9月18日から4日間にわたって開催された東京ゲームショウ2014にプレイアブル出展され、多くの注目を集めていた「FIFA15」。まもなく発売となるこの人気作について、EA Japanスタジオの牧田和也氏にインタビューを行った。
2014年10月9日に発売予定となっているエレクトロニック・アーツの「FIFA15」。本作はワールドワイドな人気を誇るサッカーゲーム「FIFA」シリーズの最新作だ。試合のビジュアルのさらなるパワーアップや選手の感情変化の表現など、本作の気になるポイントについて、EA Japanスタジオのバイスプレジデント ジェネラルマネージャーの牧田和也氏にお話を聞く機会が得られたので、その内容をお届けしよう。
「生きているスタジアム」を体感できる
――現在、体験版が配信されていますが、手応えをお聞かせください。
牧田氏:まだ日本の数字は聞いていないんですが、ワールドワイドではかなりの数の方に遊んでいただいています。評判も良く、ゲーム的に進化したと言ってもらっています。
――特にユーザーの反応が良かった部分はどこでしょうか。
牧田氏:やはりビジュアル的なところですね。スタジアムの作り込みや観客の動き、応援の仕方。選手のモデルもすごく良くなっているので、テレビと変わらないレベルの映像になっていると、皆さんから好評を得ています。プレイの感触ではドリブルのレスポンスの良さが特に評判が良く、「今まで以上に面白い」という声が数多く届いています。
――体験版を少しプレイさせていただいたのですが、確かに操作時のドリブルの反応がいいと感じました。
牧田氏:ちゃんと利き足を使ってボールを操るので、今まで以上にリアル感が増しています。映像で見ていただくと分かりやすいのですが、足の内側で触ったり外側で蹴ったりと、いろいろなタッチの仕方ができます。例えば、メッシであればボールに細かくタッチしますし、クリスティアーノロナウドであれば強く蹴り出して加速するなど、選手の特徴を忠実に再現できるようになっています。
ボールの動きも物理計算によって非常に正確になっています。ボールはキック時のスピードや角度によって回転の仕方が変わったりしますよね? それによってグラウンドに接地したときの摩擦が変化して、ボールが加速したり止まったりしますが、それも忠実に再現できているんですよ。いろいろなプレイができるようになったのは、この部分が大きいのだと思います。
――狙ってボールを早く転がしたり、バックスピンをかけて止めたりすることができるわけですね?
牧田氏:そうですね。ボタンを押すスピードやタイミングなどで狙って変えることができます。
――体験版をプレイしたとき、ちょっとボールを取りづらいなとか、ドリブルの動きが読みにくくなったなと感じたりしたのですが、自分がそういった変化に慣れていなかったからなんですね。
牧田氏:ちょっと遊んでいただければすぐに慣れますよ。そうすれば、今まで以上にプレイしやすくなっていることが分かっていただけると思います。ドリブルはすごく大きい部分ですので、ぜひ体験してみてください。
――スタジアムもかなり作り込んでいるということですが。
牧田氏:ええ、試合中のスタジアムの変化には特に注目してほしいですね。例えば、試合が進むとピッチが荒れていくんですよ。周りのカメラマンやサブの選手の動き、観客の声援なども試合展開によって変化していきます。バーやポストにボールがあたったときのゴールネットの揺れや選手がぶつかったときのコーナーフラッグの挙動といった細かい動きも再現しているので、「生きているスタジアム」を実感することができます。
――すべてがさらにリアルになっているわけですね。ほかに強化されている部分はありますか。
牧田氏:選手の骨格や肩の張り方なども再現度がアップしています。こういった部分は再現が難しかったのですが、今回直すことができたので、フォームなどがよりリアルになっています。また、試合中のライティングなどもかなり細かくチューンしています。遠目で見たらテレビの中継かゲームの映像が判別できないと思いますよ。
ここで牧田氏がパソコンで試合中の画像を表示し、「何の画像か分かりますか?」と質問してきた。筆者は「FIFA15」の画像だと思ったのだが、実はBBCのテレビ中継の画像だったのだ。そのあと「FIFA15」の試合の画像を見せられたのが、まったく見分けがつかず、完全にだまされてしまった。「本物と見まがうリアルな映像」というのはよくある常套句だが、本作に関しては決して誇張ではないことを改めて強調しておきたい。
