5月9日、東京・渋谷公会堂にて「サガ」シリーズのバトル曲を中心とした音楽ライブ「One Night Re:Birth」が開催された。ここではその模様と、終演後に行われたインタビューをお届けする。

目次
  1. 河津“神”降臨!秘蔵音源公開からまさかの「くじ」発表まで
  2. バイオリン&ボーカルも加わり、ライブは最高のクライマックスへ
  3. 伊藤氏&河津氏へインタビュー
  4. セットリスト

ゲームの発売から25年経った今もなお愛され続ける「サガ」シリーズ。そして作曲家としても25周年を迎え、シリーズを彩る数々の楽曲を手掛けた伊藤賢治氏率いるロックバンドが、バトル曲アレンジCD「Re:Birth II -連-」収録曲をはじめとした多数の人気楽曲を生演奏で披露してくれた。

出演者(敬称略)

伊藤賢治(key)
岸川恭子(vo)
土屋玲子(vn)
寺前甲(gt)
上倉紀行(gt, key)
榎本敦(b)
山内優(ds)
和田貴史(manipulator)

しっとりとしたピアノがオープニングを飾ったのも束の間、「Re:Birth II」からの「バトル1メドレー」が始まるとファンの大きな拍手と歓声が会場を包む。続いて「Re:Birth II -閃-」から、ファンの間で「飲める下水道」や「綺麗な下水道」などと親しまれる「下水道」、そして「バトル#5」へ。ライブスタート直後からあっという間にクライマックスのような雰囲気に包まれたが、伊藤氏は「まだ始まったばかり」と言わんばかりにステージを駆け巡りながら一層ファンを盛り立てる。

とくに今回は、全ての楽曲に「サガ」シリーズを語る上で欠かせない小林智美氏の美しいイラストと、ゲームの映像がスクリーンに映し出されるという演出つき。思い出深いイベントシーンや必殺技が飛び交う白熱のバトル、フィールドを眺めながら生演奏を聴くという、この上ない贅沢なひと時を味わうことができた。ちなみに、あの「ゆきだるま」もバトルシーンにかなり登場していた。

オープニングから怒涛の3曲を終え、「はじまったぞ!」と声を上げる伊藤氏。3回目となった「One Night Re:Birth」、そして「サガ」シリーズと作曲家としての25年を感慨深げにしつつ、「ファイナルファンタジー」シリーズで知られる北瀬佳範氏と同時期だったというスクウェア(現:スクウェア・エニックス)の入社当時を振り返る。

また、性別や出身、年齢などどういった層が訪れているのかが気になるようで、会場に拍手で返事を求める場面も。男女比が6対4ほどで女性ファンも多いことに安堵し、10代から50代以上まで幅広く親しまれているのを喜ぶ様子を見せた。

トークの後は「Re:Birth II -連-」からの「燃える血潮~Save the world メドレー」、伊藤氏が「ガラハドのテーマみたい」と呟いた「A Piece of Courage」、新作のPCブラウザゲームとして発表された「インペリアル サガ」の、まさに「全軍突撃」と表示されるゲーム画面も交えた「全軍突撃!」を演奏。この「全軍突撃!」は、最近MCとしても人気上昇中の上倉氏がアレンジを担当したそう。上倉氏は「インペリアル サガ」のティザーサイトで曲が発表になった際に「評判いいよ」と伊藤氏から聞かされたそうで、改めてファンに感謝の言葉を伝えていた。

河津“神”降臨!秘蔵音源公開からまさかの「くじ」発表まで

ここで、客席からスクウェア・エニックスのプロデューサー・河津秋敏氏が登場。25年前、「ファイナルファンタジー」シリーズの楽曲を手掛けていた植松伸夫氏が、いよいよ人手が足らないと弟子として迎え入れたのが伊藤氏だったと思い出を語る。そして話題は、伊藤氏の入社当時へ。当時のスクウェアといえばファンタジー作品のイメージが強かったが、そんな中で伊藤氏が送ったデモテープは格闘やシューティングを彷彿とさせるもので、河津氏らも耳にしたという。改めてファンタジー色のデモも送ったそうだが、伊藤氏は「だからこそ“面白い”と植松氏の目に留まったのでは」と振り返った。

次の話題は、俳優の唐沢寿明さんや声優の小原乃梨子さんなどの起用でも話題となった「サガ フロンティア」のテレビCMへ。その音源が見つかったという伊藤氏が、30秒バージョンを披露する。なおこの頃は、映像の宣伝用としてゲームとは異なる音源を作ることが多かったそうだ。

