【TGS 2014】モバイルゲーム市場をリードするヒットメーカーのトップが語るグローバル化の課題―基調講演をレポート

発表会・イベント取材
0コメント 仁志睦

千葉・幕張メッセにて開催中の東京ゲームショウ2014で、初日となる9月18日に「多角化するゲームプラットフォーム×グローバル化するゲーム=成功の道筋」と題した基調講演が行われた。

今回の基調講演の第1部では、モバイル向けゲームメーカ―のトップを招いてのパネルディスカッションが行われた。パネリストはエイリム 代表取締役COOの高橋英士氏、コロプラ 代表取締役社長の馬場功淳氏、セガネットワークス 代表取締役社長CEOの里見治紀氏、バンダイナムコゲームス 取締役の浅沼誠氏、King CMOのAlex Dale(アレックス・デイル)氏、コンピュータエンターテインメント協会(CESA)会長の鵜之澤伸氏の6人で、日経BP社の浅海直樹氏がモデレータを務めた。

コンピュータエンターテインメント協会会長 鵜之澤伸氏 日経BP社 取締役 浅見直樹氏

まずは、鵜之澤氏が来場者に挨拶。鵜之澤氏は近年のゲーム業界の変化が非常に激しく、「毎年主役が変わっていると感じます」と所感を述べ、「この変化の中でグローバルに展開していくための勉強会や情報交換の場にしたかった」と、今回の基調講演の意図を説明した。

グローバル化を狙いやすい状況にあるスマホゲーム

最初のテーマはこの1年のゲーム業界を総括し、注目のトピックを挙げるというもの。エイリムの高橋氏は今年のトピックとして「動画」を選択。スマートフォンで動画を見ることが一般的になり、ゲームにおいても実況人気が広まっていることから、「プロモーションの観点からも欠かせないものになっている」と、その重要性を語った。

コロブラの馬場氏が選んだのはソフトバンクによるスーパーセルの買収とキャリアによる帯域通信制限。馬場氏は自社の「白猫プロジェクト」をプレイしていたところ、帯域制限に引っかかって突然ソフトが動かなるということがあったという。動画も通信量が多いことから、この帯域制限とどう折り合いをつけていくかが次の焦点になるのではと語った。

左からエイリムの高橋英士氏とコロプラの馬場功淳氏
左からエイリムの高橋英士氏とコロプラの馬場功淳氏

セガネットワークスの里見氏はスマートフォンアプリの市場で日本がトップになったことを挙げ、「最近、日本が世界で話題の中心になることがなかったので、興味深いニュースでした」と感想を述べた。また、アプリのランキングで「モンスターストライク」が王者「パズル&ドラゴンズ」をたびたび抜いたことも日本市場が伸びていることの表れではないかと分析した。

バンダイナムコゲームスの浅沼氏もスマートフォンの売上で日本が北米抜いたというニュースを選択。課金率が高いなど日本の独自性に触れつつ、日本の市場が伸びてきていることを実感していると語った。同時に、浅沼氏は中国のモバイル市場の伸びも指摘し、これにどう対応していくかという課題を挙げた。

Kingのデイル氏はスマートフォンやタブレットが普及し、ゲーム人口が増えてきたことを挙げる。特に高齢の人がプレイするようになったことに注目しているそうで、「数年前には考えられなかったこと」と述べた。また、App StoreとGoogle Playの登場により、ゲームの配信が簡単にできるようになったこともブローバル化を容易にした重要なトピックと考えているとのことだ。

ここで、浅海氏がデイル氏に「アジアマーケット、特に日本の市場はグローバル企業から見てどの程度の魅力なのか。世界から日本はどう見えているのか」と質問。デイル氏は日本市場がとても重要で、Kingのスタッフもみんな「ソニック」で育ってきたとサービスを交えつつコメント。さらに、プロモーションやイベントの部分でも学ぶべきことが多いと語るなど、決して見過ごすことができない市場であることを強調した。

KingのAlex Dale氏
KingのAlex Dale氏

このデイル氏の回答を踏まえて、浅海氏は「逆に、日本からは世界の市場はどのように見えているのか、どうグローバル化していくのか」と、パネラー陣に聞いた。

高橋氏は交流の深さや距離の近さから韓国、台湾、中国を重視する「アジアファースト」を方針としているという。もっとも「ブレイブフロンティア」は欧米市場がメインになっているそうで、コンテンツによって向き不向きがあるのではないかと語った。また、海外ではどのようにローカライズするかという部分も重要と考えているとのことだ。

