カップリングは「STEINS;GATE 0」のとあるエンディングをイメージした曲に―いとうかなこさんのニューシングル「アマデウス」インタビュー

インタビュー
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11月25日にPS4/PS3/PS Vita用ソフト「STEINS;GATE 0」の主題歌「アマデウス」を発売するいとうかなこさんへのインタビューをお届けする。

いとうかなこさん

5pb.より12月10日に発売となる、PS4/PS3/PS Vita用ソフト「STEINS;GATE 0」。本作の主題歌「アマデウス」を歌っているのが、もはや科学アドベンチャーシリーズには不可欠な存在となっているいとうかなこさんだ。

いとうさんは2015年、アルバム「Reactor」やシングル「シンギュラリティ」、さらに10月にも「Calling my Twilight」をリリースしたばかりと、精力的に活動してきた。その締めくくりとなる作品という意味でも、「アマデウス」は注目してほしい作品だ。

今回、いとうさんにインタビューを実施し、「アマデウス」と「STEINS;GATE」シリーズへの思いを語ってもらうとともに、怒涛の勢いで駆け抜けた2015年を振り返ってもらった。

「アマデウス」の歌詞はシリーズ全体を象徴する内容に

――これまでの「STEINS;GATE」シリーズ同様、主題歌を担当することになりましたが、決まったときはどんなお気持ちでしたか?

いとうさん:呼ばれてよかったなぁと、ホッとしました(笑)。私の歌が「STEINS;GATE」の一部になれてきたかな…と思っていたところなので、正統続編でも歌えることはすごく嬉しいです。

――今回の「アマデウス」は志倉さんが作詞作曲の楽曲ですが、最初に聞いたときの印象はなにかありましたか?

いとうさん:いつもどおりで、「千代丸節きたー!」ていう感じでした(笑)。でも、歌詞はこれまでよりも優しい印象も持ちましたね。初代主題歌の「スカイクラッドの観測者」は神々しいイメージで、神の目線で歌っているような歌詞だったんです。だけど「アマデウス」は人の感情が表現されていて、より分かりやすくなったと思います。

――その印象の違いが、収録時の歌い方に反映されたことはあったのでしょうか?

いとうさん:歌いやすさはあったと思います。難しい単語があるわけでもないので、イメージもしやすかったです。

――歌詞に注目してみると、やはりというか、「STEINS;GATE 0」のストーリーと密接に関わっていそうですね。

いとうさん:「STEINS;GATE 0」というか、シリーズ全体を象徴するような歌詞です。シリーズをプレイしていれば、ピンとくるフレーズがいくつもあると思いますよ。ここまで答えがはっきりしている歌詞というのも、シリーズの中では珍しいですね。

――これまでにも志倉さんと共同で楽曲を制作するケースは何回もあったと思いますが、いとうさんにとって志倉さんはどんな存在ですか?

いとうさん:謎に包まれた変態紳士(笑)。今になってもいつ寝て、いつ会長の仕事をして、いつ曲を作っているのかまったく分からない謎の人ですね。でも、たまに番組で一緒に出演したとき、私がくだらないことを言っても全部拾ってくれるし、すごく楽しい人です。一緒にいると笑いすぎて、お腹が痛くなるくらいです(笑)。

――なるほど(笑)。では「アマデウス」のレコーディングでも、コミュニケーションは取っていたんですね。

いとうさん:実はレコーディングに関してはノータッチというか、ほぼお任せなんです。ただ仕上がったあとに千代丸さんのラジオに出演したときには「歌よかったよ」と言ってくれました。

――レコーディングにいないというのは少し驚きました…。とはいえ、創作活動をする人として、インスパイアを受けることもあるのではないでしょうか。

いとうさん:カップリング曲の「Ignis」は私が作詞作曲をしているんですけど、千代丸さんが普段難しい言葉を使っている分、私はもっと優しい、直接的な言葉を使おうと考えて歌詞を作ったんです。逆のアプローチが生まれてくるのは、影響を受けていると言っていいかもしれません。