他にも2つほど音源が出てきたという伊藤氏。「トバル ナンバーワン」収録特典でしか聞けないものは、その後に冒頭のイントロ部分をブルーのラストバトルに転用したという。3つ目は「プレイステーションエキスポ」というイベント用に制作されたもので、どれも宣伝のみの使用で終わっていたのが勿体ないと感じるクオリティだった。

続いて、河津氏が「インペリアル サガ」を紹介。「サガ」シリーズのスタッフに加え、キャラクターデザインには各方面で活躍する倉花千夏氏も参加しており、今月末には事前登録開始となる見込み。ここで、ゲーム内に登場する四魔貴族のフルオーケストラバージョンを初公開。バンド演奏とは一味違う、繊細かつ重厚さを備えた楽曲に仕上がっているのでゲームのリリースを楽しみに待っていよう。

さらに河津氏から「25周年記念くじ」という驚きの企画が明かされる。賞品ラインアップはビジュアルを楽しめるタペストリーやポストカードといったものからユニークなマグカップ、効果音CDまでじつに多彩。発売は7月を予定しており、詳細については間もなく発表となるそうだ。

そして、やはりファンが最も気になるPS Vita用の新作について。先日、ダンジョン用の曲が仕上がったそうで、河津氏はイベントシーンで使いたいくらいだとコメントするほど気に入った様子。ライブイベントが終わればきっと作曲ペースも上がるはず、という河津氏のプレッシャーを受けつつ頑張る伊藤氏の今後の活躍に期待しよう。

バイオリン&ボーカルも加わり、ライブは最高のクライマックスへ

河津氏と入れ替わるように岸川氏、土屋氏といった女性陣が加わり、「Re:Birth II -連-」からの「バンガード発進!」「Battle #4」「死への招待状 -The Battle with Death-」を披露。ステージ上は一気に華やかさを増したものの、楽曲は気を抜けば押しつぶされてしまいそうな迫力に満ちていた。

美しくも圧倒的なハーモニーを堪能した後、ライブはいよいよ「盛り上がる曲しかない」と伊藤氏が断言した終盤に。「Re:Birth II」の「四魔貴族バトルメドレー」、「ロマンシング サ・ガ2」「ロマンシング サ・ガ3」の「ラストバトル」が演奏され、最後を締めくくったのは「決戦!サルーイン」だ。

ファンの大歓声と拍手に応え、再びステージに現れた伊藤氏とバンドメンバー。熱気に包まれているファンに「ここからがメインディッシュ」と告げ、「Re:Birth II -連-」の「七英雄バトル」「Last Battle -Asellus-」「Last Battle -Emilia-」と、全身を射抜くようなサウンドがライブのクライマックスを盛り上げる。

アンコールの最後は、岸川氏の強烈なボイスパフォーマンスが炸裂する「Last Battle -Red-」「熱情の律動」。とくに「熱情の律動」のファンに愛され続ける独特のコーラス、そしてアコースティックギターの重なりに、いつまでも聞いていたいと思うほどの高揚感に包まれた。

バンドメンバーへの感謝やファンへの挨拶を終え、それでも最後の最後にとステージに1人残る伊藤氏。涙に声を詰まらせる場面もあったが、心に染みわたるようなピアノの演奏をもって「One Night Re:Birth」東京公演は終了した。

伊藤氏&河津氏へインタビュー

ライブ終了直後の興奮冷めやらぬ中、伊藤氏と河津氏へのインタビューが行われたので、その模様をお伝えしよう。

――今の率直な感想をお願いします。

伊藤氏:やっていく中で思い出したこともあり、最後は自分の言っている言葉にウルっとしてしまったんですけど、それも良かったかなと。そういう感情もあったんだな、みたいなことも含めて良い思い出になりました。

河津氏:毎回そうなんですけど、ファンのテンションの高さにいつもびっくりさせられるんですよ。今日も最初からそうでしたし、イトケンが皆さんを乗せるから大変ですよね。すごく楽しく過ごせましたし、ファンも満足してくれたんじゃないかなと思っています。

――最後に思いがこみ上げたのは、25年前のことを思い出してといった感じだったのでしょうか?

伊藤氏:もしかしたら泣くかもしれないけど、上手くいけば泣かないかもしれないなんてずっとシュミレーションしてたんですけど、色々思うところがありましたね。

――伊藤さんは、憧れの渋谷公会堂のステージに立ってみていかがでしたか?

伊藤氏:やっぱり良かったですね。「ああ、ここか!」みたいなところから始まって、段々お客さんと一体化していって、「サガ」シリーズのファンはいいお客さんだなと改めて実感した部分がありました。

――河津さんは、客席から見られていかがでしたか?