馬場氏は「海外市場は広くて深く、かなり怖い」とグローバル化の難しさを強調。ただ、「白猫プロジェクト」はまだ海外展開していないにも関わらず、台湾や香港でかなりプレイされていて、自社のどの海外コンテンツよりも売上げが良いことから、「自社が制作したものも海外で通用するのではないかと思っています」と自信を見せた。

里見氏はゲーム機が8Bitや16Bitだった時代は表現力に限界があったため、国ごとの趣味嗜好の差が出にくく、かえってグローバル化しやすかったと語る。現在のスマートフォン市場もそのときの状況と似ていて、まだ各国でさほど趣味嗜好の差が出ていないので、「キャンディクラッシュ」や「クラッシュオブクラン」のような世界で同時にヒットするタイトルが出やすい環境になっているのではと分析。自分たちにもチャンスが広がってきているのではと語った。

浅沼氏はアニメやキャラクターなど、アジアでも人気のコンテンツを多数有しているが、だからといって中国での展開は決して簡単ではなく、ゲームにしてもどのように遊んでもらったらよいか、もっとよく考えなければならないと自嘲気味に述べた。

アプリランキングに見る日本市場の独自性

次に、2014年9月17日における日本、アメリカ、フランス、インドネシアのアプリランキングをスライドに表示。海外でランキング入りしている日本のアプリの少なさを指摘した上で、これらのデータをどのように見るか浅海氏がパネラー陣に聞いた。

Kingの「キャンディクラッシュ」は各国で上位ランク入りしているグローバルタイトルだが、デイル氏はユーザーを増やしていくことにフォーカスしているからで、「まずオーディエンスをつかむ、マネタイズはそのあとでいい」と自社の哲学を強調した。その点で現在はSNSに注目していて、特に欧米ではFacebookが大きな役割を果たしているという。

浅沼氏は日本が独自のランキングになっていることを認めつつ、「課金の面ではトップというのはおもしろいなと思います」と語る。さらに、世界でランキング入りしているアプリが少ないというのは上位に食い込む余地があるということで、まだまだ日本にもチャンスはあると見解を述べた。ただ、日本に海外のタイトルがどんどん入ってくる可能性もあるわけで、これにどう対応するか、どう共存していくかも課題になるだろうと予測した。

里見氏は日本のタイトルにはイベントドリブンなところがあり、「ガチャやイベントなどが実施されているときは欧米のトップ10に入ってくることもある」と、このランキングへの若干の異議を述べた。また「チェインクロニクル」が台湾・韓国・香港ではトップ10に入っており、gumiのパブリッシングで欧米市場にも展開していくなどグローバル化を目指すことを宣言した。

馬場氏は海外でうけるゲームの要素として「シンプルである」「何かしらの競い合いがある」「運用であまり波がない」という3つを挙げ、これまでは作っていなかったが、現在はそういった要素を満たすゲームの開発を進めているとのこと。ちなみに、いずれは海外の売上比率を4~5割に引き上げたいとの考えを示した。

高橋氏は海外で展開する場合、言語が重要になると考えているそうで「当然、英語が一番広い。韓国語は韓国一か国だけ。中国も地域によって言葉が違うので、どの言語からローカライズするかいつも悩むそうだ。

ちなみに、鵜之澤氏が「スマートフォンゲームも家庭用のように世界同時発売をしないのか」と、浅沼氏に言ってみたところ「運用とかローカライズなどがまったく違う」と浅沼に反論されてしまったそうで、実際にそこが大きな課題になっていると鵜之澤氏が語った。

グローバル化するためのマーケティング、プロモーション

左からセガネットワークスの里見治紀氏と<br />バンダイナムコゲームスの浅沼誠氏
左からセガネットワークスの里見治紀氏と
バンダイナムコゲームスの浅沼誠氏

では、海外に打って出るにはどのようなことをしなければならないのか。ここではマーケティングやプロモーションなどが大きなテーマとなった。

デイル氏は日本進出時に多くのミスを犯したと話し、「キャンディクラッシュ」も当初は翻訳が悪く、「甘いお菓子」が「苦いお菓子」と誤記されてしまったこともあったそうだ。テレビCMも最初は反響がまったくなく、日本人の監督を起用したあたりからようやく好転し始めたという。この結果を踏まえ、ダール氏は日本のチームを作り、日本向けに特化した広告展開を行うことにしたそうで、これがグローバル市場において特に重要だと語った。

