千葉・幕張メッセにて9月15日より開催中の「東京ゲームショウ2016」。スクウェア・エニックスのブース内にある「プロジェクト Hikari VR×漫画 コンセプトショーケース」でVR体験の模様をレポートする。
目次
高い技術力と出版部をあわせもったスクエニだからこそのVR体験がここに!
「プロジェクト Hikari」は、“あなたが大好きな「あの物語」の向こう側に行けたら、どんな体験になるだろう”という疑問から生まれたそうだ。
ゲーム開発技術と日本の漫画コンテンツを融合させ、ユニークな体験をしてもらいたいという想いから、コンセプトショーケースとしてお披露目された。
このデモでは、日本の漫画コンテンツの表現に特化した独自開発のVR技術が実装されており、
・漫画風表現のシェーダーとライティングモデル
・漫画のコマにおけるVRナビゲーション
・漫画のコマの3D表現
の3つへの挑戦がなされている。
使用VRデバイスはHTC Vive。今回は、月刊ビッグガンガンで連載中のめいびいさんによる「結婚指輪物語」の世界に、約8分間の映像体験として入ることができた。
ついに…二次元の世界に入る日がきた!
ゲームが好きな人ならば誰でも一度は「二次元の世界に住みたい」という言葉を口にしたことがあるのではないだろうか。
愛するキャラクターを身近に感じたい。触れたい。その世界に住みたい。実際に会話をしたい。欲望は人それぞれだと思うが、そういう筆者も常に二次元に永住したいと思っている。
今回のVR体験では、それらの欲望の中でも「愛するキャラクターを身近に感じる」ことが出来るものだった。3DとVRの融合によって、実際に触れそうなほどキャラクターたちが「近い」のだ。それもあくまで現在のVRには触感がないから触れないと感じるだけで、実際には手を伸ばせばそこにキャラクターたちはいる。これが「二次元の世界にいきたい」という願望の第一歩であることは間違いない。
今回「読み手」の立場ではあるが、自分が漫画の世界に吸い込まれていくような演出もされているため、より一層「読み手」というよりは「体験者」という感覚を得られると思う。もちろん実際には漫画を読み進めていく映像コンテンツなのだが、立体的かつ自分もその場にいるような世界には、何十分何時間と浸っていたくなる。強制的に終わる体験版でなければ、まさにもうその世界に「住める」と言っても過言ではないだろう。
3Dモデルと漫画のコマの融合、モノクロだけの世界、なのに違和感がない
この「プロジェクト Hikari」では、3Dモデリング化したキャラクターたちが漫画の設定通りに実際に動くシーンと、実際の漫画のコマを立体的に表示させるシーンとが融合している。
この融合は、ぱっと見ではアンバランスに見えるかもしれないが、実に計算されて作られていて、不思議と自然に受け入れられる。
漫画のコマを読み進めるシーンでも、そのコマを大きくしたり小さくしたりするようなVRらしい遊びのようなシーンもあった。また、背景には3Dモデルの世界が置かれていたりして、コマが表示されていても、視界を右に動かしたり左、上、下と動かすことによってコマ以外の部分も楽しむことができる。
それこそめいびいさんの描く魅力的なキャラクターを色んな角度から見ることだって可能なのだ。これぞ、まさにユートピアの第一歩ではないだろうか。
なお、この世界はあくまで漫画がベースのため、掲載写真の通り一切この世界に着色はされていない。最初から最後までモノクロだけで進む世界だ。それでも不思議と違和感を覚えることがない。
だが、唯一残念だったのは、メガネをかけたままでのVR装置の装着はメガネが押し当てられて痛みを感じる部分があり、メガネを外して装着しなおすと、漫画のコマの文字などがボヤけて読みにくくなってしまった。
3D映像の空間自体は裸眼でも問題なく楽しめていたのだが、2D部分では焦点がなかなか合わず、自分の手でVR装置を若干下から持ち上げるなどのピント調整によって多少ボヤけが解消された。
こればかりは視力の悪いものの宿命とも言えるが、なかなか最善の状況で楽しむのは難しい。ただ、VR装置の装着は係りの人に任せていたこともあり、自分で調節できるのであればメガネをしていてもそこまで圧迫感を感じないのかもしれない。
とにかくまずは体験してほしい!
この体験をなかなか言葉で表すのは難しいが、VR体験はやはり経験してみて初めてわかることも多いと筆者は考えている。口でどれだけ「おもしろい」と説明されても、それを体験していない人にとって未知のものを経験として蓄積することは決してできないからだ。
まだこの「VR×漫画」の融合については試験段階で、すぐにでも一般化できるようなものではないとのことだが、体験で得られる感動が開発者の人たちに伝われば、この技術もどんどん進化してさまざまな漫画で楽しめるようになるのかもしれない。
「二次元の世界にいきたい」という我々の夢の第一歩とも言えるこの「プロジェクト Hikari」。今後もその技術の躍進を見守って、そして家庭でも体験できる日が訪れることを楽しみに待っていたい。