あと、「CHAOS;HEAD」シリーズのころの千代丸さんはとても難しい楽曲を作っていて、それが歌いづらかったんです。だから何度も本人に「歌いづらい!」と訴えていたら、徐々に優しくなっていきました。その辺りでも。お互い影響しあっているのかもしれません。

――作詞をした人物が違うとなると、シングルの2曲だけでもまったく違った楽曲を楽しめそうですね。

いとうさん:真逆とまではいかないですけど、どちらも違った表情を見せています。ですがタイトルに関しては統一感を出そうと思って、ラテン語に揃えてあるんです。「アマデウス」は「神に愛される」という意味で、「STEINS;GATE 0」にも登場してくる単語なんです。そこで私もラテン語で、なおかつゲームにも合った単語がないかと探した結果、篝火という意味の「Ignis」を見つけたんです。

――今お話にありましたが、「Ignis」もゲームのストーリーを意識していると。

いとうさん:「Ignis」は実のところ、私が勝手に作った「STEINS;GATE 0」のイメージソングなんです(笑)。

――え、勝手にですか!?

いとうさん:先にシナリオも読ませてもらって、その中のとあるエンディングからイメージを膨らませて作った曲になります。どれも本当に素晴らしいシナリオで、頼まれてもいないのに思わず作ってしまいました(笑)。

「STEINS;GATE 0」は紅莉栖を救えなかった世界線での物語で、辛いエンディングというのもたくさんあります。「Ignis」はその中でも、もっとも辛い物語をイメージしているんです。

――ストーリーを元にイメージを膨らませて作詞するのは、普段とは違った難しさはないのですか?

いとうさん:いや、難しさよりもまずは楽しさが先に来ますね。膨大な量のシナリオを読んで、イメージを膨らませる場所を決めて、キーワードを拾ってきて…という作業を積み重ねるんですけど、どれも楽しいです。

――シナリオは読んできたという話ですが、ゲームを実際にプレイすることもあるのですか?

いとうさん:もちろんありますよ。以前「STEINS;GATE 線形拘束のフェノグラム」が発売されたときもエンディングまでプレイしました。ただ、最後まで辿り着くのは大変でしたね。なかなか最適なルートが見つけられなくて、同じルートを何度も回ってしまって…結局諦めて、スタッフにどうすればいいかヒントをもらいながら遊んでいました(笑)。

なんのヒントもなしに最後まで行ける人は本当にすごいと思います。ファンのかたのブログとかを見ていても、発売直後にクリアまでの道のりや相関図が出ていて、いつも驚いてます。「STEINS;GATE」以外にもアドベンチャーゲームはよくプレイするんですけど、結構お世話になっています(笑)。

――(笑)。やはりアドベンチャーゲームは多くプレイしているんですね。

いとうさん:すべてを終えたあとの感動はひとしおですからね。本と違って流し読みができないですし、その分感情移入もしやすい。アドベンチャーゲームに熱いファンが多いのは、そういったところも影響しているのかもしれませんね。

――では、今回の「STEINS;GATE 0」ももちろんプレイする予定で。

いとうさん:シナリオはすべて読んでいるとはいえ、ゲームとしてだとまた違った見え方がするんです。なので、ぜひ遊びたいです。スタッフの皆さんの仕事っぷりも見なきゃいけないですし(笑)。それにゲームだと、声優さんのボイスも付くじゃないですか。皆さん素晴らしい演技を見せてくれますし、命を吹き込まれたキャラクターの姿は、シナリオを読んだだけでは分からないですから。

――今回はPS4とPS3、そしてPS Vitaで同時リリースされます。いとうさんはプレイするとしたらどちらになりますか。

いとうさん:携帯機が好きです! やっぱり移動が多いので、その合間に楽しめるのはすごく助かります。でも一度、電車の中で乙女ゲームをプレイしていたときに、普段の生活では絶対聞かないようなセリフを言われてしまって、思わず「ヒャーッ!」と声を出してしまったこともあります(笑)。

――そういうところも携帯機ならではですね(笑)。ちなみに、シナリオをすでに読んだといういとうさんとしては、ゲームのどんなところに注目したらいいと思いますか?