――選手の感情を表現する「エモーショナルインテリジェンス」が搭載されたとのことですが、どのようなものか教えてもらえますか。
牧田氏:選手22人がそれぞれ感情を持っていて、その感情の持ち方が試合とともに変わっていくんですね。例えば、試合が始まってすぐの時間帯でシュートをセーブされたときは、味方の選手は「ナイスチャレンジ」と拍手してくれます。ところが、終盤の競った場面でシュートミスをすると、「何やっているんだよ!」というリアクションをします。
敵チームの選手とのインタラクションもあります。最初はちょっとぶつかったり、言い争ったりするだけですが、試合とともに激しくタックルするなどしてエキサイトしていきます。
――これは試合展開によって変わってくるのでしょうか。例えば接戦のときと大差のときで違ってくるとか。
牧田氏:そのとおりです。先ほどお話したとおり、観客の応援の仕方も時間の流れや試合の経過とともに変わっていきます。シュートをはずすとブーイングが飛んでくるなんてこともありますよ。
――選手によって怒りやすい、怒りにくいというのはありますか?
牧田氏:感情の起伏の仕方は選手個々で異なります。例えば、メッシがキレるのってあまり見ないですよね。怒りっぽい選手は逆に怖いですよ(笑)。また、ゴール時のセレブレーションなども選手個々の特徴を入れるようにしてあります。
――まさかとは思いますが、スアレスが怒ってかみついたりとかしますか?
牧田氏:さすがにそれはありません(笑)。あるって言ったらウケるんでしょうけどね。
――ゴール時の喜びの表現はどのくらいの種類があるのでしょうか。
牧田氏:正確な数は把握していませんが、かなりの試合数をこなさないとすべて見るのは難しいですね。プレイすればするほど、いろいろな局面が見られるので、楽しんでもらえると思います。
AIのサッカー的な動きやキーパーのアクションも注目
――AIの動きもかなり洗練されたとのことですが、前作までとどのような違いがあるのでしょうか。
牧田氏:パスを出したらスペースに走り込むなど、選手それぞれが目的を持って動くようになりました。これらの動きはチームマネジメントで変えることも可能になっています。例えば、サイドバックにもっとオーバーラップさせたい場合は、そのように指令しておけばタイミングよく上がっていきますので、ユーザーさんのやりたいプレイができます。
ディフェンス時にも、例えばふたりで相手を挟み込むようにすることがありますが、これは相手選手が「このスペースに動くだろう」と想定したプレイなんです。ドリブルやパスといった相手の動きにただ反応するだけでなく、先を読みながら味方同士でうまくポジション取りをしてスペースをカバーするといった、よりサッカーらしい動きができるようになっています。
――AIにそこまで細かい判断をさせているのですか。
牧田氏:ええ。前作ではCPUがコントロールする場合、ボールホルダーにプレイヤーが寄せると試合展開に関係なく横や後方に逃げ回っていたのですが、今回は状況次第であえて危険なエリアに突っ込んでいくこともあります。それは、各選手が目的を持っているからなんですね。シュートポジションにいきたいという目的があれば抜いていこうとしますし、そこが本物らしい動きになっています。場合によってはボールを回して時間稼ぎしたりすることもありますよ。
――かなり複雑な動きになっていて驚きました。これらを連動させていくのは大変だったと思いますが。
牧田氏:すべてが動いているので、どのタイミングで起動すると一番よいプレイに繋がるかという判断が特に難しかったです。フォーメーションや戦略によって違いますし、選手の能力によっても変わってきますから、そこを作り込んでいくのは大変でしたね。また、オフェンスとディフェンスのバランスにもかなり使いました。
――ゴールキーパーの動きもかなり変わったとのことですが、具体的に教えてもらえますか。
牧田氏:ゴールキーパーに関しては、2年くらい前から新しいシステムを作っていまして、今回ようやく搭載することができました。例えば、キーパーがシュートを防ごうとジャンプしたとき、ディフェンダーにボールが当たって角度が変わってしまうことがありますよね。そんなとき、キーパーが空中にいながら判断して別の方向をカバーしようとするのですが、これを再現するのは技術的にものすごくシビアなんです。
――シュートと逆の方向に飛んでしまって、足だけ残してふせぐといったことですね?