プロモーションの難しさは高橋氏も感じているようで、例えばFacebookの場合、日本での「いいね」の数は3~4万程度だが海外では4、50万くらい集まるという。それくらい違うので、「現地の運営スタッフを使わないとハマるものができない」そうだ。

浅沼氏も「日本で日本人だけで考えても難しい」と語る。では「海外の拠点と共同で行った場合はどうか」、「海外パートナーにすべて任せてしまった場合は?」など、コンテンツごとにどの方法がベストか、実地も含めていろいろなパターンを試していているところだと述べた。

里見氏は日本のスタジオは日本向け、欧米のスタジオは欧米に向けて、まず作るべきだと述べる。そして当たったらグローバル化を考えるべきで、「自国で売れないものは他国で売れるはずがない」と強調した。また、海外に展開する場合は自分たちの海外のスタジオにローカライズを任せたり、海外の各拠点にパートナーを設けて一緒にパブリッシングしたりと、いろいろな方法でノウハウをためているところだと話した。

馬場氏は海外展開する場合は「ローカライズではなくカルチャライズ」「マーケティング」「そもそも本当に面白のか」という3つが重要だという。その点で、コロプラは日本に寄りすぎているきらいがあり、そこが問題だと思っていると述べた。自己採点も3点とかなり辛めだが、「これから97点分加算できる余地があるということ」と、自社のポテンシャルへの自信を見せた。


最後の質問はパネラー陣に来年に向けての課題や豊富を語ってもらうというもの。まず、鵜之澤氏は「来年のゲームショウで同じことをやったら、ランキングが大きく変わっていると思います。また、馬場さんの『自己評価3点』というのは衝撃でしたが、『97点伸ばせるチャンス』という言葉にたくましさも感じました。期待しています」と語った。

話を振られた馬場氏は「来年は20~30点くらいにはしたいですね」と控えめのコメント。もちろん、事業は長く続いていくものと考えており、「継続的に良くしていくことが大切だと思います。また日本市場においても我々はまだまだ全然ですので、手を緩めることなく面白い新作を出し続けたいです」と述べた。

デイル氏は「2015年も、すばらしいゲームをどんどん出していきたいです」とコメント。まず、日本での5作目となる「ペットレスキュー」をリリースしたことを紹介した。デイル氏もハマっているようで、まったくアイテムを課金せずにレベルを665まで上げたそうだ。その意味で「2015年はフリー・トゥ・プレイがさらに重要になってくると思います」と語っていた。

浅沼氏はまず中国展開について、DeNAと協力して「ワンピース」のサービスを開始することや「ナルト」をテンセントと一緒にスタートすることなどを紹介。もちろん、北米も欧州も重要な市場で、バンダイナムコグループ全体が持つタイトルを総合的に使って、どうすればアジア地域を超えてグローバル展開できるか考えていきたいと述べた。

高橋氏は「我々は50~60人規模の開発スタジオに等しい会社なので、まずは『ブレイブフロンティア』をよりよくしていくこと。それと、詳細は明かせないですが、新プロジェクトがあります。我々は大きな会社ではないため、話題性で勝負したいと思っていて。年内にいろいろ発表させていただいて、それが世界中に広まるスキームでトライしていきたいと思っています。」と語った。

里見氏は「グローバルでトップ3入りするのが目標ですが、そのためにはグロスで1000億円を売り上げないとダメです。ですので、まずは直近ではそこを目指したいです」と、個人的な目標を掲げた。業界的には日本の企業のタイトルがこれだけ注目されるのは10年ぶりくらいであることから、「2015年は我々のタイトルも含めて、日本発のタイトルや会社が世界を席巻するではないか」と展望を述べた。

最後に浅見氏は多様性を許容することで、産業は一段と大きく強くなっていくと思っています」と語り、「今、ゲーム業界も転換期ですが、いろいろなディスカッションを経て、もう一段高みに上れると確認しています」と述べ、今回のパネルディスカッションのまとめとした。

※画面は開発中のものです。

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