9月15日より幕張メッセにて開催されている東京ゲームショウ2016。ここでは、先日発表されたばかりのPS VR対応ソフト「V! 勇者のくせになまいきだ R」(ぶいっ! ゆうしゃのくせになまいきだ りたーん)のメディアセッションの模様をお届けする。
9月13日に行われた「2016 PlayStation Press Conference in Japan」。多くの新作が名を連ねるなか、7年ぶりとなるシリーズ最新作「V! 勇者のくせになまいきだ R」が発表された。
本作は、プレイヤーが破壊神となってセカイ征服を目指すリアルタイムストラテジーゲーム。食物連鎖の仕組みを利用して魔物を繁殖させ、迫り来る勇者を撃退しながら、敵の本拠地である城を制圧していく。
本日、本作のメディアセッションが開かれ、シニアプロデューサーの山本正美氏(ソニー・インタラクティブエンタテインメント、以下SIE)、ディレクターの大橋晴行氏(アクワイア)、プロデューサーの鳥山晃之氏(SIE)から、コンセプトや狙い、そして3D化の理由などが語られた。
企画のはじまりはひとつのプロト
7年ぶりの新作となる本作の始まりは、2015年10月にソニー・コンピュータエンタテインメント(当時)とアクワイアとの打ち合わせであった。その際に出された、打ち合わせとはまったく関係のないプロトモデルを山本氏がプレイしたのがきっかけで、同年の12月1日にプロジェクトがスタートした。
前作にあたる「勇者のくせになまいきだ:3D」が地下から出ていく場面でエンディングを迎えたこともあり、今回は地上が舞台だ。プレイヤーは破壊神として、魔王と協力しながら勇者を撃退し、大地を紫色に染めていくのだ。
プレイヤーは目の前に広がるマップに、「破壊神コントローラー」を使って魔物の巣を配置し、魔物を増やしていく。魔物の間には独自の食物連鎖があり、これを活かしながら生態系を構築。戦況や彼らの特性、そして巣の配置などに使う「カリスマポイント」を考えながら生態系を維持していく。
本作には昼と夜の概念があり、昼は勇者が攻めてくるが、夜は自分の軍団を進軍させることができる。いたるところで繰り広げられる攻防を繰り返しながら、敵の城を陥落させれば勝利だ。ジオラマチックなモデルが目を引くが、遊び心地は変えずに「勇者のくせになまいきだ」が戻ってきたと思われるように仕上げているという。
メディアセッションではデモプレイも実施された。ゲームの流れは、既に掲載しているプレイレポートを参考にしてみてほしい。
食物連鎖を築いているのは魔物たちだが、魔物の巣を配置するためのカリスマポイントは、勇者を倒したり、拠点を制圧することで手に入る。プレイヤーにとっては勇者もリソースのひとつであり、それは過去の作品とも変わらない。
また、シリーズで登場してはすぐさま撃退された勇者「しょうた」が出てくるなど、シリーズファンがニヤリとできる場面も。魔王とのコミュニケーション要素も随所に散りばめられている。
VR化する中でぶつかった壁
本作ではRPG的な世界がジオラマ感満載に表現されているが、ここに至るまで、さまざまな障壁が開発陣の前に立ちはだかった。
VRで見てほしいところを見てもらうのは非常に難しい。例えば、拠点を落とすのは戦況上とても大事なことなのだが、プレイヤーがそこを見ていないということがまま起こる。そこでエフェクトを派手にしたり、ボイスによる誘導を入れたりして、そちらに目を向けるように変更。プレイヤーがしたいことを能動的に順序立てて考えられる導線を作るのがゲーム開発のポイントだが、VRではそれがやりにくいようだ。
また、本作に限らずVR作品の開発陣が手を焼いているのが酔いである。VR酔いを避けるためには、フレームレートを下げるわけにはいかない。しかし本作は多くのキャラクターがわらわらと登場するゲームデザインだ。
そこでデザインやモデルを調整したり、人間の目が処理しているように、視界の端で起こるアニメーションの更新頻度を抑えたり、さらにはキャラクターが出た際に影をなくしたり(意外と人間はこれに気づかない)と、細かな工夫を重ねながらフレームレートを保っていった。
ドット絵からの脱却
本シリーズのファンには、ドット絵から脱却したことを不思議に思う人も多いのではないだろうか。
ファンに親しまれてきた「勇者のくせになまいきだ」のドット絵は、ゲームの進化と3D表現への移行に逆行する形で生まれた。それに倣うならば、時代がVRに向かう今、敢えて3Dにするのが本作の開発陣にとって「逆を行く」ことになる。この決断は、早い段階で下されたようだ。