いとうさん:以前プロデューサーの松原さん(松原達也氏)と話をしたとき、「どの作品でも伏線の1%は敢えて回収しない」と語っていたんです。そして「STEINS;GATE 0」では、シリーズ1作目で回収されていなかった伏線から物語が広がっていくんです。残されていた謎がどう回収されるのかはもちろん、「STEINS;GATE 0」で回収されない1%の伏線がどんな内容かにも注目です。ファンの方にはそこからまた、いろいろと考察や議論をしてもらいたいですね。

――「Ignis」もそうですが、10月28日に発売されたシングル「Calling my Twilight」もご自身で作詞を手がけていますよね。

いとうさん:「Calling my Twilight」は「対魔導35試験小隊」というアニメのエンディングテーマで、やはりストーリーを意識した歌詞になっています。メロディーを聞いたときはバトルソングの印象で、そしてアレンジされたものを聞いたらダンスミュージックの印象も受けたんです。だから歌詞もそれに合わせて、格好いいものにしないと負けてしまうと思い、気合を入れて書きました。アレンジに関しては特にイントロの部分が好きなんですけど、アニメバージョンではカットされてしまっているので、ぜひシングルで聞いてもらいたいです(笑)。

また、エンディングテーマではあるものの、どちらかというと始まりを意識しています。アニメは雑魚小隊と呼ばれているチームが徐々に強くなっていく姿が描かれています。楽曲のほうも、そういった発展途上の様子を表現できるように考えていました。

――確かに歌詞のフレーズを見ていると、「対魔導35試験小隊」のことを歌っていることがすごく分かりやすいですよね。

いとうさん:ありがとうございます! ただ正直なところ、アニメのタイトルを大声で叫ぶレベルの分かりやすさがベストだと思うんですが、「対魔導35試験小隊」はさすがに長くて…(笑)。なのでそれをフォローするためにも、物語を隅々まで読んで、キーワードをどんどん拾っていったできた曲です。

――アニメは放送中ですけど、こちらはチェックしましたか?

いとうさん:見ました! TOKYO MXだと「対魔導35試験小隊」から「STEINS;GATE」の再放送が続くじゃないですか。私の主題歌が連続で流れるのでちょっと恥ずかしいですね(笑)。

――同じミュージシャンの楽曲が続くというのは珍しいことですよね(笑)。「Calling my Twilight」が乗ったエンディングの映像を見たときの印象はいかがでしたか?

いとうさん:第1話だとエンドロールに入る直前からイントロが流れ始めて、あの演出は格好良かったですね。映像自体を見るのはテレビ放送時が初めてだったんですけど、しっかりマッチしていて、私のイメージも合っていたのでよかったです。

――「Calling my Twilight」に「アマデウス」と、シングルを2ヶ月連続でリリースするというのも、いとうさんとしては珍しいですよね。

いとうさん:カップリングの作詞まで担当させていただいたので、頭の中はずっと忙しかったです。でも忙しい分、作るって楽しいなと改めて実感しました。

――産みの苦しみというよりも、楽しさが先に来るんですね。

いとうさん:最初の一節を考えるまでが大変だし、シナリオありきの歌詞だとウンウン唸りながら作ることもありますけどね(笑)。考え込んでいるときでなく、「雨降ってきたな」とか、違うことを考えた瞬間にフッとフレーズが出てきたりして、それはすごく楽しいです。最近は自分で作ることに意味を感じていて、自分の中から生まれてきた言葉を大切にしようと思っています。なので、最近はイメージソングの作詞も任されるようになって、幸せな気持ちです。

――イメージソングならではのやりがいもありそうですね。

いとうさん:アニメにしろゲームにしろ、作品のスタッフの方々と一緒に作れるのは楽しいですね。オリジナルソングも作曲家や編曲家との共同作業ですが、イメージソングはその輪がさらに広くなります。その分、たくさんの人に愛される曲であることがダイレクトに伝わってきますし、作品のファンの方とも共有できる。だから私はアニソン、ゲーソンのことを「最強」と呼んでいます(笑)。

――ですがその反面、作品のファンにどう受け入れられるかという不安はありませんか?

