたくさんのキャラクターが存在していました。本作でやりかたったのは、一人のキャラクターを通して、成長の過程にある人生の分岐点を描くことでした。たとえば、一人のキャラクターであっても年齢によって異なる動き、言葉や感情を描写することで、違いを出しています。プレイヤーとしては、違うキャラクターを操作しているように感じますが、実際のキャラクターは一人です。幼少から大人までの成長を描くことで、彼女が何故そのように成長したのかを垣間見ることができ、キャラクターに深みを与えています。

――オカルト要素は自由度が高くなってしまい、扱い方によっては危険な題材だと思いますが、本作で気をつけた点はありますか?

David氏:はじめから考えていたのは、彼女がキャラクターとして霊体とつながっている部分だけであって、超常現象の物語ではないんです。一番描きたかったのは、物語として人とは違った少女という部分です。メインテーマの一つが、誰とも違うありのままの自分を受け入れるというものです。人は誰でも自分の変えたい部分があると思います。そういった人とは違うありのままの自分を受け入れ成長する物語を描きたかったのです。

――時系列でストーリーを展開させなかった理由は何故でしょうか?

David氏:時系列をバラバラにした理由としては、プレイヤーが考えてバラバラになった点をパズルのように組み合わせることによりアクティブにゲームに関わることができるようになっています。ゲームの後半で行動を起こした結果が、そのシーンよりも前に出てきていたりといった複雑な体験がおもしろくなっています。実際にプレイして体験していただくと、その理由がより深く理解いただけると思います。ぜひプレイしてみて下さい。

――スマートフォンとの連動について教えて下さい。

David氏:「HEAVY RAIN」の時に、一人が操作してもう一人が見て楽しんでいる姿を多く見ました。そのため本作では、二人目のプレイヤーをどうやって取り込むか、ゲームの操作に慣れていない人にもゲームを体験してもらえるように作りました。二人プレイに対応したモードを追加しましたし、アプリを通して実際に操作できるシステムを取り入れました。

ゲームは画面の中で起きていますが、操作はタッチパネルを通して行うことができます。指一本で操作可能な非常にシンプルなUIにしました。一人がDUALSHOCK 3、もう一人がiOSといった組み合わせにも対応しています。DUALSHOCK 3を使わず、iOSだけでプレイすることも可能です。

――本作は、最初から二人でプレイすることを前提に開発したのですか?

David氏:そうですね。「HEAVY RAIN」を二人で楽しんでいたイメージがずっと頭にあったので、最初から構想にありました。ゲームが嫌いな奥さんが「HEAVY RAIN」だけは楽しめたといった話も聞きますし、より多くの方に楽しんでいただけるものを目指しました。

――二人プレイは一人がジョディ、もう一人がエイデンをプレイするのでしょうか?

David氏:はい、その通りです。ユーザーテストではカップルも多かったのですが、彼らがどのような会話をしながらプレイするかが興味深かったです。

――一人プレイではエイデンがジョディの別人格のように感じると思いますが、二人プレイでは全く別の人になってしまうので、ゲームのテーマが変わってしまいませんか?

David氏:はい、一人プレイと二人プレイでは感じ方が異なってきます。

――ジョディとエイデンが別の人格であるとゲーム内で語られるのでしょうか?

David氏:ゲームを通して別の人格として描かれており、彼らの目的は異なります。最も重要なのはエイデンをただの力として描写するのではなく、全く別の人格をもったキャラクターとして描写する部分になります。

二人のキャラクターが協力することも多くありますが、時には憎しみ合ったり喧嘩したりすることもあります。たとえば、ジョディがデートするシーンでは、エイデンを操作することで恋愛を発展させることも邪魔をすることもできます。

――CGではなく実写で作ってしまおうという欲求はありませんでしたか?

David氏:よく聞かれるので、そろそろ考えてもいいかもしれませんね(笑)。

――CGで制作する理由は?

David氏:ゲームという媒体を愛しているからです。映画とは違い、プレイヤーがキャラクターの体験に関わることは、ゲームにしかできません。

――本作には使われなかったシーンもあるのでしょうか?

David氏:台本を書いた時にいくつかのシーンがあり、物語全体であまり意味をなさなかったシーンはカットしました。それらのシーンは実際に作られたわけではなく、台本の段階でカットされました。カットされたシーンの一つは、ジョディが赤ちゃんの頃のシーンで、実際に赤ちゃんを操作して周りで不思議なことが起きているシーンを構想していました。

――NGカットもあったと思いますが、それらを公開する予定は?

David氏:とても面白いシーンもいくつかあり、お見せることもできるのですが。ウィリアムとエレンがセットで起こしたNGなどもありますし、一番面白いのはゲーム内で発見されたバグで、おかしな現象が起きていました(笑)。スクリーンショットなどが大量にあるので、もしかしたら公開するかもしれませんね。

――ダウンロードコンテンツの配信予定は?

David氏:私自身としてはコンテンツを増やしていきたいですし、今協議しているところです。

――配信内容は、ストーリーの追加といったものでしょうか?

David氏:今詳しく述べることはできませんが、本編とは全く違った体験を考えています。

――ユーザーへのメッセージをお願いします。

David氏:一番お伝えしたいのは、本作は非常に特殊で、今までになかったゲームです。ただ、製品をつくるだけではなく、熱い思いを込めた作品です。今後数ヶ月で非常に多くのゲームが発売されますが、本作はそれらのゲームと全く異なる趣向のタイトルとなっているので、できるだけ多くの方に楽しんで頂きたいです。

――ありがとうございました。

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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