さて、そこで問題になったのが、ファンにも愛されている魔王の表現である。2頭身のドット絵と表情をもとに、魔王のイメージを損なわないようにリデザインしたものの、いざVR空間で見てみると顔が大きすぎて非常に怖いものになってしまった。
結局、6頭身ほどに調整してようやくバランスを取ることができたという。人間と同等の大きさのキャラクターをVRで表現するには、頭身を上げた方が良いようだ。
さらに、VRは横長のテキストに適していないこともあって、本作ではとうとう魔王がしゃべることに。テキストは本作の味であったものの、これをなくす代わりに間や勢いなどが表現できるようになっている。
体験性とゲームルールの融合を目指す
VRは疑似体験型のアトラクション色が強いコンテンツだ。ゆえに、シミュレーションなどのルールを持つ作品は、なかなかVRに落としにくいと言われている。しかし、本作はこれに挑戦。大橋氏は、見せ方や表現、演出を工夫してルールを持つゲームを作れば、新しい体験につながるのではないかと話す。
VRの中にはまだ見つかっていない“金塊”があり、それを探っていくのが本作だ。山本氏は、先達が作り上げてきた作法や“お約束”をうまく使ってゲーム文化の食物連鎖の輪の中に入りながら、新しいコンテンツを作り上げていきたいと展望を述べた。
開発陣への一問一答
――本作のゲームの肝になる部分ははどこでしょうか?
大橋氏:目の前に広がるRPGの世界です。その世界に入り込むのではなく、俯瞰して見るというのが、一番やりたかったところです。
山本氏:例えば城から出てきた勇者が町に寄っていたり、気づく人が「あっ」と思うネタは仕掛けています。かつてプレイヤーが体験したものを、VRを介して別のレイヤーの体験として提供するというのが狙いの一つです。また、VR空間の中でちゃんとしたゲームルールで遊んでもらう作品はまだ目立ったものがないので、早くやりたいですね。
――これまでは「勇なま」と略していましたが、今回はどう略せば良いでしょう?
山本氏:ハッシュタグでは「Vなま」となっていますね。ユーザーさんからは「VなまR」の方がいいのではと言われましたが(笑)。タイトルにはすごく悩みまして、7年ぶりなので「祝」を入れようという案もありました。TGSも近づいてきて、もう挟んでしまえばいいのではとイメージを作ってみたら、結構ハマりましたね。
――本作のボリュームはどれくらいになりますか?
山本氏:15~20ステージを用意しようとしています。1ステージに20分ほどかかるとプレイヤーも疲れてしまうので、短い中にやりごたえを盛り込もうとしています。
鳥山氏:「勇なま」シリーズは繰り返しプレイが重要ですので、いろんな構成のマップも考えています。
山本氏:多彩なステージデザインも考えていますので、見た目のバリエーションも出るはずです。
――3Dの高低差を活かしたゲームプレイもありますか?
大橋氏:もちろんあります!
山本氏:L・Rボタンでステージを回すことができるのですが、それが役立つギミックも入れていきたいですね。
――魔法陣による特殊召喚など、巣を配置する以外にも魔物の生み出すことはできますか?
大橋氏:旧作とは違うルールで魔物を生み出せるようになっています。魔物を運んで助けてあげたり、もっとお世話できるようなインタラクションに注力していくつもりです。
――プレイヤーが直接マップに干渉したりできますか?
大橋氏:いじってみたくなりますよね(笑)。
山本氏:直接干渉することはできないのですが、マップ全体に影響をおよぼす「破壊神スキル」というものはあります。
――発表後、ユーザーさんからはどんな反応が届きました化?
山本氏:なぜドット絵ではないのか? という声が相当大きいですね。一方で「復活するんだ!」という声がこんなに上がったことにもびっくりしています。VRでプレイするイメージが湧かないという意見もありましたが、実際にプレイした人と話すと「こういうことなんですね」と理解してもらえています。予想外の体験になっているのがうれしいですね。
鳥山氏:スクリーンショットを見るのと体験するのでは全然違うので、そういう機会を考えていきたいです。小さなキャラクターたちも可愛いので、そういった魅力も伝えていきたいですね。
山本氏:女性人気も結構あるんですよね。可愛く感じられるデザインにもなっているので、楽しんでいただけると思っています。