河津氏:とくに終盤なんかは、連続で演奏するじゃないですか。あの辺は、よく体力がもつなと。「決戦!サルーイン」の時なんかも、皆が平気でステージから退出してくのを見て「この人達は化け物か!」って思いましたよ(笑)。

とくにドラムの山内くんなんか、イトケンのバスドラの連発がすごく大変だと思うんですけど、全然平気で演奏しているのにびっくりしますね。彼らに支えられてイトケンの曲があるんだなと思いました。

――25年という節目にますます盛り上がる「サガ」シリーズへの、今後の意気込みをお聞かせください。

河津氏:初のPCブラウザゲームとなる「インペリアル サガ」は、過去作のファンの方ならより楽しめる要素がたっぷり入っています。新作のほうも準備中ですので、もうすぐ何か言えるかなと。期待してください。

伊藤氏:今日初めて「記念くじ」が発表になりましたけど、「サガ」シリーズも多方面になったなと再確認しました。来年以降は開発者としての参加も含め、受け手側としての期待度も高まると思うんですよね。自分も楽しみたいですし、楽しませたいと思います。

――「記念くじ」はファンも気になるところだと思います。

河津氏:スケジュール的にはかなり大変そうなんですけど、よくある「くじ」のスタイルで皆さんに色々なグッズを提供できたらな、という意図ですね。小林さんのイラストだけじゃなく、直良くんの絵だったり小林くんの絵だったり、色々なアート素材を使っています。それ以外に「ひらめき」のマグカップとか、クスッと笑えるような今回だけの特別なデザインのものもあるので、楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。

伊藤氏:「効果音CD」は僕も欲しいです(笑)。

――「サガ」シリーズ、作曲家としての25年を振り返ってみて、いかがでしょうか。

伊藤氏:人によっては25年はただ過ぎただけと言いますけど、自分にとっては案外重かったです。結果的に今は楽しませていただいてる幸せな立場ですが、そうさせてくれる周りの人たちのおかげというのが最近やっと見えてきたというか。社員時代に良かったこと、フリーになって厳しいところもあったけど、結果的に良かったことを再確認した今日でした。今後もよろしくお願いします。

河津氏:「ロマンシング サガ -ミンストレルソング-」からも10年経ってますからね。こうしたタイトルを続けるのは、とても大変だなと感じています。今も頑張れているのがすごく幸せなので、なんとか皆さんに良いものを届けられたらなと思います。

――ありがとうございました。

セットリスト

01.オープニングタイトル(「ロマンシング サガ -ミンストレルソング-」)
02.Re:Birth II - バトル1メドレー(「ロマンシング サ・ガ」「ロマンシング サ・ガ2」「ロマンシング サ・ガ3」「ロマンシング サガ -ミンストレルソング-」)
03.Re:Birth II -閃- 下水道(「ロマンシング サ・ガ」)
04.Re:Birth II -閃- バトル#5(「サガ フロンティア」)
05.Re:Birth II -連- 燃える血潮~Save the world メドレー(「サ・ガ2 秘宝伝説」)
06.Re:Birth II -連- A Piece of Courage(「ロマンシング サガ -ミンストレルソング-」)
07.Re:Birth II -連- 全軍突撃!(「インペリアル サガ」)
08.Re:Birth II -連- バンガード発進!(「ロマンシング サ・ガ3」)
09.Re:Birth II -連- Battle #4(「サガ フロンティア」)
10.Re:Birth II -連- 死への招待状 -The Battle with Death-(「ロマンシング サガ -ミンストレルソング-」)
11.Re:Birth II - 四魔貴族バトルメドレー(「ロマンシング サ・ガ3」)
12.Re:Birth II - ラストバトル(「ロマンシング サ・ガ2」)
13.Re:Birth II - ラストバトル(「ロマンシング サ・ガ3」)
14.Re:Birth II - 決戦!サルーイン(「ロマンシング サガ -ミンストレルソング-」)

<アンコール>
15.Re:Birth II -閃- 七英雄バトル(「ロマンシング サ・ガ2」)
16.Re:Birth II -閃- Last Battle -Asellus-(「サガ フロンティア」)
17.Re:Birth II -連- Last Battle -Emilia-(「サガ フロンティア」)
18.Re:Birth II -連- Last Battle -Red-(「サガ フロンティア」)
19.Re:Birth II -連- 熱情の律動(「ロマンシング サガ -ミンストレルソング-」)
20.エピローグ(「ロマンシング サ・ガ2」)

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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