いとうさん:そこは結局、好き嫌いでいいと思うんです。最終的に作品を愛してくれればそれでいいかなと。ただ、「Starry☆Sky」などの乙女ゲームの主題歌を担当するときはさすがにプレッシャーがありましたね。乙女ゲームって、主役の男性声優の方が主題歌を担当するケースが多いじゃないですか。それを私が歌っていいのかと思ったこともあります。だけどゲームを開発する女性スタッフに楽曲を聞いてもらって、「すごく良いじゃないですか!」と背中を押してくれたおかげで無事リリースできたし、評判も良かったので安心しました。

――イメージソングの場合、音楽にまったく興味のない人にも届けられるのは大きな強みですね。

いとうさん:このあいだ開催された「科学アドベンチャーライブ2015」では、私のCDを買った人の中から抽選で10組をバックステージに招待する企画があったんです。それで当日、集まった10組と話してみると、親子で来てくれた人や、生まれて初めてライブに来たという人とか、本当にたくさんの人と触れ合うことができました。これはやっぱり、科学アドベンチャーシリーズの力だと思います。

そのとき面白かったのは、カップルで来てくれた人がいて、「STEINS;GATE」ファン同士で付き合い始めたっていうんです。私の関わった作品が役に立っているみたいで嬉しかったですね(笑)。

――2015年というとシングルに限らず、アルバム「Reactor」も発売したりとかなり精力的に活動していた印象です。

いとうさん:「Reactor」に関しては昨年の楽曲が中心でしたけど、今年は新曲だけでも11曲作っていて、自分でも驚いています。「もう一枚アルバムが作れるな」って(笑)。こうやってさまざまな作品に、途切れることなく誘われるのはありがたいです。

2016年はさまざまなライブを企画したい

――「科学アドベンチャーライブ2015」以外にも、2015年は要所でライブやイベントに参加していました。

いとうさん:ワンマンライブも3回に渡ってやりましたね。ライブでとったアンケートを見てみると、年齢層が今までよりもかなり幅広くなったのが印象的でした。下は19歳から上は51歳まで、デビュー当時から来てくれている方もいました。デビュー当時というと12、3年前の話で、そのころのファンはもう来ていないと思ったので、嬉しかったですね。

――昔からのファンは貴重な存在ですね。

いとうさん:だから、ライブでは最近の曲だけでなく、昔の曲もどんどん歌っていきたいと思いました。そのためにも、来年以降は自分たちで企画したライブをもっとやっていきたいです。ファンの方が来る前から、どんな曲を歌うか分かる、例えばアドベンチャーゲームの主題歌だけ歌います、バラードだけ歌いますといった具合に、しっかりとしたコンセプトのあるライブですね。

――コンセプトが変わると、客層もまたガラッと変わりそうですね。

いとうさん:変わっちゃっていいと思うんですよ。今日は全員女性だったとか、若い人ばかりだったとか、そういうライブも楽しんでみたいと最近は考えるようになりました。コンセプトのあるライブであれば、今まであまり歌わなかった曲も披露できるかもしれませんからね。そこに魅力を感じて、これまで縁のなかった方にも来てもらえたらなお嬉しいです。

――ここまではライブの話でしたけど、楽曲制作などで2016年へ向けた目標はありますか?

いとうさん:今は新曲を作るのがとにかく楽しいというスイッチが入っているので、今のうちに作りためておくのも面白いかなと思っています。そして作ったものをどんどん発表してと、制作と発表を同じくらいの比率でやっていけたらいいですね。

――分かりました。それでは最後に、ファンへ向けたメッセージをお願いします。

いとうさん:「アマデウス」はゲームより発売になるので、まずは聞き込んでから、ゲームのほうも楽しんでもらえたらと思います。今回のシングルには紅莉栖のモノローグも収録されているし、カップリングの「Ignis」も含めて気合を入れて作っています。そして「Ignis」が一体誰のエンディングをイメージして作られているかという点にも注目してもらいたいです。

――ありがとうございました。

※画面は開発中のものです。

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