「御簾納直彦ミステリィ 篝火ノ屋敷」第9回は、2000年12月にソニー・コンピュータエンタテインメントより発売されたPS2用ソフト「BLOOD THE LAST VAMPIRE」を紹介します。

「篝火ノ屋敷」ではこれまで、「ダブルキャスト」「スキャンダル」という2本の「やるドラ」作品を取り上げてきました。今回紹介するのは、そんなやるドラシリーズの中でも特出した個性を放つ異端児「BLOOD THE LAST VAMPIRE」。

「スキャンダル」に続いて2000年12月にPS2で発売された本作は、ゲームの他にアニメ映画や実写映画(日本では、2009年に「ラスト・ブラッド」として公開された)も制作されるなど、メディアミックスを視野にいれて展開されていたタイトル。他のやるドラ作品とは、成り立ちからして異なるものでした。

2006年1月26日にはPSP版も発売されているが、本稿ではPS2版のゲーム画面を使用。

アニメ映画版は、横田基地内にあるアメリカンスクールを舞台に、謎の少女「小夜」と異形の怪物の戦いを描いた作品。アニメ映画版、実写映画版、さらにビジュアルや設定は違えど、TVアニメ「BLOOD+」や「BLOOD-C」は、一貫して主人公を「小夜」に据えていました。

対するやるドラ版の主人公は、小夜ではなく、高校を中退して大検を目指す、ちょっぴり内向的な性格の少年です。ストーリーは、主人公と、可愛いけどなんとなく秘め事のありそうな少女、琉璃亜と灯子を中心に展開(メインは琉璃亜)。全体的に明るい雰囲気はほとんどなく、「BLOOD」特有のダークな雰囲気に包まれています。

シリーズのシンボルキャラクター小夜も登場しますが、上巻ではまだ「謎の少女」という側面が強く、序盤~中盤ではほとんど登場しません。そういう意味で言うと本作は、他の「BLOOD」と比べると異色な作品と言えると思います。しかしながら、「謎の怪物」と戦うというシリーズ共通の部分はきちんと描かれており、バトルシーンは「壮絶」の一言。容赦無いゴアシーンもガッツリあります。

ストーリーの鍵を握る少女「小夜」 やるドラ版「BLOOD THE LAST VAMPIRE」の主人公
琉璃亜 灯子

ゲーム性は、アニメーションを観ながら、時折挿入される選択肢(時間制限付き)を選び、物語を進めていくという従来のやるドラフォーマットを踏襲。ただし本作には、他の「やるドラ」とは決定的に異なるシステムが搭載されているのです。それが、目に見えない隠れた分岐を発見する「BSS(BLOODサーチシステム)」。これは、的確な場所で△ボタンを押すと一定時間サーチバーが発動し、時間内にヒットすると新たな分岐へ飛べるというもの。

「BLOODサーチシステム」を発動すると画面が一定時間赤く歪む。その間に分岐にヒットすると新たな展開へ。

しかしねえ、これがめちゃくちゃムズいんですよ。一応ヒットする場所の周辺では「鈴」が表示されるというヒントがあるんですけど、分岐の一部分だけなので、初回プレイでヒットさせることは至難の技。「こんなのぜってー分からねーよ!」ってな場所に平然と分岐が潜んでいることもめずらしくありません。しかし、それだけに分岐を発見できた時の喜びはひとしお。新たな展開に進む、ただそれだけのことがここまで嬉しいゲームというのも、近年の作品では珍しいと思います。

「やるドラ」はそのシンプルなゲーム性ゆえ、基本的には誰にでもオススメできるシリーズだと思うのですが、本作ははっきり言って人を選びます。システムにしてもストーリーにしても。ただ、歯ごたえのある難易度やホラー色の強いストーリーなど、この手の作品が好みの人は、とことんハマる作品だと思います。アニメ映画版では描かれなかった小夜の活躍を見られるという意味でも、ファンアイテムとしての価値は高いのではないでしょうか。

本稿を執筆するに当たって久しぶりに本作をプレイしてみたのですが、ところどころ結構忘れていて、「THE END」の連続。やっぱムズかった! ただゲームを進めていくうちに、作品の世界にどんどん没入していく秀逸なストーリー展開は、今プレイしてもまったく色褪せず。むしろ、その完成度に改めて関心したほどです。本気でやり込むのであればそれなりの根気が必要だとは思いますが、その先には確かなカタルシスがあるので、興味のある方は一度プレイしてみてほしいですね。

ちなみにPS2版は上下巻あり、ストーリーを補完するためには、両方買わないといけません。後に出たPSP版は1パッケージにまとめられているので、今から買う人はPSP版を買うのもありだと思います。

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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