牧田氏:実際の試合ではよくありますよね? そういったことを再現するために、この新システムを作ったんです。ですから、今回のキーパーはいろいろなオプションを考えながらプレイをするようになっていて、ものすごく賢くなっています。
――今回のワールドカップブラジル大会はゴールキーパーが注目された大会でしたが、触発された部分はありましたか?
牧田氏:先ほどお話したとおり、2年前から動いていたので影響を受けたということはありません。ただ、見ていて「これはいけるぞ!」と思いましたね。
――では、今回の導入はベストのタイミングだったと言えますね。
牧田氏:そう思います。
本物のサッカーに極限まで近づくべく挑戦し続ける
――新たに収録するリーグにトルコの「スュペル・リグ」を選ばれた理由を聞かせてください。
牧田氏:トルコリーグを入れてほしいという要望は、かねてからすごく多かったんですよ。リーグのライセンスなどは、お客様のニーズに極力お応えするようにしています。もちろん、ライセンスが取れない場合もありますが、世界中で売っているタイトルですので、それぞれの国のそれぞれのファンに喜んでいただくため、これからもライセンスを取って、できるだけカバーしていきたいと思っています。
――ちなみに、この夏の移籍はどのあたりまで反映されているのでしょうか。
牧田氏:すべて反映しています。入っていない場合もデータのアップデートで対応しますので、安心してもらえたらと思います。
――ユーザーからの要望ではどういったことが特に多いですか。
牧田氏:ビジュアル面以外では、やはり選手の動きです。パス、シュート、ドリブルといった基本となる部分やAIの選手の動きなどは特に意見をいただく部分ですね。
――では、今回はそのひとつの答えになるわけですね。
牧田氏:そうですね。要望の多かったところや我々がやらなければいけないと感じていた部分を改良して。とにかく毎年できる限りのことをやっていきたいと思っています。もちろん、先ほどのキーパーの件のように2年以上かけて作る場合もありますが、ゲームとしてどこを1番に良くしていくかというのを常に考えて作っています。
――今回は実現できなかったが、次回以降ぜひやってみたいということがあれば聞かせてもらえますか。
牧田氏:チームマネジメントの部分で攻撃パターンなどを変えられるようになりましたが、これは以前からずっとやりたかったことなんですね。ただ、すごく時間がかかる部分でして、今回ようやく実現することができましたが、まだまだ改良していきたいと思っています。
――「FIFA」シリーズはより本物に近づけていくというのが理想のひとつになっていると思いますが、今作でどの程度まで達成できたと感じていますか。
牧田氏:個人的には終わりはないと思っていますし、まだまだできることはあります。特に人の動きは難しいですね。スタジアムの外観などの場合、今あるハードのスペックで再現できる最高峰のものというのはこのくらいだろうと、ある程度予測できます。ですが、人の動きとかAIの人口知能とかは限りがありません。人ってすごく複雑な判断をして生きているじゃないですか。それらをすべて実現するのは並大抵のことではありません。
――それでもあえて挑戦していくと。
牧田氏:それが我々の使命であると思いますし、お客様の求めているところでもありますから。
――ありがとうございました。
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